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1章 葉月と樹
樹・・・決める。
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なにか…ある。
理香さんの腰を引き寄せると、理香さんはギョッとした顔で俺を見た。
やっぱり…
俺は理香さんの耳元に唇を寄せ
「いったい、誰に見せようとしてるんですか?」
「決まってるじゃないか…」と言って、理香さんは俺の頬にキスをした。
俺はハッとして
「由梨奈に見せるためですか…」
「あの角度から見たら、唇にキスしたように見えただろうな。」
慌てて、振り向こうとした俺を理香さんの手が止め
「ゆっくりだ。振り返るなら、ゆっくりとやれよ。」
俺は、その忠告に顔を歪めて軽く頷き、ゆっくりと後ろを振り返ると、青い着物の後姿が見えた。
小さく息を吐いた俺に、理香さんは
「なにがあった。あたしのキスの意図は読めても、お嬢様のキスはなぜ避けることさえできなかったんだ。」
「…それは…」
「プライバシーを守ってやるのはいい。だがな、お前が10年前の恋を終わらせると言うことは、あのお嬢様を自由にしてやる事だと思っているようだが…あのお嬢様には伝わっているようには、見えないぜ。」
「どういう意味ですか?」
「なぁ…あのお嬢様は、10年前のお前にまだ恋をしている。意味はわかるだろう。」
「俺という幻に…」
「そうだ。あの甘甘のお嬢様は、あの頃のお前を今のお前の中に、必死で探しているって感じだ。10年前に、ガキのお前についてゆけないと判断するのはしょうがない。あたしだってわかるさ。未来なんぞまったく見えねぇもんな。だがなぁ、先に自分の立場を確保し…お前がこの家から追い出されようとしているのを、ただ見ているだけで助けようとはしなかった。自分を金づるだと思っている家族ほうが大事だったというのか?なら惚れた男は、どうなんだよ。ふざけんなよ。付いて行けないのなら、その後の樹の立場を守ってやるのが、惚れた男への愛だろう。なのに、そのあとはしらんぷり…それはないだろう。ちゃんと教えてやれ。恋は生ものだ、ここぞという時に、手に入れないと、得ることはできないとな。」
理香さんの意見は過激だが…言えてる。
自分たちで終わらせた恋じゃない、だから恋は…そのときの思いは…そのままだと思っていた。だがそれから10年、自ら動かなかったのなら…もうすでにあの時に…、
終わっていた。
そうだ…終わっていた。
あらためて…そう思った。
「お前は、ちゃんと整理していた。だけど…優しすぎるお前は、自分とお嬢様の立場を重ねて、助けてやりたいと思う心が、まだ恋だと勘違いしていると…この理香さんはすぐにわかったよ。お前自身もわかっただろう。だからふたりで会っても、心は恋と言う熱に揺れなかっただろう?」
俺は静かに頷いた。
「だから、お前の唇にルージュが付いていても、心配はしていなかった。マヌケな野郎だとは思ったがな。でも、このままでは厄介だ、あのお嬢様はあたしが樹に恋人じゃないと鼻から思っていたからな。見せておかないと…あたしという女がすでにいるとな。もうお前にすがるのは止めさせる。あのお嬢さんのことを早く片付けたいんだよ。お前に葉月を守って欲しいんだ。ボンボンが葉月に興味を持っているし、葉月の秘密に気が付きそうでヤバイ。いやボンボンの後ろにいる婆さんに、葉月の事を気づかれたら…あの婆さんは必ず出てくる。葉月を利用しようとしてくるだろう。それだけじゃない、ウッドフォード国だ。セオドール陛下の考えが、はっきりとわからない状況の中だが、セオドール陛下がイーニアス殿下の息子、ワイアット王子との婚姻を認めるとは思えない。だが…どういう形でかはわからないが、いずれイーニアス殿下は動くことは目に見えている。そうなったら、あたしや大吾だけでは難しい、お前がいてくれなくちゃ…。だから…敢えてもう一度聞く。」
理香さんは厳しい顔で
