魔術師のロボット~最凶と呼ばれたパイロットによる世界変革記~

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第0章 始まりの戦い

第二十四話 宇宙

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「隊長の言う通りになったか。」

 アルバートは宇宙に上がったコンゴウの展望室で背中を丸めながら呟く。
 数刻前にブライムから見せられた映像はアルバートにとっては中々強烈なものだった。
 僅か三機のキャスターによってイルキア基地宙域にある要塞のうちの一つが壊滅させられていた。

 それがまだ主力機が五機程度しかいない小さな要塞であれば問題は無かった。しかし、今回攻め込まれたのは、キャスターが百機程度待機していた要塞であった。そのため、帝国軍内部も今回のことはかなり大きな衝撃となっていた。
 そして攻略された要塞であるトロバ要塞奪還のため、アルバートたちも宇宙に送られていた。

「それにしてもあの新型の三機の動き、あれは恐らく……。」

 帝国軍が奪取された機体、高性能であるオリジナルのキャスターと呼ばれている天使シリーズに準じているのはアルバートの目から見ても明らかであった。

「アイン。お前も来ているのか?」

 アルバートは宇宙に輝く星々を見ながらそう呟いた。



「少佐。その考えは変わらないのか。」

 ブライムはエミリアに対して再度確認をしていた。

「はい。変える気はありません。」

 エミリアがアルバートとの分隊を解消したい、その申し出にブライムはどうしようかと頭を悩ませる。

「だがなぁ……。」

 それを認める訳にもいかないのがブライムの本音だった。かくなる上は一つの方法しか無いかとため息をつく。

「分かった。次の作戦が終わってからそのことを考えよう。」
「はい?」

 エミリアは思わず聞き返してしまう。

「少佐の言いたいことは分かった。だが急に変えるのは不可能だ。だから次の作戦まではデグレア少尉と組んでもらう。」

 とにかく引き延ばそう、ブライムはそう判断をした。ここはエミリアがなにを言っても引かない。そういう決意を見せる。
 そんなブライムが相手では、エミリアも折れる以外手が無かった。



「一回出撃するだけでも結構整備に時間がかかるんですね。」

 宇宙要塞モズの格納庫でアインは隣にいたヴィエントにそう話し掛ける。

「仕方無いわね。光速にも近い速度で動くことも出来るように使ってる塗料とかも特殊だし。」

 その答えはアインにとっては納得できるものであった。

「それにしてもいざ乗ってみるとすごい性能でしたね。」
「そうね。相対性理論とかも踏まえて周りの機体よりも時間経過とかもゆっくりしてるからね。」
「それは確かにありますね。光との相対速度が小さいですものね。」

 先日の戦闘を思い出す。帝国軍宇宙要塞のうちの一つであるトロバ要塞。その要塞をアインとヴィエント、そしてアズリトの三人でそこを占拠した。約百機近くいる敵を三人で倒した。

「あれだけの力があるキャスターを量産出来れば帝国との戦争もすぐに終わりそうですね。」
「量産できたところでパイロットがいないけどね。」

 ヴィエントはそう言うとアインの顔をまじまじと見る。

「けど、この戦争もあと少しで終わりでしょうね。」

 そうはっきりという彼女の声は確信を持っていた。

「そうなる理由でもあるのですか?」

 アインは思わず聞かずにはいられなかった。

「いや、ただの勘。だけど私の勘ってよく当たるのよ。」
「でも確かに今回のことで帝国も兵力を宇宙に回してきそうですよね。」
「来そうというかもう来てるでしょうね。」
「かもしれませんね。この戦争が終われば、少佐が目指している連邦内の魔術師迫害への対策にも力を入れられそうですねわ、」
「そのときは頼りにしているわ。」
「頑張ります。」

