執着から始まる

一色ほのか

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「これってデフォ、じゃないよね?」
「ああ。必要のない物は売った」

 初めて入った零のマイルームは、なんていうか、殺風景だった。
 一切手を加えていないんだろう、白い無地の壁紙に木目のフローリング。家具はマイルームの収納にアクセスする用の収納棚とベッドだけ。
 確かマイルームはデフォルトでいくつかのインテリア(壁掛けの絵画とかローテーブルとか)が付いているはずなんだけど……売れるんだ、ああいうの。

「マスター、こっちに来い」

 きょろきょろと部屋を見回していると、ベッドの傍で零が私を呼んだ。
 状況的に行きたくない気持ちでいっぱいです。
 でも、土曜日にセックスをしないことを条件に今ここに居るわけだから、行かない訳にもいかないわけで。
 おずおずと、零の傍まで近寄る。
 
「…………お前は」
「え?わっ!?」

 なんだか呆れたような声音で言われたと思ったら、肩に手を乗せられてくるっと身体を回転させられて、後ろから抱き上げられた。
 
「ちょ、なに、」
「少し大人しくしていろ」
「え、わっ……っ」

 一瞬の浮遊感。と、ベッドが軋む音。
 最初何が起きたのかよく分からなかったけど、なんてことはない、零が私を抱えたままベッドに腰を下ろしただけ。
 現状としては、零の膝の上に後ろから抱えるように座らされている状態だ。
 それは、あの日を思い起こさせる――――、
 
「例のアップデートでマイルーム関連が他フィールドから独立化したのは知っているな?」
「それは……、知ってるけど」
「なら、拒否設定にしていても他フィールドと違ってある程度・・・・の接触が可能なのも?」
「知ってる」
 
 公式の情報にあったから、それは知っている。
 今までは他フィールドと同じで軽いスキンシップレベルの接触なら可能だったけど、今は違うんだそうだ。
 他人のマイルームなんて今まで一度も入ったことないから、よく分からないんだけど。
 
「…………分かっていると思うが手を引く、抱き上げるくらいなら外でも可能だ」
「うん。そのはず……」
「なら、ここでできるのはどういったことかと言えば、こういうことだ」
「え?っひゃ!」
 
 唐突に、零の片手が胸に触れる。
 服の上からだけど。
 通常のフィールドでは、故意じゃない場合を除いて胸とか下半身辺りとかは触れないはず。
 つまり、マイルームでのある程度可能っていうのは、その辺りも触れるってこと?
 
「服を脱がすことはできないが触れる。あと」
「っ!? ちょ、え、ちょっと?!」
 
 あっさりと胸の上から手を離したと思ったら、ズボンのボタンを外されて服の中に手を入れてきた。
 待って、うそ、拒否設定なのにそんなことまでできるの!?
 これ、もう、単に触れるなんていう範囲から出てるんじゃ、
 
「服を脱がしさえしなければ中に手を入れて触るくらいはできる。まあサラシを解くのは流石に、…………、…………できたな」
「ぇあっ!?なん、!!?」
 
 解けたサラシが肌を滑って落ちた。

 なんでなんで、なんで?
 拒否設定は?!

 混乱しながらも零の手を服の中から出そうとするも、びくともしない。
 そうやっている間にもその手は動きを止めることなく、素肌を撫でたり胸をやわやわと揉んでいる。
 
「まさか解けるとは。想定以上に色々できる仕様みたいだぞ、マスター。ちゃんと理解していたか?…………してるわけがないよな。条件を付けたとはいえのこのこ着いて来てこうして襲われてるわけだから」
「っ、だってそれはっ、んっ、やッ!」
 
 胸を、その先端を弄りながら、さも私が悪い、みたいに言われた。
 確かに仕様をきちんと理解していなかった私が悪い部分もあるけれど、どう考えてもそれを利用して襲う方が悪いと思う。
 というか公式の『ある程度』ってだけの表記でここまでエロ方面に可能範囲が広がってるなんて分かるわけないじゃない!?
 
