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邂逅②
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「ところでニーナさん」
「何? あ、さんは要らないよ! 気軽にニーナって呼んで♪」
「えっ、それは……」
こんな綺麗な人を呼び捨てって……良いのかな。なんか悪いことしてる気分……。
「呼んでくれないの……?」
ぅっ……そんな目をうるうるさせるなんて、ズルい……。
「えっと……ニーナ……?」
「うん、OKOK!」
ちょ、ちょっと恥ずかしいしね、これ……。
「それで、何を聞きたかったんだっけ?」
「あ、うん。この竜の谷って、上から見た時に竜の形に見えるから、そう名付けられたって聞いたんだけど……ずっと昔から、ここに住んでるの?」
「うん。大体の竜族は、ここで生まれて、ここで生きて、ここで死んでいくよ。たまーに人間に紛れてたりするけど、それでも極小数だね~」
そうだったんだ……竜族がこんな近くに住んでるなんて、知らなかったなぁ……。
「人間に紛れてるって事は、その尻尾とかも全部しまえるの?」
「しまえるよ。よっ」
お、おおっ。まるで体の中に入ったような感じで本当に消えた! 竜族って、面白い力をもってるだねぇ……。
道中、ニーナに竜族の事をあれこれと質問しても、嫌な顔せず全部答えてくれた。こんなに人と話すなんて、あの女以外初めてだから、ちょっと楽しい。
でも……。
「ニーナ、僕の質問に色々と答えてくれてるけど、そんなに竜族の事ペラペラ喋っても大丈夫なの? ほら、もし僕が悪い人だったら……」
「ルシアは悪い人なの?」
「ち、違うよ!」
「なら良いじゃない。それに、本当に悪い人はそんな事聞かないよ」
ケラケラと快活に笑うニーナ。……なんか、心配してたのが馬鹿らしくなってきた……。
「それに、竜族は相手の悪意を見抜く眼を持ってるから、本当の悪人ならそもそも助けてすらないから。安心して」
「ひぇっ……!」
それって、僕が悪い人だったら今頃潰れたトマトに……い、いや、考えないでおこう……。
そのまま暫く歩き続けると、他の樹木よりも巨大な樹木の前まで来た。多分、僕が百人くらいいても、囲えないくらいぶっといんじゃないかな……?
その樹木の根っこと根っこの間に、中に通じるような穴と、人工的に作られた階段があった。もしかして、竜の谷にいるドラゴンって、地下に住んでるの……?
……な、なんか緊張する。もしニーナが嘘をついてて、僕を食べようとこんな所に連れて来たとしたら……。
「……あれ? ルシア、どうしたの?」
っ……ええいっ、ここまで来たら信じるしかないでしょ、僕! どうせ逃げても、竜族から逃げられるわけないんだし!
「……何でもないよ。行こう」
「むふふ~。きっとビックリするよ~」
ニーナがいたずらっ子のような顔をする。どんな場所に連れて行かれるんだろう……。
「《フラッシュ》」
「わっ……!?」
に、ニーナの手が光って……!?
「ルシア、魔法初めて見た?」
ま、魔法……?
……あ、確かどこかで聞いた事がある。世の中には、魔法って呼ばれる非現実的な力を使う人達がいるって。何も無い所から火を付けられるし、水を出せるらしいけど……こうして見るのは、初めてだ……。
「う、うん……」
「ま、そうだよねぇ。人間にも魔法を使える人間はいるみたいだけど、本当に極小数って聞いたことがあるし……見た事ないのも当然か。さ、着いてきて!」
ニーナが前を行き、螺旋状になっている階段をずーーーっと下っていく。
……長い。本当に長い階段だ……。
どれくらい下って行ったか分からなくなるくらい下っていくと、急に視界が開けた。
「ふっふー。どう、この光景!」
ニーナの指差す方に目を向ける。
「ぇ……空……?」
下って来たはずなのに……何で空が……?
「どう? どう? 凄いでしょ?」
「……凄い、けど……これも魔法?」
「ううん。ここは異次元って呼ばれる場所で、次元と次元の間に存在する全く別の次元なの。数万年前、初代竜王様が放ったブレスで次元が捻れて、この場所が出来たって言われてるんだ」
…………よく分からないけど、何となく凄いっていうのは分かった。
草木の生えていない荒野を歩く。結構長い間歩いたけど、まだ着かないのかな?
