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第1章 幼少期(7歳)
47 イース様の異変
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翌日。
早々にイース様に先触れを出し、時間を取ってもらった。
いつまでも私一人で抱えていていい情報じゃないもの。
「おはようございます、お嬢様。殿下が執務室でお待ちです」
「ええ、ありがとう」
今日は久々に、ミカエラが朝からいる。丸一日離宮にいるそうだ。詰め込み過ぎるのも良くないということらしいわ。学園も休んだみたい。
……学園と言えば。
「ねえミカエラ、イース様って学園に通っていらっしゃる?」
「もちろん通っていらっしゃいますよ?今はこちらに詰めていらっしゃいますが」
「ええと、大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ」
にっこりと笑うミカエラ。
……学習内容をきちんと理解していてテストでも然るべき成績を残していればまあ大丈夫なんでしょうけれど、王子が学園内に居ない、というのも問題な気がするけれど。
それくらい分かっていると思うし、どうにか誤魔化しているのかしら。替え玉とか、王族ならいるわよね多分。
「昨日はすまないね。あの後、もう少し節度を保てと咎められたよ」
「当然の事かと」
「ちょっとした触れ合いじゃないか」
「ちょっとしたですまさない頭のおかしい者もいるんです」
頭が痛そうな様子で話すテッド。
昨日のあの顔の原因はそれだったのね。
確かに子供同士のありふれた交流でも邪推する者はいるわ。
私とイース様の場合邪推とはちょっと違うでしょうけれど。
イース様におかしな噂が立っても困るから、過剰な触れ合いはない方がいいと考えたのでしょう。それには私も賛成だわ。
というかああいうのは私もちょっと遠慮したいわ。
……と、考えていたのだけれど。
どうして私は、イース様の膝の上に座らされているのかしら??
「あの……」
「ん?」
「……えっと」
「……………………致し方ないかと」
長い沈黙がテッドの心情を物語っていた。
そうね。昨日も咎められて今も言われたのにこれだものね。
ミカエラはにこにこと笑っているだけで動く気もないみたいだし。
イース様が何を考えているのか分からないわ。
突然至近距離の接触が増えたのは、何故?何か理由があるのかしら。
……そういえば、学園で思い出したけれど。外の情報が一切入ってきていない。
今、私は外の者達からどう見られているのかしら。ちょっと気になってきたわ。
この話の後、それとなく聞いてみましょう。
「ええと、はい。お話しします。例の資料についてなのですが、とんでもないことと言いますが、大変なことが書いてありました」
「ふむ。一体どんな内容なんだい?」
「はい。決して、全てが正しいとは限らないのですが……建国王様が、今でいうところのイグニアス家の産まれであること。属性か適正職業のことで生家を勘当されていたこと。そして……生家とのいざこざが原因で、当時の王朝を亡ぼすに至った、ということが書かれていました」
「なっ!?」
「そんな……!?」
テッドとミカエラが驚きの声を上げる。
そうよね、驚くのは当然よ。
つまりイグニアス家がこの国の王族の血筋の大元で、かつ、前の王朝を滅ぼした大罪を持つ、ということなんだもの。
こんなこと、世には当然出せないわ。
あの老紳士の口を魔法で縛ってまで塞いだのも、イグニアス家からしたら当然の処理だったのでしょう。
仮にこれが間違いであっても、これをイグニアス家の者が世に出すのは不味い。内部告発みたいになるもの。
ただ、ここまでの情報となると何故彼と資料が処分されなかったのかが気になるわね。
「っ、……イース様?イース様!」
不意に。
不意に、イース様が私を抱き締める力が強くなった。痛みを感じるほど。
どうしたのかと見上げると、イース様はごっそりと感情が抜けたような無表情で、真っ青な顔色をしていた。
明らかに異常な状態に私は焦り、どうしたらいいか分からず、とにかくこの顔色は不味いと隠すようにその頭ごとイース様を抱き締めた。
いや、何してるの、私。
隠すにしたってこれは許可も無く触れて不敬になるのではない!?
