魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

MS

文字の大きさ
18 / 51
第0章 始まりの戦い

第十七話 新型機受領

しおりを挟む
「これが新型機ですか?」

 自室でゆっくりしていたアルバート・デグレアは自分の小隊の隊長であるブライム・エイブラウに格納庫に呼び出されていた。
 定刻の五分前に到着すると同じ小隊の隊員であるエミリアとエマソンもいた。

「これで全員そろったか。」

 ブライムが格納庫の中に進むので、アルバート達も後ろについていく。
 そしてある程度進むと立ち止まる。
 アルバートもそれに倣って止まると目の前の機体を見上げた。

「こちらですか? 新たに配備された新型というのは?」

 隊長であるブライム・エイブラウが小隊全員の気持ちを代弁して整備班長に尋ねる。

「そうです。これがクロノスです。この一号機がアークウィン大尉向け、二号機がエイブラウ大佐向け、三号機がエチュード少佐用、四号機がデグレア少尉用になります。大佐用と少尉用は機動力を高めにしています。」

 グレー色の機体は前世代のゼウスのような直線的な機体から変わり連邦製のように曲線的な機体となっていた。

(今更被弾経始を重視した機体、というわけでもないか。そうなると連邦の次世代機がプラズマライフルを搭載するから表面積を増やして熱の放射性を上げるのが目的か。)

 この辺は後でエミリアと確認をすればいいかとアルバートは思う。そうこうしているうちに機体の受領は終わった。
 その後機体をイルキア基地が保有している戦艦コンゴウに移し機体の能力を確認した。

 それから二時間くらいアルバートは機体の調整をしていた。

「どう? そろそろ終わりそう?」

 先に機体の調整を終えたエミリアが暇そうな声でアルバートに尋ねる。

「いやもうちょっとやらせて。」
「もう今日の勤務時間超えているわよ。」
「そうだけど。別にいいだろ。」

 そう答えるアルバートの頭をエミリアはいじる。なぜ人の髪をいじるんだ、禿げたらどうするつもりだと思いながらアルバートは機体の調整を続ける。しかしやはり頭が気になって調整に集中できなかった。

「気が散るんだけど……。」

 実際アルバートの手の速度は明かに落ちていた。

「そう。それは悪かったわね。」

 エミリアもそれに気づき、つまらなそうにコクピットから出ようとする。

「少し待てエミリア。後十分で設定が終わる。どうせ今日は終わりだし。だったらたまには紅茶が飲みたい。」
「分かったわ。用意して待ってる!」

 そういって嬉しそうにコクピットから出ていくエミリアを見送りながらアルバートはマニュアルに目を通しながら調整を進めていく。

「少尉は少佐の扱いに相当慣れているようだな。」

 隣で同じように機体の調整をしていたブライムがアルバートに話しかける。

「まぁ、長い付き合いですからね。」

 アルバートはブライムの方を見ずに設定をするほど二人の仲は良くなっていた。

「確か付き合って二年目だったか。」
「そういえばそんなもんでしたね。アークウィン大尉から聞いたんですか?」
「あぁ。前に本人が嬉しそうに話していた。そういう記念日は覚えていた方がいいぞ。」

 そう付き合った年数に無頓着なアルバートに対してブライムは今まで何回か失敗している恋愛経験からそう忠告する。

「別に付き合って何年目かは気にしていませんよ。ただ付き合い始めた日は忘れないですね。彼女の誕生日なので。もし忘れてたりしたら、消されますよ。」

 アルバートはそう軽口をたたいた後にふと思ったことがあり、一旦機体の調整する手を止める。

「そういえば隊長は結婚とかされないんですか?」
「少尉。一度その口をつぐんだ方がいい。」

 だがその問いに対するブライムの答えは冷たいものだった。
 アルバートはその空気を感じ取ってあえて何も見ないように目の前のコンソールをいじる。
 暗くなった自分の上官に心の中でため息をつきながらも目の前にある機体の設定を進める。

「大体な、少尉。世の中そんなに相性が合う人間なんていないんだ。なんで告白しても優しいだけの人だから無理とか付き合ってもあなたの優しさが分からなくて怖いとかいう理不尽な理由で振られ続けた俺の気持ちがお前に分かるわけ……。」

 そういいながら暗い雰囲気を出すブライムにアルバートは早く出て行ってくれないかなと思いながらキーボードを打ち続けていた。



「まさかこんなところでアークウィン家の戦艦を捕捉するとはなぁ。司令部はなんだって?」
「攻撃しろとのことです。奇襲であれば成功すると。」
「親衛隊を撃退した部隊を相手にするのか。面倒だな。」

