魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

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第一章 再び始まった戦争

第四話 接敵

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 イルキア基地司令官室。そこは基地司令官でありドミニア帝国の辺境伯の一人、オズワルド・アークウィンが使用している部屋だった。
 室内の調度品はどれも高級感があり、実際高価なものだった。そんな部屋の椅子に座っている人物もまた貴族としてのふるまいを持った紳士であった。

「忙しいところ悪いな、エミリア。」

 エミリア・アークウィンは父親であるオズワルドからの呼び出しに応じて彼の部屋を訪れていた。
 しかし二人の間に流れる空気はとても親子の物とは思えないくらいに重々しいものだった。

「それでお話とはなんでしょうか。」

 エミリアは早く話を終わらせたいとそう話の結論を急ぐ。

「お前にはこれから部隊を率いて奪取された三機を追撃してもらう。」
「追撃部隊はどうしたんですか? 確かあそこは違う部隊が追撃を行っていたはずでは?」

 顔見知りであった中隊長のことを思い出しながらもエミリア尋ねた。だが、この話が来る以上一つの可能性については十分把握をしていた。

「オーダシュ少佐が率いていた中隊が殲滅された。」

 オズワルドは端的にそう答える。だからお前たちが代わりに行けと、暗にそう言う。

「戦闘データは?」

 エミリアは即座に自分たちが追撃をしなければならないということは理解した。ならばそのために打てる手は全力で打つ、それが彼女の信念であった。

「それならもうメールで送った。それと機体の方の準備も終わっている。必要そうな装備は全て用意した。」

 その辺は親子で似ているせいか、エミリアが欲しいものは全て揃っていた。過保護のような気もするが、時間が惜しいため出来ることは全てあらかじめ手を打っていた。
 二人ともそういう性格の人間であった。

「分かりました。それでは直ちに取り掛かります。奪取された機体は撃破でよろしいのですね。」
「あぁ。別に技術的に価値もないし破壊して構わない。可能であればパイロットの確保をしてもらいたいが、まぁ出どころに関してはもう目星をつけている。」
「やはり、アウスール連合国ですか?」
「そうだ。当然軍部としては連合国への非難を示すべきだと考えている。」

 だがそれは無理だろうとオズワルドは暗に言う。

「外務省が反対しているのですか?」
「そうだ。外務省としては連合国である確証が取れないのであれば手を出す訳にはいかないそうだ。」
「呑気なことを。」

 エミリアは忌々し気に言う。基本的に軍と外務省の中はあまりよくないのが必然だ。ただ、ドミニア帝国では過去に類を見ないほど格別のものだった。

「仕方あるまい。今の帝国では、非魔術師が仕切っている省庁のが強いのだからな。」

 魔術師たちだけが社会で活躍しているのは気に入らないから自分たちにも仕事を寄越せ。それが現在強い権力を持って働いている非魔術師たちの言い分だった。

実態は無駄な会議を行い、魔術師にとって負担になるような無駄な仕事を増やし指図したいだけの組織だった。

「まぁ今はそんなことはどうでもいい。もう一つ伝えなければいけないことがある。敵だがもしかしたらアクタール基地近海に向かっている可能性がある。」
「連邦の領地に、ですか?」

 まさか連邦も一枚噛んでいるのかとエミリアは警戒感を露にする。それに対してオズワルドは首を横に振った。

「それに関しては外務省を通さずにベッソノワ候と話をした。その結果、帝国軍機が領海に入ることは認められない。だが、協力はしてくれるそうだ。」
「協力?」

 エミリアはオズワルドが具体的にどう動くのか把握しているのか確認の意味を込めて尋ねる。

「あぁ。もし領海に入ったら、砲撃なりなんなりして領域外に追い出すとのことだ。」
「もしその約束が守られなかったら?」
「それは無いだろうな。バラノフ家もベッソノワ家の言い分に賛成している。彼女としても下手にバラノフと事を構えたくはないだろう。」

 全て織り込み済みかとエミリアは納得をする。

「分かりました。それではすぐに部隊を編成して向かいます。」

 そう言って敬礼をして部屋から出ていったエミリアを見送るとオズワルドは一度だけため息を吐いた。

「これで後は敵を倒すだけか。それにしても今回の奪取。計画をしたのは一体誰だ? 前回の奪取を偽装した件があるから警戒は厳にしていたのだが。」

 しかしだからと言って機密にするような機体でもないためハンガー自体は普通のものを使用していた。だから特殊部隊であれば突破自体は不可能のものでもないと思う。

「分からんな。」

 オズワルドはそう言うと頭を掻いた。これがこちらの機体の情報を得たから行われたのか、あるいは内通者がいたのか。
 ただ今やるべきことは世間からの追及をかわすために出来ることを考えることしかできなかった。