そう頭では思っても、どうしたらいいか分からず。
周りでテッドとミカエラがわたわたしているのは分かったけれど、そのまま抱き締めていた。
「……アーシャ、もういいよ」
しばらくして、落ち着いたらしいイース様が声をかけてきた。
恐る恐る離れてみると、何かとっても複雑そうな困ったような顔をしている。
ただ先程のような顔色ではないから大丈夫そう。
「大丈夫なのですか?」
「ああ……、何故か分からないけど、私とイグニアス家は異常なほど相性が悪くてね。昔からあの家の話になるとおかしな反応をしてしまう」
「それは……今のような状態を指すのならば、おかしいのでは」
「そうだね。分かってはいるんだけど原因が分からない。一つ考えられるのは、私が昔から火に対して強いトラウマを持っていることだけど。よくないのは分かっているけれど、どうしようもなくてね」
疲れたように話すイース様。
イース様に火に対するトラウマがあったなんて、初めて知ったわ。
今のイグニアス家の話題でああなってしまったのは、イグニアス家から火を連想してしまったからなのかしら。
だとしたら、とても大変だと思う。それだけ火に対するトラウマが強いということでしょう?
「そうなのですね……私でよろしければ、傍に居ります」
「……。ふふ、ありがとう。そうだね、こうして傍に居てくれたら嬉しい」
背中に腕を回されて、ぎゅっと抱き締められる。
それから身体を離されて、膝の上から降ろされた。
「少し休むことにするよ。アーシャは部屋に戻るといい」
「はい。どうかよくお休みください」
回復したとはいえ、さっきの顔色は相当悪かったものね。
私が居てはきちんと休めないでしょうし。部屋に戻りましょう。伝えるべきことは伝えたのだし。
ミカエラを伴い、執務室を後にする。
何かあったら呼び出しがあるでしょうし、今日は部屋でミカエラとお話でもしようかしら。
早々にイース様に先触れを出し、時間を取ってもらった。
いつまでも私一人で抱えていていい情報じゃないもの。
「おはようございます、お嬢様。殿下が執務室でお待ちです」
「ええ、ありがとう」
今日は久々に、ミカエラが朝からいる。丸一日離宮にいるそうだ。詰め込み過ぎるのも良くないということらしいわ。学園も休んだみたい。
……学園と言えば。
「ねえミカエラ、イース様って学園に通っていらっしゃる?」
「もちろん通っていらっしゃいますよ?今はこちらに詰めていらっしゃいますが」
「ええと、大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ」
にっこりと笑うミカエラ。
……学習内容をきちんと理解していてテストでも然るべき成績を残していればまあ大丈夫なんでしょうけれど、王子が学園内に居ない、というのも問題な気がするけれど。
それくらい分かっていると思うし、どうにか誤魔化しているのかしら。替え玉とか、王族ならいるわよね多分。
「昨日はすまないね。あの後、もう少し節度を保てと咎められたよ」
「当然の事かと」
「ちょっとした触れ合いじゃないか」
「ちょっとしたですまさない頭のおかしい者もいるんです」
頭が痛そうな様子で話すテッド。
昨日のあの顔の原因はそれだったのね。
確かに子供同士のありふれた交流でも邪推する者はいるわ。
私とイース様の場合邪推とはちょっと違うでしょうけれど。
イース様におかしな噂が立っても困るから、過剰な触れ合いはない方がいいと考えたのでしょう。それには私も賛成だわ。
というかああいうのは私もちょっと遠慮したいわ。
……と、考えていたのだけれど。
どうして私は、イース様の膝の上に座らされているのかしら??
