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どうしてここまで、この市場まできたのかわからない。
あぁ、今日は晴れだったんだ。
ぼんやりと見上げた先はスカイブルー。
その青さが彼女の瞳を思い出させるのか…。慌てて袖で目元を拭うと、その先に見えたのは人だかりの山、そして騒ぎ立てる人の声が聞こえてきた。
「オオッ!こ、このジェラードとやらは銅貨では買えないのか!!…すまぬ…店主。わしはそなたの技術を軽く見ておった。」
年寄は懐の巾着から銀貨を出すと、店主が項垂れ
「いや、だから…。」
「ま、まさか、金貨?!金貨なのか?!!”一瞬で体がひんやり”の謳い文句通りの一品じゃったが…ちょっと金貨はとりすぎであろう。」
「いや、だから!!爺さんの銅貨も、銀貨も!どこの通貨だよ!こんな見たことねぇから!」
「…えっ?…何を言っておる。ここは勇者が生まれた国アストリアではないか、ならば使えるであろう?アストリアの通貨じゃから。」
「はぁ、アストリア国?まさか…魔王を倒したなんちゃら勇者が生まれた国というアストリアのことか?だいたいありゃおとぎ話じゃないか!偉い学者さんも、アストリアという国も、魔法を使いこの世界と乗っ取ろうとした魔王や魔族なんぞ存在しなかったと言ってるのに、なにがアストリア国の通貨だ。ここはバイザル国だ!」
「そ、そんな…アストリア国も…われら勇者一行もおとぎ話じゃと?斥候のリック、戦士のハイル、そして勇者のマーベリックと大賢者のわしがこの国を、この世界を守るために、魔王を討伐したことが…おとぎ話?!おとぎ話になっておるのか?!わしが西の森にいる数百年の間におとぎ話になっておるとは…。うっ…あい分かった。ならば、特別にわしの雄姿を中心に話して進ぜよう。本当の歴史を!!あれは…」「ちょ、ちょっとまて!!」」年寄の話をぶちぎるように店主が声は張り上げた。
キョトンとした顔で店主を見る年寄に大きなため息をつき
「…爺さん、あんた…ね、はぁ~どうすりゃいいんだよ。全くこれじゃ商売あがったりだ!魔王だの、勇者だの、おまけに自分も勇者と一緒に魔王を倒したって言うし。ボケた爺さんとじゃ話にならねぇ!くそっ!あぁ~!わかりましたよ、ここは勇者が生まれ育ったアストリアという国です。これでいいですか?!ジェラード代銅貨2枚です!」
店の者の物言いにムッとしつつも年寄は、巾着から銀貨を出すと、店主の顔が引きった。
その顔を見た年寄は鼻を鳴らし
「お主は認めたであろう。昔も今もここはアストリア国じゃったと、ならばちゃんとアストリア国の刻印が入っておるからこの銀貨は使えるはずじゃろう。釣りはいらんぞ。チップじゃ!」
人だかりからクスクスと笑い声が聞こえ、店主を揶揄う声まで聞こえてきた。
ヤバい。ここの店主は気が短いと評判な親父だぞ。そんなに揶揄ったら…ヤバいぞ。
まったくなんだよ。今日は屋敷に帰って部屋に閉じこもるつもりだったのに…。
俺は泣きはらした真っ赤な眼を隠すように下を向き、人だかりへと歩き出した。
顔は上げられない。
情けない泣き顔を見られたくないのはもちろんだが、自分が誰だか知られたくない。キリアン ロマーネだと知られたくない。
今は傾いた家だが、数代前には剣聖と呼ばれほど騎士を輩出したロマーネ子爵家。なんたって我が家の名前ロマーネを冠した武術大会が今もあるくらいだ。そのロマーネ子爵家の次男坊が来月からようやく騎士になるというのに、この情けない姿を知られたくない。
特に…あいつには…。
バイザル国は四方を大国に囲まれた国、そんな国がこの大陸一の裕福な国となったのはここでしか採掘できない超逸品が産出される宝石鉱山。そんな宝石鉱山を大国が狙わない理由はない。だが大国がバイザル国に侵攻できないのは我が国の騎士団の力だ。
大国に睨みを利かせるバイザル国の騎士団は、他国のように貴族の御飾りじゃない。
貴族も従士となる平民も、一緒になって血反吐を吐き地に這いつくばりながら修練を積む。
俺だって7歳から小姓(ペイジ)となり、主君の下に仕え、下働きをし、14歳で従騎士(エスクワイア)となり、主人である先輩騎士につき、甲冑や武器の持ち運びや修理も担当して早5年。色々あって挫折も味わったけど、どうにか騎士叙任式を来月迎えるんだ。最強を言われる騎士団のひとりに…あいつが憧れていた騎士に、来月にはなれるんだ。
だから…あいつの憧れていた騎士になれば…。
《(私の夢は騎士様のお嫁さん。)》そう言っていたあいつの夢に近づけると思った。
だけど俺が騎士になる前に《あいつは今日、夢を叶える。》
し、失恋ぐらいで泣いてたまるか!あいつの騎士にはなれなかった俺だけど騎士道を捨てたわけじゃない!
