魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

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第一章 再び始まった戦争

第十一話 第三次侵攻作戦

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 第三次侵攻作戦の立案書をユリアは読むと大きくため息をついた。決して不可能ではないが優秀なパイロットが必要な作戦であった。

「私が出るしかないか。」

 そうして考えた結論を口にする。

「再びキャスターに乗るのですか!?」

 それを聞いて副官であるルーシー・メーチェは驚いた顔をしていた。

「それは乗りもするだろう。まだパイロットも辞めていないわけだしな。それに今後のためにも、せめてもう少し成果を上げておきたい。」
「確かにそれはそうですが……。」
「だったら、いいんじゃない?」

 その言葉にルーシーは返答に窮してしまう。

「それにいざとなればソフィアがいる。彼女がなんとかしてくれる。」

 少し無責任にも聞こえるその発言は彼女に対する信頼性の表れだった。

「確かに大佐は優秀ではありますが、そうなんでもかんでもお任せになるのはあまりよろしくないかと。」
「だけど他に任せることができる人いる?」
「それは……。」

 他に信頼に足る人物がいるかと言われればその答えもまたないのであった。

「まぁ最近ソフィアからはシュタイナー少尉を頼れとか言われているけど、まぁ当分の間は放っておいても問題はないでしょう。」

 過重労働の実態にルーシーはなにも言葉を出すことは出来なかった。ただソフィアに報告だけはしておこうと思うだけであった。



「今度の作戦には司令が出られるというのは本当のことなのですか?」

 親衛隊の一員であるダース・ユリオンの問いかけにソフィアは頷く。

「だとしてなにか問題でも?」
「確かに司令は優秀なパイロットであったとは伺っています。ただ、それは過去の話であって今優秀とは限りません。」

 結構な言い分だと思うが完全に否定することは出来なかった。まぁ心配の現れということにしておこうと彼女は思っておく。

「確かにそれに関しては否定はする気は無いけれど。ただそれでも決まったことよ。今後のために必要なことというのは否定する気は毛頭ないし。」
「ですが、それでも認めるわけにはいきません。」

 強硬に反対するダースに対し、ソフィアはため息を吐く。

「第一納得できません! 私たちは事前にこのことを知らされていないじゃないですか!?」
「いや、親衛隊の任務のうちの一つなんだけど……。」

 ソフィアは困った顔をして言う。親衛隊という名の通り、主人が出撃するなら護衛する。規約でそうなっている以上上からの命令があればそれに従うのが軍人だというものだと彼女は思う。

 しかし、前の大戦で影響力が下がってしまったベッソノワ家の現状では兵士の質と士気がかなり下がっていた。この状況についてソフィアはよくないと考えていた。そのためにいくつか手を打ってはいたものの、今のところはまだ日の目を見ていない。だからこそ、まだ色々な手を打つ必要があるかと頭を悩ませる。

「しかし、それでも私は反対です。」
「ならばそこまで反対する理由はなに?」

 突き放したような冷たい声を出し、ソフィアはダースを値踏みするように睨む。それにダースは一瞬ひるみ、答えは中々でなかった。この辺はアルベルトとは全く違うところだと思う。
 まぁ彼の場合はかなり荒削りなところが多いので、もう少し考えてから物事を言っても良いような気がする。ただ本人もそこは分かっているようでソフィアによく助言を求めていた。そこもまたダースと対象的であった。

「それは……。」

 そこから先ダースが言いたいことはソフィアもまた分かっていた。だから彼女は話を切り上げるべく、表情をやさしいものに変える。

「どんな作戦であろうとも私たちには逃げることは許されない。それが軍人だ。分かったら明日の作戦の準備をしなさい。」
「了解しました。」

 ダースはそれだけ言うと彼女の部屋を後にする。

それを見届けると彼女は自分の椅子に座る。

「一体なにがそんなに不満なのか。」

 ソフィアは手元にある資料を見ながらそうつぶやく。

「遺伝子を改造したデザイナーベイビーとはいえ、なぜ二人でこうも違うのか。」

 そういって彼女はアルベルトとダース二人の情報を見比べていた。



「わかりました。では私たちの部隊は連合国の首都の地上を制圧すればよいのですね?」
『あぁ。地上を抑えればあとは歩兵部隊が連合国政府を抑えてくれる。細部の作戦はエミリア、お前に任せる。参謀もお前の好きにするといい。』
「了解です。それでは直ちに準備にかかります。」