「何があった。お前があのお嬢様のキスを避けきれないほど、動揺した出来事はなんだ。」
理香さんの厳しい顔に、俺は視線を逸らさず見つめた。
俺は10年前の恋に、きちんとけじめをつけたい。それは…由梨奈をこの久住から出してやる事だ。
だがそれは…10年前の俺にまだ恋をしている由梨奈に、俺ひとりが絡むと、うまく行かないだろう。
理香さんは、葉月ちゃんを守りたいから、葉月ちゃんの秘密を俺に言ったように、由梨奈を久住から、そして10年前の恋から出してやりたいのなら、由梨奈の病気の事を言って、理香さんに力を貸してもらうのが最善ではないだろうか。
そうだ…それしかない。だから…
「…由梨奈を助けるために…力を貸してください。」と頭を下げた。
「樹…。お前は…優しすぎる。そこがお前のいい所だが…お前を好きな女にはキツイよな。そんな言葉を葉月が聞いたら…」
「葉月ちゃんが…聞いたらって…どういう意味ですか?」
「あぁ…今日はあたしは失敗ばっかりだ。」と言って空を仰ぎ
「なぁ…樹。」
「はい。」
「お前…葉月より鈍い。」
「えっ?!」
そう言って、理香さんは広間へと歩き出したが、振り返り
「明日、事務所に来てくれ。何時でもいいから…時間がわかるようだったら、連絡をくれ。その時に聞かせろ。あのお嬢様は29だろう…どんだけアマちゃんなんだよ。あたしはそういうのは嫌いなんだよ。10年前にもうすでに終わった恋なのに、いつまでも、いや、より美しくして飾り立てた恋にしてひとり酔って…マジ、ダサイ!酔うのなら酒だろう!」
と言って、俺に軽く手を上げ
「せっかく良い酒が揃ってんだ、飲みまくってから、引き上げる。明日…待ってるぞ。」
理香さん…あなたこそ、優しい。
俺に時間をくれたんでしょう。
でも、大丈夫です。なにが最善か、わかっています。
俺は…逃げない。もう逃げない。この10年逃げ続けていた恋に終止符を打ち、辛くて、悲しくてたまらないだけだったの恋を…幸せだった恋に変える。そういう思い出に変える。
そして背中を押してくれた葉月ちゃんに…
俺の初恋は10年前の17歳の頃なんだと…少し恥しいけど話すんだ。いや話せるようになるんだ。
理香さんの腰を引き寄せると、理香さんはギョッとした顔で俺を見た。
やっぱり…
俺は理香さんの耳元に唇を寄せ
「いったい、誰に見せようとしてるんですか?」
「決まってるじゃないか…」と言って、理香さんは俺の頬にキスをした。
俺はハッとして
「由梨奈に見せるためですか…」
「あの角度から見たら、唇にキスしたように見えただろうな。」
慌てて、振り向こうとした俺を理香さんの手が止め
「ゆっくりだ。振り返るなら、ゆっくりとやれよ。」
俺は、その忠告に顔を歪めて軽く頷き、ゆっくりと後ろを振り返ると、青い着物の後姿が見えた。
小さく息を吐いた俺に、理香さんは
「なにがあった。あたしのキスの意図は読めても、お嬢様のキスはなぜ避けることさえできなかったんだ。」
「…それは…」
「プライバシーを守ってやるのはいい。だがな、お前が10年前の恋を終わらせると言うことは、あのお嬢様を自由にしてやる事だと思っているようだが…あのお嬢様には伝わっているようには、見えないぜ。」
「どういう意味ですか?」
「なぁ…あのお嬢様は、10年前のお前にまだ恋をしている。意味はわかるだろう。」
「俺という幻に…」
「そうだ。あの甘甘のお嬢様は、あの頃のお前を今のお前の中に、必死で探しているって感じだ。10年前に、ガキのお前についてゆけないと判断するのはしょうがない。あたしだってわかるさ。未来なんぞまったく見えねぇもんな。だがなぁ、先に自分の立場を確保し…お前がこの家から追い出されようとしているのを、ただ見ているだけで助けようとはしなかった。自分を金づるだと思っている家族ほうが大事だったというのか?なら惚れた男は、どうなんだよ。ふざけんなよ。付いて行けないのなら、その後の樹の立場を守ってやるのが、惚れた男への愛だろう。なのに、そのあとはしらんぷり…それはないだろう。ちゃんと教えてやれ。恋は生ものだ、ここぞという時に、手に入れないと、得ることはできないとな。」
