99 / 121
99出来た人から
しおりを挟む
ゾロゾロとおっさんにあんちゃんが大八車を引き、それを引き連れた俺は実験住宅へと向かった。
まったく戦士団は女性率もそれなりに多いのだから輸送隊にも居たって良いだろと言いたくなるが、バフタイプの身体強化でもない限りは、単純な体格が勝る男どもの方が向く仕事という事もあり女性隊員がいない。
労働基準法でも女性は50キログラムまでに制定されてるってマニュアルのどっかに書かれてたっけ。持つ訳じゃないけど浮かすくらいなら100キロ超えた物でも扱ってたから、男も100キロくらいまでって法整備してくれないかな?何って同僚と冗談言ってたっけ。
そしてこの輸送隊員は魔法が苦手な訳ではなく、むしろ超重量物を動かす時にはバリバリ身体強化を使う事から、マジモンの人間重機としての位置付けである。
家の近くになると輸送だけでなく建築にも関係する男たちから声が上がり始めた。
「壁が違うぞ屋根も板張りだ」
「あの屋根から突き出たのは何だ?」
「お前たちな~。そんなに騒ぐほどでもないだろう?」
「外はそんなに大した事は無い。すごいのは中だ。中」
実験住宅は遠目から見れば、それ程違和感が無いようにしているが、間近で見れば所々そのおかしさは隠しようが無い。煙突とか。
「大した事無いって言われてしまいましたけど、外もちゃんと手を加えてあるんですよ。隙間が空かないように「鎧張り」と名付けた方法を取っています」
「ほー」
「中の詰め物が出ないための工夫なんですけどね」
「詰め物?壁はあの板だけではないのか?」
「ええ。僕は暑いのも寒いのも嫌いなんです。板壁だけだと夏は暑いし乾季は隙間から風が入ったりするので寒いですから、それを防ぐ工夫をいくつかしてあります」
この家は生垣などはめぐらせていないので、敷地内には裏の畑以外どこからでも入れてしまうが、一応入り口にしようかなという場所から中に招き入れた。
「全員一遍に中に入る訳にはいきませんから、先に軟化の話をして順番に入ってもらいましょうか」
「どちらも興味があるが、同時にできる訳でも無いからな」
「では早速に。1本持って来て貰えますか」
丸太、俺それをぐるりと取り囲む円陣となり、俺に注目されるのは気恥ずかしい感じだった。
「軟化は魔力を使いますが魔法では無いです」
「???」
「魔法を出す時のように魔力を相手、今回は丸太ですね。これに当てるだけです」
俺が丸太を小突くと反っていた部分はしんなりと重力に負け地面に付く。「触ってみて下さい」と言ったらワラワラとゾンビにでも囲まれるかのように円陣が縮まってきて恐怖だったのはお笑いだ。
「「柔らかい」」と軟化丸太をプニプニ突っつく男たちが「俺にも触らせろ」「後が支えてんだぞ」と後ろの声に押され下がって行く。
軟化自体危うく廃れるところだった技術なので珍しいんだな。
一人2本の丸太を持ってばらけて貰った。何も無い庭先とは言えどこれだけの人数で行なうとなるとギリギリで一部道に溢れた。折角入り口予定から入ったというのに敷地から溢れるとは・・・僻地だからまあいっかwww
軟化の方法は地面にイメージ図を書きながらの説明をしたよ。解かりづらいからね。
「木の中にはこのように魔素が入っています。これに魔力を当てると外に飛び出て行くので、魔力だけを出す事を考えてやって下さい。魔力さえ出せれば誰にでもできますが、魔力が出せなければ覚えられないです」
「その魔力を出すっつうのが良う分からん」
「これだけは感覚なので、こうしたら良いとかが無いんです」
「そ、そうか。ん~そうか」
魔法が得意な事と軟化が使いこなせるのとは、その方向性・・・いや方角が少し違うので、前回も全員が習得できる物ではなかったから、今回どの程度の人数が習得できるのかも全く分からない。
「はぁーっ」と気合を入れるようにしている者や、手を広げて瞑想する者、思い思いに体から魔力を出すようにしているが皆苦戦している。そんな姿を見るのは少し申し訳ない感じがしてしまう。
「最初から魔力の流れみたいな物を感じる事ができれば良いんですけど・・・」
「いや良いんだ。君が教わったという方法に比べれば、十分分かりやすい」
あの時習得できたのはある意味運が良かったとしか言いようが無い。天才肌の人間から教わるのが大変なのは、こう言う事だったかと実感したからな。
先輩の言は異世界でも有効だ。
『自分にできることが人にできると思うな。人に教える時は小学生に教えるつもりでやれ。相手が中学生レベルまでできそうならそれでも良いが、どの程度理解できるか分からない内から、大学の講義みたいな教え方で理解してもらえる訳が無いだろう』