 アインはそれだけ言うと遠くに光っている星々を見る。

「幼年学校にいたときの友達のことでも思い出しているの?」
「よく分かりましたね。」
「分かるわよ。戦争が終わったらまた会えるかもって考えていたの?」
「いえ、もしかしたら今度の戦闘で会えるかなって。」
「そう。」

二人の間を少し沈黙が流れる。

「そういえば少佐は戦争終わったらなにかやりたいこととかあったりしますか?」
「私? 特に無いかな。少尉こそなにか無いの?」
「自分ですか。自分はどこか旅行とか行ってみたいですね。」
「どんなとこ?」
「いや、割と風景が綺麗なとこだったらどこでもいいですね。」
「だったら一回家で持ってる別荘にでも遊びに行かない?」
「いいですね。」
「じゃあ、約束ね。」

 そう言って白い小指を出してきたヴィエントにアインは自身の小指を絡めた。



「あ、エミリア。」

 コンゴウの廊下でアルバートはエミリアを見つけた。そんな彼を避けるようにエミリアは体を翻した。
 これは追いかけても意味はないかとアルバートは諦めると立ち止まって一回ため息をついた。

「追いかけないのですか?」
「エチュード大尉。今までの経験からすると今の少佐を追いかけても碌に話を聞いてくれませんよ。」

 アルバートはそう言うと大きくため息をついてその場に座り込む。

「だからといって精神的にはかなり来るものありますけどね。」
「珍しいですね。普段そういう弱音は言わないイメージがありましたが。」
「下手に弱音なんて言ったらエミリアにボコボコにされますからね。」

 だからこうやって我慢するしかないとアルバートは諦めていた。

「もう少しエミリア様にはっきりと自分の気持ちを言ってみたらどうですか?」
「割とはっきり言ってると思いますけど?」
「因みにですが、エミリア様が今回何に怒っているのか分かったりしてます?」
「そんなのは大体想像ついてますよ。どうせ私が挙げた戦果が少佐のものになっているから気に食わないんでしょうね。私も結構戦果に拘っていて親衛隊の隊長になりたいとか言っちゃってたんで、その邪魔をしたくないみたいな。」

 アルバートの答えが割とエミリアの心情を突いていることにエマソンはいつもよく分かるなと思う。
 寧ろそこまで分かっているから余分なことを言わないんだろうなとも思う。

「そんなこと気にしてくれなくてもいいんですけどね。私としては別に少佐さえ無事だったら後のことは割とどうでもいいんで。」

 そう事も無げに全てを達観している後輩に投げかける言葉をエマソンは見つけることはできなかった。



『作戦通りまずはデュラハンの部隊を一掃する。』

 トロバ要塞奪還に向けイルキア基地宙域を浮遊している要塞イリオスから約百機ほどのゼウスの部隊が出撃していた。

 百機単位の戦闘となると今までの個人の戦いから隊列を組んだ戦いとなる。その中にアルバート達も隊列を組んでいた。
 イリオス要塞からの指示に従い全機攻撃を開始する。

 それに対してトロバ要塞から出撃した連邦の主力機であるデュラハンの部隊も反撃する。
 この規模になると個人の技量に加え運の要因も強くなるので、両軍ともに撃墜される機体がチラホラと出てくる。

 そんな中アルバートは敵の攻撃に当たらないような立ち回りをしていた。そして他の機体と射撃速度を合わせながら十五秒に一機程度の速度で撃墜をしていく。

 その速度は隊長であるブライムと同程度の速度であった。
 両軍ともに更に距離が縮まると分隊単位でまとまりながら交戦を始める。
 アルバートはエミリアの機体に合わせながら進む。彼女からの指示がなくてもアルバートは彼女の行動に合わせた動きをする。
 そしてその間に撃墜数を増やしていく。この戦場において、アルバートはただ淡々とそのスコアを伸ばしていった。

 しかしスコアを伸ばしていったせいで、敵からの警戒も強くなる。
 アルバートはそれに気づきながらも戦い続けた。
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