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117順調な煙
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ベージュ一歩手前くらい濃い白煙が昇り始めたという事は、中のワラクズが燃えているのではなくもみ殻に火が移ったという事。
しかしながらやる事は無い。
もみ殻に火が移っても「だから?」としか言えないのだ。重要なのはまだまだ先。その火が籾殻を焼き進めて表面に黒い炭化痕を見せ始める頃までは、やる事も無くただ見つめるだけになってしまう。
なら他の作業をすればというかもしれないが、この作業に慣れた者ならいざしらず。初心者がやるのだからこの辺りの見学も重要な仕事と思ってもらおう。
次第に煙に含まれるキッツイ臭いがさらに強烈なものに変わり、中の炭化が加速しているのを感じる。
「煙が濃い白になったのがモミ殻が燃え始めた印。キッツイ臭いになったのが籾殻から炭に変わっている印です」
「まだこうして見ているのかい?」
「そうですね。最初ですから。はっきり言ってしまえばこの辺りは「こう言うもの」か程度に知っていてもらえば良いくらいの事なんですけど、これを知らないで焼くと失敗の恐れがあるので見ていただいてます。ちゃんと火が着かない時なんかは煙は少ないけど出ているし、いつまで経っても炭にならないしとやり直しに手間を取られる事になりますから。家造りが本格化するようになれば、皆さんが自分で焼く事は少なくなると思います。その時に梃子の人にしっかりとした事を教えないと、生焼けのクン炭に成ってしまいますから注意して見ていて下さい」
生焼けのクン炭は燻り臭がひどくてとてもではないが家の中に入れて良い物ではないのだ。かまどや暖炉といった物から出る臭いで慣れた者ですら、あの臭いには顔をしかめるに違いない。
それから二十分経ったあたりで表面からも薄っすら煙が立ち始める。と言ってもこれはもみ殻中に含まれる水蒸気の湯気になったものか何かで、すぐ下が焼けたサインではなく真ん中辺りまでが焼けて熱せられたため出てきたものだ。
着火から約1時間お目当ての物が現れ始める。
「さて皆さん。ここからは大変な作業になりますのでしっかり覚えて下さいね。もみ殻の山の上の部分に黒く炭になった所が出始めたら、中はある程度炭になっていますので、外側が燃えるように鋤で燃えている部分と燃えていない部分を混ぜます。こうすると燃えていない部分が燃えて、燃えている部分が冷める事で灰にならずにクン炭となるのです。注意する事として、中のクン炭器を壊さないように混ぜて下さいね」
数回に渡って同様の作業を繰り返し全体に炭化して黒くなったもみ殻の山からは、薄っすらとした煙しか上がらなくなって焼きあがった事を知らせてくれている。
「これでほぼ完成ですが、最後に鋤き入れして残った煙も追い出してしまいましょう」
クン炭としては完成したといえるが、薄くなった煙とは言え煙が上がる以上は臭いの元がまだ残っている事を示す。最後の鋤き入れをして酸素供給してやる事でギリギリまで余計な物を飛ばすと、俺が求める建材グレードのクン炭に仕上がるのだ。
縦に持ち上げ横振りをしてフワッと落とす。これを繰り返すと中の方で赤熱して今一度濃い煙が上がるが、そもそもの可燃物が少ない状態では濃い煙も長い時間は続かない。色つきの煙から無色透明な陽炎のような煙に変わった段階で焼き納めに入る。
「それでは火を消します。水を含みすぎると後が大変なので、本当に少しだけの水をまいて、先ほどのように混ぜながら消していきます」
肥え杓で掬った水を打ち水のように撒き空かさず鋤を入れる。微量の水から生まれた水蒸気がクン炭の酸化防止になる原理は、どこぞの時代にでも科学者が解明してくれたら良いが「そういうもんだ」で済む原始職人にはこの水量だけ覚えてもらえれば良い。だって水で火が消えるんだもん。
ちなみに肥え杓は新品だよ。
クン炭山に時計回りで数週水を撒き混和すると、放射してくる熱量は明らかに変わってくる。ここまで来たらクン炭器はお役ゴメンだ。山を崩してクン炭器を撤去すると、想定通りにクン炭器は黒焦げになり煙突の下の方は倒した衝撃で破損してしまった。
