魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

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第0章 始まりの戦い

第十五話 マリノアス基地攻略戦

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『アル。機体の調子はどう?』

 エミリアの乗るゼウスからアルバートに通信が入る。

「はい。流石にただの移動だけならまだ問題ないです。」
『なんかアルに敬語を使われるとキモイんだけど。』
「流石にいくらなんでもそれは言いすぎだろ!」

 彼女の言葉に反応した瞬間に機体のバランスを崩しかけるがなんとか耐えた。

『そっちのが馴染みがあっていいわ。それに分隊長だからって敬語を使わなくてもいいのに。』
「お前のが立場上だから敬語を使ってるんだが。」
『だって敬意入ってないじゃない。』
「逆に俺に敬意を持たれてうれしい?」
『ううん。全然うれしくないし、なんか寧ろ気持ち悪い。』
『二人ともおしゃべりの時間はここまでだ。』

 ブライムが取り留めのない二人の話を遮る。

『これよりマリノアス基地への攻撃を開始する。』

 センサー類が発展したブライムの機体が敵基地の迎撃システムの場所を共有する。

『全機攻撃開始。』

 その言葉と同時にアルバートはゼウスに搭載されたミサイルを発射する。それに伴いマリノアス基地では迎撃兵器の砲門がミサイルを迎撃するため斉射する。
 ここまでは作戦通りだった。

「予定通り敵部隊と接触したか。それにしてもこの魔術波長、またロマン・ベロワか。」

 ブライムがそう愚痴るのも仕方のないことであった。アルバートとエミリアはしばらく前線を離れていたため知らないが、ブライムはロマンの部隊と週に一度以上交戦をしていた。

『敵部隊を射程圏内に捉えた。全機攻撃準備。』

 他のゼウスよりレーダーの性能が強化されているブライム機がロマン達をレーダーに捉えたのでデータリンクして敵部隊の位置を味方部隊に教え全機にライフルを構えさせる。

「射撃開始!」



「この距離からなら当たっても大したことはないか。」

 実際何発かアインの乗るカストルに当たるか大したダメージは無かった。

『ダール少尉。狙撃を行うから敵の注意を引き付けてくれ。』
「分かりました。」

 ユリアからそう通信が来たので、アインは機体を前進させる。
 その間にユリアが乗るイルクオーレは背面に搭載されたスタビライザーを羽根のように展開させ機体を安定させる。白い機体色と相まって天使のようであった。

 ユリアの行う射撃は正確で前方では既に一機撃墜されていた。
 しかし、帝国軍の機体もそんなことは分かっているのか、更にその距離を詰めてくる機体が一機いた。その帝国軍主力のゼウスは他の機体よりも速度が速かった。
 そしてユリアからの攻撃を避けていた。

「あの動き……。」

 アインは機体が魔術波長を察知できる距離まで敵が詰めてくるのを待つ。

「やはり、アルバートか。」

 モニターに表示される名前にやはりと思う。

『ダール准尉。突っ込んでくる機体の対処を任せてもいいか?』
「分かりました。」
『私も行くわ。』
「お願いします。」

 ヴィエント・バラノフの乗るドライエントもアインの機体と共に前進した。



「あれをどうにかしろって。」

 アルバートは恐怖心を抑え込んで突撃する。ユリアの乗るイルクオーレからの攻撃は正確な分、避けるのは容易かった。適当に自分でアルゴリズムを考えて落とし込む。
 エミリアからの援護射撃はもう少し時間かかるかと思いながらも部隊の誰よりも前に先行する。
 そうすると正面から二機の機体が突っ込んでくる。
 アルバートはその攻撃をうまく対処し近接戦に持ち込む。

『アルバートか! 今度こそ俺はお前を殺す!』
「そうかよ!」

 二機は実体剣を交えつばぜり合いを行う。今回はゼウスのカスタムタイプのためパワーで押し負けることは無かった。しかしその状態で機体にロック音が鳴り響く。
 ドライエントの方を振り向くと既にライフルを構えている。
 直後に攻撃が来るのでアルバートは回避する。

「プラズマライフルだと!?」

 アルバートは自身が回避した弾道を見て驚く。研究段階では帝国軍も開発していたが、その威力がまだ実用範囲ではなかった。それに対して連邦製のものは十分な威力があることはアルバートから見ても明らかだった。
 そのままドライエントが二射目を撃とうと銃口が光り輝く。

「二機は辛いが……! 」

 二機からの攻撃を回避するも徐々に追い込まれていき、機体各部に傷が増えていく。

「二方向からならまだ!」

 しかし士官学校で散々多対一の状況を経験させられたアルバートは必死になって機体を動かし回避する。

「二機が仕掛けてくればまだ可能性はあるか。」

 今は耐えるときだと回避を続ける。そうするとしびれを切らしたドライエントが接近戦を仕掛けてくる。

「今度はプラズマサーベルか!」

 実体剣で受け止めようかと一瞬考えるが金属ではプラズマの塊を抑えることができないと判断しかわしながら懐にもぐりこもうとする。
 だがアインの射撃によって妨害される。
 そのままアインの射撃を回避しながらアルバートは二機をにらみ続ける。

