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第三章・聖女養成学園
悪魔のキスは終わりの始まり2
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「ギルタレスっ……」
思いがけないことに驚いた。悪魔が人間を守るなんてあり得ないのだ。
でも今は私も至近距離で鷲掴まれている悪魔を凝視した。
「この悪魔、いったいなんなの……?」
この悪魔はたしかに瀕死だった。浄化の炎で焼却して討伐は終わるはずだったのだ。
しかし浄化の炎のなかで爆発的な動きを見せた。それはブタがトラを捕食した時も同じだった。偶然は二度も起こらない。
その時。
「……不快だ」
底冷えするような低い声。
ハッとして見るとギルタレスの赤い瞳に怒りが帯びていた。
そして、――――ドンッ!!!!
ギルタレスが鷲掴んでいた悪魔を地面に叩きつけ、片足で踏んで押さえつける。
「キッ、ギーーー!! ギーーーーー!!」
しかし瀕死のはずの悪魔は奇声をあげて暴れまわっていた。
なにかに操られているかのように、盲信しているかのように。
その異様な不気味さに私の疑問は深まり、ギルタレスの怒りが濃くなっていく。
ギルタレスの殺気に空気が震撼し、悪魔を踏みつけている足にギリギリと力をこめる。まずい、殺す気だ!
「待って! ここで殺すな!」
ここには講師がいる。ここでギルタレスに戦わせることはできない。
もし講師にギルタレスを見られたら面倒なことになる。
慈悲の聖女クレディアはあくまで密命としてギルタレスの力を利用しようとしているだけで、表沙汰にする気はさらさらないのだ。
「ああ? 邪魔すんな」
「ここで暴れないで」
「邪魔すんなっつってんだろ」
「暴れるなって言ってるのよ」
ジャリ……。
鎖を出現させた。鎖の先にはギルタレスの首輪。
グイッと引き寄せるとギルタレスが忌々しげに私を睨む。
「奴隷のくせに、なに舐めた真似してんだ」
「あなたこそ奴隷のくせになに舐めた真似してんの? それとも命令した方がいい?」
そう言って鎖を握りしめ、ギルタレスと睨みあう。
対峙するのは地獄の盟主・強欲の王。でも一歩も引かない、怯まない。悪魔相手に弱味は見せない。
そんな私に少ししてギルタレスが小さく舌打ちした。
「それなら俺の力で始末させろ」
「は?」
意味が分からなかった。
私は戦うなと言ったのにいったいなにを……。
言い返そうとした、その時。
――――ガシリッ!
突然、顎を鷲掴まれた。大きな影が視界を覆って、そして。
「んっ!? ……ぅ」
唇が強引に塞がれた。
有無を言わせぬ奪うようなキス。
突然のそれに目を見開くと、ギルタレスの赤い瞳に映る自分が見えた。
離れようと抵抗するも、顎を掴まれた手はびくともしない。
至近距離で睨みあったまま角度を変えて深く唇を重ねられ、口内を舌で蹂躙された。
「っ、う……ぁ」
思わず声が漏れる。
するとギルタレスがしてやったりと目を細めた。
「もっといい声で鳴いたらどうだ。っ……!」
「今すぐ殺す!!」
唇が離れた瞬間、ギルタレスの顔面に殴り掛かる。
即座の攻撃にギルタレスは身を引いて避けるも、すぐに距離を詰めて脇腹に肘打ちを一撃。ドゴッ!!
「ぐっ……」
脇腹を抉る一撃にギルタレスが一歩下がる。
その隙にもう一撃攻撃しようと踏み込むも、ピタリッ。自分の力に違和感を覚えて動きを止めた。明らかに威力が増している。
「…………私になにしたの?」
低い声で聞いた。
……おかしい。腹の奥から自分以外の力を感じる。凶暴なほど荒々しい力を。
そんな私にギルタレスがニヤリと笑う。
「一時的に俺の力を与えた。有り難く思え」
「ふざけるな!!」
間髪入れずに回転蹴りを入れる。
寸前でガードされるも二発三発と連続して蹴りを繰り出していく。
ああムカつく、こうして攻撃していると否が応にも気付く。威力と速さが桁違いに上がっていることを。
「怒るなよ、初めてだったか? 型破りな聖女候補だと思ってたが、少しは可愛げあるじゃねぇか。俺の魔力の供給に耐えるとは、さすが門を開けただけはある。誉めてやろう」
避けながらギルタレスが面白そうに笑った。
ああムカつくムカつく。ムカつくムカつくムカつくムカつく。
イライラしながら連続回転蹴りを決める。
攻撃を避けまくるギルタレスにもムカつくけど、それ以上にムカつくのはっ。
「ああやばい、ほんとムカつく! ――――だってこれ、使えるじゃない」
そう言って、グイッ! 素早くギルタレスの胸ぐらを掴んで引き寄せた。
そして。
「っ!」
今度はギルタレスが目を丸める。
当然だ、私からキスしたのだから。
至近距離のギルタレスを見据えたままキスして、少しして唇を離す。ついでに引き寄せていた胸ぐらもポイッと捨てた。
「なるほど、悪魔ってこれで魔力供給するの。悪魔らしい即物的な方法ね」
「なるほどじゃねぇだろ! 勝手なことしてんじゃねぇ!」
「先に勝手をしたのはあなたの方じゃない」
「ああ? キスもしたことねぇ処女のくせに笑わせんな!」
「それがなに? べつに恋愛してるわけじゃないでしょ。悪魔の癖にキスだの処女だの有り難がるなんて可愛げあるじゃない。そのままでいてね、ペットは可愛いほうがいいから」
薄ら笑いで言い返した
キスがなんだ。
キスの一つや二つで力を得られるなら安いものだ。
たとえその強さが悪魔のものだろうと関係ない。純然たる強さは欲しいものを手に入れる手段だ。
そう、強さは私に自由を約束する。
私は足元に倒れている瀕死の悪魔を見下ろした。
浄化の炎よりも圧倒的な力で消滅させる。その方が手っ取り早い。なにより今、それをするだけの力が私にはある。
思いがけないことに驚いた。悪魔が人間を守るなんてあり得ないのだ。
でも今は私も至近距離で鷲掴まれている悪魔を凝視した。
「この悪魔、いったいなんなの……?」
この悪魔はたしかに瀕死だった。浄化の炎で焼却して討伐は終わるはずだったのだ。
しかし浄化の炎のなかで爆発的な動きを見せた。それはブタがトラを捕食した時も同じだった。偶然は二度も起こらない。
その時。
「……不快だ」
底冷えするような低い声。
ハッとして見るとギルタレスの赤い瞳に怒りが帯びていた。
そして、――――ドンッ!!!!
ギルタレスが鷲掴んでいた悪魔を地面に叩きつけ、片足で踏んで押さえつける。
「キッ、ギーーー!! ギーーーーー!!」
しかし瀕死のはずの悪魔は奇声をあげて暴れまわっていた。
なにかに操られているかのように、盲信しているかのように。
その異様な不気味さに私の疑問は深まり、ギルタレスの怒りが濃くなっていく。
ギルタレスの殺気に空気が震撼し、悪魔を踏みつけている足にギリギリと力をこめる。まずい、殺す気だ!
「待って! ここで殺すな!」
ここには講師がいる。ここでギルタレスに戦わせることはできない。
もし講師にギルタレスを見られたら面倒なことになる。
慈悲の聖女クレディアはあくまで密命としてギルタレスの力を利用しようとしているだけで、表沙汰にする気はさらさらないのだ。
「ああ? 邪魔すんな」
「ここで暴れないで」
「邪魔すんなっつってんだろ」
「暴れるなって言ってるのよ」
ジャリ……。
鎖を出現させた。鎖の先にはギルタレスの首輪。
グイッと引き寄せるとギルタレスが忌々しげに私を睨む。
「奴隷のくせに、なに舐めた真似してんだ」
「あなたこそ奴隷のくせになに舐めた真似してんの? それとも命令した方がいい?」
そう言って鎖を握りしめ、ギルタレスと睨みあう。
対峙するのは地獄の盟主・強欲の王。でも一歩も引かない、怯まない。悪魔相手に弱味は見せない。
そんな私に少ししてギルタレスが小さく舌打ちした。
「それなら俺の力で始末させろ」
「は?」
意味が分からなかった。
私は戦うなと言ったのにいったいなにを……。
言い返そうとした、その時。
――――ガシリッ!