騎士たるもの、いや男たるものこの状況を見過ごすわけには行かない。
でもこの顔では…そうだ!店主に金を握らせて素早くこの場を去ればいい。
気付からなければ良いのだ。俺だと、そう気付かれなければ。
人込みは俺の姿を…いや俺の服を見ると慌てて道を開いてくれた。
そりゃそうだな。
真っ白なシャツと慎重に結ばれたクラバット、白のウェストコート、ブリーチとストッキングとパンプス、そして黒い三日月帽。いかにも貴族、それも盛装。
そりゃ避けるよな。
一時は溢れるほどの熱い騎士道精神に、顔を上げたが…この盛装にまた項垂れてしまった。
足元を見ながら、こんな格好…したくなかった。でも今日は…。
《今日は…あいつの結婚式だから。》
まだ騎士ではない俺が騎士団の服を着ることはできない。
いや、騎士団の制服を着てあいつの結婚式に出ていたら、もっと落ち込んだろうな。
俯きながらトボトボと店主と爺さんのところまで行くと、俺は黙って店主の手に銀貨を握らせ、Uターンをしようとした時だった。
爺さんが俺の手をつかみ叫んだ!!
「マーベリック!!勇者マーベリック!!お主、やっと、やっと転生したのか!!待っておったぞ!!」
「えっ?!」
思わず声を上げ、顔を上げると、たくさんの視線が俺に突き刺さってきた。
あっ…マズい。
あぁ、今日は晴れだったんだ。
ぼんやりと見上げた先はスカイブルー。
その青さが彼女の瞳を思い出させるのか…。慌てて袖で目元を拭うと、その先に見えたのは人だかりの山、そして騒ぎ立てる人の声が聞こえてきた。
「オオッ!こ、このジェラードとやらは銅貨では買えないのか!!…すまぬ…店主。わしはそなたの技術を軽く見ておった。」
年寄は懐の巾着から銀貨を出すと、店主が項垂れ
「いや、だから…。」
「ま、まさか、金貨?!金貨なのか?!!”一瞬で体がひんやり”の謳い文句通りの一品じゃったが…ちょっと金貨はとりすぎであろう。」
「いや、だから!!爺さんの銅貨も、銀貨も!どこの通貨だよ!こんな見たことねぇから!」
「…えっ?…何を言っておる。ここは勇者が生まれた国アストリアではないか、ならば使えるであろう?アストリアの通貨じゃから。」
「はぁ、アストリア国?まさか…魔王を倒したなんちゃら勇者が生まれた国というアストリアのことか?だいたいありゃおとぎ話じゃないか!偉い学者さんも、アストリアという国も、魔法を使いこの世界と乗っ取ろうとした魔王や魔族なんぞ存在しなかったと言ってるのに、なにがアストリア国の通貨だ。ここはバイザル国だ!」
「そ、そんな…アストリア国も…われら勇者一行もおとぎ話じゃと?斥候のリック、戦士のハイル、そして勇者のマーベリックと大賢者のわしがこの国を、この世界を守るために、魔王を討伐したことが…おとぎ話?!おとぎ話になっておるのか?!わしが西の森にいる数百年の間におとぎ話になっておるとは…。うっ…あい分かった。ならば、特別にわしの雄姿を中心に話して進ぜよう。本当の歴史を!!あれは…」「ちょ、ちょっとまて!!」」年寄の話をぶちぎるように店主が声は張り上げた。
キョトンとした顔で店主を見る年寄に大きなため息をつき
「…爺さん、あんた…ね、はぁ~どうすりゃいいんだよ。全くこれじゃ商売あがったりだ!魔王だの、勇者だの、おまけに自分も勇者と一緒に魔王を倒したって言うし。ボケた爺さんとじゃ話にならねぇ!くそっ!あぁ~!わかりましたよ、ここは勇者が生まれ育ったアストリアという国です。これでいいですか?!ジェラード代銅貨2枚です!」
店の者の物言いにムッとしつつも年寄は、巾着から銀貨を出すと、店主の顔が引きった。
その顔を見た年寄は鼻を鳴らし
