転生したら貧乏男爵家でした。

花屋の息子

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08肉騒動と書いて買取と読む

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「おっちゃんおはようございます」

 ありったけの子供スマイルで肉屋に話しかけたが、おっちゃんの目元がヒクついていた。こんなにも愛くるしい子供の笑顔を前に何って大人だ!

「おはようじゃねぇ!!!ったく朝っぱらからなんだその荷車に積んである魔物の山は!」
「昨日の夜から朝まで、ずっと町の周りをクルクルクルクルやっていました」
「おめぇな~。ここんとこ毎日のように持ってくるガキがいるから、ウチじゃ流石にこんな量は引き取れねぇぞ」
「ノ~~~。それじゃあ、これどうするんですか!!?」
「やるならやるって一声掛けてくれりゃあこっちも準備しておいたものをったく。しかたねぇ。西町の肉屋に持ってくぞ。そっから帰ったら手伝いだからな!」

 おっちゃんの伝手を使ってこの荷物を捌こう作戦が開始された。この街は大きいために同業種の人間が何人も居り。東西南北と中央には必ずと言っていいほど同業主の方がいるらしい。その中でも西町の肉屋はおっちゃんの親戚が営んでいるとかで付き合いが古く、討伐依頼を連名で出したり商品を融通したりと繋がりは一段深いと教えて貰った。今度からはこちらにも来るとしよう。

「お~やってるか」
「何だ?ロイスじゃねぇか。ここんとこ討伐にも顔を出さねぇで儲けてるって聞いたぞ?」
「その儲け話をおめぇにもと思ってな。坊主あいさつしとけ」
「始めまして。冒険者のカーシスと申します。ロイスさんにはいつもお世話になってます」
「お、おぉ。おらぁハンスだ」
「それで早速なんだがな。この坊主が大量に狩って来たもんだからウチじゃ買い取りきれねんだわ。お前のところで買い取っちゃくれねぇか?」
「ロイスがそう言うんだから品物に問題は無いんだな。しっかしお前の所で買取できねぇほどなのか?」
「見れば解るさ」

 そう言うと親指で表に出て見ろと合図を送り外に連れ出す。一畳ほどの荷車にはロイスのおっちゃんの所で降ろしたにも拘らず、未だ4/5ほどのウサギやらネズミが山となっているのだ。

「おいおい」
「この坊主がいつも持ち込んでるから、ウチではこの一分くらいしか買取できなかったんだが、お前の所ならどうかと思ってな」
「ぁあ、いや俺のところでも半分・・もう少し買い取れるか。それでも全部は無理だ」

 西町でも残りを処理できなかった事から、東町にある肉屋にも顔を出してようやく捌ききった。
 それからも大変で、付いて来て貰って交渉までやって貰ったものだから、しれっと「帰ります」とも言えずにおっちゃんの解体作業を手伝う事2時間、ようやく開放された頃にはお日様が真上に来るほどであった。

「やば。眠い。ひたすらに眠い」

 確かに手伝うとは言ったが徹夜明けの子供を扱使うか普通?・・・これからはきちんと予定報告してから狩りに出かけよう。
 そうして宿は前回と同じギルド前の宿屋。前回と同じで5日の連泊にして早々にベッドへダイブした。またもや35時間ぶりの寝床に意識を吸い取られるまでに要した時間は5秒でことが足りた。
 おやすみなさい。



 腹が減った。眠い目を擦りながら目を覚ますと部屋の中は真っ暗で、外に目をやれば街灯代わりのランタンが闇に染まった町を照らしている。

「何時だろ?まだ食事できるかな?」

 宿の食堂は酒場のような事も兼ねているので、あまり遅くなると酒飲みに占領されて食事が取れなくなる。そして酒が入ると引き起こされるのがトラブルと言うものであって、とくに俺の様な者を見ると図体だけデカくなった様なヤツは絡みたくなるみたいだ。
 なので酒が入ったヤツには近づかないようにしているが、今は腹が空いて寝る事が出来なさそうなので、食事を取るために一階へと降りていく。
 随分とガヤガヤしている所を見ると酒が回った時間帯なのだと思い知らされる。俺にとっては厄介な時間帯だ。

「親父さん食事がしたいんだけど、お願いできますか?」
「ああ、ここのカウンターにしてくれるか?向こうのテーブルじゃ絡まれるかもしれないからな」
「ありがとうございます」
「カーシス。あんた昨日は一晩中外に居たって?肉屋のボールがこき使ったって言ってたよ」
「迷惑料に手伝ってけって言われて。量が量だったのでボールさんにも迷惑掛けちゃいました。明日謝りに行って来ます」
「そんなのは良いんだよ。肉屋に肉を持って言って悪い訳じゃないんだし、ここんとこアンタが頑張ってるお陰でボールんところは肉が売れてるんだから」

 女将さんはそう言うとバシッと背中を叩いてテーブル席の注文をとりに行ってしまった。痛いので背中を叩くのはやめて頂けるとありがたい。
  親父さんの料理に舌鼓を打ちながらお替りをしてまで食べた腹は、腹鼓が打てるように膨れる事になった。やはりこのように門前に構える宿は料理が美味くなくてはならないのだろう。
 重くなった腹をさすりながら「ごちそうさま」声を掛けて部屋に戻る。この腹で厄介事に巻き込まれなかったのは日頃の行いの賜物であろうか?
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