「あの……」
「ん?」
「……えっと」
「……………………致し方ないかと」
長い沈黙がテッドの心情を物語っていた。
そうね。昨日も咎められて今も言われたのにこれだものね。
ミカエラはにこにこと笑っているだけで動く気もないみたいだし。
イース様が何を考えているのか分からないわ。
突然至近距離の接触が増えたのは、何故?何か理由があるのかしら。
……そういえば、学園で思い出したけれど。外の情報が一切入ってきていない。
今、私は外の者達からどう見られているのかしら。ちょっと気になってきたわ。
この話の後、それとなく聞いてみましょう。
「ええと、はい。お話しします。例の資料についてなのですが、とんでもないことと言いますが、大変なことが書いてありました」
「ふむ。一体どんな内容なんだい?」
「はい。決して、全てが正しいとは限らないのですが……建国王様が、今でいうところのイグニアス家の産まれであること。属性か適正職業のことで生家を勘当されていたこと。そして……生家とのいざこざが原因で、当時の王朝を亡ぼすに至った、ということが書かれていました」
「なっ!?」
「そんな……!?」
テッドとミカエラが驚きの声を上げる。
そうよね、驚くのは当然よ。
つまりイグニアス家がこの国の王族の血筋の大元で、かつ、前の王朝を滅ぼした大罪を持つ、ということなんだもの。
こんなこと、世には当然出せないわ。
あの老紳士の口を魔法で縛ってまで塞いだのも、イグニアス家からしたら当然の処理だったのでしょう。
仮にこれが間違いであっても、これをイグニアス家の者が世に出すのは不味い。内部告発みたいになるもの。
ただ、ここまでの情報となると何故彼と資料が処分されなかったのかが気になるわね。
「っ、……イース様?イース様!」
不意に。
不意に、イース様が私を抱き締める力が強くなった。痛みを感じるほど。
どうしたのかと見上げると、イース様はごっそりと感情が抜けたような無表情で、真っ青な顔色をしていた。
明らかに異常な状態に私は焦り、どうしたらいいか分からず、とにかくこの顔色は不味いと隠すようにその頭ごとイース様を抱き締めた。
いや、何してるの、私。
隠すにしたってこれは許可も無く触れて不敬になるのではない!?
そう頭では思っても、どうしたらいいか分からず。
周りでテッドとミカエラがわたわたしているのは分かったけれど、そのまま抱き締めていた。
「……アーシャ、もういいよ」
しばらくして、落ち着いたらしいイース様が声をかけてきた。
恐る恐る離れてみると、何かとっても複雑そうな困ったような顔をしている。
ただ先程のような顔色ではないから大丈夫そう。
「大丈夫なのですか?」
「ああ……、何故か分からないけど、私とイグニアス家は異常なほど相性が悪くてね。昔からあの家の話になるとおかしな反応をしてしまう」
「それは……今のような状態を指すのならば、おかしいのでは」
「そうだね。分かってはいるんだけど原因が分からない。一つ考えられるのは、私が昔から火に対して強いトラウマを持っていることだけど。よくないのは分かっているけれど、どうしようもなくてね」
疲れたように話すイース様。
イース様に火に対するトラウマがあったなんて、初めて知ったわ。
今のイグニアス家の話題でああなってしまったのは、イグニアス家から火を連想してしまったからなのかしら。
だとしたら、とても大変だと思う。それだけ火に対するトラウマが強いということでしょう?
「そうなのですね……私でよろしければ、傍に居ります」
「……。ふふ、ありがとう。そうだね、こうして傍に居てくれたら嬉しい」
背中に腕を回されて、ぎゅっと抱き締められる。
それから身体を離されて、膝の上から降ろされた。
「少し休むことにするよ。アーシャは部屋に戻るといい」
「はい。どうかよくお休みください」
回復したとはいえ、さっきの顔色は相当悪かったものね。
私が居てはきちんと休めないでしょうし。部屋に戻りましょう。伝えるべきことは伝えたのだし。
ミカエラを伴い、執務室を後にする。
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