しかし下部の本体はもう一度くらいなら使えそうなほどしっかりしており。新たに新調する必要はなさそうなので水を掛けて保全させる事にした。作り直すのも手間だからね。
しかしながらやる事は無い。
もみ殻に火が移っても「だから?」としか言えないのだ。重要なのはまだまだ先。その火が籾殻を焼き進めて表面に黒い炭化痕を見せ始める頃までは、やる事も無くただ見つめるだけになってしまう。
なら他の作業をすればというかもしれないが、この作業に慣れた者ならいざしらず。初心者がやるのだからこの辺りの見学も重要な仕事と思ってもらおう。
次第に煙に含まれるキッツイ臭いがさらに強烈なものに変わり、中の炭化が加速しているのを感じる。
「煙が濃い白になったのがモミ殻が燃え始めた印。キッツイ臭いになったのが籾殻から炭に変わっている印です」
「まだこうして見ているのかい?」
「そうですね。最初ですから。はっきり言ってしまえばこの辺りは「こう言うもの」か程度に知っていてもらえば良いくらいの事なんですけど、これを知らないで焼くと失敗の恐れがあるので見ていただいてます。ちゃんと火が着かない時なんかは煙は少ないけど出ているし、いつまで経っても炭にならないしとやり直しに手間を取られる事になりますから。家造りが本格化するようになれば、皆さんが自分で焼く事は少なくなると思います。その時に梃子の人にしっかりとした事を教えないと、生焼けのクン炭に成ってしまいますから注意して見ていて下さい」
生焼けのクン炭は燻り臭がひどくてとてもではないが家の中に入れて良い物ではないのだ。かまどや暖炉といった物から出る臭いで慣れた者ですら、あの臭いには顔をしかめるに違いない。
それから二十分経ったあたりで表面からも薄っすら煙が立ち始める。と言ってもこれはもみ殻中に含まれる水蒸気の湯気になったものか何かで、すぐ下が焼けたサインではなく真ん中辺りまでが焼けて熱せられたため出てきたものだ。
着火から約1時間お目当ての物が現れ始める。
「さて皆さん。ここからは大変な作業になりますのでしっかり覚えて下さいね。もみ殻の山の上の部分に黒く炭になった所が出始めたら、中はある程度炭になっていますので、外側が燃えるように鋤で燃えている部分と燃えていない部分を混ぜます。こうすると燃えていない部分が燃えて、燃えている部分が冷める事で灰にならずにクン炭となるのです。注意する事として、中のクン炭器を壊さないように混ぜて下さいね」
数回に渡って同様の作業を繰り返し全体に炭化して黒くなったもみ殻の山からは、薄っすらとした煙しか上がらなくなって焼きあがった事を知らせてくれている。
「これでほぼ完成ですが、最後に鋤き入れして残った煙も追い出してしまいましょう」
クン炭としては完成したといえるが、薄くなった煙とは言え煙が上がる以上は臭いの元がまだ残っている事を示す。最後の鋤き入れをして酸素供給してやる事でギリギリまで余計な物を飛ばすと、俺が求める建材グレードのクン炭に仕上がるのだ。
縦に持ち上げ横振りをしてフワッと落とす。これを繰り返すと中の方で赤熱して今一度濃い煙が上がるが、そもそもの可燃物が少ない状態では濃い煙も長い時間は続かない。色つきの煙から無色透明な陽炎のような煙に変わった段階で焼き納めに入る。
「それでは火を消します。水を含みすぎると後が大変なので、本当に少しだけの水をまいて、先ほどのように混ぜながら消していきます」
肥え杓で掬った水を打ち水のように撒き空かさず鋤を入れる。微量の水から生まれた水蒸気がクン炭の酸化防止になる原理は、どこぞの時代にでも科学者が解明してくれたら良いが「そういうもんだ」で済む原始職人にはこの水量だけ覚えてもらえれば良い。だって水で火が消えるんだもん。
ちなみに肥え杓は新品だよ。
クン炭山に時計回りで数週水を撒き混和すると、放射してくる熱量は明らかに変わってくる。ここまで来たらクン炭器はお役ゴメンだ。山を崩してクン炭器を撤去すると、想定通りにクン炭器は黒焦げになり煙突の下の方は倒した衝撃で破損してしまった。
しかし下部の本体はもう一度くらいなら使えそうなほどしっかりしており。新たに新調する必要はなさそうなので水を掛けて保全させる事にした。作り直すのも手間だからね。
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