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1章 葉月と樹
葉月・・・気づく。
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案内された広間は、とっても広かった。
㎡ とか、坪とか、畳とか…さっぱりわからないから、はっきり言えないけど、軽く私の部屋の10倍?ぐらいかなぁ。はぁ~あまりにも広いせいか、落ち着かない。緊張と履きなれないハイヒールで足が震えるよ。でも久住さんに、恥をかかせるわけにはいかない。
ジョセフィーヌさんの側で、この場所に違和感のない女性を演じなくては…
視線の先の、理香さんと久住さんは…大人のカップルだ。
理香さんは美人だし…久住さんはカッコいいし…腕を組む姿はお似合いだ。
それに比べて、大きなジョセフィーヌさんに手を引かれた私は…連行される宇宙人みたい。
理香さんと久住さんのカップルとの差が大きい、ジョセフィーヌさんに申し訳ない。
「葉月ちゃん?どうしたの?…じゃなくて…どうっしたんだい。」
「ジョ…東条さん、なんでもないです。」
「「ふぅ~」」
「なんか…話すの…疲れるね。」
「…はい。」
「でもこれからよ。ほら…あそこにいる人達が久住本家の面々。頑張りましょうね。じゃなくて…頑張ろう。」
「は、はい。了解です。」
ジョセフィーヌさんが見つめる先には、先日会った年配のご婦人と、そして…綺麗な女性。
あの人が…桐谷 由梨奈さんだろうか?
久住さん…
久住さんは、ああいう美人さんが好きなんだ…
私とは…段違い…。
えっ?何…?いや、だから、だから、なにを比べてるの?!
ハイヒールは、私の頭までふらつかせているみたい。あぁぁっ…もう嫌だ。
「「はぁ~」」
と、今度は同時に溜め息をついたジョセフィーヌさんと私は、お互い顔を合わせ
「お互い、悩みが深そうね。」
「…ですね。」
ジョセフィーヌさんは、少し笑うと
「葉月ちゃんがそんな顔で、考え込む姿を見たのは始めてかも?」
私は慌てて両手で、顔を隠し
「ぶ、ぶさいくですか?!」
「もう!葉月ちゃんが不細工なわけないわよ。ほらほら、ちゃんと顔を見せて。」
「はぁ~」
「すごくイイ顔よ。う~ん大人の女性の顔って感じ?」
「大人の女性…ですか?」
「うん、ずばり!」
「ずばり?!」
「恋する女の顔よ!」
「はぁ?!」
「えっ?なに…その腑抜けた声は…」
「だって、恋ですよ。恋!」
「そうよ。恋よ。」
う~ん、コイ…。う~ん、池の鯉しか浮かばない。
「葉月ちゃん。」
「はい。」
「恋って…運命の人と会った瞬間、ふわふわとタンポポの種子のように飛んできて、体の中に入ちゃうの。でもそれはいつ、恋と言う花になるかはわからない。それは、会った瞬間かもしれないし、それは数年後かもしれない。恋の種は気が付かないうちに、ここに…」
と言って、ジョセフィーヌさんは自分の胸を叩いた。
「…胸?」
「そう…胸の中で芽生え、その人を思うと、胸が温かくなったり、ドキドキしたり、そしてチクチクと痛んだりして、どんどん大きくなって行くの。」
「…チクチク…」
「は、葉月ちゃん?どうしたの?」
チクン…とまた胸が痛んだ。
『樹。あたしの彼氏になれ。』
『俺…好きだったんだ。弟の許婚と知っていても……好きだったんだ。』
久住さんの綺麗な瞳から、苦しくて、そして切ない涙が…キラキラと光りながら、久住さんの鼻筋から口元へと零れてゆく姿が浮かんだ。
視線の先には、理香さんと腕を組んだ久住さん。
そして、更にその先には、久住さんが愛していた…ううん、今も惹かれる由梨奈さんがいる。
ズキン…と締め付けられるように、胸が痛んだ。
「ジョ…セフィーヌさん…どうしよう。私…久住さんが…好き……かも知れない。」
「葉月ちゃん…?」
そう口にしたら、また胸に鋭い痛みが走り、あんまり痛くて、胸を押さえ俯いた。
そんな私の頭を、大きなジョセフィーヌさんの手が…そっと触れ
「葉月ちゃん…その辛さ、私もわかるわ。私の胸の中には、30年近く花が咲かない種があるの。」
「ジョセフィーヌさん?!…30年って…まさか…」