「アドハム・ナセル。」
「なんでしょうか。」

 イルキア基地から新型機を奪取し合流した潜水艦、その中でアドハム・ナセルは艦長から呼び出されていた。

「敵艦隊に再び補足されたようだ。」

コンゴウが再び潜水艦のある海域に接近しているのを確認し、迎撃するように潜水艦の艦長は指示を出す。

「分かりました。それでは直ちに迎撃任務にあたります。」

そう言って艦橋から出ていくアドハムを確認すると艦長はため息を吐く。

「なぜ、我々が魔術師の支援などしなければならないのだ。悪魔どもめ。」

その一言が連合国の魔術師の有り様を示していた。



 水深が深く黒い海の上を三機の帝国軍キャスター、アレースが飛行している。エミリア・アークウィンはその中で奪取された三機が既に現れたことに少し驚く。

『思ったより、早く接敵しますね。』
「えぇ。あまりにも敵の展開が早すぎる。」

 アルバートからの通信にエミリアは不審に思う。まるで誰かに見つけてくれとでも言っているように潜水艦の深度が深くないことが気になる。

「コンゴウ、付近に敵艦は?」
『今のところ確認はされていません。』
「周囲で変な波があるところは?」
『確認します。』

 エミリアは嫌な予感を抱えながらも目の前の三機に集中する。

「小隊各機フォーメーションAで展開。左側の敵機に攻撃を仕掛ける。」
『了解。』

 スラスターのペダルを一気に踏み込んでいく。そのとき機体にかかるGはかなりのものとなる。しかしパイロットにかかるGは、機体のシステムによって乗用車程度のものとなっていた。
 そのほどほどに強いGは不快感が無いほどでキャスターのパイロットは戦闘のみに集中することができる。

「全機攻撃開始!」

 敵が射程距離に入ったのと同時に三機のアレースは右手に持っている、ライフルを撃つ。銃口から加速された素粒子が発射され、青い空に三本の緑色の筋が奔る。
 その三本は奪取された三機の内の一機、フォルセティに向かっていく。

 フォルセティは大きく左に回避し反撃をする。中距離からの砲撃戦をアレース三機は始める。それに対抗して奪取された三機もライフルで攻撃をする。そのままお互いに射撃戦を続け、接近戦の距離まで降着状態となる。

「残り二機はフォルセティを援護しようと動くか。このままフォルセティを狙ってもいいけど。」

そのとき黄色の機体、トールの動きが直進的なことに気づく。

「二人はフォルセティを狙って。私はトールを落とす。」

六機のキャスターの距離がぐんぐんと近づいていく。三対三で綺麗に編隊を組んでいる全ての機体が左腕に青色に発光しているプラズマサーベルを持つ。そしてすれ違いざまの瞬間アルバートとエマソンは青色のフォルセティを、エミリアは黄色のトールに仕掛けた。対してブラギとトールはエミリアを狙って攻撃をする。

フォルセティと二機のアレース、そしてブラギ・トールとエミリアの駆るアレースの二つのグループに分かれ距離が離れていく。

『大佐!』

アルバートの心配そうな声にエミリアは軽く笑う。

「こっちは大丈夫。二人は早くフォルセティの撃破を!」

だが、彼女はすぐに顔を引き締めると指示を出す。そして赤色と黄色の二機を相手に一歩も引かず相対する。

「どっちも原色だから目がちかちかする。」

 そう愚痴を言いながらも、二機からの攻撃を鮮やかにかわしていく。二機とも連携自体は見事であるのだが、機体に慣れていないせいか動きにラグが生じている。

「それにしても二機ともフォルセティにやけにこだわっているわね。」

 エミリアはフォルセティの援護をするために突破しようと敵の動きが単調であることに気づいていた。
 その焦りによって二機は直進的な攻撃をエミリアに繰り出す。それを回避しながらタイミングを見ては攻撃を繰り出すことで二機がフォルセティに向かえないように足止めを行う。
 その攻撃は敵にとって一番やってほしくないもので、二機はいら立ちを募らせていく。そしてより単純になっていく動きにエミリアはちらりとフォルセティの方を見る。

 フォルセティの方はまだ攻撃などが当たっていないが、アルバートとルーシーが追い込んでいるのは明らかだった。情勢事態はエミリアたちが圧倒的に有利だったが、先程の動きに引っ掛かっているエミリアは早めに決着をつけようとする。

 その時だった。

『コンゴウから小隊各機に。敵エイノールの部隊が接近。規模は大隊程度です。』

 やはりか。エミリアがそう思ったと同時にレーダにエイノールの部隊が一気に現れる。同時に遠距離から艦砲射撃が飛んできた。

「やっぱりか。」

 エミリアたちの部隊に艦砲射撃は無いが、エイノールの部隊に囲まれる前にこの三機を破壊する必要がある。本来ならば安全策を取って3対2で攻撃をしたかったが、フォルセティの撃破にはまだ時間がかかりそうなので、一人で二機撃破することを目指す。

 そうと決まれば先程までの緩慢な戦闘を辞め、攻撃を激しくしていく。エミリア自身、基本は戦術を駆使した戦闘が得意ではあったが、戦闘技術も前の大戦で身に着けたものが多く、その強さは帝国内でもトップクラスである。
 そのため先程までと打って変わり激しくなる攻撃に赤と黄色の機体はたじろいでいく。

 そして誤射を恐れて敵機に近づいていれば撃たれないと考えていたエミリアは先程までと同じようにトールに攻撃を集中しようとした時だった。

 コックピットに急にアラーム音が響く。

「どこから!?」

 モニタを確認するもののどこにも敵の存在はいなかった。そしてそれが敵の砲弾が来るというアラームだと気づいた時には目の前にいたトールの胴体は消失していた。同時に彼女の機体も左腕を失っていた。

「味方ごと?」

 エミリアがそう忌々し気に敵艦を見るのと同時にブラギも少し呆気に取られていたが、再びアレースに攻撃を仕掛ける。

エミリアは左腕を失ったアレースで対応する。二対一ならまだしも一対一であれば充分に対応できると戦闘を続けた。
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