執着から始まる

一色ほのか

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 観察を続けていると男性達は店に戻り、あの2人とその人だけが外に残される。
 片方はその人を支えて、もう片方は道路の方へ身を乗り出しきょろきょろと……恐らくタクシーを呼ぼうとしているんだろう。
 あ、ちょうどタイミングよく(悪く?)少し遠くだけど空車のタクシーが居る。……手を振る彼女に反応して近付いてきている。

 …………。

 駄目だ。
 自分の勘を、信じよう。

 ちょうど青に変わった横断歩道を駆け、彼女達の元へ。

 
「貴方達、何をしているの!」
「え?!」
「やばっ、まずいよ!顔見られる前に逃げよ!」
「ちょっ、待ってよ!」
 
 大慌てで2人は逃げていく。タクシーに乗せた男性を置いて。
 言動から、やっぱり碌でもないことをしようとしていたと分かった。
 
 これであの2人、辞めさせられないかな。
 未遂だから無理か?
 
「あの~……?」
「あっと、すみません。駅の、交番前までお願いします」
 
 困ったように声を掛けてきたドライバーにそう言い、タクシーに乗り込む。
 こうなったら私がこの人をどうにかしないといけないもの。
 何か面倒なことになったら困るし、警察に頼るのが一番よね。
 困った時の友人頼み。

 
「お前、変なことに首突っ込むなよ……」
「だって推定加害者がウチの問題ばかり起こす後輩だったんだもの、仕方ないじゃない。ウチに悪影響があると困るし……相手があの2人だけだったからだよ」
「それでも1対2だろ?危ないことはするなよ、マジで」
 
 そう心配そうに言い募る男性警察官。
 簡単に言うと、幼馴染。私の数少ない友人の1人。名前は望月薫もちづきかおるという。
 職業が職業だから頼りになる。年上だし。
 …………あのことは言えないけど。ゲームだし。
 
「相手側とは連絡ついたし、お前まで待つ必要はないぞ?」
「んー、でも、状況説明は必要だろうし。付き合うよ。回収されるまでは」
 
 そんな話をしつつ待つこと暫く。
 
「すみません、お待たせしました」
 
 車で現れたのは、スーツ姿の長髪の男性だった。
 うわぁイケメン。
 で、今だ意識が戻らない例の男性によく似ている。家族か何かかな?
 連絡を取ったのが薫君だからそこらへん、私は分からないけど。
 
「ええと一応、どういったご関係で?」
「親類で、会社の同僚です。……どうぞ」
 
 連絡入れたのに知らないの?と思いつつ眺めていると、男性が私達2人に見せるためだろう、名刺を差し出してきた。
 それを、ちょっと無理遣り気味に私が受け取って、用意しておいた私の名刺を渡す。
 わー怪訝そうな、っていうか嫌そうな顔ー。
 
「では、状況を説明させていただきますね」
「…………はい」
「といいましても、私も全てを見ていたわけではありません。帰宅途中に我が社の後輩でよく問題を起こす2人が明らかに意識のないこちらの方をタクシーで連れて行こうとしていたのがあまりにも怪しかったので、止めに入ったという感じです」
「…………ああ、こちらはつまり貴女方の会社への苦情を入れる為ですか」
「まあ、はい。事情次第では」
「そういうことでしたら有り難く。有栖川天音、さん?」
「はい」
 
 打算有りの誠意ですがね。
 やらかしたのはこっちの(身内とは言いたくない)身内だけど止めに入ったのもこっちだよ、と。
 大きい事件にならないといいな~~~~!
 
「こちらも状況が分かりませんので今はなんとも言えませんが、そちらにも事と次第はお伝えしますので、今日はこのまま回収させていただきます。時間も時間なので」
「そうですよね。では、すみませんがよろしくお願いします」
 
 軽く一礼。
 それに男性は頷いて返すと、男性を回収するためだろう、交番の中へ向かっていった。
 
「大丈夫なのか?」
「分かんない」
「悪いことにならないように祈っとく」
「うん」
 
 なんてぽそぽそ話していたら、呻き声が聞こえて、どうやら男性が目を覚ましたようだ。
 何か小声で話している。
 うん。ちゃんと立てるみたいだし、大丈夫そう。
 
 …………あ、目が合った。
 
 とりあえず曖昧な笑みで頭を下げておく。
 今まで意識がなかったわけだし状況がさっぱり分からないだろうけど、説明は身内にお願いしてほしい。
 私はあくまでも善意の第三者なんで。

 さてじゃあ――――、タクシーで帰るかぁ。
 乗る予定だった電車は、とっくに行ってしまった。
 はあ、痛い出費だ。
 まあ最近出掛けることも減ったし……うん。原因があれすぎるけど。
 
「では、私はこれで失礼しますね」
「ああ、ありがとうございました」
「気を付けて帰れよー」
 
 心配そうな幼馴染に苦笑いで手を振り、その場を後にする。
 すぐにタクシーが捕まるといいんだけど。
 
 今日は疲れたし、ゲームにはログインしないでさっさと寝よう……。
 
 
 
 
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