魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

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第一章 再び始まった戦争

第十三話 因縁と……

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「これが噂になっていた新型機か。」

アルベルトがアドハムが駆るイフリートと対峙してた時と同じ頃、ユリアたちもまた数機のギデオンに囲まれていた。
連合国の新型機であるギデオンの性能はどうみても連邦や帝国からの技術の流れが汲まれているもので、その性能は両国の高性能量産機の性能を明らかに上回っていた。
それだけの性能の機体をテロ組織同然の国が持っているのはあまりにも不可解だと感じながらもユリアは今の状況では戦力が足りないと判断する。

「大佐。シュタイナー少尉を呼び戻せ。」
『少尉も今敵新型機と交戦中です。ここで下手に呼び戻すと合流されてむしろまずいことになるかもしれません。』

しかしソフィアはあくまで冷静に一番最悪の状況を告げる。彼女の言葉を受けてユリアもまたレーダを見るとアルベルトがイフリートと戦っているのが確認できる。

「しかもあの新型機を奪った部隊の最後のパイロットか。」

奪取したパイロットの名前までは分かってはいないものの、その魔術波長は登録されているため特定自体は難しいものではなかった。

『ここで連携を取られたら勝てるものも勝てなくなりそうです。』
『だからと言ってこの人数ではあの新型機の部隊を相手にするのは難しいです。せめて他の増援を!』

ユリアとソフィアの会話にダースが口を挟む。

「かといって並みのパイロットではあの新型機に太刀打ちができない。それにどの部隊もそんな余力はない。」

それはあくまで理想論だとユリアは切り捨てる。元々余力を作らせてもらえるほど部隊が用意されていなかった。そのためにユリア自身が人員補充という意味も込めて今回の出撃を行ったのだ。

「行かせたのは失敗だったか。」

後悔の念が出るものの、現在統制が取り切れていない敵部隊を相手にする他ないと考える。それだけを把握するとユリアは即座に自分がどのような攻撃を行えば目の前の部隊を撃破できるか考える。

『基本方針はツーマンセルでやります。私と司令、ユリオン中佐はリャーエフ少佐の二組で当たります。』

そんな混乱している部隊の状況をよそにソフィアは的確に対処するための指示を出す。その指示に従ってこの場で一人一言も発さなかったイオクが先陣を切ってギデオンの部隊に切り込んでいった。



『貴様があのとき、邪魔をしなければ、あの二国の閣僚どもを排除できたというのに! そうすればバハーは! ラウダも死ぬことはなったのに!』
「あの時の強奪部隊か!」
『前の戦争で帝国と連邦が魔術師の有用性を示さなければこんなことにはならなかったのだ! こんな魔術師を、同じ人を道具として扱うようなことには!』
「そんなのはどのみち他の誰かが証明する。」
『しかし私たちにはそうもいかないのだ! 貴様ら大国が魔術師の能力を認めれば認めるほど、小国は魔術師を酷使するしかなくなる! だったら!』

そう言って攻撃を仕掛ける機体にアルベルトは落ち着いた様子で対処する。

『だからこそ貴様らがあの巨大兵器にやられてもらわなければ!』

そうして魔術師が有用ではないということを示せば自分たちももう戦わなくて済むということに気づく。

「それでも人々は魔術師に対して重荷を背負わせ続ける!」

アルベルトは今まで見てきたことを元にそう答える。

「比較的費用対効果が高い兵器として魔術師を導入し続ける。だったら脅威は取り除かねばならない! 特にテロリスト同様の国のものはな!」
『だというのなら、あの要塞はなんだ! 貴様らが強すぎたからああいう要塞が作られる!』
「そうだ。これ以上あんなものを作る口実を与えるわけにはいかない。あんなものをこれ以上作れば、その破壊のために魔術師が死んでいくだけだ。」

二機の機体性能の差は歴然としたものであったが、その差を感じさせないほどのパイロットの能力の差があった。

『どちらがテロリストだ! 自分たちの発展のためだけに他の国を支配して、発展する機会を奪った!』
「しかし、こちらの発展が無ければそっちの国の発展も無かった。」

アドハムが感情的である一方でアルベルトはただ淡々と事実のみを返す。

『それは強者の理論だ!』
「だったら、今ここにある大きな兵器を持っているお前たちは強者ではないと? 周辺国を支配し、帝国や連邦に負けない武力を持とうとしているのは違うと?」
『そうだ。だから俺はこの国を変えるために!』
「変える? どうやって! ここまで民間人を巻き込み続けている国が成長できると!?」
『そんなのは貴様らを倒してその戦果によって上に上がらせてもらう!』

アルベルトは一度だけため息を吐くと通信を切る。
そのまま目の前の機体の攻撃を受け流しながら少しずつ距離を取る。
それを逃がさまいと接近する。

「しつこい!」

ただまぁ普通は逃がさないかと思うと、機体に搭載してあった燃料タンクを投棄した。
イフリートはわざわざ燃料タンクに突っ込む必要はないと考えたのか、一度だけ動きを止める。
その僅かな時間でアルベルトはウルに搭載されているチャフを投げる。投げ出されたチャフは一瞬で爆発すると周囲に銀片を撒く。同時に搭載されていたスモークグレネードも投げる。
銀色の破片の周囲を覆い囲むように広がる雨雲よりも黒い雲によって、ウルとイフリートはお互いの姿をレーダで捉えるどころか、光学カメラによって捉えることすら不可能となっていた。
しかしそんな中でアルベルトはただ冷静にライフルを黒い暗雲に定めると発砲をした。
その銃弾は先ほどアルベルトが投棄した燃料タンクに直撃し、そしてそこから周囲に大きな爆炎が連鎖して大きな火球となる。そしてその中心にいたイフリートもまた無事ではなく、装甲があちこち溶けていた。

「これで終わりだ!」

アルベルトは躊躇うことなく攻撃を仕掛ける。だがその瞬間動きを止めていたイフリートが再び動き出す。

『捕まえた! 貴様だけは!』

ウルの両腕を掴み接触回線でアドハムの言葉が響く。

「もう見飽きたよ! それは!」

しかしアルベルトはウルのつま先に装備されている隠しプラズマサーベルでイフリートの左腕の関節を切り落とす。

『ク、ソ!』

そして剥がれた装甲にプラズマライフルを突きつけると、アルベルトは最大出力で照射する。それによって内部の回路が熱によって暴走する。そして各部から小規模な爆発が起き、燃料タンクに誘爆し大きな火玉となる。それによってウルの装甲が焼けただれてしまうがアルベルトはエミリアたちの退路を確保すべく戦闘を継続しようとした。



イフリートを撃破したアルベルトはウルのレーダーで戦況を把握していた。

「今度は連邦側に攻撃を集中してきたか。」

ソフィアたちの陣形が崩れているのを確認する。そのため戦場を移動していたのだが、そのときに三機のギデオンに囲まれていた。

直進的に突っ込んでくるギデオンの部隊をギリギリのタイミングでいなす。

「こんなやつを相手にしている場合では……!」

舌打ちをしながらどう部隊と合流するか考える。このまま敵を引き連れていくのも一つの手としてはある。しかしその場合連携が取れるようなら寧ろ不利になる可能性が高くなる。ならばここで倒したいがそれには少しばかり時間がかかるのもまた事実だった。

『少尉。』

その考えを察知したかのようにソフィアがアルベルトに通信をする。

「大佐!」
『下手にこっちに戻ってこなくていい。それよりもそっちを早く倒せ。』
「……。分かりました。」

すぐに目の前の状況に意識を集中させる。ソフィアからの指示に一瞬反論しかけた言葉を飲み込む。この指示があるということはなにか考えがあるのだろうと思う。

「そろそろ決着をつけたいが……。中々そうもいかないか。」

そしていつの間にか連合国主力機エイノールにもアルベルトは囲まれていた。

「だが、エイノール程度の攻撃なら!」

アルベルトはエイノールの銃弾が飛び交う中を躊躇いもなく突き進む。例えそれが罠であったとしてもなにが起きるのかがわからない以上やるしかなかった。

『そうこなくては!』

それが罠であること自体アルベルトもまた理解していた。
しかし罠の本質が何であるのかは分からない。だからこそ、確率が高いことを即座に思案する。その瞬間、彼の機体を囲っていたエイノールの一機が目に付く。
その機体から放たれた銃弾は、少しだけ色が違うことに気づくと即座に躱す。

