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第0章 始まりの戦い
第十三話 実力の差
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『なぜお前が戦場に出ている!? アルバート!』
あのとき忠告したのにと。そうアインは苛立ちを含んだ声で言う。
折角幼年学校で戦ったときに見逃したというのに。
「そうせざるを得ない状況だったからだ!」
アルバートはアインに対して怒りを覚える。確かにアインにとっては見逃してやったのかもしれない。ただそれはアインから見た話だ。
アルバートにとっては捉え方が違った。
アインのせいで同期生よりも早く入隊することになった。
エミリアには言っていなかったが、アルバートにとっては入隊するまでの間に色々とやりたいことがあったし、遊びたかった。
それを壊したのがアインだった。
「上から偉そうに!」
『この馬鹿が!』
アインの乗るカストルはメインスラスターを全開にし、パワーの差でアルバートのゼウスを押し込む。
それによってゼウスの両刃の剣が自身の機体に食い込んでくる。
「ここまでパワーの差があると……。」
なんとか機体を捻りカストルの切先を逸らす。それでもアインが有利な状況には変わりなかった。しかしそれでもなんとかしてアインから一瞬だけ機体を離し、状況を立て直そうとする。しかしそれをさせるアインではなかった。
『不利な状況になったらすぐに立て直しを図ろうとする。お前の悪い癖だ。』
再度二機は切り結ぶ。
『全く、知り合いを殺すというのも気が引けるが、仕方あるまい!』
カストルは再度出力を上げて剣で押し込もうとする。
「ふざけるな! 誰が貴様なんかに殺されるかよ!」
ゼウスもその出力を上げてそれを押し返そうとする。
『そう言う言葉はもう少し自分の腕を見てから言え!』
カストルはゼウスの威力を生かしてあっさりと背後をとる。それをアルバートは予測していた。
「十分に分かっているさ! このままではお前に勝てないことぐらい! それでも!」
機体を急降下させる。
『逃がすか!』
「貴様に追いついてやる!」
アインのカストルが体勢を変える一瞬の隙をついて左腕を切り落とす。
『だがその程度で!』
その瞬間ゼウスも左腕を切り落とす。
『この私に勝とうなど!』
更に追撃するべくゼウスに攻撃を仕掛ける。
それをアルバートはギリギリで対処する。
なんとかアインのカストルと互角の状況までもっていこうとするが、中々そうはいかなかった。
『もう一度言ってやろう、アルバート! お前では俺に勝つどころか追いつくことも無理だ。例えどれほど努力しようと。覚悟が違うのだ。俺とお前では。』
体当たりをもろに食らったアルバートのゼウスは空中で姿勢を崩す。
『これがお前と俺の差だ。私とお前では話にすらならないんだよ。』
そのアインの言葉と共にカストルはゼウスを破壊するべく、右腕のライフルで照準を定めた。
*
「この感覚久しいな。」
時は少し戻る。ロマンと対峙していたブライムは剣を交えながら十年前の感覚を思い出す。
昔と違い、若さによる高い反応速度は無くなってしまったが経験による操縦の熟練、それに加えて相手の動きを読めることによる動きの精錬さはそれと引き換えにしても十分以上のものだった。
そしてそれはロマンの駆る彼専用のキャスター、ダリウスも同じだった。
だからこそ二機はお互いに一歩先を読んだ激しい戦いを広げていた。
どちらか一方が攻撃をするとその瞬間にはお互いに二手三手まで敵の動きを読んだ行動をとるという常人はずれの行動を行っていた。
そのためお互いに敵の剣の軌跡は把握できない。
だが相手の動きをしっかり見ていたからこそ反応できていた。
といえども予測も正確というわけではないのでお互いに傷ができていく。
しかしその傷とは裏腹にお互いにその顔には笑顔が、いや、正確には久しぶりに自分の本気をだせる戦いに対する喜びが現れる。
