ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ

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第07話 如何に愚かな喧嘩を売ったのか(過去編)

11.ヴァン・ネットワーク

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 ヴァン[ジル]はテレビを指差し、ついでにヴァン[ラルド]に「ちゃんとやれよ」と交信しておく。

『……俺が原因ではないが、今回の事件のきっかけであったことは認める。だからこそ犯人逮捕には全力で取り組んだ。再発防止策も用意している』

 一転して落ち着いた声で、国民に語りかけるように話す。

『犯人の捜索は二十万の分身を等間隔で配置して行った。今後は同様の施策を国中で行う。今回のような犯罪だけではなく、ついでにあらゆる犯罪を防止してやる」

 今回は首都アラム限定だったが、明日からは範囲を広げて国中の監視をすることにした。ざっと計算したところ人がいる地域に限ればおよそ三十メートル間隔で配置できそうだった。

『警備中は魔法で視覚と聴覚を強化する。何か危険な目に遭いそうな時は”助けて”と叫んでくれればすぐに駆けつける。この国の、どこにいてもだ。……これ以上の抑止力はないだろう』

 ヴァンに監視されていると分かれば犯罪者は動けない。あえて言明しなかったが、きっちり透明化の魔法も使わせてもらう所存だ。さらに────、

『なお、ビースティアの女性に対するあらゆる犯罪は、”将来的に俺の妻になるかもしれない女性”に対する犯罪と認識し、ヴァン・スナキア夫人保護法の対象とする』

 決め手はこれだ。ビースティアの女性を十把一絡げにして妻として扱い、全員を保護する。今後今回のような事件が起きれば本来の罪状に加えてヴァン・スナキア保護法の餌食にもなりプラス十年、二十年は食らうことになるだろう。

『繰り返す。ビースティアの女性に対するあらゆる犯罪は俺の妻への犯罪と同等と見做す。……全ての猫耳は俺のものだ」

 せっかくの機会なのでビースティアフェチの変態であることを改めて刷り込んでおこう。

 ────画面の前でジルーナが固まっていた。

「……無茶!」

 数秒後、やっと口を開いた。

「国中見張るつもり……⁉︎ いつも……⁉︎ ずっと……⁉︎」
「しばらくは常に。まあ、俺が見ているってイメージが定着してきたら徐々に減らすさ。たまに抜き打ちする程度にまでな」
「力技すぎ……! 私が名乗り出た方が絶対良いじゃんか!」

 ジルーナはヴァンの負担を慮った結果、少し怒っていた。

「と、ところで俺の変態発言についてはいいのか?」
「変態なのはもう分かりすぎるくらい分かってます!」
「そ、そうか……」

 普通はこっちで怒るんじゃないかと思ったのに。もちろん、あれは本意ではなくただの国民に向けた脅し文句のようなものなのだが。

 ジルーナは全然納得していないようで、唇を尖らせていた。

「私ヴァンが大変なのは嫌なんだけど」
「俺はジルが危険なのは嫌なんだ」

 二人は自然と立ち上がり相対する。相手を慮った発言とは裏腹に、お互い表情は険しい。絶対に譲れない戦いだからだ。

「ジル、顔や名前を明かしたって全部解決するわけじゃないんだ。同じ名前の人が誤解されるかもしれないし、顔が似ている人だって……、いや、こんなに可愛い子はいないが、────とにかく別のリスクが生まれるだけだ」
「ムゥ……」
「大体、ジルの言う通りにしたって結局俺はジルの護衛を強化しなきゃいけなくて大変だよ。そっちの方が精神的に疲れる。いつも気が気じゃない」
「んん……」
「だから今回は俺にやり方を任せてくれ。必ず何とかするから」
「……ヴァンばっかり頑張るんじゃなくて私も何かしたいのに」

 眉を八の字にしてしょんぼりするジルーナの頭を、ヴァンはポンポンと撫でた。ついでにちょっと猫耳も触った。本当は全部ヴァン一人で背負い込みたいところだが、それではかえって嫌がるだろう。そういう妻だ。だからヴァンはジルーナにも重要な仕事を任せるつもりでいた。

「君にも頑張ってもらうよ。これから大変だぞ?」
「え?」
「……知っての通り分身は燃費が悪い」

 ジルーナは何かに気づいたように口と目を開いた。

「これから毎日すっごいお腹が空くってこと?」
「ああ。修行してた三年間より食べると思う」

 常時二十万人に分かれるとなれば尋常じゃない量の食事を必要とする。ジルーナには毎日炊き出しのような量を作ってもらうことになるだろう。ヴァンは働き、ジルーナはヴァンが働けるように支える。役割を分担しているだけで、お互い大変なのは変わらない。

「あ、あの時よりも……。それは腕がなるね」
「よろしくな。……俺そろそろジルの料理が食べたいし。もう一ヶ月も食べてないからな」
「世界中で美味しいもの食べたじゃんか」
「世界中探してもジルが作ったものより美味しいものはなかったろ?」

 ヴァンはご機嫌を取るためでも自分の案に納得させるためでもなく、本心からそう告げた。

「あら、そんなに好き? フフ、ヴァンって私のご飯で育ったもんね」

 ジルーナはクスリと笑い、大きく頷いた。

「分かった! じゃあお互い頑張ろうね」

 どうにか納得していただけたようでヴァンはホッと胸を撫で下ろす。二度と彼女が「顔と名前を明かす」なんて無茶を言い出さないように、徹底的にあらゆる犯罪を未然に防がねばならぬとヴァンは意気込んだ。ご褒美に大好きな妻のご飯が待っているならきっと何だってやり遂げられる。そう確信しながら。


 ヴァンが行う施策はメディアによって”ヴァン・ネットワーク”と名付けられ、ウィルクトリアの治安維持に大いに貢献することになる。そしてこれを通じ、ヴァンは様々なビースティアの女性と出会っていく。
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