執着から始まる

一色ほのか

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 帰宅し、シャワーと着替えを済ませ、買い物とか家事を一通り終わらせてから恐々とログイン。
 どうしようもなかったとはいえ昨日の夜ログインできなかったから、絶対何か色々言われるだろうし何なら酷い目に遭うだろうなぁ、って。
 でも時間が経てば経つほど面倒なことになるのが眼に見えている。
 だから、早い内に事情を説明しておかないと。

 って、思ってたんだけど。

 
「じゃあ、零も昨日ログインしてなかったんだな」
「そうだよぉ。マスターは連絡なしだったけど~、ゼロは連絡板に書き込みあったよ?」
「リアルで色々あったんだよ……」
 
 クルと話しながら確認してみると、確かに零の書き込みがある。
 『土日はログインできない。』と簡潔なのが。
 今までこういう書き込みをしたことは一切なかったから、間違いなく私宛。
 心底ほっとした。
 それなら、昨日私がログインしてなかったのも知らないだろう。聞かれたらバレるけど。
 リアル事情って先に言っておけば、大丈夫。のはず。
 
「マスター、ゼロと何かあった?」
「あ~……何も聞くな」
 
 何かを感じ取ったのか、クルがそう聞いてくる。
 それに対し、匂わせつつ踏み込んでくるな、というニュアンスで言う。
 こういうのって誤魔化そうとすると余計こんがらがるよね。
 
「つまり人に話せないようなことがあったんだぁ!」
 
 ぱぁっと顔を明るくし、興味津々な様子で詰め寄ってくるクル。
 めちゃくちゃ聞きたそう。
 
「クルが好みそうな話じゃねーから。ほら、人と約束してるんだろ?時間大丈夫なのか?」
「あ!そうだった行かないと!マスター、今度機会があったら教えてね!じゃあ行ってくるね!」
 
 くるりと身を翻し、走り去っていくクル、
 いや教えないよ?教えるわけないよ??
 でもことあるごとに話題に上げられそう。頑張って躱さないと……。
 

 ――――――その後、来るかな?と思ったけどその日に零がログインしてくることはなかった。
 

 ホッとすると同時に、次の土曜が怖いなぁ、って思った。
 思ってたんだよ。

 

 
「な、なに……?ちょっと……?」
 
 月曜日、深夜。
 ログインしてきたと思ったら無言で壁際に追い詰められて、所謂壁ドン状態になっている。
 その状態で見下ろされて、なのに、ひとっことも発しない。
 なんなの本当に。ちょっと怖いんだけど。
 
「……………………嫌なら逃げろ」
「え」
 
 困惑していたら、そう言われて。
 手を取られて、どこかへ連れて行かれる。ってまたこれなの???

 …………でも、向かう先は前回と同じように零のマイルーム、じゃなく。

 私の、マスタールームだ。
 
「え、と、」
 
 ここに連れてくるってことはそういうこと、だよね。
 今日は土曜日じゃなくて、月曜日だけれど。
 だからこそああ言ったんだろう。
 
 手は、掴まれたまま。
 だけどログアウトできないなんてことはなく、本当に、逃げようと思えば逃げられる。
 
「今日、月曜日、だけど……」
「土日を会社の都合で潰されたから今日明日は休みだ」
 
 あ~……。
 土日居なかったの、会社絡みだったんだ。
 それで今こんなことに。

 ………………。

 今ここで断って逃げた場合。土曜日、どうなるかな。
 先週も先々週もしてないわけだから、いつかみたいに限界まで抱かれる可能性が高い、よね。
 今週の日曜日は予定があるし、その理由が理由だから、…………ちょっと、困る。後ろめたいというか。
 現状を考えるとどう足掻いても後ろめたいんだけどね。ゲームとはいえこんな状況だから。
 そうなると、選択肢は一つしかなくなる。 

 ………………。

 タイミングが良いというか悪いというか。
 明日、私も会社が休みだったり、する。
 周りとの兼ね合いで適当に選んだだけだから、特に何か用事があるわけでもない。つまり問題はないとも言える。

 ――――――これが。

 普通に恋人同士とかなら、本当に何の問題も無いんだろうな。
 だけど私達はそんな関係じゃない。
 
 そのことに僅かな痛みを覚えながらも知らない振りをして、マスタールームに入って零の入室を許可するっていう行動で答えを返す。

 口にするには、勇気がなかった。
 
 優柔不断もはっきり自分の声を上げられないのも直した方がいいって、酷い目に遭うのは自分だぞって、言われてたのにな。
 本当にそうだね。これはゲームで、現実じゃないからまだ手遅れじゃないけど。
 どうしたら、いいんだろう。

 薄々気付いてきたことに、私はいつまで気付かないふりをしているんだろう。


 


「嫌なら嫌でもよかったんだぞ」
 
 私の服を脱がしながらそう言ってくる。
 なんか、最初のあれ以降は服を破くとか手荒な真似はせず、手ずから脱がしてくるようになった。
 多分っていうか間違いなく私が自分で脱ぐのを躊躇してた所為だけど、変なところ甲斐甲斐しいのなんなんだろうなぁ。
 これはこれで羞恥を煽られるから嫌なんだけど……。
 
「その場合、土曜って」
「お察しだな」
 
 くつくつと笑う零。
 だよね。知ってた。
 となると一応、言っておいた方がいいのかな。
 
「日曜日、予定あるから……あんまり激しくされると、困る、というか……」
「予定。へえ」
 
 …………んん?

 ちょっと機嫌、悪くなった?
 今の話のどこにそんな要素が、と思っている間に零も脱ぎ終えたようで、ベッドに押し倒される。
 
「どこに、何をしに?」
「え?え、えと、その、…………お墓参り、に」
 
 どことなく怒気を感じる問い掛けに、恐る恐るそう口にする。
 言うつもりはなかったんだけど、なんだか怖かったから。
 それに零は目を見開き、それから少し気まずそうにそうか、とだけ言った。
 もう怒ってはいなそう?
 
 …………なんだろう。
 分からない、けど。
 けど、なんか、なんていうか――――嫉妬、みたいな反応だったな。

 違うよね。だって零だもん。
 きっと他が優先されたことが気に入らなかっただけ。
 多分、詳しく予定について話しても今みたいに短い言葉で終わりそう。
 それはそれでちょっと、傷付くかもしれない。
 うん……。

 前の彼氏のお墓参りだなんて、余計なことを言う必要はないよね。




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