突然、顎を鷲掴まれた。大きな影が視界を覆って、そして。
「んっ!? ……ぅ」
唇が強引に塞がれた。
有無を言わせぬ奪うようなキス。
突然のそれに目を見開くと、ギルタレスの赤い瞳に映る自分が見えた。
離れようと抵抗するも、顎を掴まれた手はびくともしない。
至近距離で睨みあったまま角度を変えて深く唇を重ねられ、口内を舌で蹂躙された。
「っ、う……ぁ」
思わず声が漏れる。
するとギルタレスがしてやったりと目を細めた。
「もっといい声で鳴いたらどうだ。っ……!」
「今すぐ殺す!!」
唇が離れた瞬間、ギルタレスの顔面に殴り掛かる。
即座の攻撃にギルタレスは身を引いて避けるも、すぐに距離を詰めて脇腹に肘打ちを一撃。ドゴッ!!
「ぐっ……」
脇腹を抉る一撃にギルタレスが一歩下がる。
その隙にもう一撃攻撃しようと踏み込むも、ピタリッ。自分の力に違和感を覚えて動きを止めた。明らかに威力が増している。
「…………私になにしたの?」
低い声で聞いた。
……おかしい。腹の奥から自分以外の力を感じる。凶暴なほど荒々しい力を。
そんな私にギルタレスがニヤリと笑う。
「一時的に俺の力を与えた。有り難く思え」
「ふざけるな!!」
間髪入れずに回転蹴りを入れる。
寸前でガードされるも二発三発と連続して蹴りを繰り出していく。
ああムカつく、こうして攻撃していると否が応にも気付く。威力と速さが桁違いに上がっていることを。
「怒るなよ、初めてだったか? 型破りな聖女候補だと思ってたが、少しは可愛げあるじゃねぇか。俺の魔力の供給に耐えるとは、さすが門を開けただけはある。誉めてやろう」
避けながらギルタレスが面白そうに笑った。
ああムカつくムカつく。ムカつくムカつくムカつくムカつく。
イライラしながら連続回転蹴りを決める。
攻撃を避けまくるギルタレスにもムカつくけど、それ以上にムカつくのはっ。
「ああやばい、ほんとムカつく! ――――だってこれ、使えるじゃない」
そう言って、グイッ! 素早くギルタレスの胸ぐらを掴んで引き寄せた。
そして。
「っ!」
今度はギルタレスが目を丸める。
当然だ、私からキスしたのだから。
至近距離のギルタレスを見据えたままキスして、少しして唇を離す。ついでに引き寄せていた胸ぐらもポイッと捨てた。
「なるほど、悪魔ってこれで魔力供給するの。悪魔らしい即物的な方法ね」
「なるほどじゃねぇだろ! 勝手なことしてんじゃねぇ!」
「先に勝手をしたのはあなたの方じゃない」
「ああ? キスもしたことねぇ処女のくせに笑わせんな!」
「それがなに? べつに恋愛してるわけじゃないでしょ。悪魔の癖にキスだの処女だの有り難がるなんて可愛げあるじゃない。そのままでいてね、ペットは可愛いほうがいいから」
薄ら笑いで言い返した
キスがなんだ。
キスの一つや二つで力を得られるなら安いものだ。
たとえその強さが悪魔のものだろうと関係ない。純然たる強さは欲しいものを手に入れる手段だ。
そう、強さは私に自由を約束する。
私は足元に倒れている瀕死の悪魔を見下ろした。
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