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第1章 幼少期(7歳)
32 庭の散策
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色々と複雑で表には出せない事情を持っていたミカエラは、当初とは違い侍女ではなく従者になった。
両性を持つ以上、侍女にはなれないから仕方ないわね。
けれど女性として育てられ、教育も貴族女性のものだったミカエラは、これからは貴族男性としての教育も受けなければならなくなった。侍女としての教育しか受けていないから、従者としての教育も同じ。
本人の希望なのか上からの命令なのか、どちらでも通用するようにすると決めたみたい。
つまり、一気に忙しくなってしまったということ。
「すみません、お嬢様。お嬢様の従者ですのに、殆どお傍に居られず……」
「必要な教育だから、仕方ないわ。私も可能ならそうした方がいいと思うもの」
「はい」
私の従者、となっているけれど、それ以前にイース様の部下だし。
優先されるのはそちらの事情よね。
新しい侍女は探しているようだけど、今のところ見つかっていないそう。あの条件ではね。
いっそこちらで教育することにして、下級貴族の三女、四女あたりを引き取る方が効率的かもしれないわ。
家を継ぐ長子以外はスペアや駒として作ったものの要らない、みたいなところ、探せばあると思う。
なんてことをマイルドにして伝えてみたら、ミカエラが納得顔で報告しておきます、と言っていたからそうなるかもしれないわね。
だとして、使えるようになるのは当面先でしょうけれど。
とりあえずは離宮の侍女やメイド達で問題ないから私としてはそこまで急がなくていいわ。イース様側としてもシュベーフェルの屋敷に帰るまでにどうにかなればいいはず。
いつ帰れるかは、分からないけれど。
いつまでもここに留まれないということは分かっている。
調査って今、どうなっているのかしら……。
「どうかなされましたか?何かお気にかかることでも」
ふう、と小さく零した溜め息を拾ったらしく、年嵩の侍女が聞いてくる。
彼女はスージーといって、カトリーナが居なかった最初の時に世話をしてくれた侍女だ。多分ここの侍女の中では上位の人物だと思う。
だって髪と目の色が深い青……恐らく王妃殿下の生家であるアンヴァーグ家の出身じゃないかしら。
「調査の状況はどうなっているのかしら、と思って。レイオス殿下もお忙しそうで、きっととても大変なことになっているのだろうと……申し訳ないわ」
「お嬢様にはなんの非もありませんもの、ご心配なされずとも大丈夫です。そうですわ、気分転換にお庭の散策など如何でしょう」
「散策?そうね……窓から見えるお庭はとても見事だから、一度出てみたいとは思っていたの」
「でしたら、是非に。準備をいたしますので少々お待ちください」
「ええ」
何故か庭に出ることになったわ。
ずっと部屋かイース様の執務室のどちらかにしか行けなかったから、外に出られるのは嬉しいのだけれど……向こうからの提案だから、何かあるかもしれない。
警戒しておいて損はないでしょう。
「庭内の至る所に騎士を配置しておりますが、あまり遠くへは行かれませんよう。それから、あちらの一角は立ち入り禁止となっておりますので近付かれないようお伝えします」
「分かりました」
用意された日傘を手に、庭を見回す。
スージーはメイド達とお茶の準備をしていてついては来ないようだ。
確かにどこを見ても騎士が目に入るくらい居るから、目を離しても大丈夫ってことかしら。
まあ……ミカエラはいないけれど、テッドはいるものね。
「何か気になる花などありますか?詳しくはありませんが、多少なら説明もできます」
「そうなのですね。では、あちらから順に教えてもらえますか?」
「はい」
テッドが私をエスコートし、庭をゆっくりと進んでいく。
普通なら、イース様の役割よね。これ。
私が仕事を増やしてしまった結果側近に役割を取られるって。いえ、タイミングもあったんでしょうけれど。少し罪悪感があるわ。
私は悪くないけれど。
「……あら?ねえテッド、あの紐は一体?」
「紐?……ああ、あれは立ち入り禁止の場所ですよ。先程騎士が言っていたでしょう?」
「はい。何か、あったのですか?」
「さあ?実は私もよくは知りません。人伝に聞いた話では殿下がお生まれになられるよりも前に何かあったらしい、とだけ」
「そうなの」
何かしら。
なんだか、引かれるものがある。
あそこに行かなければならない――――そんな気が、する。
「ん?……分かりました。シュベーフェル嬢、お疲れではありませんか?お茶の準備ができたようです」
「っあ、はい。行きましょう」
そう言われ、慌てて、でも不自然にならないように返す。
多分、気付かれはしなかったと思う。気付いてたら追及するわよね?