理香さんの意見は過激だが…言えてる。
自分たちで終わらせた恋じゃない、だから恋は…そのときの思いは…そのままだと思っていた。だがそれから10年、自ら動かなかったのなら…もうすでにあの時に…、
終わっていた。
そうだ…終わっていた。
あらためて…そう思った。
「お前は、ちゃんと整理していた。だけど…優しすぎるお前は、自分とお嬢様の立場を重ねて、助けてやりたいと思う心が、まだ恋だと勘違いしていると…この理香さんはすぐにわかったよ。お前自身もわかっただろう。だからふたりで会っても、心は恋と言う熱に揺れなかっただろう?」
俺は静かに頷いた。
「だから、お前の唇にルージュが付いていても、心配はしていなかった。マヌケな野郎だとは思ったがな。でも、このままでは厄介だ、あのお嬢様はあたしが樹に恋人じゃないと鼻から思っていたからな。見せておかないと…あたしという女がすでにいるとな。もうお前にすがるのは止めさせる。あのお嬢さんのことを早く片付けたいんだよ。お前に葉月を守って欲しいんだ。ボンボンが葉月に興味を持っているし、葉月の秘密に気が付きそうでヤバイ。いやボンボンの後ろにいる婆さんに、葉月の事を気づかれたら…あの婆さんは必ず出てくる。葉月を利用しようとしてくるだろう。それだけじゃない、ウッドフォード国だ。セオドール陛下の考えが、はっきりとわからない状況の中だが、セオドール陛下がイーニアス殿下の息子、ワイアット王子との婚姻を認めるとは思えない。だが…どういう形でかはわからないが、いずれイーニアス殿下は動くことは目に見えている。そうなったら、あたしや大吾だけでは難しい、お前がいてくれなくちゃ…。だから…敢えてもう一度聞く。」
理香さんは厳しい顔で
「何があった。お前があのお嬢様のキスを避けきれないほど、動揺した出来事はなんだ。」
理香さんの厳しい顔に、俺は視線を逸らさず見つめた。
俺は10年前の恋に、きちんとけじめをつけたい。それは…由梨奈をこの久住から出してやる事だ。
だがそれは…10年前の俺にまだ恋をしている由梨奈に、俺ひとりが絡むと、うまく行かないだろう。
理香さんは、葉月ちゃんを守りたいから、葉月ちゃんの秘密を俺に言ったように、由梨奈を久住から、そして10年前の恋から出してやりたいのなら、由梨奈の病気の事を言って、理香さんに力を貸してもらうのが最善ではないだろうか。
そうだ…それしかない。だから…
「…由梨奈を助けるために…力を貸してください。」と頭を下げた。
「樹…。お前は…優しすぎる。そこがお前のいい所だが…お前を好きな女にはキツイよな。そんな言葉を葉月が聞いたら…」
「葉月ちゃんが…聞いたらって…どういう意味ですか?」
「あぁ…今日はあたしは失敗ばっかりだ。」と言って空を仰ぎ
「なぁ…樹。」
「はい。」
「お前…葉月より鈍い。」
「えっ?!」
そう言って、理香さんは広間へと歩き出したが、振り返り
「明日、事務所に来てくれ。何時でもいいから…時間がわかるようだったら、連絡をくれ。その時に聞かせろ。あのお嬢様は29だろう…どんだけアマちゃんなんだよ。あたしはそういうのは嫌いなんだよ。10年前にもうすでに終わった恋なのに、いつまでも、いや、より美しくして飾り立てた恋にしてひとり酔って…マジ、ダサイ!酔うのなら酒だろう!」
と言って、俺に軽く手を上げ
「せっかく良い酒が揃ってんだ、飲みまくってから、引き上げる。明日…待ってるぞ。」
理香さん…あなたこそ、優しい。
俺に時間をくれたんでしょう。
でも、大丈夫です。なにが最善か、わかっています。
俺は…逃げない。もう逃げない。この10年逃げ続けていた恋に終止符を打ち、辛くて、悲しくてたまらないだけだったの恋を…幸せだった恋に変える。そういう思い出に変える。
そして背中を押してくれた葉月ちゃんに…
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