「ニーナ、ここってどれくらい広いの?」
「え? うーんどうだろ……正確には分からないけど、多分ヒューリア大陸と同じくらいじゃないかな?」
「ヒューリア大陸って?」
「君の住んでるこの大陸だよ!」
住んでる? どういう事?
首を捻ってると、ニーナは何かを察したような顔をした。
「そっか……ルシア、そう言うのを教えてくれる人っていなかったんだっけ……」
「……ごめんね、なんか……」
「ううん。私の方こそ、配慮が足りなかったよ。ごめんねぇ」
ニーナが僕の頭を優しく撫でる。……思い返してみれば、こうして撫でられるのも初めて……かな……? ちょっと恥ずかしい……。
「そ、それで、ヒューリア大陸って?」
「あ、うん。ルシア達人間が住んでる大陸の事だよ。他にもドワーフ、エルフ、オーガ達亜人族が住んでるマテニア大陸。魔人や魔族の住んでるアクレチア大陸がある。ヒューリア大陸はその中でも、トップクラスに大きい大陸なんだよ」
そ、そうなんだ……この世界には色んな物があるんだね……。
……実際、ヒューリア大陸の大きさは全く分からないけど……いつか分かると良いな。
「あ、見えたよ! 私達の集落が!」
「……大きい……」
なんと言うか……ここから見えるだけでも、裕福層が住んでる東地区以上に発展してるように見える。これ、集落と言うより街……いや、都市くらいはあるんじゃ……。
「竜の集落は、長い間を掛けて外の世界から良いものを取り入れて行ってるんだ~。今ここは、外の世界でいうとレゼンブル王国の中央都市くらい発展してるんだよ」
レゼンブル王国は聞いたことがある。確か、僕の住んでる街もレゼンブル王国の領土だったはず。そこの中央都市と同じくらいって……とんでもない大きさなんじゃ……。
「……集落って言うくらいだから、もっとこじんまりとしたものだと思ってた……」
「名前は特に無いよ。ただ昔から集落って言ってたから、みんな竜の集落って呼んでるだけ。さ、早く行こう!」
「えっ……あ、うんっ!」
そう言えば、あの街以外の街って初めてかも。楽しみだ……!
「何? あ、さんは要らないよ! 気軽にニーナって呼んで♪」
「えっ、それは……」
こんな綺麗な人を呼び捨てって……良いのかな。なんか悪いことしてる気分……。
「呼んでくれないの……?」
ぅっ……そんな目をうるうるさせるなんて、ズルい……。
「えっと……ニーナ……?」
「うん、OKOK!」
ちょ、ちょっと恥ずかしいしね、これ……。
「それで、何を聞きたかったんだっけ?」
「あ、うん。この竜の谷って、上から見た時に竜の形に見えるから、そう名付けられたって聞いたんだけど……ずっと昔から、ここに住んでるの?」
「うん。大体の竜族は、ここで生まれて、ここで生きて、ここで死んでいくよ。たまーに人間に紛れてたりするけど、それでも極小数だね~」
そうだったんだ……竜族がこんな近くに住んでるなんて、知らなかったなぁ……。
「人間に紛れてるって事は、その尻尾とかも全部しまえるの?」
「しまえるよ。よっ」
お、おおっ。まるで体の中に入ったような感じで本当に消えた! 竜族って、面白い力をもってるだねぇ……。
道中、ニーナに竜族の事をあれこれと質問しても、嫌な顔せず全部答えてくれた。こんなに人と話すなんて、あの女以外初めてだから、ちょっと楽しい。
でも……。
「ニーナ、僕の質問に色々と答えてくれてるけど、そんなに竜族の事ペラペラ喋っても大丈夫なの? ほら、もし僕が悪い人だったら……」
「ルシアは悪い人なの?」
「ち、違うよ!」
「なら良いじゃない。それに、本当に悪い人はそんな事聞かないよ」
ケラケラと快活に笑うニーナ。……なんか、心配してたのが馬鹿らしくなってきた……。
「それに、竜族は相手の悪意を見抜く眼を持ってるから、本当の悪人ならそもそも助けてすらないから。安心して」
「ひぇっ……!」
それって、僕が悪い人だったら今頃潰れたトマトに……い、いや、考えないでおこう……。
そのまま暫く歩き続けると、他の樹木よりも巨大な樹木の前まで来た。多分、僕が百人くらいいても、囲えないくらいぶっといんじゃないかな……?