「高電圧の弾か。」

それを躱したアルベルトはギデオンにプラズマサーベルを押し当て、内部フレームを露出させる。

アルベルトはプラズマサーベルの柄を話すとエネルギーライフルの銃口をその切り込みに当てる。

「残り二機!」

そのまま容赦なくトリガーを引くとギデオン内部が高温になり機体が溶解していった。



「ノーマルが何機いようが!」

連合国の巨大要塞内部に侵入したアルバートは内部通路に展開しているキャスターよりも二回りも小さい人型兵器を撃破していた。

「それよりも構造的に脆そうなところは……。」

内部を突き進みながら強固な補強をしてあるところを探す。
そうして探しているうちに司令塔がある部分を確認した。

「アークウィン大佐。構造的に脆そうなところは分かりませんでしたが、司令塔を確認しました。破壊しますか?」
『えぇ。破壊して問題ないわ。こっちも高負荷になってる場所を確認したし。爆弾設置後に外に出なさい。』
「了解です。」

アルバートは司令室のガラスに大型の爆弾を設置する。そして通路を引き返し、すぐに外に出た。


『こちらエミリア・アークウィン。司令部、敵要塞の破壊に成功した。これより敵キャスター部隊を殲滅後に制圧部隊を送って欲しい。』



『大佐、今からそちらに向かいます。』

アルベルトからの通信にソフィアはギデオンの部隊が壊滅していることを確認した。場所から見ても後五十秒で到着する。

「これで後は!」

アルベルトが合流することを見越してソフィアは次の動きを考える。ここまで切り崩してしまえば後は残党狩りになる。そのときに手痛い仕返しを受けないように少しの逃げ道を用意しながら戦いを膠着状態に持っていく。
そして最後に追い込むべく、形作りを行っていく。

ここまで行けば勝ったも同然であった。

しかしギデオンたちもまだ負けはしていないと必死に反抗をする。それはまるでなにかを待っているようであった。

『隊長! 周りの敵が!』

イオクからの報告とほぼ同時にエイノールの部隊がユリアの駆るイルクオーレに対して一斉にライフルを向ける。そのライフルは従来のものとは明らかに違っていた。
そしてその銃弾が高電圧を纏ったものであることに思い当たる。

「司令!」

ソフィアは慌ててユリアの駆るイルクオーレを突き飛ばす。

そして代わりにその場に留まってしまった彼女の機体の各素子が高電圧で破壊され、予備系統の駆動システムに移るために機体の挙動が一瞬止まる。その瞬間、彼女の機体のコックピットにはギデオンのプラズマサーベルが深々と突き刺さっていた。



「ソフィア!」

ユリアが大声で叫ぶときには彼女の乗るウルが爆発をする。

「そんな……。」

その数瞬後にギデオンが機体を動かそうとした瞬間、真横からの攻撃で動きを止める。

「今更来たところで……!」

ユリアはそうアルベルトの機体を睨む。
しかしそのことを知る由もなかったアルベルトはすぐさまもう一機のギデオンに意識を向ける。彼にとって今この場で取るべき行動はソフィアの穴埋めであって悲しむことではなかった。そのあまりにも正しすぎる行動は返って部隊内から反発を生むものであった。

『貴様! 今更どの面下げて!』

ダースからの怒声が響く。
その言葉に対し、アルベルトは無言でただただ冷静に部隊の危機を対処する。彼にとって今重要なことはこの囲まれた状況をどのようにして打破するかということだけだった。

『今後の作戦はどうしますか、司令。』

そう冷静に司令であるユリアに指示を仰ぐ。彼はソフィアから言われた通り、ただそれだけをやろうとしていた。
しかし、心の整理が追い付いていなかったユリアには返答が出来なかった。

『少尉、もう一機の新型機の相手はできる?』

その代わりにイオクが、冷静にこの場を把握しようと質問を投げかける。

『それに関しては問題ありません。』

アルベルトの言葉にユリアは少し落ち着きを取り戻すとこの状況を切り抜ける手段を考える。

「シュタイナー少尉は新型機を相手にして時間稼ぎを、残りの機体は十一時の方向に攻撃を集中することで敵包囲網に穴をあける。」

その声は少し震えていたが、彼女は冷静に判断を下す。例え精神が不安定になろうともその安定した指示を出せるのが、彼女が生まれつき持っている強みでもあった。

各機からその指示について返事があったのちにユリアは目の前の部隊を睨む。敵部隊の動きは確かに一般の連合国の部隊に比べると練度が高いものではあったが、それでも機体性能の差をひっくり返せるほどのものではなかった。

「やっぱりあの新型機が一番の敵だったのか。」

そう思うのと同時に包囲網は崩されて、ユリアと親衛隊は全滅の危機を免れていた。
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