26 / 58
第六章:重なり焦がれる心
26:再びの会食
しおりを挟む
約束をした会食は、魔王の宮殿の一階にある広間で行うことになった。宮殿内には美しい石卓や椅子などの調度が揃っている。中庭のように敷布の上で寛ぐような趣ではなく、厳かな気配を漂わせていた。
ディオンが訪れるという報を受けてから、ルシアは今日までの日々を長く感じていた。
自分が彼の訪れを心待ちにしていたのだと考えたくないが、覆す言い訳を思いつけないでいる。
「ルシア様、今日はとてもお綺麗です」
磨き抜かれて光沢を放つ大きな石卓に、クルドが食事の準備をしている。ルシアは自分の姿を見つめた。白い生地を金の装飾で留めるいつもの姿だった。女神のような美しい衣装ではあるが、今日のために特別に着飾ったりはしていない。
ただ結いあげた髪には地底の花が彩りを添えている。クルドが花を集め、ルシアの髪を華やかに飾ってくれたのだ。
「クルドのおかげです。髪を飾る花からとても良い香りがします。ありがとう」
「ルシア様を飾るのは、私の楽しみの一つなので。それにせっかくだからディオン様にも喜んで頂きたいですし」
「ーーディオン様に……」
囚われの身であるのなら、主のためにそう望まねばならないだろう。美しく着飾って寵愛を得る。ルシアも当初は打算的な考えを抱いていた。人界の再興のために魔王の機嫌をとるべきなのだと。けれど、今はまるで心に馴染まない。
邪悪に苛まれていないディオンからは、支配的な仕打ちを感じることはなかった。
捕らえられたのではなく、守られている。クルドやアルヴィと過ごしていると、それを信じたくなってしまう。
魔王の丘にある理由が少しずつ形を変えて、ルシアの心に影響する。
以前のようにディオンの訪れに恐怖を抱けない。一日を長く感じるほど、彼と会える日までを指折り数えていた。恐れや憎悪は嘘のように胸の内から失われている。
ディオンに会える。その気持ちに暗さはなく、輝いているのだ。
断末魔の声と共に胸に刻まれた光景。
人界の平和を願う言葉。寄り添っていた面影。
人界の王であったトールの言葉であると信じていたが、今はディオンの面影ではないのかと期待を抱いている。
期待が高まるほど、自分が王妃レイアであったという思いも薄くなる。ノルンを偲ぶたびに呵責を感じたが、ルシアにもどうしようもなかった。
「ルシア様!」
宮殿の石造りの広間に、聞き慣れたあどけない声が響く。
「ディオン様をお連れしましたよ!」
アルヴィの声を聞きながら、ルシアは現れたディオンに視界を奪われた。自分と同じように金の装飾で留めた黒衣。純白を纏うルシアとは異なり、魔性を帯びたディオンには清らかさがない。けれどこちらに歩んでくる姿が、それだけで凛と力を伴っているのがわかる。素直に美しいと感じた。
「ディオン様、アルヴィ。お待ちしておりました」
ルシアが席をたって丁寧に挨拶をすると、ディオンはクルドの用意した席を過ぎて、無言のまま目の前まで歩み寄ってくる。
「印象が変わったな」
「え? あ、きっとクルドが花で飾ってくれたからです」
ルシアが髪を飾る花に手を添えると、ディオンが微笑んだ。
「そうじゃない。ーー自然に笑うようになった」
言われてはじめてルシアは自分が笑顔であることに気付く。
「レイアの真似事も悪くないが、やはりおまえらしい方が愛しいな」
「え?」
(……愛しい?)
ルシアは聞き間違いかと思ったが、顔にみるみる熱がこもっていく。ディオンが驚いたように、金細工に飾られていない左眼を大きくした。それから可笑しそうに笑う。
「わかりやすい」
「な、何のお話ですか?」
「おまえらしいという話だ。悪くない」
ディオンが用意された席へ戻ると、傍らでクルドとアルヴィもくすくすと小さく笑っている。
「クルドまで。一体何なのですか?」
「いいえ、たしかにディオン様の仰るとおりだと思っただけです。昔からルシア様には母様とは違う親しみがあります」
「違う親しみ?」
ルシアも席に着くと、クルドはディオンにも聞こえるように答える。
「ルシア様は叔母というよりは、年の近い姉様のようです。見た目の感じもあるのでしょうが、なんていうか、わりと顔に出やすいというか、強情で幼い面があるというか……」
「なんだか、喜べない言われようですね」
複雑な心持ちになったが、ルシアにもクルドが娘や姪であるという感覚がない。彼女の語るように、姉妹であると言われた方が馴染む。自分がレイアであるという感覚がますます遠ざかる。
食事を始めると、アルヴィの笑い声が響き、クルドの声が場を賑やかにする。ディオンの口数は少ないが、威圧的な様子はなく和やかな雰囲気で食卓を囲んでいる。
ルシアは手元で果実を転がしながら、不思議な感じがしていた。懐かしく切ない。黄昏に輝くけだるげな光景を見ているような寂寥感。
(何かしら、この気持ちはーー)
芽生えた気持ちの正体は掴みきれない。四人で繰り広げる他愛ない談笑に自然に心が緩む。ルシアが名残を惜しみたくなるほど、瞬く間に刻が過ぎた。ディオンを迎えた会食が終わりを告げる。
「ディオン様、美味しくなかったですか?」
器を下げようとしたクルドの言い様に、ルシアは「え?」と視線を向ける。
「いや、美味かったが、どうして?」
「あまり、食べておられないようなので」
「私はもともと大食ではないからな。育ち盛りのアルヴィと一緒にされても困る」
「ですが、それにしても」
眉を潜めるクルドに、アルヴィが無邪気に口を挟む。
「僕、わかりました! ルシア様に心を奪われていたからではないですか?」
突然自分の名前が出てルシアは鼓動が跳ねたが、アルヴィはおかまいなしに決めつけている。ディオンは無垢な少年の言い様が可笑しかったのか、嫌悪することもなく笑っていた。
席を立ったディオンに、ルシアは思わず声をかける。
「もうお帰りになるのですか」
ディオンは驚いたようにルシアを見返ると、すぐに歩み寄ってきた。すっと目の前に手が差し伸べられる。
「おまえが縋るなら傍にいるが、どうする?」
不遜な態度だったが、彼の赤い左目に悪戯めいた光が宿っていた。自分の変化を見透かされているのだと悟り、ルシアは顔が火照る。毅然と対応したいのに、紅潮する顔をどうすることも出来ない。
開き直るような投げやりな気持ちで、差し出された手に掌を重ねた。
「縋りはしませんが、お聞きしたいことはあります」
「ーーいいだろう」
ディオンに手を引かれた。よろめくように立ち上げると、すぐに逞しい腕に支えられる。当たり前のように馴染む仕草に、ルシアはますます恥ずかしくなる。
「では、お二人でごゆっくりと」
「僕は姉様と一緒にいますね」
背後でクルドとアルヴィの声を聞きながら、ルシアは面白そうに笑っているディオンと広間を出た。
ディオンが訪れるという報を受けてから、ルシアは今日までの日々を長く感じていた。
自分が彼の訪れを心待ちにしていたのだと考えたくないが、覆す言い訳を思いつけないでいる。
「ルシア様、今日はとてもお綺麗です」
磨き抜かれて光沢を放つ大きな石卓に、クルドが食事の準備をしている。ルシアは自分の姿を見つめた。白い生地を金の装飾で留めるいつもの姿だった。女神のような美しい衣装ではあるが、今日のために特別に着飾ったりはしていない。
ただ結いあげた髪には地底の花が彩りを添えている。クルドが花を集め、ルシアの髪を華やかに飾ってくれたのだ。