 潜水艦ヴィーヘルムの艦長であるゲーリヒ・ヘムンツェルはため息をつく。

「そういわないでよぉ、艦長。こちらとてそれほど貧弱なわけではないし、敵艦隊も多数ではなく最低編成単位の三隻のみよぉ。それに場合によっては増援も来るんでしょぉ。勝ち目は十分にあるじゃない。」

 そうおねぇ口調の男であるキャスター小隊隊長であるヘンリッヒ・ウィンゲルが楽観的に言う。

「取り合えずこのまま慣性航行を行い敵艦の真下についたら魚雷を発射する。少佐たちもアグワに乗って待機していろ。」
「分かったわ。じゃあ後はよろしく。」

 ウィンクしながら去っていくヘンリッヒをゲーリヒは本当にいやそうな顔をしながら見送る。

(何故あいつがまたこの部隊に来てしまったのだろうか。)

 そう心の底から思う。
 だからゲーリヒはその指名相手がヘンリッヒ本人であることを知らなかった。

「それではこれより作戦を開始する! 轟沈できなくともそれなりにダメージを与えればいいだろう。」



「そういえばたまに疑問に思うんだが、お前の紅茶って士官用に支給されている紅茶とかと違うよな。」

 エミリアの部屋で紅茶を飲んでいたアルバートはふと思ったことを口にする。

「よく分かったじゃない。アークウィン家が農園と直接取引している茶葉を使用しているのよ。あなたに出しているのはその中でも特にいいやつ。」
「そうなのか。」

 そう言われてもどうにも実感が湧かない。
 その辺は平民と貴族の差というやつかと思いながら紅茶を飲む。

「にしてもよく分かったわね?」
「あぁ。前に自分で淹れたときに気づいた。」

 その言葉にエミリアがジトっとした目でアルバートを見る。

「それよりも今度の記念日どうする?」

 これは間違えたら殺されるなと思いながらも少し間を置く。

「記念日ってあれか。付き合いだしてからのか。」
「なにか不満でもあるの?」

 エミリアはポットをもってカップに紅茶を入れる。しかしその優しさとは裏腹に声は低く怖いものだった。

「いや、特に不満は無いが。後2ヶ月くらい先だろ。それに戦争真っ只中だし前みたいに遊びに行くなんてできないだろ……。」
「まぁ、そうなんだけどね。」

 エミリアはアルバートの言葉にどうするかと考える。

「二人で休暇でももらって部屋で休むか? 最近疲れてきたし。どうせならケーキでも一緒に作らない?」

 エミリアは顎に手を当ててアルバートの提案を飲み込んでいた。

「確かにたまには二人でゆっくりするのもいいかもね。最近二人でゆっくりしていることも無かったし。」

 そういうエミリアを見ながらアルバートは紅茶を少しづつゆっくり飲む。
 その瞬間艦に衝撃が走る。
 それによって紅茶が跳ねアルバートの顔にかかる。

「あっつ!」

 アルバートはすぐにカップをトレーサに置く。

「ちょっと、大丈夫!?」

 エミリアがそういってハンカチを出そうとするとまた船体に衝撃が、そしてその衝撃はより大きい振動が奔った。

「きゃ!」

 そういってエミリアが体勢を崩すのでアルバートはすぐに体を支える。同時に敵襲のアラームが室内に鳴り響く。

「第二種警戒態勢! パイロットは機体にて待機せよ!」

 そうアナウンスが流れるので二人はお互いにうなづくと格納庫に向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

兄貴のお嫁さんは異世界のセクシー・エルフ! 巨乳の兄嫁にひと目惚れ!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
ファンタジー
夏休み前、友朗は祖父の屋敷の留守を預かっていた。 その屋敷に兄貴と共に兄嫁が現れた。シェリーと言う名の巨乳の美少女エルフだった。 友朗はシェリーにひと目惚れしたが、もちろん兄嫁だ。好きだと告白する事は出来ない。 兄貴とシェリーが仲良くしているのを見ると友朗は嫉妬心が芽生えた。 そして兄貴が事故に遭い、両足を骨折し入院してしまった。 当分の間、友朗はセクシー・エルフのシェリーとふたりっきりで暮らすことになった。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

妻に不倫され間男にクビ宣告された俺、宝くじ10億円当たって防音タワマンでバ美肉VTuberデビューしたら人生爆逆転

小林一咲
ライト文芸
不倫妻に捨てられ、会社もクビ。 人生の底に落ちたアラフォー社畜・恩塚聖士は、偶然買った宝くじで“非課税10億円”を当ててしまう。 防音タワマン、最強機材、そしてバ美肉VTuber「姫宮みこと」として新たな人生が始まる。 どん底からの逆転劇は、やがて裏切った者たちの運命も巻き込んでいく――。

処理中です...