「お主は認めたであろう。昔も今もここはアストリア国じゃったと、ならばちゃんとアストリア国の刻印が入っておるからこの銀貨は使えるはずじゃろう。釣りはいらんぞ。チップじゃ!」
人だかりからクスクスと笑い声が聞こえ、店主を揶揄う声まで聞こえてきた。
ヤバい。ここの店主は気が短いと評判な親父だぞ。そんなに揶揄ったら…ヤバいぞ。
まったくなんだよ。今日は屋敷に帰って部屋に閉じこもるつもりだったのに…。
俺は泣きはらした真っ赤な眼を隠すように下を向き、人だかりへと歩き出した。
顔は上げられない。
情けない泣き顔を見られたくないのはもちろんだが、自分が誰だか知られたくない。キリアン ロマーネだと知られたくない。
今は傾いた家だが、数代前には剣聖と呼ばれほど騎士を輩出したロマーネ子爵家。なんたって我が家の名前ロマーネを冠した武術大会が今もあるくらいだ。そのロマーネ子爵家の次男坊が来月からようやく騎士になるというのに、この情けない姿を知られたくない。
特に…あいつには…。
バイザル国は四方を大国に囲まれた国、そんな国がこの大陸一の裕福な国となったのはここでしか採掘できない超逸品が産出される宝石鉱山。そんな宝石鉱山を大国が狙わない理由はない。だが大国がバイザル国に侵攻できないのは我が国の騎士団の力だ。
大国に睨みを利かせるバイザル国の騎士団は、他国のように貴族の御飾りじゃない。
貴族も従士となる平民も、一緒になって血反吐を吐き地に這いつくばりながら修練を積む。
俺だって7歳から小姓(ペイジ)となり、主君の下に仕え、下働きをし、14歳で従騎士(エスクワイア)となり、主人である先輩騎士につき、甲冑や武器の持ち運びや修理も担当して早5年。色々あって挫折も味わったけど、どうにか騎士叙任式を来月迎えるんだ。最強を言われる騎士団のひとりに…あいつが憧れていた騎士に、来月にはなれるんだ。
だから…あいつの憧れていた騎士になれば…。
《(私の夢は騎士様のお嫁さん。)》そう言っていたあいつの夢に近づけると思った。
だけど俺が騎士になる前に《あいつは今日、夢を叶える。》
し、失恋ぐらいで泣いてたまるか!あいつの騎士にはなれなかった俺だけど騎士道を捨てたわけじゃない!
騎士たるもの、いや男たるものこの状況を見過ごすわけには行かない。
でもこの顔では…そうだ!店主に金を握らせて素早くこの場を去ればいい。
気付からなければ良いのだ。俺だと、そう気付かれなければ。
人込みは俺の姿を…いや俺の服を見ると慌てて道を開いてくれた。
そりゃそうだな。
真っ白なシャツと慎重に結ばれたクラバット、白のウェストコート、ブリーチとストッキングとパンプス、そして黒い三日月帽。いかにも貴族、それも盛装。
そりゃ避けるよな。
一時は溢れるほどの熱い騎士道精神に、顔を上げたが…この盛装にまた項垂れてしまった。
足元を見ながら、こんな格好…したくなかった。でも今日は…。
《今日は…あいつの結婚式だから。》
まだ騎士ではない俺が騎士団の服を着ることはできない。
いや、騎士団の制服を着てあいつの結婚式に出ていたら、もっと落ち込んだろうな。
俯きながらトボトボと店主と爺さんのところまで行くと、俺は黙って店主の手に銀貨を握らせ、Uターンをしようとした時だった。
爺さんが俺の手をつかみ叫んだ!!
「マーベリック!!勇者マーベリック!!お主、やっと、やっと転生したのか!!待っておったぞ!!」
「えっ?!」
思わず声を上げ、顔を上げると、たくさんの視線が俺に突き刺さってきた。
あっ…マズい。
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