「クルドのおかげです。髪を飾る花からとても良い香りがします。ありがとう」
「ルシア様を飾るのは、私の楽しみの一つなので。それにせっかくだからディオン様にも喜んで頂きたいですし」
「ーーディオン様に……」
囚われの身であるのなら、主のためにそう望まねばならないだろう。美しく着飾って寵愛を得る。ルシアも当初は打算的な考えを抱いていた。人界の再興のために魔王の機嫌をとるべきなのだと。けれど、今はまるで心に馴染まない。
邪悪に苛まれていないディオンからは、支配的な仕打ちを感じることはなかった。
捕らえられたのではなく、守られている。クルドやアルヴィと過ごしていると、それを信じたくなってしまう。
魔王の丘にある理由が少しずつ形を変えて、ルシアの心に影響する。
以前のようにディオンの訪れに恐怖を抱けない。一日を長く感じるほど、彼と会える日までを指折り数えていた。恐れや憎悪は嘘のように胸の内から失われている。
ディオンに会える。その気持ちに暗さはなく、輝いているのだ。
断末魔の声と共に胸に刻まれた光景。
人界の平和を願う言葉。寄り添っていた面影。
人界の王であったトールの言葉であると信じていたが、今はディオンの面影ではないのかと期待を抱いている。
期待が高まるほど、自分が王妃レイアであったという思いも薄くなる。ノルンを偲ぶたびに呵責を感じたが、ルシアにもどうしようもなかった。
「ルシア様!」
宮殿の石造りの広間に、聞き慣れたあどけない声が響く。
「ディオン様をお連れしましたよ!」
アルヴィの声を聞きながら、ルシアは現れたディオンに視界を奪われた。自分と同じように金の装飾で留めた黒衣。純白を纏うルシアとは異なり、魔性を帯びたディオンには清らかさがない。けれどこちらに歩んでくる姿が、それだけで凛と力を伴っているのがわかる。素直に美しいと感じた。
「ディオン様、アルヴィ。お待ちしておりました」
ルシアが席をたって丁寧に挨拶をすると、ディオンはクルドの用意した席を過ぎて、無言のまま目の前まで歩み寄ってくる。
「印象が変わったな」
「え? あ、きっとクルドが花で飾ってくれたからです」
ルシアが髪を飾る花に手を添えると、ディオンが微笑んだ。
「そうじゃない。ーー自然に笑うようになった」
言われてはじめてルシアは自分が笑顔であることに気付く。
「レイアの真似事も悪くないが、やはりおまえらしい方が愛しいな」
「え?」
(……愛しい?)
ルシアは聞き間違いかと思ったが、顔にみるみる熱がこもっていく。ディオンが驚いたように、金細工に飾られていない左眼を大きくした。それから可笑しそうに笑う。
「わかりやすい」
「な、何のお話ですか?」
「おまえらしいという話だ。悪くない」
ディオンが用意された席へ戻ると、傍らでクルドとアルヴィもくすくすと小さく笑っている。
「クルドまで。一体何なのですか?」
「いいえ、たしかにディオン様の仰るとおりだと思っただけです。昔からルシア様には母様とは違う親しみがあります」
「違う親しみ?」
ルシアも席に着くと、クルドはディオンにも聞こえるように答える。
「ルシア様は叔母というよりは、年の近い姉様のようです。見た目の感じもあるのでしょうが、なんていうか、わりと顔に出やすいというか、強情で幼い面があるというか……」
「なんだか、喜べない言われようですね」
複雑な心持ちになったが、ルシアにもクルドが娘や姪であるという感覚がない。彼女の語るように、姉妹であると言われた方が馴染む。自分がレイアであるという感覚がますます遠ざかる。
食事を始めると、アルヴィの笑い声が響き、クルドの声が場を賑やかにする。ディオンの口数は少ないが、威圧的な様子はなく和やかな雰囲気で食卓を囲んでいる。
ルシアは手元で果実を転がしながら、不思議な感じがしていた。懐かしく切ない。黄昏に輝くけだるげな光景を見ているような寂寥感。
(何かしら、この気持ちはーー)