「このままでは……!」

 流石にこれは単機で相手するのは無理だと判断する。

「だけど援護を要請しようにも……!」

 周りを見るとそれぞれ自分の持ち場だけで手いっぱいのようだった。
 そしてそれに気を取られたのが不味かった。
 目の前にドライエントが映る。

「しまっ!」

 だがその時ドライエントに銃弾があたり弾かれていた。
 エマソンからの砲撃だったがそれによってわずかな隙間ができたのでアルバートはすぐさま距離をとりながら左腕に換装したレールガンのトリガーを引いた。
 しかしその弾もドライエントに着弾すると同時に跳ね返される。

「この距離で弾かれるか。」

 アルバートはその装甲の分厚さにもはや驚きを通り越して呆れを感じる。

『アル、大丈夫!?』

 エミリアから通信が来る。

「特には問題は無い。」
『こっちで援護するから一度下がって!』
「無理だ。あの新型、性能が違いすぎる。とりあえず援護射撃を頼む。」

 アルバートはそう冷静に判断をする。
 エミリアもアルバートの技量を信じていたからこそその言葉に従う。
 しかしその間にもアインのドカストルは牙を剥く。

「アインめ!」 

 アルバートはアインが撃った弾を回避しきれなかった。

「右のサブブースターをパージ! クソ!」

 コクピットの表示を見てアルバートは正しい判断をしながらも苛立たし気に言う。
 エミリアからの援護射撃はあるものの二人のコンビネーションがまだ完璧ではないためアイン達からはその援護射撃が無視され始めていた。
 そしてそれに合わせてヴィエントの駆るドライエントが再び接近するのでそれをアルバートは余裕をもって回避する。
 だが損傷によって振り下ろす反応が遅れた右腕のヒートソードは空を切る。

「クソ!」

 それに気づいたヴィエントはドライエントはサーベルを振り下ろすのでアルバートはそれを今度はギリギリでかわしエネルギーライフルを切断する。
 だがまるでその瞬間を分かっていたかのようにアインがアルバートにその剣先を突き刺そうとした時だった。
 その剣先が何者かによる銃撃でそらされていた。
 ブライムのゼウスからだった。

『全機、撤退だ。』

 それは帝国の作戦失敗を意味していた。



『逃がすか!』

 新型機を与えられて一機も撃墜が出来ていないヴィエントはアルバートのゼウスに追撃をする。その瞬間コックピットにアラームが響く。

「危ない! 少佐!」

 考えるよりも先に体が動いていた。
 カストルがドライエントを弾き飛ばす。
 その瞬間先程までドライエントがいた場所にとてつもない衝撃が響いた。

『アイン!』

 そう声が聞こえた瞬間にはカストルの自動脱出装置が動作していた。
 
『少尉! 大丈夫!?少尉!!』

 ヴィエントは接触回線で話しかける。

「問題ありません。それよりあいつを、アルバートを。」
『そんなことより一度撤退するわよ!』

 ヴィエントがそういった瞬間、一気に深いなGがかかる。それが敵からの攻撃を受けていると認識するまでアインは時間がかかった。

『バラノフ少佐はダール准尉を引き連れて撤退しろ。敵の攻撃は私が抑える。』

 ユリアからの通信が響く。
 その直後からアインは不快なGを浴びながらアクタール基地へと戻った。



 アルバートのゼウスはユリアのイルクオーレに狙われていた。最後に嫌がらせ程度に撃ったライフルに余分なことだったかと後悔する。

『少尉、早く撤退しろ!』
「承知しました。」

 そうアルバートに言うブライムもロマンを抑えていたため、アルバートの援護が出来なかった。

『アル!』

 なのでエミリアが助けに行こうとする。

『いけません、少尉!』

 だがエマソンがそれを止めた。
 そうこうしている間にイルクオーレが目の前に迫る。それを躱そうとするが、サブブースターが駄目だったため、回避できなかった。

「クソ!」

 アルバートはそして中途半端に背面を向いてしまったためメインブースターがダメージを受ける。
 更に追撃を仕掛けてくるので。両手でイルクオーレの両腕をつかむ。
 すぐさまそれを振りほどこうとするがゼウスはしっかりと掴んだ。
 その瞬間イルクオーレとゼウスのいた場所に艦砲射撃が直撃した。

 *

「少尉!」

 アインがカストルのコクピットブロックから出るとヴィエントに正面から抱き着かれた。

「大丈夫、怪我とかは?」

 ヴィエントはそう言ってアインの体のあちこちを確認する。

「あの少佐、ベイルアウトした後……。」

 アインは必死になって吐き気を抑えていた。キャスターは搭乗しているときは魔術によって体にかかる負荷を抑えて通勤電車並みの力しかかからないようにしている。 しかしコクピットブロックにはそんな機能はない。

 それが救助作業になれていないパイロットによるものであれば、まるで終わりのないフリーフォールのように上下左右に揺さぶられる。。
 そして三半規管が滅茶苦茶にかき混ぜられたような、上下が分からない状態になったアインがどれだけ気分が悪いか想像するのは容易いことだろう。

「ちょっと離れて……。」

 アインはそう言ってヴィエントを離そうとする。
 だがヴィエントが中々離れてくれなかった。

「どっか気分が悪いの?」

 ヴィエントがそう言ってアインの体に怪我がないか触る。

 そしてアインの胃のあたりを触った時だった。
 アインは胃から逆流してくるものに耐え切ることができず……。

「おぇぇぇぇぇ!」

 盛大にヴィエントに向かって吐いた。
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