 自室にてエミリアは父親からの作戦指示の通信を切ると立ち上がる。

「24時間後までに作戦の詳細を決めてあたれなんて、一体何考えているのよ!」

 そして苛立ち紛れに大声を出す。それにアルバートが驚いたように肩をびくりと震わせる。

「デグレア少佐。ジョンソン大佐、フェーク中佐それとマセン中佐をここに呼んで。これから首都攻略に向けた作戦案の立案を行うということと一緒に。」
「了解しました。それにしても今から作戦を立てるのですか?」
「そうよ。いくら奇襲は意外性が大事だと言ってもこんなすぐに動けと言われてはいそうですかとはならないわよ。」

 苛立ちを隠さないエミリアにアルバートはこれ以上話しかけない方がいいなと判断をする。それと同時にエミリアから先ほど言われた参謀将校を呼びに行くべく入館許可証などの位置を確認すると彼女の部屋から少し足早に出る。

 戦時中とはいえ、本土攻撃などは受けていないため基地内部は普段とそこまで大きく様相が変わっていなかった。
 だからこそ、彼はこの廊下をあまり歩きたくなかった。しかし胸に着けているたくさんの勲章が自然と視線を集める。そして彼の顔を見た兵士の一部が厳しいまなざしを向けてくる。

 彼にとってそれはたまらなく辛いものだった。それは自分の知らない過去の自分が獲得した勲章であり今の彼にとっては関係ないものだ。にも拘わらず今の自分は過去の自分と常に対比され続ける。
 それが凡人であれば良かったのに、過去の自分はこれまで類を見たこともないような戦果を挙げた人間であった。だからこそその劣等感は更に重い呪いとなっていた。

「失礼します。」

 しかしそんな悪い考えは参謀室に入る前に一掃する。

「デグレア少佐。どうした?」

 中に入ると30を超えた参謀将校から厳しい視線が来る。

「アークウィン大佐からの命令です。ジョンソン大佐とフェーク中佐そしてマセン中佐に親衛隊隊長室に来るようにと。」
「アークウィン大佐が?」

 それに反応したのは初老に差し掛かった将校だった。

「そうですジョンソン大佐。明日行う首都攻略の作戦を立てたいとのことです。」
「それはまた随分急な。どうせアークウィン大将の命令だろ。」
「よくご存じで。」

 長い間同じところに勤めていると色々なことがわかるものなのだなとアルバートは感心をする。

「まぁあの坊やの言うことはいつも突発的なものではあるが、間違ったことはそこまでない。」
「それで先ほどの件なのですが。」
「あぁ。分かっている。フェーク中佐、マセン少佐。」

 ジョンソンの言葉を聞くとすぐに若い二人の参謀将校が走ってくる。

「親衛隊隊長からのお呼出だ。行くぞ。」

 そういうと立ち上がる彼の後ろを二人がピタッと付いていく。その様は長年の部下といったような出で立ちでアルバートは少しばかりのあこがれを持った。



「なぜだ! なぜこうも勝てない!」

 連合国の大統領、ジャミル・ルルーシュはあちこちで崩れていく前線の報告を聞くと目の前にあるテーブルを苛立たし気に叩く。
二回も

「ハキムの部隊とサームの部隊、それにオルハンの部隊を首都に呼び戻せ!」
「閣下。申し上げにくいのですが、サーム少将の部隊は壊滅、ハキム中将の部隊は敵に包囲、そしてオルハン中将の部隊は敵の捕虜となっています。」
「捕虜だと!? わが軍に降伏など認められない! 徹底抗戦だ!」

 ジャミルはそんなことは認めないとばかりに大声を出す。

「しかしこのままではバクディードへの侵攻も時間の問題です! 市民への被害も甚大なものになります!」
「閣下のお言葉が最優先だ! そんなことを認めるわけにはいかない!」

 そして首脳部内でもとうとう意見の分裂が始まる。

「軍本部としてはそれでも降伏を進言します! このままでは例え勝ったとしても被害が大きすぎます!」
「ではなんのためにあの兵器を作ったと思うんだ! あんな高い金をかけて! 使うためだろ!」

 軍の人間と政府の人間の言い争いがどんどんと激しくなっていく。もう既に会議としての様相を保っておらず、怒号があちこちを行交いしている。そしてその応酬は一瞬の大きな乾いた音と共に沈黙する。

 そこには先ほど降伏を進言していた士官の死体があった。

「我々には降伏は認められない。徹底抗戦だ。」

 ジャミルはそれだけ言うと会議室を後にした。



「あいつらだけは許さない。」

 アドハム・ナセルは今まで死んでいった仲間たちを思い出す。

「アルバート・デグレア、エミリア・アークウィン。」

 そしてすべての元凶であるパイロットを思い出す。

「アルベルト・シュタイナー。あいつが邪魔をしなければ。」

 アドハムは目の前の機体を血走った目で睨む。そこにあったのは連合国の新型機、イフリートであった。
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