すんません先輩。高校の授業くらいまでしか落とし込めませんでした。
「エド君。出来たみたいだ」そんな事を思っていた俺に一人の男が声をかけてきた。どうだろうと見てみると、横たわった2本の木材は軟化が効いているようで、刈り取られた草のようにしんなりと地面にその重さを預けていた。
「大丈夫です。できてます」
「これは難しい。君が説明できないのも分かるよ。一本でも出来たら次も出来るのかと思ったけど、次のが出来るまで5回も失敗したからな」
「慣れてくると失敗しなくなりますから大丈夫ですよ。今でこそウチにいる二人も失敗しませんけど、最初の内は何度も失敗してましたから」
「失敗した所で何も起こらないのだから、失敗を恐れなくて済むのはありがたいがな」
「失敗するたびに何か起こったら、こんな事出来ませんからね」
そう話している内にも何人かは成功者が出始めた。そして出来た人間に「何故出来た?」と聞いては「分からん」と返されるのは、もはや「コントか」と突っ込みたくなる様子でしかない。
「エド~どう?」
「ちょうど良かった。ドリューが後見てあげてくれる?出来た人に家の方案内するから」
「わかったわ・・・見られて困る物は無いけど」
「みんなの部屋に入れないから心配しなくても良いよ」
年頃の娘の部屋に男集団で入る気は無いので心配しないで貰いたい。見せるのは俺の部屋だけだ
まったく戦士団は女性率もそれなりに多いのだから輸送隊にも居たって良いだろと言いたくなるが、バフタイプの身体強化でもない限りは、単純な体格が勝る男どもの方が向く仕事という事もあり女性隊員がいない。
労働基準法でも女性は50キログラムまでに制定されてるってマニュアルのどっかに書かれてたっけ。持つ訳じゃないけど浮かすくらいなら100キロ超えた物でも扱ってたから、男も100キロくらいまでって法整備してくれないかな?何って同僚と冗談言ってたっけ。
そしてこの輸送隊員は魔法が苦手な訳ではなく、むしろ超重量物を動かす時にはバリバリ身体強化を使う事から、マジモンの人間重機としての位置付けである。
家の近くになると輸送だけでなく建築にも関係する男たちから声が上がり始めた。
「壁が違うぞ屋根も板張りだ」
「あの屋根から突き出たのは何だ?」
「お前たちな~。そんなに騒ぐほどでもないだろう?」
「外はそんなに大した事は無い。すごいのは中だ。中」
実験住宅は遠目から見れば、それ程違和感が無いようにしているが、間近で見れば所々そのおかしさは隠しようが無い。煙突とか。
「大した事無いって言われてしまいましたけど、外もちゃんと手を加えてあるんですよ。隙間が空かないように「鎧張り」と名付けた方法を取っています」
「ほー」
「中の詰め物が出ないための工夫なんですけどね」
「詰め物?壁はあの板だけではないのか?」
「ええ。僕は暑いのも寒いのも嫌いなんです。板壁だけだと夏は暑いし乾季は隙間から風が入ったりするので寒いですから、それを防ぐ工夫をいくつかしてあります」
この家は生垣などはめぐらせていないので、敷地内には裏の畑以外どこからでも入れてしまうが、一応入り口にしようかなという場所から中に招き入れた。
「全員一遍に中に入る訳にはいきませんから、先に軟化の話をして順番に入ってもらいましょうか」
「どちらも興味があるが、同時にできる訳でも無いからな」
「では早速に。1本持って来て貰えますか」
丸太、俺それをぐるりと取り囲む円陣となり、俺に注目されるのは気恥ずかしい感じだった。
「軟化は魔力を使いますが魔法では無いです」
「???」
「魔法を出す時のように魔力を相手、今回は丸太ですね。これに当てるだけです」
俺が丸太を小突くと反っていた部分はしんなりと重力に負け地面に付く。「触ってみて下さい」と言ったらワラワラとゾンビにでも囲まれるかのように円陣が縮まってきて恐怖だったのはお笑いだ。
「「柔らかい」」と軟化丸太をプニプニ突っつく男たちが「俺にも触らせろ」「後が支えてんだぞ」と後ろの声に押され下がって行く。
軟化自体危うく廃れるところだった技術なので珍しいんだな。
一人2本の丸太を持ってばらけて貰った。何も無い庭先とは言えどこれだけの人数で行なうとなるとギリギリで一部道に溢れた。折角入り口予定から入ったというのに敷地から溢れるとは・・・僻地だからまあいっかwww
軟化の方法は地面にイメージ図を書きながらの説明をしたよ。解かりづらいからね。
「木の中にはこのように魔素が入っています。これに魔力を当てると外に飛び出て行くので、魔力だけを出す事を考えてやって下さい。魔力さえ出せれば誰にでもできますが、魔力が出せなければ覚えられないです」
「その魔力を出すっつうのが良う分からん」
「これだけは感覚なので、こうしたら良いとかが無いんです」
「そ、そうか。ん~そうか」
魔法が得意な事と軟化が使いこなせるのとは、その方向性・・・いや方角が少し違うので、前回も全員が習得できる物ではなかったから、今回どの程度の人数が習得できるのかも全く分からない。
「はぁーっ」と気合を入れるようにしている者や、手を広げて瞑想する者、思い思いに体から魔力を出すようにしているが皆苦戦している。そんな姿を見るのは少し申し訳ない感じがしてしまう。
「最初から魔力の流れみたいな物を感じる事ができれば良いんですけど・・・」
「いや良いんだ。君が教わったという方法に比べれば、十分分かりやすい」
あの時習得できたのはある意味運が良かったとしか言いようが無い。天才肌の人間から教わるのが大変なのは、こう言う事だったかと実感したからな。
先輩の言は異世界でも有効だ。
『自分にできることが人にできると思うな。人に教える時は小学生に教えるつもりでやれ。相手が中学生レベルまでできそうならそれでも良いが、どの程度理解できるか分からない内から、大学の講義みたいな教え方で理解してもらえる訳が無いだろう』
すんません先輩。高校の授業くらいまでしか落とし込めませんでした。
「エド君。出来たみたいだ」そんな事を思っていた俺に一人の男が声をかけてきた。どうだろうと見てみると、横たわった2本の木材は軟化が効いているようで、刈り取られた草のようにしんなりと地面にその重さを預けていた。
「大丈夫です。できてます」
「これは難しい。君が説明できないのも分かるよ。一本でも出来たら次も出来るのかと思ったけど、次のが出来るまで5回も失敗したからな」
「慣れてくると失敗しなくなりますから大丈夫ですよ。今でこそウチにいる二人も失敗しませんけど、最初の内は何度も失敗してましたから」
「失敗した所で何も起こらないのだから、失敗を恐れなくて済むのはありがたいがな」
「失敗するたびに何か起こったら、こんな事出来ませんからね」
そう話している内にも何人かは成功者が出始めた。そして出来た人間に「何故出来た?」と聞いては「分からん」と返されるのは、もはや「コントか」と突っ込みたくなる様子でしかない。
「エド~どう?」
「ちょうど良かった。ドリューが後見てあげてくれる?出来た人に家の方案内するから」
「わかったわ・・・見られて困る物は無いけど」
「みんなの部屋に入れないから心配しなくても良いよ」
年頃の娘の部屋に男集団で入る気は無いので心配しないで貰いたい。見せるのは俺の部屋だけだ
16
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか
宮崎世絆
ファンタジー
うたた寝していただけなのに異世界転生してしまった。
公爵家の長女レティシア・アームストロングとして。
あまりにも美しい容姿に高い魔力。テンプレな好条件に「もしかして乙女ゲームのヒロインか悪役令嬢ですか?!」と混乱するレティシア。
溺愛してくる両親に義兄。アームストロング公爵の他に三つの公爵家のそれぞれ眉目秀麗な御子息三人も、才色兼備で温厚篤実なレティシアに心奪われ三人共々婚約を申し出る始末。
十五歳になり、高い魔力を持つ者のみが通える魔術学園に入学する事になったレティシア。
しかし、その学園はかなり特殊な学園だった。
全員見た目を変えて通わなければならず、性格まで変わって入学する生徒もいるというのだ。
「みんな全然見た目が違うし、性格まで変えてんだからもう誰が誰だか分からない!! 乙女ゲームの舞台かも知れないなんて知ったこっちゃない! 恋愛ど素人には荷が重いから、レティシアとバレずに平穏な学園生活送りたい! お願いだからモブとして学生生活エンジョイさせて!!」
果たしてレティシアは正体がバレる事なく無事卒業出来るのだろうか?
そしてレティシアは誰かと恋に落ちることが、果たしてあるのか?
レティシアは一体誰の手(恋)をとるのか。
これはレティシアの半生を描いたドタバタアクション有りの痛快学園コメディ……ではなく、れっきとした異世界ファンタジー感のある恋愛物語である。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情され、異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる