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「お前は腑抜けになっちまったなぁ、アール」ジャクィスは言った。「いや、今はフーヴァルか」
海から引き上げられたせいで、フーヴァルの身体は人間の姿に戻っていた。ジャクィスは一糸纏わぬ姿のフーヴァルをしげしげと眺めて、貴族的な顔に愉悦らしき笑みを浮かべた。
色の薄いまっすぐな金髪に、榛色の瞳。世を拗ねたような笑みが似合う、薄い唇。船乗りにしてはあまりに整った容貌だ。だが、海を愛する男で通すには冷淡すぎる外見とは裏腹に……彼は海を愛する男だった。だからこそ、こいつには負けられないと思っていた──ホライゾン号の皆が死んだあの時までは。
「十六年経ったってのに、お前はちっとも老けてない」
ジャクィスの、生粋のベイルズ人らしい気取った訛りもそのままだ。
「そういうお前は、ずいぶん弛んだな」
フーヴァルが唸るように言うと、彼はハハと笑った。ふたり連れだって海を眺めながら、ホライゾン号の甲板でいつもそうしていたように。
実際、時は彼に容赦をしなかった。どれだけ波風にいたぶられてもつやつやとしていたジャクィスの肌には、流れた年月の痕跡が刻まれていた。
流れた年月──雲隠れしていた十六年もの年月が。
「お前はくたばったと思ってた」フーヴァルは言った。
「それはお互い様だよ、アール」
その名前で呼ばれる度に、昔に引き戻される気がする。
「いままで、どこで何をしてやがった?」フーヴァルは言った。「ホライゾンは沈んだんだろ! いったい何が──」
「毎日、どこかの海で起こっていることが起きただけさ」ジャクィスは肩をすくめた。「オチエンは下手を打った。フェリジアの船に体当たりされて、ホライゾンは船ごと沈んだ。俺は一人逃げ延びて……」そして、射るような目でフーヴァルを見た。「お前のことを探したんだよ。長いことな」
胃が硬く、重くなる。
ジャクィスは続けた。
「まず、アラニのところにお前を探しに行った。だがお前は彼らと仲違いをして、さっさとどこかへ行ったと言われた」
お前らしいよなぁ、とジャクィスは笑った。
「お前を探すのを手伝ってくれるというから、俺もアラニに協力してやったんだ。連中が緑海を渡りたがってたのは知ってるだろ? 大いに役に立ってやったさ」
大烏賊の足が、フーヴァルをジャクィスに引き寄せた。彼は身動きの取れないフーヴァルの顎を無造作に掴むと、またしても検分するように、顔を眺めた。
「フーヴァル・ゴーラム」ただ貶すためだけに飲んだワインを評するような口ぶりだった。「まさか、あのアール・ライリーが〈浪吼団〉を率いていたなんてな。アラニが何年も、何年も掛けて探し回って、ようやく探り当てた。あいつらが馬鹿なのか、それとも、お前に隠れん坊の才能があるのか、どっちなんだ?」
「連中を信用したお前が馬鹿なんだろ」
ジャクィスは忍び笑いをした。「お前なら、そう言うと思った」
素っ裸のまま烏賊の下足にナニを握られているこんな状況だというのに、懐かしさを覚えずにはいられなかった。遠慮のない物言いで、斬り合うように続いていく、お馴染みの会話。
「だが、まさかお前がエイルのために粉骨砕身してるなんて、誰が思う? 陸でも、ホライゾンでも、アラニですら居場所を見つけられずに、逃げちまったお前が?」
「逃げたわけじゃねえ」フーヴァルは言ったものの、説得力がないことはわかっていた。「あそこは……俺には合わなかったんだ。それに、ホライゾンには戻るつもりで──」
「ああ、アラニの連中は確かに、なんというか……自己憐憫に陶酔してる嫌いがあるな。お前が嫌がりそうな性質だ」ジャクィスは回廊の手摺りに肘をつき、フーヴァルの顔を覗き込んだ。「だったら、エイルは何が違うんだ? あれだって、負け犬の寄せ集めだろう。死に損ないの王に、のけ者の人狼……ダイラから追い出されたナドカの巣窟だ。だから居心地が良いのか?」
苛立ちが、腹の底で鎌首をもたげる。
「あいつらは……そこまで悪くない」
すると、ジャクィスは仰け反り、冷やかすように口笛を吹いた。
「おいおい本気か! アール!」
フーヴァルは声を荒げた。
「あの国こそ、オチエンの理想だ! 今はようやく海に浮かんでるだけの島だが、そのうち──」
ジャクィスがなだめるように肩に手を置いた。「わかった。わかったよ。そうムキになるな。お前の考えだもんな。俺は尊重するよ」
そうやってなだめられる度、ジャクィスのことが嫌いになったものだった。結局は、数刻もしたら許してしまわざるを得ないのだが。
「お前こそ、その『死に損ないの王』をダシにして汚ねえ稼ぎ方をしてるじゃねえか?」
「そりゃあお前、使えるものは何でも使わないとな」ジャクィスは笑って、周囲を取り巻く幽霊船の群れを指し示した。「見ろよ、この大船団を! 奴らは死なない。傷つかない。恐怖もない! そういう傭兵に金を惜しむ国がどこにある?」
フーヴァルは目を見開いた。
「お前──戦争で儲けるつもりなのか?」
興を削がれたとでも言いたげに、ジャクィスの笑顔が翳った。
「賢い男なら、誰だってそうする」
「だが、オチエンは──」
「アール!」ジャクィスは、必要以上におどけた調子で言った。「オチエンは死んだ!」
オチエンは、死んだ。
「死んだんだよ! わかるか? いつまでもあの人の考えに縛られてはいられないんだ。時代は変わっていくものだぜ。そのくらい、賢いお前にはわかっていると思っていたんだがな」
それは、わかっている。わかっているが、それをこの男から、こんな風に──侮辱めいた言い方をされるとは思っていなかった。
フーヴァルは今の今まで、ジャクィスも自分と同じくらい、オチエンという師を尊敬し、敬い、彼の弟子として恥じぬように生きていこうと思っていたのだと……思っていた。だが、時は全ての記憶を美化してしまう。なお悪いことに、罪悪感もまた、記憶を美しく飾り立てる。
「俺は……お前のことを見誤っていたらしいな」
「それは、俺のせいじゃないよな? アール」
ああ、その通りだ。
フーヴァルは奥歯を噛みしめた。
「だが、もう一度言わせてもらうが、それはこっちの台詞なんだぜ」ジャクィスは言った。「お前の哲学はどこへいっちまったんだ。強いものだけが生き残る──それが信条だっただろ? 何がオチエンの夢だ。何がナドカの楽園だよ!」
ジャクィスは、踊るように優雅に激昂していた。
「実はな、アール。お前が俺を追いかけはじめた頃から、俺もこっそりお前を見てたんだ」
フーヴァルがジャクィスを見ると、彼はにんまりと笑みを拡げた。だがその笑顔の裏には、まだ怒りが燃えていた。
「最初のうちは良かった。『この船に全員は乗れない』だっけ? 気が利いてて、合理的で、実にお前らしい。それがなんだ! 何の取り柄もない人間なんかを乗せやがって!」
フーヴァルは眉を顰めた。
「なんでそれを──」
「お前がマルーンにした、あの船乗りだ。可哀想なことをするじゃないか。たかが男の尻を狙っただけのことで置き去りの刑とは。俺の船に乗せてやったら、泣きながら洗いざらい話してくれたぜ──あの男の正体もな」
心臓が逸り、息が苦しくなる。まさか、こいつの狙いはゲラードなのか?
だが、ジャクィスの怒りは別の場所にあるようだった。
「なあ……俺はお前のことが好きだ」彼は、蜜のように甘い声で言った。「本当だ。でなきゃ、十六年間も探したりしない。お前はずっと孤高の存在だった。ホライゾンに乗り込んできたときから、俺にはわかってた。お前には特別なものがある」
ジャクィスの指が、フーヴァルの胸を、腹をなぞる。やがてそれが、臍の下──人間と魚の身体のつなぎ目となるあたりまで降りてくる。
「よくいままで隠し通せたものだ」彼は、掠れた声で言った。「人魚だったとは」
「言ったろ。見破れなかったのは、お前が馬鹿だからだよ」
ジャクィスは、今度は笑わなかった。フーヴァルの声を聞いてもいないようだった。
「それも、オルノアへの鍵となる人魚だ……」
ジャクィスの手が、胸元の金貨に触れた。彼の榛色の目が、金貨に吸い寄せられるように濃く翳ってゆく。
「そんな与太話を、誰に吹き込まれた?」フーヴァルは身を捩って、ジャクィスの手から逃れようとした。「お前もパドレと同類の間抜けだな!」
だが、烏賊の吸盤がより深くフーヴァルに噛みついて、身動きすることを許さなかった。
ジャクィスは金貨から手を放し、冷ややかな目でフーヴァルを見た。
「だがパドレとは違って、俺はお前を捕まえた」
ジャクィスが、まるで口づけをしようとするかのように、身を乗り出す。だが、彼は目を伏せなかった。フーヴァルの目を覗き込んだまま、ゆっくりと、顔が近づく。
顔を逸らしたいのに、できない。何かにがんじがらめにされているみたいに、彼の顔から──徐々に大きくなってゆくその瞳から、目が離せない。
「お前は弱いなあ。アール。昔から、一度だって俺に勝てたことがない」ジャクィスは、短刀のような笑みを浮かべた。「フェリジアに追われている最中、オチエンはずっとお前のことを話してたよ。アールがここにいれば、アールがいてくれたら──ってな。それでお前はどこにいた? どこにいたんだよ、アール!」
ジャクィスの両目はいまや、顔の半分を占めるほど巨大になっていた。
今にも飲み込まれそうだ。その目に。
絶望に。
「ほらな? やっぱり」
ジャクィスが瞬きをすると、瞳の形が変化した。
横に細長く波打つ、黒い瞳孔。
それは、獲物を幻惑する烏賊の目だった。
「やっぱり、俺の方が強い」
「フーヴァル!」
その声に横っ面を叩かれたみたいに、目が覚めた。
何かが弾けたような衝撃に、目眩。フーヴァルは頭を振り、何度も瞬きをした。
すると、今までみていたと思っていた光景は、欠片も残さず消え失せていた。
ジャクィスはいない。船もない。大烏賊の触手もない。フーヴァルは一人、嵐のただ中で、海面に突き出た岩礁の上に立っていた。あと一歩でも踏み出していたら──気付くのがあと一瞬遅かったら、荒れ狂う海に落ちて、夢を見たまま死んでいただろう。
気絶していた心臓が、息を吹き返したように脈動している。鼓動が早すぎて、胸が、肺が痛い。
だが、自分のことはいい。いま聞こえた声が幻ではないのなら、この嵐の海のどこかに──。
「フーヴァル! どこにいるんだ!?」
幻じゃない。あいつが、ここにいる。
「ゲラード!」
小山のように盛り上がっては砕ける波のせいで、数ナート先すら見通せない。
「ゲラード! どこだ!」
「フーヴァル!」
確かに、声が聞こえる。
海に飛び込もうとしたフーヴァルの脳裏に、これも幻かもしれないという思いが過る。
もしジャクィスが俺のことを本当に調べ上げていたら、きっとゲラードをダシにするはずだ。
「フーヴァル、いま行くから……!」
だが、これが奴の作った幻覚だとは思えない。このクソみたいな嵐の中、たった一人で、クソみたいにちっぽけな小舟でフーヴァルを助けに来るようなクソ馬鹿野郎の存在は、彼の想像力の範疇にないはずだ。
「ゲラード!」
「フーヴァル!! やっと見つけた!」
ゲラードは、舳先に〈魔女の灯明〉を提げた小舟に乗っていた。漕ぎ手もいないのに流されることもなく安定して浮いている。ということは、索で母船と繋がっているのだろう。荒波の中でもひっくり返らずにいられるのは、きっとヘインズの呪文の効果に違いない。
「クソッ! 索の長さが足りない!」ゲラードが珍しく悪態をついた。「フーヴァル! ここまで泳いで来られるか!?」
「ああ! 待ってろ!」
早くしないと、奴の方から海に飛び込んでこっちに来かねない。フーヴァルは意を決して海に飛び込んだ。
嵐は先ほどよりも激しさを増していた。もみしだくような波の中、尾びれを懸命に動かして進む。明かりはなく、砕ける波が水中に気泡をばらまくせいで、伸ばした手の先さえまともに見ることができない。
だが、なぜか、彼の手が見えた。
それはフーヴァルを導くように優しく光り、待っていた。
風に吹き飛ばされる木の葉のように押し流されそうになりながら、ようやく、その手を掴む。ゲラードは大声で叫びながら、フーヴァルの身体を思いきり引き上げた。
舟底に横たわり、激しく咳をする。ゲラードは〈灯明〉を持ち上げ、それを空中で振った。すると、嵐の轟音の向こう側から、仲間たちがロープを巻き上げるかけ声が聞こえてきた。
「大丈夫だ」ゲラードは、肩で息をしながら言った。「もう大丈夫」
「クソ馬鹿野郎」フーヴァルも、身体全体で喘いでいた。「なんでこんな無茶を──」
すると、彼は笑った。その笑顔も、笑い声も、こんな状況ではまったくもって不似合いで、場違いだった。けれどフーヴァルはその声を聞いて、なぜだかわからないまま、つられて一緒に笑って……それでようやく、自分が悪夢を抜け出したことを知ったのだった。
深い、深いため息をつく。
「ありがとよ、ゲラード」フーヴァルは、心の底から言った。
「どういたしまして」ゲラードはにっこりと笑った。
小舟は着実に、母船に引き寄せられていた。
フーヴァルの目に、船尾のランタンがはっきりと見えた。向こうからもふたりの姿が見えたらしい。
「船長だ! ガルも無事だぞ!」という声に、歓声が起こるのが聞こえた。
その時だった。
まったく唐突に、小舟がひっくり返った。海水にたたきつけられ、波に身体をもぎ取られ、瞬く間に船から遠ざかる。
いったい、何が──?
恐慌に陥りそうになる頭をなんとかなだめる。人魚への変異を遂げる身体の違和感を押さえつけながら、フーヴァルはゲラードの姿を探した。
服を着たまま海に落ちると、服が水を吸い込み、思うように泳げなくなる。この嵐の海では、あっという間に溺れてしまうだろう。
暗い海に目をこらし、潮の流れから行き先を予測する。波を蹴って、本能のままに、フーヴァルは泳いだ。
すると、いた。
だが、ゲラードは一人ではなかった。気を失ったのであろう彼を抱きかかえ、大きな尾びれをはためかせて、遠くへ泳ぎ去ろうとしている者がいる。
人魚だと!? なんで、人魚が奴を──。
その時、フーヴァルの脳裏にドクの言葉が蘇った。
キャトフォードの沖に浮かんでいたゲラードは、何者かに生かされたのではないかと、彼は言っていた。あの時確かに、人魚が彼を助けた可能性を考えた。それを、今まで忘れていた。
奴らは一人の人間を気に入ると、飽くなき執着をもってどこまでもついてまわる。
だが──。
「そいつに、先に目をつけたのは、俺だ!」
潮を裂いて、フーヴァルは加速した。全ての鰭で水を掻き、水流の間隙を縫うように泳ぐ。賊は、思わぬ追い上げに裏帆を打ったようだった。そいつが振り向き、目を丸くしたのを、フーヴァルは確かに見た。
そしてその顔が、びっくりするほど自分に似ているのを。
だが、驚いている余裕はなかった。フーヴァルはゲラードの身体を抱きかかえると、略奪者に向かって言った。
「海賊から宝を奪おうなんざ、百万年早いんだよ、雑魚が!」
フーヴァルは文字通り牙を剥き、人魚の肩に思いきり噛みついた。
人魚は悲鳴と気泡とを吐き出し、水中で身もだえする。その隙を突いて、フーヴァルはゲラードを奪い返した。
海面に顔を出して周囲を見回す。が、あたりには何もなかった。
マリシュナがどこにいるのかも、もうわからない。この嵐がいつまで続くのか、陸に着くまで泳ぎ切れるのか……フーヴァルには、何もわからなかった。
遠のく意識の中、海面を波が奔るたびに容赦なく押し流されそうになりながらも、フーヴァルは泳ぎ続けた。どのくらいの時間が経っただろう。もはや意思の力の及ばぬ本能で尾鰭を動かし続けていたフーヴァルは、水底から響いてくるような、長く尾を引く啼声を聞いた。海面に顔を出していても聞こえるほど、力強く、深い声だ。
気を失っているはずのゲラードが、身じろぎして呟いた。
「歌……だ……」
それが本当に何かの力を持つ歌だったのか、それとも気まぐれな鯨の声だったのかはわからない。だが、海を震わせるような不思議な音になだめられたみたいに、荒れ狂う潮流はゆっくりと凪いでいった。
やがてフーヴァルは、闇の中に自分を迎え入れる白い腕を見た気がした。フーヴァルはその腕に向かって泳ぎ、泳ぎ、とうとう泳ぎ着いて、柔らかな砂の抱擁に身を任せた。そうして、自分の隣にゲラードがいることを確かめてから、ようやく気を失った。
「お前は腑抜けになっちまったなぁ、アール」ジャクィスは言った。「いや、今はフーヴァルか」
海から引き上げられたせいで、フーヴァルの身体は人間の姿に戻っていた。ジャクィスは一糸纏わぬ姿のフーヴァルをしげしげと眺めて、貴族的な顔に愉悦らしき笑みを浮かべた。
色の薄いまっすぐな金髪に、榛色の瞳。世を拗ねたような笑みが似合う、薄い唇。船乗りにしてはあまりに整った容貌だ。だが、海を愛する男で通すには冷淡すぎる外見とは裏腹に……彼は海を愛する男だった。だからこそ、こいつには負けられないと思っていた──ホライゾン号の皆が死んだあの時までは。
「十六年経ったってのに、お前はちっとも老けてない」
ジャクィスの、生粋のベイルズ人らしい気取った訛りもそのままだ。
「そういうお前は、ずいぶん弛んだな」
フーヴァルが唸るように言うと、彼はハハと笑った。ふたり連れだって海を眺めながら、ホライゾン号の甲板でいつもそうしていたように。
実際、時は彼に容赦をしなかった。どれだけ波風にいたぶられてもつやつやとしていたジャクィスの肌には、流れた年月の痕跡が刻まれていた。
流れた年月──雲隠れしていた十六年もの年月が。
「お前はくたばったと思ってた」フーヴァルは言った。
「それはお互い様だよ、アール」
その名前で呼ばれる度に、昔に引き戻される気がする。
「いままで、どこで何をしてやがった?」フーヴァルは言った。「ホライゾンは沈んだんだろ! いったい何が──」
「毎日、どこかの海で起こっていることが起きただけさ」ジャクィスは肩をすくめた。「オチエンは下手を打った。フェリジアの船に体当たりされて、ホライゾンは船ごと沈んだ。俺は一人逃げ延びて……」そして、射るような目でフーヴァルを見た。「お前のことを探したんだよ。長いことな」
胃が硬く、重くなる。
ジャクィスは続けた。
「まず、アラニのところにお前を探しに行った。だがお前は彼らと仲違いをして、さっさとどこかへ行ったと言われた」
お前らしいよなぁ、とジャクィスは笑った。
「お前を探すのを手伝ってくれるというから、俺もアラニに協力してやったんだ。連中が緑海を渡りたがってたのは知ってるだろ? 大いに役に立ってやったさ」
大烏賊の足が、フーヴァルをジャクィスに引き寄せた。彼は身動きの取れないフーヴァルの顎を無造作に掴むと、またしても検分するように、顔を眺めた。
「フーヴァル・ゴーラム」ただ貶すためだけに飲んだワインを評するような口ぶりだった。「まさか、あのアール・ライリーが〈浪吼団〉を率いていたなんてな。アラニが何年も、何年も掛けて探し回って、ようやく探り当てた。あいつらが馬鹿なのか、それとも、お前に隠れん坊の才能があるのか、どっちなんだ?」
「連中を信用したお前が馬鹿なんだろ」
ジャクィスは忍び笑いをした。「お前なら、そう言うと思った」
素っ裸のまま烏賊の下足にナニを握られているこんな状況だというのに、懐かしさを覚えずにはいられなかった。遠慮のない物言いで、斬り合うように続いていく、お馴染みの会話。
「だが、まさかお前がエイルのために粉骨砕身してるなんて、誰が思う? 陸でも、ホライゾンでも、アラニですら居場所を見つけられずに、逃げちまったお前が?」
「逃げたわけじゃねえ」フーヴァルは言ったものの、説得力がないことはわかっていた。「あそこは……俺には合わなかったんだ。それに、ホライゾンには戻るつもりで──」
「ああ、アラニの連中は確かに、なんというか……自己憐憫に陶酔してる嫌いがあるな。お前が嫌がりそうな性質だ」ジャクィスは回廊の手摺りに肘をつき、フーヴァルの顔を覗き込んだ。「だったら、エイルは何が違うんだ? あれだって、負け犬の寄せ集めだろう。死に損ないの王に、のけ者の人狼……ダイラから追い出されたナドカの巣窟だ。だから居心地が良いのか?」
苛立ちが、腹の底で鎌首をもたげる。
「あいつらは……そこまで悪くない」
すると、ジャクィスは仰け反り、冷やかすように口笛を吹いた。
「おいおい本気か! アール!」
フーヴァルは声を荒げた。
「あの国こそ、オチエンの理想だ! 今はようやく海に浮かんでるだけの島だが、そのうち──」
ジャクィスがなだめるように肩に手を置いた。「わかった。わかったよ。そうムキになるな。お前の考えだもんな。俺は尊重するよ」
そうやってなだめられる度、ジャクィスのことが嫌いになったものだった。結局は、数刻もしたら許してしまわざるを得ないのだが。
「お前こそ、その『死に損ないの王』をダシにして汚ねえ稼ぎ方をしてるじゃねえか?」
「そりゃあお前、使えるものは何でも使わないとな」ジャクィスは笑って、周囲を取り巻く幽霊船の群れを指し示した。「見ろよ、この大船団を! 奴らは死なない。傷つかない。恐怖もない! そういう傭兵に金を惜しむ国がどこにある?」
フーヴァルは目を見開いた。
「お前──戦争で儲けるつもりなのか?」
興を削がれたとでも言いたげに、ジャクィスの笑顔が翳った。
「賢い男なら、誰だってそうする」
「だが、オチエンは──」
「アール!」ジャクィスは、必要以上におどけた調子で言った。「オチエンは死んだ!」
オチエンは、死んだ。
「死んだんだよ! わかるか? いつまでもあの人の考えに縛られてはいられないんだ。時代は変わっていくものだぜ。そのくらい、賢いお前にはわかっていると思っていたんだがな」
それは、わかっている。わかっているが、それをこの男から、こんな風に──侮辱めいた言い方をされるとは思っていなかった。
フーヴァルは今の今まで、ジャクィスも自分と同じくらい、オチエンという師を尊敬し、敬い、彼の弟子として恥じぬように生きていこうと思っていたのだと……思っていた。だが、時は全ての記憶を美化してしまう。なお悪いことに、罪悪感もまた、記憶を美しく飾り立てる。
「俺は……お前のことを見誤っていたらしいな」
「それは、俺のせいじゃないよな? アール」
ああ、その通りだ。
フーヴァルは奥歯を噛みしめた。
「だが、もう一度言わせてもらうが、それはこっちの台詞なんだぜ」ジャクィスは言った。「お前の哲学はどこへいっちまったんだ。強いものだけが生き残る──それが信条だっただろ? 何がオチエンの夢だ。何がナドカの楽園だよ!」
ジャクィスは、踊るように優雅に激昂していた。
「実はな、アール。お前が俺を追いかけはじめた頃から、俺もこっそりお前を見てたんだ」
フーヴァルがジャクィスを見ると、彼はにんまりと笑みを拡げた。だがその笑顔の裏には、まだ怒りが燃えていた。
「最初のうちは良かった。『この船に全員は乗れない』だっけ? 気が利いてて、合理的で、実にお前らしい。それがなんだ! 何の取り柄もない人間なんかを乗せやがって!」
フーヴァルは眉を顰めた。
「なんでそれを──」
「お前がマルーンにした、あの船乗りだ。可哀想なことをするじゃないか。たかが男の尻を狙っただけのことで置き去りの刑とは。俺の船に乗せてやったら、泣きながら洗いざらい話してくれたぜ──あの男の正体もな」
心臓が逸り、息が苦しくなる。まさか、こいつの狙いはゲラードなのか?
だが、ジャクィスの怒りは別の場所にあるようだった。
「なあ……俺はお前のことが好きだ」彼は、蜜のように甘い声で言った。「本当だ。でなきゃ、十六年間も探したりしない。お前はずっと孤高の存在だった。ホライゾンに乗り込んできたときから、俺にはわかってた。お前には特別なものがある」
ジャクィスの指が、フーヴァルの胸を、腹をなぞる。やがてそれが、臍の下──人間と魚の身体のつなぎ目となるあたりまで降りてくる。
「よくいままで隠し通せたものだ」彼は、掠れた声で言った。「人魚だったとは」
「言ったろ。見破れなかったのは、お前が馬鹿だからだよ」
ジャクィスは、今度は笑わなかった。フーヴァルの声を聞いてもいないようだった。
「それも、オルノアへの鍵となる人魚だ……」
ジャクィスの手が、胸元の金貨に触れた。彼の榛色の目が、金貨に吸い寄せられるように濃く翳ってゆく。
「そんな与太話を、誰に吹き込まれた?」フーヴァルは身を捩って、ジャクィスの手から逃れようとした。「お前もパドレと同類の間抜けだな!」
だが、烏賊の吸盤がより深くフーヴァルに噛みついて、身動きすることを許さなかった。
ジャクィスは金貨から手を放し、冷ややかな目でフーヴァルを見た。
「だがパドレとは違って、俺はお前を捕まえた」
ジャクィスが、まるで口づけをしようとするかのように、身を乗り出す。だが、彼は目を伏せなかった。フーヴァルの目を覗き込んだまま、ゆっくりと、顔が近づく。
顔を逸らしたいのに、できない。何かにがんじがらめにされているみたいに、彼の顔から──徐々に大きくなってゆくその瞳から、目が離せない。
「お前は弱いなあ。アール。昔から、一度だって俺に勝てたことがない」ジャクィスは、短刀のような笑みを浮かべた。「フェリジアに追われている最中、オチエンはずっとお前のことを話してたよ。アールがここにいれば、アールがいてくれたら──ってな。それでお前はどこにいた? どこにいたんだよ、アール!」
ジャクィスの両目はいまや、顔の半分を占めるほど巨大になっていた。
今にも飲み込まれそうだ。その目に。
絶望に。
「ほらな? やっぱり」
ジャクィスが瞬きをすると、瞳の形が変化した。
横に細長く波打つ、黒い瞳孔。
それは、獲物を幻惑する烏賊の目だった。
「やっぱり、俺の方が強い」
「フーヴァル!」
その声に横っ面を叩かれたみたいに、目が覚めた。
何かが弾けたような衝撃に、目眩。フーヴァルは頭を振り、何度も瞬きをした。
すると、今までみていたと思っていた光景は、欠片も残さず消え失せていた。
ジャクィスはいない。船もない。大烏賊の触手もない。フーヴァルは一人、嵐のただ中で、海面に突き出た岩礁の上に立っていた。あと一歩でも踏み出していたら──気付くのがあと一瞬遅かったら、荒れ狂う海に落ちて、夢を見たまま死んでいただろう。
気絶していた心臓が、息を吹き返したように脈動している。鼓動が早すぎて、胸が、肺が痛い。
だが、自分のことはいい。いま聞こえた声が幻ではないのなら、この嵐の海のどこかに──。
「フーヴァル! どこにいるんだ!?」
幻じゃない。あいつが、ここにいる。
「ゲラード!」
小山のように盛り上がっては砕ける波のせいで、数ナート先すら見通せない。
「ゲラード! どこだ!」
「フーヴァル!」
確かに、声が聞こえる。
海に飛び込もうとしたフーヴァルの脳裏に、これも幻かもしれないという思いが過る。
もしジャクィスが俺のことを本当に調べ上げていたら、きっとゲラードをダシにするはずだ。
「フーヴァル、いま行くから……!」
だが、これが奴の作った幻覚だとは思えない。このクソみたいな嵐の中、たった一人で、クソみたいにちっぽけな小舟でフーヴァルを助けに来るようなクソ馬鹿野郎の存在は、彼の想像力の範疇にないはずだ。
「ゲラード!」
「フーヴァル!! やっと見つけた!」
ゲラードは、舳先に〈魔女の灯明〉を提げた小舟に乗っていた。漕ぎ手もいないのに流されることもなく安定して浮いている。ということは、索で母船と繋がっているのだろう。荒波の中でもひっくり返らずにいられるのは、きっとヘインズの呪文の効果に違いない。
「クソッ! 索の長さが足りない!」ゲラードが珍しく悪態をついた。「フーヴァル! ここまで泳いで来られるか!?」
「ああ! 待ってろ!」
早くしないと、奴の方から海に飛び込んでこっちに来かねない。フーヴァルは意を決して海に飛び込んだ。
嵐は先ほどよりも激しさを増していた。もみしだくような波の中、尾びれを懸命に動かして進む。明かりはなく、砕ける波が水中に気泡をばらまくせいで、伸ばした手の先さえまともに見ることができない。
だが、なぜか、彼の手が見えた。
それはフーヴァルを導くように優しく光り、待っていた。
風に吹き飛ばされる木の葉のように押し流されそうになりながら、ようやく、その手を掴む。ゲラードは大声で叫びながら、フーヴァルの身体を思いきり引き上げた。
舟底に横たわり、激しく咳をする。ゲラードは〈灯明〉を持ち上げ、それを空中で振った。すると、嵐の轟音の向こう側から、仲間たちがロープを巻き上げるかけ声が聞こえてきた。
「大丈夫だ」ゲラードは、肩で息をしながら言った。「もう大丈夫」
「クソ馬鹿野郎」フーヴァルも、身体全体で喘いでいた。「なんでこんな無茶を──」
すると、彼は笑った。その笑顔も、笑い声も、こんな状況ではまったくもって不似合いで、場違いだった。けれどフーヴァルはその声を聞いて、なぜだかわからないまま、つられて一緒に笑って……それでようやく、自分が悪夢を抜け出したことを知ったのだった。
深い、深いため息をつく。
「ありがとよ、ゲラード」フーヴァルは、心の底から言った。
「どういたしまして」ゲラードはにっこりと笑った。
小舟は着実に、母船に引き寄せられていた。
フーヴァルの目に、船尾のランタンがはっきりと見えた。向こうからもふたりの姿が見えたらしい。
「船長だ! ガルも無事だぞ!」という声に、歓声が起こるのが聞こえた。
その時だった。
まったく唐突に、小舟がひっくり返った。海水にたたきつけられ、波に身体をもぎ取られ、瞬く間に船から遠ざかる。
いったい、何が──?
恐慌に陥りそうになる頭をなんとかなだめる。人魚への変異を遂げる身体の違和感を押さえつけながら、フーヴァルはゲラードの姿を探した。
服を着たまま海に落ちると、服が水を吸い込み、思うように泳げなくなる。この嵐の海では、あっという間に溺れてしまうだろう。
暗い海に目をこらし、潮の流れから行き先を予測する。波を蹴って、本能のままに、フーヴァルは泳いだ。
すると、いた。
だが、ゲラードは一人ではなかった。気を失ったのであろう彼を抱きかかえ、大きな尾びれをはためかせて、遠くへ泳ぎ去ろうとしている者がいる。
人魚だと!? なんで、人魚が奴を──。
その時、フーヴァルの脳裏にドクの言葉が蘇った。
キャトフォードの沖に浮かんでいたゲラードは、何者かに生かされたのではないかと、彼は言っていた。あの時確かに、人魚が彼を助けた可能性を考えた。それを、今まで忘れていた。
奴らは一人の人間を気に入ると、飽くなき執着をもってどこまでもついてまわる。
だが──。
「そいつに、先に目をつけたのは、俺だ!」
潮を裂いて、フーヴァルは加速した。全ての鰭で水を掻き、水流の間隙を縫うように泳ぐ。賊は、思わぬ追い上げに裏帆を打ったようだった。そいつが振り向き、目を丸くしたのを、フーヴァルは確かに見た。
そしてその顔が、びっくりするほど自分に似ているのを。
だが、驚いている余裕はなかった。フーヴァルはゲラードの身体を抱きかかえると、略奪者に向かって言った。
「海賊から宝を奪おうなんざ、百万年早いんだよ、雑魚が!」
フーヴァルは文字通り牙を剥き、人魚の肩に思いきり噛みついた。
人魚は悲鳴と気泡とを吐き出し、水中で身もだえする。その隙を突いて、フーヴァルはゲラードを奪い返した。
海面に顔を出して周囲を見回す。が、あたりには何もなかった。
マリシュナがどこにいるのかも、もうわからない。この嵐がいつまで続くのか、陸に着くまで泳ぎ切れるのか……フーヴァルには、何もわからなかった。
遠のく意識の中、海面を波が奔るたびに容赦なく押し流されそうになりながらも、フーヴァルは泳ぎ続けた。どのくらいの時間が経っただろう。もはや意思の力の及ばぬ本能で尾鰭を動かし続けていたフーヴァルは、水底から響いてくるような、長く尾を引く啼声を聞いた。海面に顔を出していても聞こえるほど、力強く、深い声だ。
気を失っているはずのゲラードが、身じろぎして呟いた。
「歌……だ……」
それが本当に何かの力を持つ歌だったのか、それとも気まぐれな鯨の声だったのかはわからない。だが、海を震わせるような不思議な音になだめられたみたいに、荒れ狂う潮流はゆっくりと凪いでいった。
やがてフーヴァルは、闇の中に自分を迎え入れる白い腕を見た気がした。フーヴァルはその腕に向かって泳ぎ、泳ぎ、とうとう泳ぎ着いて、柔らかな砂の抱擁に身を任せた。そうして、自分の隣にゲラードがいることを確かめてから、ようやく気を失った。
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