なんとなく後ろ髪を引かれる感覚を残しながら、その場を離れた。
分からない。
どうして……?
両性を持つ以上、侍女にはなれないから仕方ないわね。
けれど女性として育てられ、教育も貴族女性のものだったミカエラは、これからは貴族男性としての教育も受けなければならなくなった。侍女としての教育しか受けていないから、従者としての教育も同じ。
本人の希望なのか上からの命令なのか、どちらでも通用するようにすると決めたみたい。
つまり、一気に忙しくなってしまったということ。
「すみません、お嬢様。お嬢様の従者ですのに、殆どお傍に居られず……」
「必要な教育だから、仕方ないわ。私も可能ならそうした方がいいと思うもの」
「はい」
私の従者、となっているけれど、それ以前にイース様の部下だし。
優先されるのはそちらの事情よね。
新しい侍女は探しているようだけど、今のところ見つかっていないそう。あの条件ではね。
いっそこちらで教育することにして、下級貴族の三女、四女あたりを引き取る方が効率的かもしれないわ。
家を継ぐ長子以外はスペアや駒として作ったものの要らない、みたいなところ、探せばあると思う。
なんてことをマイルドにして伝えてみたら、ミカエラが納得顔で報告しておきます、と言っていたからそうなるかもしれないわね。
だとして、使えるようになるのは当面先でしょうけれど。
とりあえずは離宮の侍女やメイド達で問題ないから私としてはそこまで急がなくていいわ。イース様側としてもシュベーフェルの屋敷に帰るまでにどうにかなればいいはず。
いつ帰れるかは、分からないけれど。
いつまでもここに留まれないということは分かっている。
調査って今、どうなっているのかしら……。
「どうかなされましたか?何かお気にかかることでも」
ふう、と小さく零した溜め息を拾ったらしく、年嵩の侍女が聞いてくる。
彼女はスージーといって、カトリーナが居なかった最初の時に世話をしてくれた侍女だ。多分ここの侍女の中では上位の人物だと思う。
だって髪と目の色が深い青……恐らく王妃殿下の生家であるアンヴァーグ家の出身じゃないかしら。
「調査の状況はどうなっているのかしら、と思って。レイオス殿下もお忙しそうで、きっととても大変なことになっているのだろうと……申し訳ないわ」
「お嬢様にはなんの非もありませんもの、ご心配なされずとも大丈夫です。そうですわ、気分転換にお庭の散策など如何でしょう」
「散策?そうね……窓から見えるお庭はとても見事だから、一度出てみたいとは思っていたの」
「でしたら、是非に。準備をいたしますので少々お待ちください」
「ええ」
何故か庭に出ることになったわ。
ずっと部屋かイース様の執務室のどちらかにしか行けなかったから、外に出られるのは嬉しいのだけれど……向こうからの提案だから、何かあるかもしれない。
警戒しておいて損はないでしょう。
「庭内の至る所に騎士を配置しておりますが、あまり遠くへは行かれませんよう。それから、あちらの一角は立ち入り禁止となっておりますので近付かれないようお伝えします」
「分かりました」
用意された日傘を手に、庭を見回す。
スージーはメイド達とお茶の準備をしていてついては来ないようだ。
確かにどこを見ても騎士が目に入るくらい居るから、目を離しても大丈夫ってことかしら。
まあ……ミカエラはいないけれど、テッドはいるものね。
「何か気になる花などありますか?詳しくはありませんが、多少なら説明もできます」
「そうなのですね。では、あちらから順に教えてもらえますか?」
「はい」
テッドが私をエスコートし、庭をゆっくりと進んでいく。
普通なら、イース様の役割よね。これ。
私が仕事を増やしてしまった結果側近に役割を取られるって。いえ、タイミングもあったんでしょうけれど。少し罪悪感があるわ。
私は悪くないけれど。
「……あら?ねえテッド、あの紐は一体?」
「紐?……ああ、あれは立ち入り禁止の場所ですよ。先程騎士が言っていたでしょう?」
「はい。何か、あったのですか?」
「さあ?実は私もよくは知りません。人伝に聞いた話では殿下がお生まれになられるよりも前に何かあったらしい、とだけ」
「そうなの」
何かしら。
なんだか、引かれるものがある。
あそこに行かなければならない――――そんな気が、する。
「ん?……分かりました。シュベーフェル嬢、お疲れではありませんか?お茶の準備ができたようです」
「っあ、はい。行きましょう」
そう言われ、慌てて、でも不自然にならないように返す。
多分、気付かれはしなかったと思う。気付いてたら追及するわよね?
なんとなく後ろ髪を引かれる感覚を残しながら、その場を離れた。
分からない。
どうして……?
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