異世界生活物語

花屋の息子

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43ハンドクリームで騒ぎが起こる

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 数日に渡って試行錯誤を繰り返した.灰を入れたり炭を入れたり薄めてみたりと、結果として全部ダメでした。
 ここまで来ると本当に除草剤成分が含まれているとしか思えない。一度として成功の影すらチラつかないのだ。
 もう一案の黒スープの再利用も、骨ペーストがまだ残っているので暫くは試験も出来ないのだから、本当にお手上げです。
 骨ペーストを与えたカイバクは、今の所大きな変化も無く生育をしている。まあ骨からリン分が供給されているとして、その結果が目に見えて現れるのは、穂が出て実をつける頃だろう、それまで要観察で行こうと思う。
 この数日間の失敗とともに良いニュースもあるのだ。脂から作ったロウソクとオイルクリームは、骨の失敗を大きく上回る成果を上げてくれた。
 ロウソクに関しては火をつけてから2日燃え続けた。驚異的な燃費の良さに驚かされたのだが、本当の驚きは他にあった。なんと火を点けていない方の固体油が、3日目辺りからかなりの硬さを持つようになってきたのだ。油にした中に残っていたのだろう、水分が表面に浮き出してしっかりとした物になっていた。
 ロウソクとして使用中の方は牛脂でも触るかのような柔らかさで、水分は全く出てきていなかったが、まあ出ていたら火が消えて失敗になるのだから、綱渡りレベルの実験だったのは確かだが。
 硬化した方でも燃焼実験を追加で開始したが、油が固まっている事以外は性質に違いは無さそうだが、これならば円柱状のろうそくの型を作って、一時間ロウソクなども開発できるかもしれない。ついにこの世界にも目に見える時間と言うものをもたらす事が出来そうだ。
 何百年後かの子孫達よ。カップラーメンを美味しく食べるたびに、俺の事を思い出して賞賛してくれ・・・・・・ 約束の時間に遅れて彼女に叱責される男に恨まれなければ良いな。
 もう一つのオイルクリームだが、三日で固まってしまうので、たびたび湯煎が必要だが、ヒビとアカギレが目立つ祖母と母の手を劇的に改善してくれた。人間の治癒力が優れていたのか、クリームに効果があったのかまでは解らなかったが非常に喜ばれた。
 その一番の理由が、回復魔法にあった。
 回復魔法を多用すると、患部以外にまで作用して時折変調をきたす事がある。過回復といった事だろうが、これになると1日中二日酔いのような体調不良が続くのと、不調中の回復魔法の効きが恐ろしく悪くなるデメリットが隠れていた。
 万能回復だと思ってたけど、そんなに問屋が安売りする訳が無いって事だろう。そのお陰かクリームの評価は高かったのだから、魔法の副作用さまさまなのかもしれないが。
 完全に固まると水分との結合が切れてしまうのか、クリームとして使う事が出来なくなるので、2日毎には必ず湯煎しているが、固化した物は煮溶かしても溶けないでカチコチだったのは面白い発見だ。
 が、「あのクリーム、もっと作りなさい」っと朝も早くから、寝ていた俺はそう起こされた。骨の結果的な失敗から、さらに三日後の朝の出来事だ。
 何故そうなったのかは、ここ数日で母の手に起こった手荒れの回復が、井戸端会議の最重要議題として上がり近所の女性陣から質問攻めに会い、母がクリームの流出を許した事に始まる。
 理由は不明ながらも塗った者の手が回復し、評判が評判を呼んでもっと作れと言われているそうだ。
 母に渡した物ですら有名な青い缶5~6個分の容量が有ったはずだが、用法用量なんて概念も無いだろうから、無駄に付けた人が多かったのかもしれないな。いくら良く延びると言っても手が油っぽくて仕事がしづらいだろうに。
 一種の人体実験。自分が被験者の第一席にいるのだから批判は受けないだろうの、途中にしか無いので本当ならまだ世に出してほしくなかったのだ。肌に合わなかったり体調が悪くなっても俺や家族なら簡単に止められるが、拡散してしまったら火を消すのが大変だからだ。
 ここ数日は早起きを止めていたため、そんな事を考えながら、やっと目が覚めた。

「ママ、おはよう」

 母よ。どんな顔をして息子を起こしに来ているのかね。
 何とも言い表せない顔で俺を見る母がそこにいた。どの道いつの世もどの世界でも、女性の美に水を差すなどと言う、暴挙を起こせる訳が無いだ。
 それに問題が無い訳でもない。他人のためにまたウチのスープが何日も食卓から消えるのは甚だ迷惑な話しだし、このためにウチの金属利用が鍋に限定されるなんてことはあってはならない。俺も使いたいからなんて言わないよ・・・ホントダヨ。

「早く起きてクリームを作るのよ。ご近所の皆からも『いつ出来るの』って言われてるんだから」

 溜め込んだ仕事を持ってくる上司みたいだな。その前に相談なりしてくれれば良いのに、いまさら言っても始まらないか。

「すぐには無理だよ。皆さんには僕から説明するから連れてって」

 母に「なぜよ」と言われる前に、説明は俺がすると言って措かねば説教を喰らいそうな勢いだった。
 そうして日中の洗濯に出かける母に同行して、川まで来た俺は大勢の女性陣に囲まれた。揉みくちゃにされクリームをと言われるこの光景は、子供の頃にホラー映画を見た時の事を思い起こさせる、今夜はオネショ確定かな?。

「ちょ、ちょっと、皆さんお静かに。シャラ~ップ」

 は~は~、意外にシャラップの反応が無い?異世界の言葉でも大丈夫なのかな?、そんな事どうでもいいか。
 それにそんなに揉みくちゃにされて話が出来る訳が無いでしょ。子供をなんだと思ってるのかね。
 肉屋にレシピを渡せば良いって?安全が確保できていない物を商品にするのは・・・建て前。
 多分現金化できるので、儲けの種を渡すのはモッタイナイ・・・本音。
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