「うん、葉月ちゃんが…今思った人よ。30年の間、花どころか、蕾さえつけなかった思いは、時々ね、…ふぅ~と息を吐かないと、苦しくて堪らないときがあるの、長すぎたせいかなぁ。でも葉月ちゃんの種は今、芽生えたばかりだもの、まだ咲かないと決まったわけじゃないわ。」
「…無理です。き、きっと、花なんか絶対咲かない。無理…咲くはずないもの。…ジョセフィーヌさん、恋なんて、苦しいばかりで嫌だ。気づきたくなかったよ。」
「無理なんかじゃないわ。私の種なんか30年、蕾さえつかないまま、葉っぱばっかりで、もうドライフラワーに近い状態よ。でもね…不思議な事に花がなくても、時折甘い香りがするの。だから、希望を持っている。微かだけどね。葉月ちゃん、恋を知るのは辛いことばかりじゃないわ。その人の幸せのために、自分の力が少しでも役にたって、その人の顔に笑顔が広がったら…その笑顔の何十分の一ぐらいかは、自分がその人にあげることが出来た幸せだと思わない。そのときって、すっごく幸せを私は感じるわよ。」
そう言って、ジョセフィーヌさんは前の二人を見ていた。
「ジョセフィーヌさん…」
「葉月ちゃんも思ったんでしょう。久住さんの幸せのために、自分の力が少しでも役にたって、久住さんの顔に笑顔が広がったらって。今は花が咲くかどうかより、まずは、好きな人が幸せになる手助けをしましょう。だって、好きな人の笑顔をみたいじゃない。」
私は力一杯頷いた。
そう、私は久住さんの笑顔がみたい。くしゃくしゃになるような笑顔をみたい。
その笑顔を取り戻すために…ここに来たんだ。
私も、ジョセフィーヌさんが見ている、理香さんとそして…久住さんの背中を見た。
「大丈夫」
そう、ジョセフィーヌさんに聞かれた気がして、私はジョセフィーヌさんを見たが、ジョセフィーヌさんの視線は、前の二人から動いていなかった。
大丈夫…
そうやって、ジョセフィーヌさんは、いつも自分自身に言い聞かせていたんだ。
苦しくて堪らなかっただろうに…私は2年も側にいて、気が付かなかった。
私とジョセフィーヌさんの恋の種が、花をつけることは…
おそらく…
眼を瞑り、心の中で【大丈夫】と二、三度呟き、眼を開けた。
そう、今は…ただ好きな人の笑顔みたいだけ…
「大丈夫。」と今度は口にし、ジョセフィーヌさんの腕を引いて、ジョセフィーヌさんが私を見たと同時に笑った。
そのときの顔は、渋い男の人の顔だったけど、泣きそうな顔で…
「…葉月ちゃんはやっぱり…」
「やっぱり?」
私の疑問に、ジョセフィーヌさんは微笑で返すと
「行きましょう。久住さんを応援しに!」
心の中はまだ…少しチクチクと痛んでいたけど、笑って答えた。
「はい!」
理香さんと久住さんの背中を…、そしてその先にいる二人の女性に…視線を合わせ、大きく深呼吸をしたら、震えていた足は、力強く床を蹴っていた。
㎡ とか、坪とか、畳とか…さっぱりわからないから、はっきり言えないけど、軽く私の部屋の10倍?ぐらいかなぁ。はぁ~あまりにも広いせいか、落ち着かない。緊張と履きなれないハイヒールで足が震えるよ。でも久住さんに、恥をかかせるわけにはいかない。
ジョセフィーヌさんの側で、この場所に違和感のない女性を演じなくては…
視線の先の、理香さんと久住さんは…大人のカップルだ。
理香さんは美人だし…久住さんはカッコいいし…腕を組む姿はお似合いだ。
それに比べて、大きなジョセフィーヌさんに手を引かれた私は…連行される宇宙人みたい。
理香さんと久住さんのカップルとの差が大きい、ジョセフィーヌさんに申し訳ない。
「葉月ちゃん?どうしたの?…じゃなくて…どうっしたんだい。」
「ジョ…東条さん、なんでもないです。」
「「ふぅ~」」
「なんか…話すの…疲れるね。」
「…はい。」
「でもこれからよ。ほら…あそこにいる人達が久住本家の面々。頑張りましょうね。じゃなくて…頑張ろう。」
「は、はい。了解です。」
ジョセフィーヌさんが見つめる先には、先日会った年配のご婦人と、そして…綺麗な女性。
あの人が…桐谷 由梨奈さんだろうか?
久住さん…
久住さんは、ああいう美人さんが好きなんだ…
私とは…段違い…。
えっ?何…?いや、だから、だから、なにを比べてるの?!
ハイヒールは、私の頭までふらつかせているみたい。あぁぁっ…もう嫌だ。
「「はぁ~」」
と、今度は同時に溜め息をついたジョセフィーヌさんと私は、お互い顔を合わせ
「お互い、悩みが深そうね。」
「…ですね。」
ジョセフィーヌさんは、少し笑うと
「葉月ちゃんがそんな顔で、考え込む姿を見たのは始めてかも?」
私は慌てて両手で、顔を隠し
「ぶ、ぶさいくですか?!」
「もう!葉月ちゃんが不細工なわけないわよ。ほらほら、ちゃんと顔を見せて。」
「はぁ~」
「すごくイイ顔よ。う~ん大人の女性の顔って感じ?」
「大人の女性…ですか?」
「うん、ずばり!」
「ずばり?!」
「恋する女の顔よ!」
「はぁ?!」
「えっ?なに…その腑抜けた声は…」
「だって、恋ですよ。恋!」
「そうよ。恋よ。」
う~ん、コイ…。う~ん、池の鯉しか浮かばない。
「葉月ちゃん。」
「はい。」
「恋って…運命の人と会った瞬間、ふわふわとタンポポの種子のように飛んできて、体の中に入ちゃうの。でもそれはいつ、恋と言う花になるかはわからない。それは、会った瞬間かもしれないし、それは数年後かもしれない。恋の種は気が付かないうちに、ここに…」
と言って、ジョセフィーヌさんは自分の胸を叩いた。
「…胸?」
「そう…胸の中で芽生え、その人を思うと、胸が温かくなったり、ドキドキしたり、そしてチクチクと痛んだりして、どんどん大きくなって行くの。」
「…チクチク…」
「は、葉月ちゃん?どうしたの?」
チクン…とまた胸が痛んだ。
『樹。あたしの彼氏になれ。』
『俺…好きだったんだ。弟の許婚と知っていても……好きだったんだ。』
久住さんの綺麗な瞳から、苦しくて、そして切ない涙が…キラキラと光りながら、久住さんの鼻筋から口元へと零れてゆく姿が浮かんだ。
視線の先には、理香さんと腕を組んだ久住さん。
そして、更にその先には、久住さんが愛していた…ううん、今も惹かれる由梨奈さんがいる。
ズキン…と締め付けられるように、胸が痛んだ。
「ジョ…セフィーヌさん…どうしよう。私…久住さんが…好き……かも知れない。」
「葉月ちゃん…?」
そう口にしたら、また胸に鋭い痛みが走り、あんまり痛くて、胸を押さえ俯いた。
そんな私の頭を、大きなジョセフィーヌさんの手が…そっと触れ
「葉月ちゃん…その辛さ、私もわかるわ。私の胸の中には、30年近く花が咲かない種があるの。」
「ジョセフィーヌさん?!…30年って…まさか…」
「うん、葉月ちゃんが…今思った人よ。30年の間、花どころか、蕾さえつけなかった思いは、時々ね、…ふぅ~と息を吐かないと、苦しくて堪らないときがあるの、長すぎたせいかなぁ。でも葉月ちゃんの種は今、芽生えたばかりだもの、まだ咲かないと決まったわけじゃないわ。」
「…無理です。き、きっと、花なんか絶対咲かない。無理…咲くはずないもの。…ジョセフィーヌさん、恋なんて、苦しいばかりで嫌だ。気づきたくなかったよ。」
「無理なんかじゃないわ。私の種なんか30年、蕾さえつかないまま、葉っぱばっかりで、もうドライフラワーに近い状態よ。でもね…不思議な事に花がなくても、時折甘い香りがするの。だから、希望を持っている。微かだけどね。葉月ちゃん、恋を知るのは辛いことばかりじゃないわ。その人の幸せのために、自分の力が少しでも役にたって、その人の顔に笑顔が広がったら…その笑顔の何十分の一ぐらいかは、自分がその人にあげることが出来た幸せだと思わない。そのときって、すっごく幸せを私は感じるわよ。」
そう言って、ジョセフィーヌさんは前の二人を見ていた。
「ジョセフィーヌさん…」
「葉月ちゃんも思ったんでしょう。久住さんの幸せのために、自分の力が少しでも役にたって、久住さんの顔に笑顔が広がったらって。今は花が咲くかどうかより、まずは、好きな人が幸せになる手助けをしましょう。だって、好きな人の笑顔をみたいじゃない。」
私は力一杯頷いた。
そう、私は久住さんの笑顔がみたい。くしゃくしゃになるような笑顔をみたい。
その笑顔を取り戻すために…ここに来たんだ。
私も、ジョセフィーヌさんが見ている、理香さんとそして…久住さんの背中を見た。
「大丈夫」
そう、ジョセフィーヌさんに聞かれた気がして、私はジョセフィーヌさんを見たが、ジョセフィーヌさんの視線は、前の二人から動いていなかった。
大丈夫…
そうやって、ジョセフィーヌさんは、いつも自分自身に言い聞かせていたんだ。
苦しくて堪らなかっただろうに…私は2年も側にいて、気が付かなかった。
私とジョセフィーヌさんの恋の種が、花をつけることは…
おそらく…
眼を瞑り、心の中で【大丈夫】と二、三度呟き、眼を開けた。
そう、今は…ただ好きな人の笑顔みたいだけ…
「大丈夫。」と今度は口にし、ジョセフィーヌさんの腕を引いて、ジョセフィーヌさんが私を見たと同時に笑った。
そのときの顔は、渋い男の人の顔だったけど、泣きそうな顔で…
「…葉月ちゃんはやっぱり…」
「やっぱり?」
私の疑問に、ジョセフィーヌさんは微笑で返すと
「行きましょう。久住さんを応援しに!」
心の中はまだ…少しチクチクと痛んでいたけど、笑って答えた。
「はい!」
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