芽生えた気持ちの正体は掴みきれない。四人で繰り広げる他愛ない談笑に自然に心が緩む。ルシアが名残を惜しみたくなるほど、瞬く間に刻が過ぎた。ディオンを迎えた会食が終わりを告げる。
「ディオン様、美味しくなかったですか?」
器を下げようとしたクルドの言い様に、ルシアは「え?」と視線を向ける。
「いや、美味かったが、どうして?」
「あまり、食べておられないようなので」
「私はもともと大食ではないからな。育ち盛りのアルヴィと一緒にされても困る」
「ですが、それにしても」
眉を潜めるクルドに、アルヴィが無邪気に口を挟む。
「僕、わかりました! ルシア様に心を奪われていたからではないですか?」
突然自分の名前が出てルシアは鼓動が跳ねたが、アルヴィはおかまいなしに決めつけている。ディオンは無垢な少年の言い様が可笑しかったのか、嫌悪することもなく笑っていた。
席を立ったディオンに、ルシアは思わず声をかける。
「もうお帰りになるのですか」
ディオンは驚いたようにルシアを見返ると、すぐに歩み寄ってきた。すっと目の前に手が差し伸べられる。
「おまえが縋るなら傍にいるが、どうする?」
不遜な態度だったが、彼の赤い左目に悪戯めいた光が宿っていた。自分の変化を見透かされているのだと悟り、ルシアは顔が火照る。毅然と対応したいのに、紅潮する顔をどうすることも出来ない。
開き直るような投げやりな気持ちで、差し出された手に掌を重ねた。
「縋りはしませんが、お聞きしたいことはあります」
「ーーいいだろう」
ディオンに手を引かれた。よろめくように立ち上げると、すぐに逞しい腕に支えられる。当たり前のように馴染む仕草に、ルシアはますます恥ずかしくなる。
「では、お二人でごゆっくりと」
「僕は姉様と一緒にいますね」
背後でクルドとアルヴィの声を聞きながら、ルシアは面白そうに笑っているディオンと広間を出た。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です
ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」
「では、契約結婚といたしましょう」
そうして今の夫と結婚したシドローネ。
夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。
彼には愛するひとがいる。
それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?
『影の夫人とガラスの花嫁』
柴田はつみ
恋愛
公爵カルロスの後妻として嫁いだシャルロットは、
結婚初日から気づいていた。
夫は優しい。
礼儀正しく、決して冷たくはない。
けれど──どこか遠い。
夜会で向けられる微笑みの奥には、
亡き前妻エリザベラの影が静かに揺れていた。
社交界は囁く。
「公爵さまは、今も前妻を想っているのだわ」
「後妻は所詮、影の夫人よ」
その言葉に胸が痛む。
けれどシャルロットは自分に言い聞かせた。
──これは政略婚。
愛を求めてはいけない、と。
そんなある日、彼女はカルロスの書斎で
“あり得ない手紙”を見つけてしまう。
『愛しいカルロスへ。
私は必ずあなたのもとへ戻るわ。
エリザベラ』
……前妻は、本当に死んだのだろうか?
噂、沈黙、誤解、そして夫の隠す真実。
揺れ動く心のまま、シャルロットは
“ガラスの花嫁”のように繊細にひび割れていく。
しかし、前妻の影が完全に姿を現したとき、
カルロスの静かな愛がようやく溢れ出す。
「影なんて、最初からいない。
見ていたのは……ずっと君だけだった」
消えた指輪、隠された手紙、閉ざされた書庫──
すべての謎が解けたとき、
影に怯えていた花嫁は光を手に入れる。
切なく、美しく、そして必ず幸せになる後妻ロマンス。
愛に触れたとき、ガラスは光へと変わる
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる