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82こんなに連れてくるって言ったっけ?
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ドリューからそんな話を聞きながら家に向う。東区に入るといろんな人から声を掛けられ、昼過ぎだというのにウチの前は軟膏を買いにお客さんが多く出入りしている。「エドの家は人の出入りが多いのな」なんて5人からは言われたが、これが軟膏の効果だよ。そんな俺がまずしなければいけないのは。
「ごめんなさい」
謝る事からだ。どこの家に赤の他人を泊める事になったからと、息子が事後承諾で連れて帰ってきて「ようこそ」と迎え入れてくれる家があるというのだ。それも友達でもなければ知り合いでもない人間をだ。
この五人を助ける話だけはしたが、連れ帰る話はしていなかったような・・・それがよりにもよって5人ともなれば、寝床の確保に食事にと母と祖母にその分のしわ寄せが回るのだから、まずは謝罪からするべきだろう。
「エド・・・」
「昼はまだだろ。あんたとあんたは私に付いておいで昼食の準備をするから手伝いだよ。男たちはウチの人と寝床の準備だよ」
母が何か言う前に祖母のテキパキとした指示が飛ぶ。これからしばらくメイリーンとドリューのふたり組みは、祖母の元で料理の腕を鍛えられる事になりそうだ。そこに俺が口を出せる事は無い。
「エドは軟膏が無くなりそうだから、お昼の用意している間に作っちゃいなさい」
「はーい」
お説教をしようとした所出鼻を挫かれた母は、俺に在庫が少なくなった軟膏の製作を命じたが、うんあんまり怒っていないようだ。
祖母はといえば元々料理指導が好きな人なので、原石というよりも鉱石レベルでしかない二人を、鍛えがえのある弟子が出来たと見て喜んでいる感じだ。あの二人には地獄の特訓だろうけど。
祖父の下に付いた3人の方は反応は面白かった。この街の戦士職ならば祖父の二つ名「北の壁」の事は聞いた事があり、英雄だとかいろいろ尊敬のまなざしで呟いていたからだ。
女子の内一人は母につけて売り子にでもと思っていたのだが、家事を叩き込まれるまでは母に継続で売り子を頼む事になりそう。ばあちゃんのシゴキから開放されて母には良かったのかな?
女子たちも一時的に祖母から取り返して昼食を取り終えた一行には、オリエンテーリング的に仕事内容やこれからの流れを説明する事で日が落ちた。
最後に俺の店で働いている姉さん夫婦「仮」を紹介し忘れていたので紹介しておく。姉さんは納屋を見せた時にまげわっぱを作っているのを見ていたが、お手伝いなのだろうと思っていたようだ。
「そう言う訳だから義兄さんヨロシクね」
「何だその説明は~、ったく」
「この二人がこの軟膏屋の店主とその奥さん「予定」です。5人の作業を手取り足取り教えてくれるので、指示をよく聞く様に」
「ちょっ。ウェインです。リースといっしょにエドにこき使われています。一緒に頑張りましょう」
「「よろしく」」
「リースです。よろしくおねがいします」
「リースちゃんカワイー」
メイリーンは姉にふにゃ~とした表情を見せてメロメロ状態に陥っている。コイツ大丈夫だろうな?
「それじゃあ、明日から早速ウェインと一緒に朝は香草採りに出かけて」
「「了解」」
そんな俺の立てた予定は翌朝にはあっさりと覆る事になる。メイリーンとドリューの内どちらか一人は祖母専属で家事レッスンが決められていた。男たちはウェインとの香草採りから帰ったら交代で開墾と整地など、祖父の手伝いをする事に決まっていたのだ。
家族総動員的に俺の軟膏造りに巻き込んでいるのだから、その決定にはいろいろ言える筈も無く、みんなは祖父母に対しての畏敬の念があるので完全イエスマンになっているしで、俺の監督責任が果たせている様ないない様なに成ってしまった。
「問題が起きないようならこれでいっか」
そうひとりごちて作業に移る。一点の曇りも無い綺麗な油を湯通ししながら香草を粉末に加工してさらに油を精製する。これが今ではカマド5つが同時稼動するものだから、秋も終わりだと言うのに納屋の中はかなり暑い、真夏にはどうしたモノかとゾッとしてしまう。
現状から来年の夏までと言えば、このカマドの数が倍に増えていても不思議ではないのだから、その対策も考えなくてはならない。
「やる事が終わらないな~」
「外まで独り言が聞こえてるぞ~」
「リード久しぶり?」
「久しぶり?じゃねえよ。近頃遊びにも来ねえし、ウチの母ちゃんからもエドの邪魔するんじゃないよ~って言われるし、いつもいろんな人来てるみたいだけど何やってんだ?」
「仕事始めたんだ。傷が治るこれを作ってるんだよ」
そういってリードに軟膏を見せる。リードのお袋さんも労働出資者の一人だから、見た事があるかもしれないが、焼き物の時も子供たちの姿は無かったから、俺が何をしているのかは知らないのだ。
「かあちゃんが手に付けてるやつ。それエドが作ってたのか」
「そっ。これが忙しくてさ。ウェイン兄にも手伝って貰ってるし、俺だけ遊びにも行けないだろ」
「う~ん。なあエド俺も何かできる事って無いか?」
「あるけど、良いのか?親父さんとかお袋さんの手伝いがあるだろ?」
「そうなんだよな~」
「気持ちだけでありがたいよ、ありがと。それに新しく一緒にやるヤツラも入ったから、少しは遊びにも行けると思うからさ」
リード良いヤツだな。それにしてもブラック企業化してるからな、ちゃんと休みも取れるように考えないといかんな。
「ごめんなさい」
謝る事からだ。どこの家に赤の他人を泊める事になったからと、息子が事後承諾で連れて帰ってきて「ようこそ」と迎え入れてくれる家があるというのだ。それも友達でもなければ知り合いでもない人間をだ。
この五人を助ける話だけはしたが、連れ帰る話はしていなかったような・・・それがよりにもよって5人ともなれば、寝床の確保に食事にと母と祖母にその分のしわ寄せが回るのだから、まずは謝罪からするべきだろう。
「エド・・・」
「昼はまだだろ。あんたとあんたは私に付いておいで昼食の準備をするから手伝いだよ。男たちはウチの人と寝床の準備だよ」
母が何か言う前に祖母のテキパキとした指示が飛ぶ。これからしばらくメイリーンとドリューのふたり組みは、祖母の元で料理の腕を鍛えられる事になりそうだ。そこに俺が口を出せる事は無い。
「エドは軟膏が無くなりそうだから、お昼の用意している間に作っちゃいなさい」
「はーい」
お説教をしようとした所出鼻を挫かれた母は、俺に在庫が少なくなった軟膏の製作を命じたが、うんあんまり怒っていないようだ。
祖母はといえば元々料理指導が好きな人なので、原石というよりも鉱石レベルでしかない二人を、鍛えがえのある弟子が出来たと見て喜んでいる感じだ。あの二人には地獄の特訓だろうけど。
祖父の下に付いた3人の方は反応は面白かった。この街の戦士職ならば祖父の二つ名「北の壁」の事は聞いた事があり、英雄だとかいろいろ尊敬のまなざしで呟いていたからだ。
女子の内一人は母につけて売り子にでもと思っていたのだが、家事を叩き込まれるまでは母に継続で売り子を頼む事になりそう。ばあちゃんのシゴキから開放されて母には良かったのかな?
女子たちも一時的に祖母から取り返して昼食を取り終えた一行には、オリエンテーリング的に仕事内容やこれからの流れを説明する事で日が落ちた。
最後に俺の店で働いている姉さん夫婦「仮」を紹介し忘れていたので紹介しておく。姉さんは納屋を見せた時にまげわっぱを作っているのを見ていたが、お手伝いなのだろうと思っていたようだ。
「そう言う訳だから義兄さんヨロシクね」
「何だその説明は~、ったく」
「この二人がこの軟膏屋の店主とその奥さん「予定」です。5人の作業を手取り足取り教えてくれるので、指示をよく聞く様に」
「ちょっ。ウェインです。リースといっしょにエドにこき使われています。一緒に頑張りましょう」
「「よろしく」」
「リースです。よろしくおねがいします」
「リースちゃんカワイー」
メイリーンは姉にふにゃ~とした表情を見せてメロメロ状態に陥っている。コイツ大丈夫だろうな?
「それじゃあ、明日から早速ウェインと一緒に朝は香草採りに出かけて」
「「了解」」
そんな俺の立てた予定は翌朝にはあっさりと覆る事になる。メイリーンとドリューの内どちらか一人は祖母専属で家事レッスンが決められていた。男たちはウェインとの香草採りから帰ったら交代で開墾と整地など、祖父の手伝いをする事に決まっていたのだ。
家族総動員的に俺の軟膏造りに巻き込んでいるのだから、その決定にはいろいろ言える筈も無く、みんなは祖父母に対しての畏敬の念があるので完全イエスマンになっているしで、俺の監督責任が果たせている様ないない様なに成ってしまった。
「問題が起きないようならこれでいっか」
そうひとりごちて作業に移る。一点の曇りも無い綺麗な油を湯通ししながら香草を粉末に加工してさらに油を精製する。これが今ではカマド5つが同時稼動するものだから、秋も終わりだと言うのに納屋の中はかなり暑い、真夏にはどうしたモノかとゾッとしてしまう。
現状から来年の夏までと言えば、このカマドの数が倍に増えていても不思議ではないのだから、その対策も考えなくてはならない。
「やる事が終わらないな~」
「外まで独り言が聞こえてるぞ~」
「リード久しぶり?」
「久しぶり?じゃねえよ。近頃遊びにも来ねえし、ウチの母ちゃんからもエドの邪魔するんじゃないよ~って言われるし、いつもいろんな人来てるみたいだけど何やってんだ?」
「仕事始めたんだ。傷が治るこれを作ってるんだよ」
そういってリードに軟膏を見せる。リードのお袋さんも労働出資者の一人だから、見た事があるかもしれないが、焼き物の時も子供たちの姿は無かったから、俺が何をしているのかは知らないのだ。
「かあちゃんが手に付けてるやつ。それエドが作ってたのか」
「そっ。これが忙しくてさ。ウェイン兄にも手伝って貰ってるし、俺だけ遊びにも行けないだろ」
「う~ん。なあエド俺も何かできる事って無いか?」
「あるけど、良いのか?親父さんとかお袋さんの手伝いがあるだろ?」
「そうなんだよな~」
「気持ちだけでありがたいよ、ありがと。それに新しく一緒にやるヤツラも入ったから、少しは遊びにも行けると思うからさ」
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