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躊躇した唇(6/8)
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車窓から見えるクリスマスイルミネーションが、光の線のように流れていく。
「ごめん、彩矢はクリスマスイルミネーションを見るのが好きなのはわかっているんだけど…今は早く帰りたくて。」
私がクリスマスイルミネーションを好きだということを…そんな些細な事を彰吾が覚えていたことに、私の胸がドキッと音を立てた。そうだった。彰吾は昔からこんな人だった。さりげなく私を気遣い、大事にしてくれていた。
胸の音はドキドキと激しく音を立て初め、静まってと私は胸に手を置いた。
自信を持って良いんだよね。あなたも私とおんなじ気持ちだと思ってて良いんだよね。
赤くなってゆく顔を隠すように、私は光の線へと顔を向け「うん、私も早く帰りたい。」と言えば、窓ガラスに映った私の顔と彰吾の笑った顔が映っていた。言葉はそれだけしか言えなかった。溢れてくる思いは言葉にできなかった。
駐車場に車を止め、エンジン音が消えたと同時に彰吾を呼ぶ大きな声が聞こえた。
「吉崎がようやく帰ってきた!」
その声に彰吾は少しため息をつき
「あのバカでかい声の野郎は、職場が一緒、おまけにこのマンションも一緒の相良。」
そう言って、コンビニの袋を二つ持った男性を指さすと車から降り
「もう午前0時に近いんだぞ。大きな声を出すなよ。」
相良さんと言う人は「悪い、悪い。」と言いながら、コンビニの袋からビールを出して「今から俺んちで三次会やるんだ。古田も安田も高倉も来てんだ。…あ、高倉とは会わなかったか?あいつおまえを誘いに行ったんだが。」
その声に助手席から出ようとした私の体は固まった。
「高倉が?」と言って彰吾は助手席に座っていた私へと視線を移しと、ゆっくりと助手席側へ歩き出すと、「彼女が一緒だから行かねぇよ。」と言いながら助手席のドアを開け私の手を取った。
慌てて彰吾の手を取った私は、転がる様に車から出て
「…ぁ、すみません!挨拶をしようと思ったんですが、出るタイミングがつかめなくて…。」と頭を下げると、相良さんと言う方は「こ、こちらこそどうも。」と言いながら、彰吾の腕を叩き「彼女と一緒だともっと早く言えよ。…なんかすみません。」「彼女がいる俺は週末は貴重な時間なんだ。おまえなんかに取られてたまるかよ。」「くそっ!リア充…。」
ほんの少し前というより…1時間前の私だったら、私の知らない彰吾の生活の一端を見たことで、きっと不安に駆られていた気がする。ずっと怖かった。支社から本社へと変わることで、彰吾を取り巻く環境が変わり、都会の空気に触れた彰吾は、私がみすぼらしく見えるのではないかと勝手に思い込んでいたんだろうな。彰吾自身は何にも変わっていないのに…。
「あっ?!おーい!こっちこっち」突然相良さんが、コンビニの袋2つを右手に合わせて持つと、左手を大きく振った。そのしぐさに相良さんが誰に手を振っているのかわかった。
彰吾もそうなのだろう。私の肩をしっかり抱き
「彩矢、部屋に先に行ってるか?」と聞いてくれたが、私は首を横に振りながら、高倉さんへと顔を向けた。
「ごめん、彩矢はクリスマスイルミネーションを見るのが好きなのはわかっているんだけど…今は早く帰りたくて。」
私がクリスマスイルミネーションを好きだということを…そんな些細な事を彰吾が覚えていたことに、私の胸がドキッと音を立てた。そうだった。彰吾は昔からこんな人だった。さりげなく私を気遣い、大事にしてくれていた。
胸の音はドキドキと激しく音を立て初め、静まってと私は胸に手を置いた。
自信を持って良いんだよね。あなたも私とおんなじ気持ちだと思ってて良いんだよね。
赤くなってゆく顔を隠すように、私は光の線へと顔を向け「うん、私も早く帰りたい。」と言えば、窓ガラスに映った私の顔と彰吾の笑った顔が映っていた。言葉はそれだけしか言えなかった。溢れてくる思いは言葉にできなかった。
駐車場に車を止め、エンジン音が消えたと同時に彰吾を呼ぶ大きな声が聞こえた。
「吉崎がようやく帰ってきた!」
その声に彰吾は少しため息をつき
「あのバカでかい声の野郎は、職場が一緒、おまけにこのマンションも一緒の相良。」
そう言って、コンビニの袋を二つ持った男性を指さすと車から降り
「もう午前0時に近いんだぞ。大きな声を出すなよ。」
相良さんと言う人は「悪い、悪い。」と言いながら、コンビニの袋からビールを出して「今から俺んちで三次会やるんだ。古田も安田も高倉も来てんだ。…あ、高倉とは会わなかったか?あいつおまえを誘いに行ったんだが。」
その声に助手席から出ようとした私の体は固まった。
「高倉が?」と言って彰吾は助手席に座っていた私へと視線を移しと、ゆっくりと助手席側へ歩き出すと、「彼女が一緒だから行かねぇよ。」と言いながら助手席のドアを開け私の手を取った。
慌てて彰吾の手を取った私は、転がる様に車から出て
「…ぁ、すみません!挨拶をしようと思ったんですが、出るタイミングがつかめなくて…。」と頭を下げると、相良さんと言う方は「こ、こちらこそどうも。」と言いながら、彰吾の腕を叩き「彼女と一緒だともっと早く言えよ。…なんかすみません。」「彼女がいる俺は週末は貴重な時間なんだ。おまえなんかに取られてたまるかよ。」「くそっ!リア充…。」
ほんの少し前というより…1時間前の私だったら、私の知らない彰吾の生活の一端を見たことで、きっと不安に駆られていた気がする。ずっと怖かった。支社から本社へと変わることで、彰吾を取り巻く環境が変わり、都会の空気に触れた彰吾は、私がみすぼらしく見えるのではないかと勝手に思い込んでいたんだろうな。彰吾自身は何にも変わっていないのに…。
「あっ?!おーい!こっちこっち」突然相良さんが、コンビニの袋2つを右手に合わせて持つと、左手を大きく振った。そのしぐさに相良さんが誰に手を振っているのかわかった。
彰吾もそうなのだろう。私の肩をしっかり抱き
「彩矢、部屋に先に行ってるか?」と聞いてくれたが、私は首を横に振りながら、高倉さんへと顔を向けた。
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