その樹木の根っこと根っこの間に、中に通じるような穴と、人工的に作られた階段があった。もしかして、竜の谷にいるドラゴンって、地下に住んでるの……?
……な、なんか緊張する。もしニーナが嘘をついてて、僕を食べようとこんな所に連れて来たとしたら……。
「……あれ? ルシア、どうしたの?」
っ……ええいっ、ここまで来たら信じるしかないでしょ、僕! どうせ逃げても、竜族から逃げられるわけないんだし!
「……何でもないよ。行こう」
「むふふ~。きっとビックリするよ~」
ニーナがいたずらっ子のような顔をする。どんな場所に連れて行かれるんだろう……。
「《フラッシュ》」
「わっ……!?」
に、ニーナの手が光って……!?
「ルシア、魔法初めて見た?」
ま、魔法……?
……あ、確かどこかで聞いた事がある。世の中には、魔法って呼ばれる非現実的な力を使う人達がいるって。何も無い所から火を付けられるし、水を出せるらしいけど……こうして見るのは、初めてだ……。
「う、うん……」
「ま、そうだよねぇ。人間にも魔法を使える人間はいるみたいだけど、本当に極小数って聞いたことがあるし……見た事ないのも当然か。さ、着いてきて!」
ニーナが前を行き、螺旋状になっている階段をずーーーっと下っていく。
……長い。本当に長い階段だ……。
どれくらい下って行ったか分からなくなるくらい下っていくと、急に視界が開けた。
「ふっふー。どう、この光景!」
ニーナの指差す方に目を向ける。
「ぇ……空……?」
下って来たはずなのに……何で空が……?
「どう? どう? 凄いでしょ?」
「……凄い、けど……これも魔法?」
「ううん。ここは異次元って呼ばれる場所で、次元と次元の間に存在する全く別の次元なの。数万年前、初代竜王様が放ったブレスで次元が捻れて、この場所が出来たって言われてるんだ」
…………よく分からないけど、何となく凄いっていうのは分かった。
草木の生えていない荒野を歩く。結構長い間歩いたけど、まだ着かないのかな?
「ニーナ、ここってどれくらい広いの?」
「え? うーんどうだろ……正確には分からないけど、多分ヒューリア大陸と同じくらいじゃないかな?」
「ヒューリア大陸って?」
「君の住んでるこの大陸だよ!」
住んでる? どういう事?
首を捻ってると、ニーナは何かを察したような顔をした。
「そっか……ルシア、そう言うのを教えてくれる人っていなかったんだっけ……」
「……ごめんね、なんか……」
「ううん。私の方こそ、配慮が足りなかったよ。ごめんねぇ」
ニーナが僕の頭を優しく撫でる。……思い返してみれば、こうして撫でられるのも初めて……かな……? ちょっと恥ずかしい……。
「そ、それで、ヒューリア大陸って?」
「あ、うん。ルシア達人間が住んでる大陸の事だよ。他にもドワーフ、エルフ、オーガ達亜人族が住んでるマテニア大陸。魔人や魔族の住んでるアクレチア大陸がある。ヒューリア大陸はその中でも、トップクラスに大きい大陸なんだよ」
そ、そうなんだ……この世界には色んな物があるんだね……。
……実際、ヒューリア大陸の大きさは全く分からないけど……いつか分かると良いな。
「あ、見えたよ! 私達の集落が!」
「……大きい……」
なんと言うか……ここから見えるだけでも、裕福層が住んでる東地区以上に発展してるように見える。これ、集落と言うより街……いや、都市くらいはあるんじゃ……。
「竜の集落は、長い間を掛けて外の世界から良いものを取り入れて行ってるんだ~。今ここは、外の世界でいうとレゼンブル王国の中央都市くらい発展してるんだよ」
レゼンブル王国は聞いたことがある。確か、僕の住んでる街もレゼンブル王国の領土だったはず。そこの中央都市と同じくらいって……とんでもない大きさなんじゃ……。
「……集落って言うくらいだから、もっとこじんまりとしたものだと思ってた……」
「名前は特に無いよ。ただ昔から集落って言ってたから、みんな竜の集落って呼んでるだけ。さ、早く行こう!」
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