二の舞なんてごめんですわ!

一色ほのか

文字の大きさ
14 / 77
第1章 幼少期(7歳)

13 一つの決断

しおりを挟む
「ええと、それは、無理なのでは……?」

 だって、第一王子よ。のちの王太子よ。
 王籍を抜けるなんて不可能でしょう普通に考えて。
 いくら第二王子スペアがいるとはいえ4つも年が離れているし、相当の問題でもない限り許されないはず。
 レイオス殿下に問題なんてないはずよ。覚えている限りは、だけれど。

「どうしてそう思うのかな?」
「どうして、って……殿下は次代の国王になられるのですから、私がシュベーフェル家を継ぐのなら無理、ですよね?」

 普通に考えて当主と王妃を兼任することはできない。
 それにただでさえシュベーフェル家は要らない者の排除から始めてまともな人材を選んで集めなければならないのよ。
 それ以前に、王族なんてこりごりだわ。王妃という座も魅力的には見れない。
 レイオス殿下が嫌なわけではないのだけれど。
 第二王子の伴侶という立場であれほどの教育があったのだもの、王妃の教育はそれよりも大変なのでしょう?
 今は前とは状況が違う、あれ以上の教育を耐えきるモチベーションはないわね。

「なれないよ」
「はい?」
「私は王にはなれない。聖属性を持っていないから。聖属性は産まれた瞬間に分かるんだ」
「え、そんな、」

 そんなはずない。

 そう言おうとして、言えなかった。
 レイオス殿下の目に、誤魔化し切れていない諦めの色が見て取れてしまったから。

 レイオス殿下は本気で言っている。
 それが、分かってしまった。

 この国の頂点たる王は聖属性を持つ者。

 建国王により定められ、ずっとそう在ってきた。
 習わしであり、確固たるもの。

 だけど、でも。
 私はレイオス殿下が王太子になる未来を知っている。

「聖属性、とは。生まれつき以外、ありえないのですか?突然目覚めるなんてこと、」
「ないよ。何故なら聖属性は親から子へ移るものとほぼ断定されている。そしてその時代に一人しか存在しない。今代はロバート……弟だ」
「そんなっ!」

 あのロバート殿下が聖属性持ち?次期国王?
 ならどうしてレイオス殿下が王太子として正式に発表されたの?

 私は次期シュベーフェル家当主。ロバート殿下はシュベーフェル家に入る。確かなこととして決まっていたことよ。
 だけど今知ったことが前も事実だったのなら、考えられることは。

 囮。
 或いは、別の者――この場合はロバート殿下――を正当化するための、犠牲。

 思いついた予想に背筋に冷たいものが走った。
 7大貴族内の不破も合わせれば信憑性があまりにも高すぎる。

 ただ、望まれた属性がない。
 それだけの理由で?

「そんなこと、酷過ぎる……っ!」

 じわりじわりと涙が溢れてくる。

 酷い。酷過ぎるわ。レイオス殿下は何も悪くないのに。
 そうであるとは限らない。違う可能性は十分にある。
 だけどレイオス殿下は王族だ。王にはどうしたってなれない王族。
 諦めの色の目、きっとレイオス殿下は全て理解している。
 それでも王族として役目を果たそうとしたのなら。

 どうしてこんなにも王に相応しい方が王になれず、あんな簡単に人を裏切るロバート殿下が王になるの。
 そんなのってない。
 あんまりだわ!

「君は私のために泣いてくれるんだね」

 いつの間にか隣に来ていたレイオス殿下が、ハンカチを差し出してきた。
 それをありがたく受け取り、目元と頬を拭う。

 私、決めたわ。
 今の自分に一体何ができるかは分からない。
 けれど、レイオス殿下の味方になろう。

 これは私にとっても悪い選択ではないはずよ。ただの保護なら立場は下、でも婚約者なら対等に近い。
 いずれ危険があるだろうけれどその時はその時よ。今もさして変わらないもの。

「分かりました。不肖の身ながらレイオス殿下のお役に立てるよう尽力いたします」
「ありがとう。属性に恵まれなかった者同士、よりよい未来のために手を尽くそう」

 そう言って微笑むレイオス殿下。

 そういえば、そうね。私達、そんな共通点があったんだわ。
 属性に恵まれなかった。本当にそう。
 レイオス殿下の状況と比べるのは天と地の差があるかもしれないけれど……きちんと光属性を持っていたなら。何度思った事だろう。
 でも無理ね。生まれ持ったものだもの。この青い髪も。

 ……あら?ちょっと待って?

「あの、レイオス殿下。一つ聞いても良いですか?」
「うん?いいよ、なんだい?」
「第二王子殿下は鮮やかな赤い髪と聞いています。属性は、火だと。属性は、色に出るのではないのですか?」
「ああ、そこが気になっちゃったか。そうだよね、君はシュベーフェルの金ではなく青だから気付いちゃうか。でも答えは簡単だよ。聖属性は第二属性として現れるというのが通説だ」
「第二属性……そうなのですね」

 確かに第二属性なら色はあまり意味を持たなくなるわ。

「でも、生まれつきなのにそちらが第一属性ではないのですね」
「そうだね。その理由も良く分かっていない。神のみぞ知る、と伝わっている」

 つまり分からないということね。


 それにしても、神のみぞ、か。
 時間が巻き戻ってからどうも、神の存在を突き付けられるようなことばかり起きている。
 何かが起きようとしているのかもしれない。前は起きなかった、何かが。
 単純に恐ろしいわ。今の自分には前に持っていた水属性すらない。
 それでも前とは何もかもが変わった。それを希望に前とは違う未来を掴み取ってみせる。

 今度は誰にも負けたくない。お父様にもお婆様にもロバート殿下にもイヴリンにも。

 レイオス殿下にもよ。
 ただ利用されるだけなんてまっぴらごめんだわ。


「この後のことだけど、一緒に来てほしいところがあるんだ」
「あ、はい。同行いたします」
「うん。流石にちゃんと報告しないと不味いからね。準備を終えたら呼びに来るから待っていて」
「……はい」

 ………………。

 行く先ってもしかしなくても、よね。
 報告って言ったもの。しなければ不味いと。

 つまり、よ?
 確実に行き先は王城で、報告する相手、といえば……一人、では?

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

お嬢様レディース ~超お嬢様達がレディースをつくったら、最強のやりたい放題のチームになりましたわ~

猫のチャイ
キャラ文芸
 表紙は、アルテミス総長の雅がイメージです。第9回キャラ文芸大賞 にエントリー中 あけましておめでとうございます。 New 210話 あかね スキー風景  206話に アルテミス彩イメージ画像 202話にあかねの正月弓通しイラスト93話 94話に 雅 と あかね のサンタイラスト 16話 19話に 木田宗子イラスト 1話目に三条雅の登校シーン 11話目に三条雅の特攻服シーン  12話目に宮部梓の夜の制服シーン 15話目に宮部梓の特攻服イラストを載せてます。イラストだけでも見てください。 東北サーキット編は、いよいよレース編へ、斜め上の考えで、史上最大規模のレースへ。 走る意味、プロとアマの違い。レースを通して日本のモーターサイクルを世界にがテーマになっています。 レディースって淑女じゃなかったのですか? 勘違いから超お嬢様が、仲間とともにレディースを結成。 前代未聞の財力とななめ上の思考力で最強のレディースを結成。 私は、覇道でもなく王道でもなく、我道でいきますわ。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

処理中です...