「ああ言えば着いてくると分かっていたからな。正直呆れたぞ?あっさりマイルームに入ってきたことも、呑気に部屋を見回していたのも、無防備に近付いてきたのも。拒否の設定にしていようがマイルームに連れ込みさえすればここまで出来るのに」
「っえ、や、っあぁああッッ!」
 
 ズボンの中に手が入り込んできて、下着越しに陰部に触れる。
 そのことに不味いと思うのとほぼ同時に、下着の端から侵入した指がソコに突き挿れられた。
 
「公式の掲示板で注意喚起もされていたんだけどな。性器の挿入の前段階までできるから流されやすい自覚があるプレイヤーはマイルームに入れるな、入るなと」
「そ、ぁっ、知らな、や、あッ!」
「もう一月以上経ってるんだが?どうせお前のことだ、他人のマイルームになんて入らないからどうでもいいと思って調べなかったんだろう。でも、なぁ。俺が思うに、お前は誘い文句が違和感のないものだったら変にも思わないで入ってたんじゃないか?俺以外のプレイヤー相手でも。それで襲われて流されて、設定を変えさせられて犯される。簡単に想像がつくぞ」
「ちがっ、そんなことっ!」
「違わない。お前は考えが甘いし流されやすいからな」
「ちが、ぅ、ンッ!あ、ぁああああッ!」
 
 耳元で自分の浅慮を責められながら、胸の先端をぐりぐりこね回されて、指でソコを乱暴に掻き回されて。
 あり得そうな内容だけど、悪いのは無理矢理手を出してきた零なのに、そのはずなのに、私が悪いのかなって、でもその思いも快感に掻き乱されて、耐えられずにイかされてしまった。
 でも、指はまだ、ナカで動いている。
 
「ゃら、もっ、ぬいて、やあっ!」
「ここまでやって止める奴がいると思うか?それが目的で招き入れてるんだ、俺ならあの手この手で追い詰めて設定を変えさせて存分にレイプするぞ。まあそれは、俺以外のプレイヤーにも、できることなんだが」
 
 言い聞かせるように、わざわざ区切ってそう言われて。
 ここまで出来るのはマイルームの仕様なのだから、誰にだってできるんだって、漸く理解した。

 零以外のプレイヤーでも同じことができる。
 身体を、胸を触られて、ソコを掻き回されて、レイプされる……零以外、に?
 
「やッ!やだ、そんな、やだぁッ!あっ、んんぅッ!」
「なら今後誰に何を言われようと俺以外はマスタールームに入れないし、俺のマイルーム以外に入らないって約束できるよな?」
「ふッ、ん、する、するか、らぁッ」
 
 怖くて嫌で、零の言葉に必死に頷く。
 零以外に触られるなんて考えるのも嫌だった。

 それに、零が哂う気配がした。
 
「いい子だ、マスター。お前は俺のモノなんだから俺以外に触らせるな。いいな?」
 
 胸とソコを弄りながら、耳元で、言い聞かせるように。
 違うって、零のモノじゃないって、言いたいのに。
 
 起こり得ることへの恐怖と快楽に鈍った頭は、頷いてしまった。





「ゔー……」
「なんだ、変な声を出して。最後までしたかったのか?」
「違うけど!?ばか!」
 
 ベッドの上にあった枕を零に投げ付ける。
 普通に受け止められてぽいっとベッドの下に落とされたけど。
 そうなるだろうなって分かってたけど。
 
 …………冷静になって考えれば、すぐに分かった。
 気付いてしまった。
 そもそも単純に、マイルームに誰かを入れたり、誰かのマイルームに入ったりしなければそんな目に遭うことは絶対にあり得ない、って。
 だってマイルーム以外は今まで通り、フィルターさえきっちりと拒否設定にしていれば性的な接触は一切できないままなのだから。 
 仕様を理解した今、私がちゃんと気を付けていれば何の問題も起きようがないんだよ。

 いや、でも、別に零のモノだって認めたわけじゃないし。
 他のプレイヤーに触らせないって方に頷いたんだし。

 ていうか前後不覚の状態で言質取るの酷くない??

「したいならマスタールームに移動だ。設定に手は出すなよ」
「しないし言われなくても設定は絶っ対変えない」
「そうか。なら来週は抱き潰すから覚悟しておけ」
「えっ」

 もしかしなくても墓穴掘ったやつだこれ。





 
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