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コスプレじゃないですぅ!!!

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(ヒィ~!!)

……叫びそうな声を抑えながら、二人の侍女に
「ふ、双子だから、間違えられたのかなぁ~!」

と…にっこり、引きつる口元を無理矢理あげ…にっこり

「…ロザリー?」

「ミランダ姫!私は弟のシ・シ・シリルです。あはは…」

ミランダ姫の口を押さえ、抱きかかえて
「では!ルシアン殿下の下に行ってまいります!」

あぁ~手順がめちゃめちゃだ。これじゃ傍から見たら…ゆ、誘拐だ!
マ、マズイ~。取りあえず、そう取りあえず、私は振り返り

「もちろん!女官長の許可を取ってます!!」

同時に心の声で
(う、嘘です…。ごめんなさいぃ~!)


侍女達の声を無視して、ミランダ姫の部屋を飛び出した私は、そのまま中庭へと走り、建物の影に入ると、ミランダ姫の口から手を離した。

「すみません、ミランダ姫。」

ミランダ姫は眼をキラキラさせ
「すごい、ロザリーは走るが早いのね!」

「あ、あの…姫、私はシリルです。」

ミランダ姫はキョトンとして…
「…ロザリーだもん。」

「ロザリーの髪は茶色で、私は金色です。ねぇ…ちがうでしょう。」

「……ロザリーだもん。」

「ミランダ姫…」

でも…認めるわけには…行かない。
お父様やルシアン王子が、心配していらっしゃる不穏分子を一掃するまでは、まだウィスレット侯爵家の嫡男シリルでいないと…騎士でないと…。


私の顔をじっと見つめるミランダ姫の、緑色の瞳から避けるように眼を瞑った。

せめて90日…。

90日で片をつけると仰っているルシアン王子の剣や、盾になって…ルシアン王子を…この国を…そしてこのミランダ姫を守りたいから、まだロザリーには戻れない。


頑張れ、私。相手は3歳児、誤魔化せるはず…ううん、誤魔化さないと…。

……でも…なんか…苦しい。

私の青い瞳は、姫の緑の瞳を見据えた。心の中でごめんなさいと言いながら

「顔が同じだから、お間違えになっているのですね。私は…。姫?何をなさっているんですか?」

ミランダ姫の小さな手が、私の胸全体を微妙なタッチで、さわさわと触りながら
「やっぱり…ロザリーだもん!」



私のささやかな胸での確認…複雑です。

あぁどうしよう。うまく誤魔化せない。ミランダ姫へなにか言わなくてはと思うけど、言葉がうまく出てこない。そんな私を見つめる緑の瞳がまたキラキラと輝きだし

「あぁ~ロザリー!!」
感嘆の声を漏らすと、姫は私の首に手を回し…

「私と同じなのね。騎士になりたかったんでしょう。私はまだやった事はないけれど、素敵だものね。」

「へっ?」

まったく意味がわからず、唖然としている私に、ミランダ姫は畳み掛けるように
「私は踊り子と商人をやったの。でも…うまくいかなかったの。やっぱり私は人間より、動物ね。今は猫が一番なんだけど…」

見えてきた。姫が言わんとするところが見えてきた。

「ミランダ姫。」

「コスプレね!騎士のコスプレなんでしょう!」

やっぱり、趣味が同じだと思われたんだ…やっぱり…。
はぁ~参った。でも…それでも、誰かにこの事を話されては困る。

「姫、実は…」

「秘密なのね。」

「ぁ…あっ、あの……そうです。」
(なんだかんだ言ったけど…結局私…認めちゃってるじゃん。)

「誰にも言わないわ。ロザリーは叔父様と一緒だから…だから私が守ってあげる。」

「えっ?」

ミランダ姫はそう言って、驚いて緩んだ私の手から抜け出すと、走り出した。

「ミランダ姫!」

私の声に立ち止まったミランダ姫は、
「あそこでしょう!あの白い建物の2階でしょう。叔父様のお部屋は!」

そう言って、指差しながら…
「叔父様!お・じ・さ・ま!」

とミランダ姫は大きな声で、ルシアン王子を呼びながら走り出し、その声が…いや、その心が届いたんだと思う。

二階の窓が開き、白いシャツを羽織ったルシアン王子が顔を出し、驚いたように

「ミランダ?!」
と叫び、窓から身を乗り出し…その視線が私の上で止まり、その唇が…

(シリル)と動くのが見えた。
赤い瞳が瞬きを忘れたように私を見ている。
でも、結ばれていない黒髪が風になびき、赤い瞳が隠れ…ルシアン王子の表情はわからなくなり、

それがどうしてだが…ほんの少し…残念だと思ってしまった。


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