異世界生活物語

花屋の息子

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27おいたはダメだが役に立つ

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 曾祖母が手渡してきたのは子供のこぶし大の石で、俺の持ち歩いているのは”おはじき”サイズの小さな石だ。
 石英のような重みは無いので常に両腰の巾着袋に入れて持ち歩いている。散々近所の子供たちから巻き上げた石が、まさかの魔石だとは思いも寄らなかったが、魔素を吸収するってだけでお宝では無いのか?との疑念も付きまとう。

「エリザさん、吸った魔素はどうなるの?」
「握って魔法を使えば周りの魔素に関係なく魔法に使えるわね~、そのままでもゆっくりと染み出して魔素をほんの少しずつ増やしてくれるわ~」

 これ全部に吸わせてから家の中に置いておけば、たまに魔風穴に通うだけで良くなるって解釈で良いのかな?今の手持ちだけで多分100個くらいは有るだろう。問題はどのくらい染み出るのかと言う事だが。

「これに吸わせて家に置いて措いたら、たまに魔風穴で吸わせるだけで、いつも魔風穴に行かなくても良いと思います?」

 手持ちの収魔石を見せてみた。その残念な子を見るような目は忘れられないと思う。

「こんな物どうしたの~?、いくら小型の物と言ってもあなたのような子供が^、魔物狩りに目覚めたとは思えないのだけど~?」
「してませんよそんな事。東の草原に行けば結構拾えるんです」

 実際山ほど拾える訳ではないが山菜摘みは下を向いているから、その根元にあれば5個や10個くらいは拾ってこれるのだ。それより気になったのは、これって魔物から取れるの?

「あの時の火に巻かれた小物の残骸って事ねぇ~」

 あの時とは浮気事件の事だろう。曾じいちゃんの悪戯おいたが無ければ、この魔石も拾う事が出来なかった訳で、今更関係のない俺の役にはたってくれたと言うべきなんだろうな。

「あれだけの草原を焼く魔法って、すごいですね」

 化け物かとは言わない。そこまで自殺願望はないのだ。

「あそこを全部私の魔法で燃やした訳じゃないわよ~。でもまあそうでも無いとも言い切れないのだけど~」

 要約すると、東区画に逃げた曾祖父に火の魔法をぶつけた。時期は乾季の終わりで森の中と言えど乾燥していて下草にも燃え移り。その結果として森が燃え落ちたのが事の顛末だという。
 3キロ程度が全焼・・・一部無事だけど、それ程の山火事に巻き込まれて曾祖父が生きていた理由は、魔素風が吹き上がっている魔風穴があったからに過ぎない。
 魔風穴から立ち上る魔素は周囲の物を押しのけているようで、火や熱なども例外ではなく入ってくる事は無いらしい。一種のバリアみたいな物だ。
 その周囲は地下の温度と同じで年中一定だと言う。遠くで見た事はあっても近づいた事は無かったので初耳情報だった。
 山で偶にあるという風穴と同じなんだな。それにしても西の外れから東まで追いかけて、それで東の草原にあった森に火を付けながら曾祖父ちゃん追い掛け回すとか怖すぎです。
 アメリカとかのニュースで見る森林火災みたいな状態になるほどって、どれだけ放火したのだろうか?それでも残る魔風穴のバリアが凄い。お陰で木がほんの少し残ったのだから。
 可燃物の前で火の魔法ぶっ放は止めましょう。この世界の植物は魔素があるから成長が早い事は話したと思うが、いくら強健な植物でも種や根までもすべて燃え尽きてしまえば、元のように復活する事など出来る訳は無いのだ。

「あの後数年は草一本生えてこなかったわぁ~」

 そんな事自慢にもなりません。だから狂気の魔女みたいな言われ方するんです。

「それよりも、何でそんな簡単事で魔力を上げられるのに、みんなは魔力を上げないの?」

 素朴な疑問だ。収魔石よろしくここに来るだけで魔力アップ出来るなら、みんな通えば良いじゃないか?東の草原にある魔風穴なんて、ある意味チートスポットでしかないだろ。それなのに母みたいに魔力が弱いのが当たり前とかおかしくないか?

「そんなに簡単じゃないわよ~、魔風穴から出ている魔素を体に馴染ませたり~、体の中でクルクル回したりしないといけないわ~、タダここに居るだけで魔力が上がるならみんな来るわよ~」

 まあ何かしらあると思っていたけど、やっぱり面倒臭いのがあったんだな。ただで出来るなんて思っていなかったけどさ。本当だよ。ウンホント。

「さぁ~、そこに立って~」

 言われるがままに魔風穴の口元に立ってみるが、うん。何にも感じないし体に変化が起きてる感じもしない。風穴なんて言うほど風が出ている訳でもない。
 お腰に付けた皮袋からミニ収魔石を出してみると、すぐにも透明に色が変るのだから、魔素が出ている事は間違いの無いんだろう。でも何も感じないのだ。

「何にも起きませんけど」
「そうね~、立っただけで出来たらみんなやってるわよ~」

 出来ないのが当たり前みたいに言われても。曾祖母の顔を見る限り教える気も無いみたいに見えるし、まるで自分で考えろと言わんばかりだ。
とりあえずもったいないから収魔石には、めいいっぱい魔素を取り込んでもらうとしよう。ザラザラと魔風穴の口元に皮袋の中身をぶちまけた。うん綺麗なもんだ。
 収魔石をボーっと見ていたら何か心が落ち着いた。寺にでもいる感じといえば良いかもしれない。

「座禅かな」

 ボソッとつぶやいたが心の中が洗われるような感じがしたのだ。ならば本当に洗ってしまえば何か見えるのかもと思ったので、今のつぶやきはそうして出てきた言葉だったと思う。
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