だが、その時間も長くは続かなかった。
『大佐。基地攻撃用ドローン部隊が破壊されました。撤退の指示を。』
「了解した。」
ブライムは不機嫌そうに
舌打ちをするとすぐにスモークグレネードを発射する。
「全機撤退だ。作戦は失敗した。」
それと同時にコンゴウからチャフミサイルが発射される。
「小隊各機、撤退するぞ。」
エマソンとエミリアは特に問題なく行動していたのですぐに了解との返事が来る。しかしアルバートからは来なかった。
周りを見るとアルバートのゼウスが無いことに気付く。
だが撃墜されているのならデータが来るはずなので撃墜されていることは無い。
「デグレア准尉。」
ブライムはアルバートに話しかける。だが反応が無い。
「デグレア准尉!」
気絶している可能性を考慮して大きな声を出す。
『はい。』
「撤退だ。戻れるか?」
ようやくアルバートからの反応があった。
『承知しました。』
そうしてアルバートの乗るゼウスがブライムのすぐ傍に寄る。
その形を見てブライムは驚く。機体の状況は酷いもので頭部と両腕部は失っていた。また胴体にもあちこち傷が入っていた。
ただ特になにかアルバートに話しかけることはなく、母艦に帰投する。
*
格納庫に戻ったアルバートはコックピットから降りると機体を見上げた。
「大分派手に壊してくれたな、坊主。」
「申し訳ありません。修理は可能ですか?」
「別に修理は可能だが、毎回こうこわされちゃこっちもたまったもんじゃない。」
「すみません。」
その後整備兵から十分くらい説教をされるが、彼の耳には入らなかった。
そして説教が終わるともう一度機体を見上げる。既に修理をするべくメカニックたちが機体のあちこちの整備用パネルを開いて修理をしていた。
それを一瞬だけ見ると格納庫から出る。
「大丈夫? 怪我とかしてない?」
そのとき入口で待ち伏せしていたエミリアが前の戦闘が終わったときと同じように瞳を真っ直ぐ向けて尋ねてくる。それを彼は見たくなかった。
(アインに完膚なきまでに負けた。しかも見逃してもらった。)
だがそれでもこたえるのは自分の義務だと思いとりあえず顔を真っ直ぐ向ける。
「あぁ、怪我とかはしてない。ただ……。」
最初はエミリアの目を見てはっきりと答えた。だが途中でアルバートは目を伏せてしまった。
「ただ?」
「アインがいた。あいつはバラノフ家の親衛隊に入ったみたいだ。」
「アインと話したの?」
「あぁ。話したし、戦ったよ。俺はアインに負けたんだ。」
アルバートは振り返るともう一度機体を見た。
「そしてあいつは有利な状況に立ったまま、俺に止めを刺さなかった。見逃されたんだよ、俺は。」
そう告げるアルバートにエミリアはなにも返すことが出来なかった。
二人の間に沈黙が流れる。
「デグレア准尉、アークウィン准尉。」
だがその沈黙を破るかのようにブライムが話しかけてくる。
「はい、なんでしょう?」
アルバートは先程までの様子を微塵も出さずに答えた。
「貴官らには士官学校へ入学してもらう。といっても半年程度しか入れないだろうが。その腕を磨くついでに法律も勉強してこい。」
ブライムはそう励ますようにアルバートの頭を雑に撫でる。
だがそのときのアルバートの顔が曇っていたのをエミリアは見逃さなかった。
*
「強い敵でもいたの?」
アクタール基地に戻ったアインのカストルは、親衛隊の仲間であるアズリト・アースの駆るポルックスの隣に駐機をした。そして機体から降りて来た彼にアズリトが話しかけた。
「はい。中々強い敵でした。」
アインは一言そう返す。その顔が曇っていたのでアズリトは少し気になる。
「そんなに強かったんだ。」
「はい。」
アインはそういうと機体を見上げた。
(アルバートを殺せないのが今の俺の弱さか。)
****************************************************
毎日投稿は本日で終了します。次の投稿日は1/14土曜日を予定しています。
