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騎士になる。
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だが…剣を握った私の手に、大きな手が重なった。
「殿下…。」
「愛する者を守るためには、人を切ることもやらねばならないと言ったが…そんな顔で剣を抜くな。」
「殿下…。」
そう言って、私の頬にあった涙を大きな手で拭われた。
申し訳なくて私は涙を堪え、ようやく(すみません)と声を出し、自分の手で拭おうとしたら、今度は小さな手が私の頬に触れた。
「ロザリー、ロザリー!」
と私の名を呼ぶミランダ姫に、私は涙をもう堪えきれず次々と溢れさせていった。そんな私の頭をルシアン王子は、ポンポンと軽く叩かれると、エイブに向かって哀れむように
「お前とて、うすうすは気が付いていたんだろう?体がどんどん崩れて行ってることを…。魂ほど体は持たんということを…。」
「あ、あの…」
エイブの震える声にルシアン王子は
「何れお前の体は土へと返って行く、だが体が崩れて行くのに、意識だけは最後の最後まであるんだぞ!お前はその恐ろしさがわからなかったのか?!」
「あぁぁ…」
ルシアン王子はエイブから、周りの屈強な兵士達に向かって
「お前達もエイブと同じだ。このまま体が崩れて行くのを待つか…、ここで俺に切られるしかないぞ。だが例え、頭と胴体を切り離しても、末路は同じ事だがな。さぁどうする?!ここでモタモタしている時間は、俺にはないのだ!切られる末路を選んだ者はかかって来い!!」
屈強な兵士達の中に、座り込む輩が何人か出てきたが、ひとりが剣を抜くと大きな叫び声をあげて、ルシアン王子に切りかかってきた。
ルシアン王子の剣が振りぬかれ、その瞬間…男の頭が飛んだ。
頭と胴体を切り離されても、その男は叫んでいる。
「嫌だ!!こんなのは…嫌だ!」
ルシアン王子はミランダ姫がその様子を見る事が出来ないように、腕の中でしっかり抱きこまれるむと
「ミランダ…絶対見るな。」と掠れた声で言われ、一歩前へと足を進められた。
男たちはなにやら叫んでいたが、ルシアン王子が前に進むごとに、怯えるようにゆっくり下がって行く。
だが私は、まだエイブが気になって動けなかった。
頭を抱え、座り込んだエイブにかける言葉が見つからず、ただ黙ってエイブを見ていたが、うつろな目のエイブは、自分の足元を見つめ小さな声で
「…俺はどうなるんだよ。」
と言って、足元の砂を私へと投げ
「ロザリー!!」と私を呼び睨みつけてきた。
睨んだエイブの薄い青い瞳は…それは私と同じ瞳の色で、同じ血筋だと言っているように思え、少し胸が痛んだ。だが、私は冷静だった。むしろ…いつもより落ち着いているように思える。
「…エイブ。私を殺したいと思っているのだろうが、だが私はお前のために、この命を投げ出すことはしない。」
覚悟…。そう、ここに来るときに決めていた、騎士としての覚悟が出来ているからだ。
私は剣を握りなおし、
「私は騎士だ、女であっても愛する人を大切な人を守るためにだけ…この命を懸ける騎士だ。お前が殿下を、そしてミランダ姫をまだ狙うなら、今度は躊躇しない。」
「俺を切るというのか?!俺は!お前と同じウィンスレット家の血を引くものなんだぞ。なぁ、ロザリー。一緒にこの国を取ろうぜ。俺達ウィンスレットの血でこの国を治めよう。」
私は剣をエイブの首元へと向けた。
「何度言ったらわかる。私は騎士だと言っただろう。私が剣を抜くのは私利私欲ためではない。愛する人を大切な人を守るためにだけと!」
「無理するなよ。お前みたいな優しい女が人など切れるかよ。」
妙な笑いを浮かべたエイブだったが、その表情が一変し
「切れるものなら、切って見ろよ。出来やしない!」
そう言って、突然切りかかって来たエイブの首筋に、浅く剣を引いた。剣はエイブの首筋に赤い線をつけたが、血は一滴も零れなかった。それは…エイブがもうこの世にあらざる者になった事をまざまざと私に感じさせ、思わず唇を噛んだ。
「ヒィ~」と叫んだエイブに
「切り落とさなかったのは……血の繋がった従兄弟殿への温情だ。」
エイブは私の言葉など耳に入っていないのだろう、何度も頭と首を触り、繋がっていることを確認しているようだった。
もう、言葉はない。
もう、エイブにかける言葉はない。
私は前を向き、大きな背中を…見つめた。
ミランダ姫を片手に抱えて、切りかかってくる者の頭を、そして足を確実に切ってゆくルシアン王子の姿に大きく息を吐き、心を落ち着かせ、騎士誓いをあらためて、心に刻み付け
ルシアン王子の背中へと、切りかかろうとする男に剣を向け…迷わず足を切った。
「ロザリー!」
ルシアン王子の声に、「はい!」私は大きく返事をすると、微笑まれたルシアン王子は
「お前が俺の後ろにいる限り…俺は安心して前を向いて行ける。」
その言葉に、私も微笑んだ。
愛する人の為、そして大切な物の為とはいえ、人を殺める覚悟は、辛くて、悲しくて堪らない…どんなに非情な輩でもあってもだ。
それは人として当たり前の思いだ。
辛く、悲しい思いを持ちつつも、剣を握る。
……それが騎士ならば…
私は今。本当の騎士になった。
「殿下…。」
「愛する者を守るためには、人を切ることもやらねばならないと言ったが…そんな顔で剣を抜くな。」
「殿下…。」
そう言って、私の頬にあった涙を大きな手で拭われた。
申し訳なくて私は涙を堪え、ようやく(すみません)と声を出し、自分の手で拭おうとしたら、今度は小さな手が私の頬に触れた。
「ロザリー、ロザリー!」
と私の名を呼ぶミランダ姫に、私は涙をもう堪えきれず次々と溢れさせていった。そんな私の頭をルシアン王子は、ポンポンと軽く叩かれると、エイブに向かって哀れむように
「お前とて、うすうすは気が付いていたんだろう?体がどんどん崩れて行ってることを…。魂ほど体は持たんということを…。」
「あ、あの…」
エイブの震える声にルシアン王子は
「何れお前の体は土へと返って行く、だが体が崩れて行くのに、意識だけは最後の最後まであるんだぞ!お前はその恐ろしさがわからなかったのか?!」
「あぁぁ…」
ルシアン王子はエイブから、周りの屈強な兵士達に向かって
「お前達もエイブと同じだ。このまま体が崩れて行くのを待つか…、ここで俺に切られるしかないぞ。だが例え、頭と胴体を切り離しても、末路は同じ事だがな。さぁどうする?!ここでモタモタしている時間は、俺にはないのだ!切られる末路を選んだ者はかかって来い!!」
屈強な兵士達の中に、座り込む輩が何人か出てきたが、ひとりが剣を抜くと大きな叫び声をあげて、ルシアン王子に切りかかってきた。
ルシアン王子の剣が振りぬかれ、その瞬間…男の頭が飛んだ。
頭と胴体を切り離されても、その男は叫んでいる。
「嫌だ!!こんなのは…嫌だ!」
ルシアン王子はミランダ姫がその様子を見る事が出来ないように、腕の中でしっかり抱きこまれるむと
「ミランダ…絶対見るな。」と掠れた声で言われ、一歩前へと足を進められた。
男たちはなにやら叫んでいたが、ルシアン王子が前に進むごとに、怯えるようにゆっくり下がって行く。
だが私は、まだエイブが気になって動けなかった。
頭を抱え、座り込んだエイブにかける言葉が見つからず、ただ黙ってエイブを見ていたが、うつろな目のエイブは、自分の足元を見つめ小さな声で
「…俺はどうなるんだよ。」
と言って、足元の砂を私へと投げ
「ロザリー!!」と私を呼び睨みつけてきた。
睨んだエイブの薄い青い瞳は…それは私と同じ瞳の色で、同じ血筋だと言っているように思え、少し胸が痛んだ。だが、私は冷静だった。むしろ…いつもより落ち着いているように思える。
「…エイブ。私を殺したいと思っているのだろうが、だが私はお前のために、この命を投げ出すことはしない。」
覚悟…。そう、ここに来るときに決めていた、騎士としての覚悟が出来ているからだ。
私は剣を握りなおし、
「私は騎士だ、女であっても愛する人を大切な人を守るためにだけ…この命を懸ける騎士だ。お前が殿下を、そしてミランダ姫をまだ狙うなら、今度は躊躇しない。」
「俺を切るというのか?!俺は!お前と同じウィンスレット家の血を引くものなんだぞ。なぁ、ロザリー。一緒にこの国を取ろうぜ。俺達ウィンスレットの血でこの国を治めよう。」
私は剣をエイブの首元へと向けた。
「何度言ったらわかる。私は騎士だと言っただろう。私が剣を抜くのは私利私欲ためではない。愛する人を大切な人を守るためにだけと!」
「無理するなよ。お前みたいな優しい女が人など切れるかよ。」
妙な笑いを浮かべたエイブだったが、その表情が一変し
「切れるものなら、切って見ろよ。出来やしない!」
そう言って、突然切りかかって来たエイブの首筋に、浅く剣を引いた。剣はエイブの首筋に赤い線をつけたが、血は一滴も零れなかった。それは…エイブがもうこの世にあらざる者になった事をまざまざと私に感じさせ、思わず唇を噛んだ。
「ヒィ~」と叫んだエイブに
「切り落とさなかったのは……血の繋がった従兄弟殿への温情だ。」
エイブは私の言葉など耳に入っていないのだろう、何度も頭と首を触り、繋がっていることを確認しているようだった。
もう、言葉はない。
もう、エイブにかける言葉はない。
私は前を向き、大きな背中を…見つめた。
ミランダ姫を片手に抱えて、切りかかってくる者の頭を、そして足を確実に切ってゆくルシアン王子の姿に大きく息を吐き、心を落ち着かせ、騎士誓いをあらためて、心に刻み付け
ルシアン王子の背中へと、切りかかろうとする男に剣を向け…迷わず足を切った。
「ロザリー!」
ルシアン王子の声に、「はい!」私は大きく返事をすると、微笑まれたルシアン王子は
「お前が俺の後ろにいる限り…俺は安心して前を向いて行ける。」
その言葉に、私も微笑んだ。
愛する人の為、そして大切な物の為とはいえ、人を殺める覚悟は、辛くて、悲しくて堪らない…どんなに非情な輩でもあってもだ。
それは人として当たり前の思いだ。
辛く、悲しい思いを持ちつつも、剣を握る。
……それが騎士ならば…
私は今。本当の騎士になった。
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