ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

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第06話 ざまあみろ、ウィルクトリア(過去編)

19.競売事件

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「この国が俺の結婚を受け入れないというのなら、こちらにも考えがある。総理。そしてこれを見ているであろう各国の首脳。心して聞け」

 ヴァンはカメラを通して世界中に語りかけた。

「これより全国家を参加者とした競売を行う」

 民衆はヴァンの言葉を理解できず、ポカンと口を開けていた。ただ一人総理だけが顔面蒼白になるのが視界の端に映る。

「競売品は俺を保有する権利。……勝ち取った国が次の支配者だ」

 ヴァンは、ヴァンを売ることにした。

 ヴァン・スナキアという戦力。それを保有するということは、今までのウィルクトリアのように世界の支配国になると同義。欲しがらない国など一つもない。

「期限は二週間だ。積めるだけ積むのを薦める。俺を手に入れれば金などいくらでも回収できるぞ」

 ヴァンには国の財産を全て投げ打つほどの価値がある。どの国も一切加減せず金を突っ込むはずだ。
 ウィルクトリアはヴァンを落札しなければ死ぬ。

「ただし、参加条件がある。俺の結婚を受け入れ、妻を全力で保護すること。妻への危害、プライバシーの侵害、情報の流出、その全てを許さない。法を整え何もかもを重罪にしろ」

 ヴァンが欲しければ国を挙げてジルーナを守る必要がある。どれだけジルーナが邪魔であろうとだ。

「金額で多少見劣りしたとしても妻の保護策が充実していればプラスに評価しよう。小国はそちらに賭けろ」

 さらに、ある魔法を披露する。

 これまでのヴァンの人生はこの魔法あってのものだった。奥義とも呼べる魔法。
 ────分身だ。

「見ての通り俺はだ。国同士で手を組み、金を出し合ってもいい」

 チームを組める。それが意味するところに気づき、国民たちの息が詰まる。

「となるとウィルクトリアは不利だな。同盟国一つすら持たない元・世界の暴君は」

 言うまでもなくウィルクトリアは世界最悪の嫌われ者。誰にも協力してもらえない孤独な国家だ。下手すれば他全ての国が徒党を組んでウィルクトリアを突き落とす可能性だってある。

 この勝負は圧倒的に不利。全て身から出た錆だがな。

「ヴァン様……っ! 申し訳ありません!」
「お許しくださいヴァン様!」
「見捨てないでください! ヴァン様!」

 国民たちは請い願う。だが、

「黙れ! 今更何を言おうがもう遅い!」

 一蹴。

「妻を除けば俺の味方はいつだって一人も居なかった……! お前らせいぜいも孤独を味わうがいい!」

 ウィルクトリアは誰も味方が居ないという恐怖にじっくりと晒されることになるだろう。今までの行いを後悔しても無駄。自業自得だ。もはや誰も口を開かない人の群れに向けて、ヴァンは冷淡に声を発す。

「ざまあみろ、ウィルクトリア……!」

 言い捨てて壇上から離れる。英雄はもういない。ヴァンはこの国を操る暴君に生まれ変わったのだ。

「ヴァン・スナキアぁ……! この国は世界を滅ぼせるのだぞ!」

 去り際、背後から総理の脅迫めいた声が届く。ヴァンは足を止め、怒れる老人の顔を正面から見据えてやる。

 殲滅戦争。世界中の重要施設にファクターを送り込み破壊活動を行う。これまでヴァンを縛ってきた、総理の切り札。

「できるものならやってみろ。そんな度胸があるならな」
「で、できないとでも思っているのか⁉︎」
「ああ、思ってるさ。アンタにとってそれは本当にどうしようもなくなった時の最後の手段だろ? だが今回は、金さえ積めば最悪の事態を避けられる」

 凶行に走らせないための最善策は逃げ道を用意してやることだ。本意ではないことなどわかり切っている。さらに、

「競売期間中は世界中の重要施設を俺が見張っておく。ファクターの出入国も監視しておこう」
「バカな⁉︎ 一体どれだけの分身が必要だと思っている⁉︎」

 ヴァンはつい先ほどの総理の言葉をそのまま返してやる。

「できないとでも思っているのか?」
「⁉︎」
「俺は強くなり過ぎた。二週間程度なら世界中守ってやるよ」

 ここは孤立した島国であり、空路と海路を監視下に置けば誰も出国できない。秘密裏に刺客を送り込むルートを作るのは今からじゃ不可能だ。

 どうにか目を盗めたとしても希望はない。各国の重要施設を四万五千箇所くらいは二十四時間体制で警備できる。

 もちろん完璧とは言い難い。すでに海外にいるファクターを動かすことは可能だろう。うまく立ち回れば警備をすり抜けて多少の攻撃はできるかもしれない。だが、

「どう足掻いても反撃能力を完全に奪うほどの打撃は与えられまい。必ず終末の雨に近い復讐を喰らうぞ。そのとき俺がまた俺が守ってやるとでも思うか?」
「くそぉ……っ! くそっ!!」

 ヴァンという守護者が機能していないのなら、殲滅戦争という作戦は初手の奇襲で全てを終わらせることが前提となる。ヴァンが全力で警戒している中で実行できる策ではない。短期決戦であれば総理の切り札は紙屑と化す。

 手詰まりとなった総理は公衆の面前でうずくまり、うーうーとみっともない唸り声を上げていた。

 ────安心しろ。この国が負ければヴァンも死んでしまう。せっかく最愛の女性と結婚できたばかりだというのに死んでたまるか。ウィルクトリアが勝てるようにコントロールしてやろう。

 ただし、その勝利の味は最悪だ。
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