今後は基本的に毎週水曜日と土曜日の夜に投稿します。
あのとき忠告したのにと。そうアインは苛立ちを含んだ声で言う。
折角幼年学校で戦ったときに見逃したというのに。
「そうせざるを得ない状況だったからだ!」
アルバートはアインに対して怒りを覚える。確かにアインにとっては見逃してやったのかもしれない。ただそれはアインから見た話だ。
アルバートにとっては捉え方が違った。
アインのせいで同期生よりも早く入隊することになった。
エミリアには言っていなかったが、アルバートにとっては入隊するまでの間に色々とやりたいことがあったし、遊びたかった。
それを壊したのがアインだった。
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アインの乗るカストルはメインスラスターを全開にし、パワーの差でアルバートのゼウスを押し込む。
それによってゼウスの両刃の剣が自身の機体に食い込んでくる。
「ここまでパワーの差があると……。」
なんとか機体を捻りカストルの切先を逸らす。それでもアインが有利な状況には変わりなかった。しかしそれでもなんとかしてアインから一瞬だけ機体を離し、状況を立て直そうとする。しかしそれをさせるアインではなかった。
『不利な状況になったらすぐに立て直しを図ろうとする。お前の悪い癖だ。』
再度二機は切り結ぶ。
『全く、知り合いを殺すというのも気が引けるが、仕方あるまい!』
カストルは再度出力を上げて剣で押し込もうとする。
「ふざけるな! 誰が貴様なんかに殺されるかよ!」
ゼウスもその出力を上げてそれを押し返そうとする。
『そう言う言葉はもう少し自分の腕を見てから言え!』
カストルはゼウスの威力を生かしてあっさりと背後をとる。それをアルバートは予測していた。
「十分に分かっているさ! このままではお前に勝てないことぐらい! それでも!」
機体を急降下させる。
『逃がすか!』
「貴様に追いついてやる!」
アインのカストルが体勢を変える一瞬の隙をついて左腕を切り落とす。
『だがその程度で!』
その瞬間ゼウスも左腕を切り落とす。
『この私に勝とうなど!』
更に追撃するべくゼウスに攻撃を仕掛ける。
それをアルバートはギリギリで対処する。
なんとかアインのカストルと互角の状況までもっていこうとするが、中々そうはいかなかった。
『もう一度言ってやろう、アルバート! お前では俺に勝つどころか追いつくことも無理だ。例えどれほど努力しようと。覚悟が違うのだ。俺とお前では。』
体当たりをもろに食らったアルバートのゼウスは空中で姿勢を崩す。
『これがお前と俺の差だ。私とお前では話にすらならないんだよ。』
そのアインの言葉と共にカストルはゼウスを破壊するべく、右腕のライフルで照準を定めた。
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「この感覚久しいな。」
時は少し戻る。ロマンと対峙していたブライムは剣を交えながら十年前の感覚を思い出す。
昔と違い、若さによる高い反応速度は無くなってしまったが経験による操縦の熟練、それに加えて相手の動きを読めることによる動きの精錬さはそれと引き換えにしても十分以上のものだった。
そしてそれはロマンの駆る彼専用のキャスター、ダリウスも同じだった。
だからこそ二機はお互いに一歩先を読んだ激しい戦いを広げていた。
どちらか一方が攻撃をするとその瞬間にはお互いに二手三手まで敵の動きを読んだ行動をとるという常人はずれの行動を行っていた。
そのためお互いに敵の剣の軌跡は把握できない。
だが相手の動きをしっかり見ていたからこそ反応できていた。
といえども予測も正確というわけではないのでお互いに傷ができていく。
しかしその傷とは裏腹にお互いにその顔には笑顔が、いや、正確には久しぶりに自分の本気をだせる戦いに対する喜びが現れる。
だが、その時間も長くは続かなかった。
