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70入れ物を作る
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さて、入れ物を作る前に用意しなければならない物があるのだが、それは入れ物を入れる入れ物・・・地球で言ったら輸送用段ボール箱とでも思って欲しい。これが実験と実用を兼ねた今回一番の代物なのだ。
と言っても、ほぼ木箱なのだが、少しだけ細工がしてある物を考えている。
薪に軟化をかけて厚切りの板を何枚か作って底板用に溝を掘り込む。さらに5cm程度空けてもう1つ。これが今回のミソになるのだ。
横面は枡を組むのと同じように凹凸を付けてはめ込み、底に底板をスライド式にはめ込んだらチャチャラチャッチャチャチャン、吸魔石~。これをジャラジャラと入れる。そして二つ目の溝にはめ込むのが、パンチ穴のように穴を開けた二重目の底板。魔素の性質は理解していないが穴があった方が洩れ易いだろう。
開けてあった側面をはめたら外装の箱の完成だ~。
本命の入れ物も前回は枡を使ったが、今回は少し趣向を変えようと思っている。
とは言っても大口納品になる軍用は枡のままにするしか無いので小売用だけなのだが、まさかバケツ型にするわけにもいかないだろう。
小売用で今回やろうとしているのは『まげわっぱ』。いやなんちゃってまげわっぱと言った方が正しいのだろうか。
軟化で柔らかくなった薪をナイフで剥ぎ取り太い枝を同じ要領で輪切りに削ぐ、剥ぎ取った薪の薄板にナイフで薄っすら痕をつけたら、そこに輪切りをはめ込んで巻く。
本物は桜の樹皮で縫い付けたりするのだが、これをさっき作った箱に入れると・・・入れると・・・おっ、何と言う事でしょう。軟化で抜けた魔素が吸魔石から出る魔素を吸って再硬化する。すると溝にきちっとはまった底板がストッパーになって、戻りを邪魔する。
軟化だけでも一度形を決めてしまうと再硬化時には戻りは感じられずに、元からその形だったかのようにその形を保ってくれるのだが、底板が無ければ入れ物にはならない訳で丁度良かったというのもあるのだ。
しかし、これも全く問題が無い訳ではない。魔石箱に入れてから硬化するまでにおおよそ20秒~25秒程度かかるので現状作っている量なら問題はあまり無いだろうが、これがもっと増えてくるとなると入れ物作りだけでも結構な手間になりそうな気がする。
「とは言ってもウェインには軟膏のほうに専念して貰いたいし、いくらなんでも8歳の姉ちゃんにやらせるのもな~。丸めるまでやったら箱の中に持っていて貰うのだけでも頼むか」
しばらくは面倒事だったりするこの作業も、行く行くは夫婦でイチャイチャやっていく事だろう。
そうなって欲しいと思う5歳児であった。
油は大きなゴミと汚れが水に沈み、上澄みにはそれなりに綺麗になった油が浮いている。面倒ではあるがこれをもう一度鍋を変えて、さらに不純物を取り除く。柄杓や匙の変わりに今作ったまげわっぱを使ってみようと思う。
これは形状記憶のようなものが、万が一にも中身のせいで解けてしまわない様にとの試験をするためだ。けして持ってくるのが面倒だった訳ではない。
恐る恐る油の中に器を入れてみるが、取り分けてすぐに変化はしないようなので一安心した。
形状記憶合金のようにお湯をかけたら元に戻ってしまうのでは、入れ物を考え直さなくてはとも思っていたからだ。
「水とお湯も入れて様子見た方が良いな。ダメなら縫い合わせるか他のを作るか。出来ればこのまま行きたいけど、頼むぞまげわっぱモドキ」
まげわっぱモドキを見ながらそうつぶやいた。
再度水を替え油の精製をする間、香草の調合をする事にした。前回軟膏を作った時に使った物は良い匂いのモノを適当に入れたが、今回はより香りにこだわってみようと思ったのだ。
「薄荷系の爽やかなモノ?と、甘い系のモノが良いかな~」
薄荷っぽいモノは地球のミントとは違って、どうしてもそのスッキリした香りの中に濁った土のようなニオイが混じるので、あまり多くは入れられない。
甘い系はリンゴとパイナップルを混ぜて薄くした香りの草と、微かにブドウっぽい香りがする香草の二種類だが、どちらも香りが薄いのが難点で、帯とたすきと言うよりも髪ゴムに短し輪ゴムに長しと言った感じだ。要はメチャクチャ短いじゃないかと言う事だ。
「蒸留器でもあれば、こんなんでも一気に解決するんだろうけど、原理は知ってても構造は知らないしな~」
昔、知り合いに銅製の蒸留器をインテリアにしている人がいたが、こうなる事が解かっていればもっとしっかり見ていただろうが、当時は興味も無かったので「蒸留器ってこんな風なんだな」程度にしか覚えていない。当然内部の構造など何一つ知らないのだ。
「まったく10年前の俺を殴ってやりたいぜ」
香りの研究はこれからも継続して行かなければならなさそうだ。
「完璧にはまだまだって事だな」
今回は小売用はアップルパインの香りとミントも二種類で香りを付ける事にして、鍋の方に目を移すと沸騰している。カマドの燃え残りと炭を掻き出して火を落とす、さて冷めたら調合だな。
と言っても、ほぼ木箱なのだが、少しだけ細工がしてある物を考えている。
薪に軟化をかけて厚切りの板を何枚か作って底板用に溝を掘り込む。さらに5cm程度空けてもう1つ。これが今回のミソになるのだ。
横面は枡を組むのと同じように凹凸を付けてはめ込み、底に底板をスライド式にはめ込んだらチャチャラチャッチャチャチャン、吸魔石~。これをジャラジャラと入れる。そして二つ目の溝にはめ込むのが、パンチ穴のように穴を開けた二重目の底板。魔素の性質は理解していないが穴があった方が洩れ易いだろう。
開けてあった側面をはめたら外装の箱の完成だ~。
本命の入れ物も前回は枡を使ったが、今回は少し趣向を変えようと思っている。
とは言っても大口納品になる軍用は枡のままにするしか無いので小売用だけなのだが、まさかバケツ型にするわけにもいかないだろう。
小売用で今回やろうとしているのは『まげわっぱ』。いやなんちゃってまげわっぱと言った方が正しいのだろうか。
軟化で柔らかくなった薪をナイフで剥ぎ取り太い枝を同じ要領で輪切りに削ぐ、剥ぎ取った薪の薄板にナイフで薄っすら痕をつけたら、そこに輪切りをはめ込んで巻く。
本物は桜の樹皮で縫い付けたりするのだが、これをさっき作った箱に入れると・・・入れると・・・おっ、何と言う事でしょう。軟化で抜けた魔素が吸魔石から出る魔素を吸って再硬化する。すると溝にきちっとはまった底板がストッパーになって、戻りを邪魔する。
軟化だけでも一度形を決めてしまうと再硬化時には戻りは感じられずに、元からその形だったかのようにその形を保ってくれるのだが、底板が無ければ入れ物にはならない訳で丁度良かったというのもあるのだ。
しかし、これも全く問題が無い訳ではない。魔石箱に入れてから硬化するまでにおおよそ20秒~25秒程度かかるので現状作っている量なら問題はあまり無いだろうが、これがもっと増えてくるとなると入れ物作りだけでも結構な手間になりそうな気がする。
「とは言ってもウェインには軟膏のほうに専念して貰いたいし、いくらなんでも8歳の姉ちゃんにやらせるのもな~。丸めるまでやったら箱の中に持っていて貰うのだけでも頼むか」
しばらくは面倒事だったりするこの作業も、行く行くは夫婦でイチャイチャやっていく事だろう。
そうなって欲しいと思う5歳児であった。
油は大きなゴミと汚れが水に沈み、上澄みにはそれなりに綺麗になった油が浮いている。面倒ではあるがこれをもう一度鍋を変えて、さらに不純物を取り除く。柄杓や匙の変わりに今作ったまげわっぱを使ってみようと思う。
これは形状記憶のようなものが、万が一にも中身のせいで解けてしまわない様にとの試験をするためだ。けして持ってくるのが面倒だった訳ではない。
恐る恐る油の中に器を入れてみるが、取り分けてすぐに変化はしないようなので一安心した。
形状記憶合金のようにお湯をかけたら元に戻ってしまうのでは、入れ物を考え直さなくてはとも思っていたからだ。
「水とお湯も入れて様子見た方が良いな。ダメなら縫い合わせるか他のを作るか。出来ればこのまま行きたいけど、頼むぞまげわっぱモドキ」
まげわっぱモドキを見ながらそうつぶやいた。
再度水を替え油の精製をする間、香草の調合をする事にした。前回軟膏を作った時に使った物は良い匂いのモノを適当に入れたが、今回はより香りにこだわってみようと思ったのだ。
「薄荷系の爽やかなモノ?と、甘い系のモノが良いかな~」
薄荷っぽいモノは地球のミントとは違って、どうしてもそのスッキリした香りの中に濁った土のようなニオイが混じるので、あまり多くは入れられない。
甘い系はリンゴとパイナップルを混ぜて薄くした香りの草と、微かにブドウっぽい香りがする香草の二種類だが、どちらも香りが薄いのが難点で、帯とたすきと言うよりも髪ゴムに短し輪ゴムに長しと言った感じだ。要はメチャクチャ短いじゃないかと言う事だ。
「蒸留器でもあれば、こんなんでも一気に解決するんだろうけど、原理は知ってても構造は知らないしな~」
昔、知り合いに銅製の蒸留器をインテリアにしている人がいたが、こうなる事が解かっていればもっとしっかり見ていただろうが、当時は興味も無かったので「蒸留器ってこんな風なんだな」程度にしか覚えていない。当然内部の構造など何一つ知らないのだ。
「まったく10年前の俺を殴ってやりたいぜ」
香りの研究はこれからも継続して行かなければならなさそうだ。
「完璧にはまだまだって事だな」
今回は小売用はアップルパインの香りとミントも二種類で香りを付ける事にして、鍋の方に目を移すと沸騰している。カマドの燃え残りと炭を掻き出して火を落とす、さて冷めたら調合だな。
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