『大佐。基地攻撃用ドローン部隊が破壊されました。撤退の指示を。』
「了解した。」
ブライムは不機嫌そうに
舌打ちをするとすぐにスモークグレネードを発射する。
「全機撤退だ。作戦は失敗した。」
それと同時にコンゴウからチャフミサイルが発射される。
「小隊各機、撤退するぞ。」
エマソンとエミリアは特に問題なく行動していたのですぐに了解との返事が来る。しかしアルバートからは来なかった。
周りを見るとアルバートのゼウスが無いことに気付く。
だが撃墜されているのならデータが来るはずなので撃墜されていることは無い。
「デグレア准尉。」
ブライムはアルバートに話しかける。だが反応が無い。
「デグレア准尉!」
気絶している可能性を考慮して大きな声を出す。
『はい。』
「撤退だ。戻れるか?」
ようやくアルバートからの反応があった。
『承知しました。』
そうしてアルバートの乗るゼウスがブライムのすぐ傍に寄る。
その形を見てブライムは驚く。機体の状況は酷いもので頭部と両腕部は失っていた。また胴体にもあちこち傷が入っていた。
ただ特になにかアルバートに話しかけることはなく、母艦に帰投する。
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格納庫に戻ったアルバートはコックピットから降りると機体を見上げた。
「大分派手に壊してくれたな、坊主。」
「申し訳ありません。修理は可能ですか?」
「別に修理は可能だが、毎回こうこわされちゃこっちもたまったもんじゃない。」
「すみません。」
その後整備兵から十分くらい説教をされるが、彼の耳には入らなかった。
そして説教が終わるともう一度機体を見上げる。既に修理をするべくメカニックたちが機体のあちこちの整備用パネルを開いて修理をしていた。
それを一瞬だけ見ると格納庫から出る。
「大丈夫? 怪我とかしてない?」
そのとき入口で待ち伏せしていたエミリアが前の戦闘が終わったときと同じように瞳を真っ直ぐ向けて尋ねてくる。それを彼は見たくなかった。
(アインに完膚なきまでに負けた。しかも見逃してもらった。)
だがそれでもこたえるのは自分の義務だと思いとりあえず顔を真っ直ぐ向ける。
「あぁ、怪我とかはしてない。ただ……。」
最初はエミリアの目を見てはっきりと答えた。だが途中でアルバートは目を伏せてしまった。
「ただ?」
「アインがいた。あいつはバラノフ家の親衛隊に入ったみたいだ。」
「アインと話したの?」
「あぁ。話したし、戦ったよ。俺はアインに負けたんだ。」
アルバートは振り返るともう一度機体を見た。
「そしてあいつは有利な状況に立ったまま、俺に止めを刺さなかった。見逃されたんだよ、俺は。」
そう告げるアルバートにエミリアはなにも返すことが出来なかった。
二人の間に沈黙が流れる。
「デグレア准尉、アークウィン准尉。」
だがその沈黙を破るかのようにブライムが話しかけてくる。
「はい、なんでしょう?」
アルバートは先程までの様子を微塵も出さずに答えた。
「貴官らには士官学校へ入学してもらう。といっても半年程度しか入れないだろうが。その腕を磨くついでに法律も勉強してこい。」
ブライムはそう励ますようにアルバートの頭を雑に撫でる。
だがそのときのアルバートの顔が曇っていたのをエミリアは見逃さなかった。
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「強い敵でもいたの?」
アクタール基地に戻ったアインのカストルは、親衛隊の仲間であるアズリト・アースの駆るポルックスの隣に駐機をした。そして機体から降りて来た彼にアズリトが話しかけた。
「はい。中々強い敵でした。」
アインは一言そう返す。その顔が曇っていたのでアズリトは少し気になる。
「そんなに強かったんだ。」
「はい。」
アインはそういうと機体を見上げた。
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