乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう

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いざ! お城!

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 居残りで見学に参加できない事態こそは避けたものの……

(真っ白だ……燃え尽きたぜ、とっつぁん……)

 誰がとっつぁんか。中途半端にうろ覚えのネタ使いおって。
 結局1日2日じゃ全然間に合わず、見学前日には深夜まで及んだ居残り勉強。夜通し勉強もやむを得ずの姿勢を取った教師陣+1名に恐怖した風呂オラさんは

「見学楽しみでしたので、とても……とても残念ですが、同室の先輩のお邪魔になるので今回は諦めます、ね?」

 と往生際の悪いことを言ったのだが、

「安心しろ。寮にはまだ空き部屋の一つや二つ、それどころかもっとある故、朝まで勉強した所で誰の邪魔にもなりはしない。そもそも寮監である私が許可しているのだ。誰の文句もなかろう」

 と有無を言わせぬ迫力に、負けた。

(ふぶぅう……ごわがっだ!)

 よしよし、不細工不細工。

(ちょっとごるぁあ!)

 泣いた雀がもう怒る。

(……あれ? そんな言葉だったっけ?)

 話は戻して古城である。見た目はえーっと?

(あー、エジプトのなんとか大神殿みたいなアレだわ。古城? なのかなぁ?)

 資料にはそれがモデルとは書いてるけどな。間違いないんじゃね? てか何でお前覚えてないの?

(ここってさ、来るの必須じゃなかったんだよね)

 ほぉ?

(むしろ下手にここのフラグ踏むと逆ハー出来ないっていうか)

 じゃあ詳しくなかったのか。

(裏エンディングとかあんまり興味なかったんだよね。甘々のあっまあまが好みだったからぁ)

 キモッ!

(ヒドッ! ま、そんなこんなで古城訪問は初体験なのよ。個人的好みとしてはヨーロッパお城がベター)

 じゃあ、ここはテンション上がらないわけだ。

(って思ってたんだけどねぇ。海外旅行とか経験なかったから……)
「ほわあぁぁぁぁあ……」

「フローラ、口、口」

「フローラ、流石にそこまで大きく口を開けるのはどうかと思うの……」

 友人二人に窘められる喪女さん40代。

(40も行ってねえっての!)

 今世も足せば超えるやん。しーかーもー? 四捨五入で?

(ぃやめてぇ!)

 んまぁ冗談はこれくらいにしといて

(冗談!?) 

 古城見学ってさ。全学年だよな? 毎年やってるって。

(………………あ゛)

 後ろ見てみな? 荘々たる顔ぶれだぞ?

(嘘………………勢揃いしてる)

 攻略対象とそれに恋する乙女達、全員がひと塊に揃っていた。
 まぁあの連中は家格がバラバラにしても、全貴族の中でも別格だわな。むしろ伯爵家でありながらあの輪に入れるゴルドマン家が特別なんだろうよ。事実、他の貴族は遠巻きに見てるだけだからな。もっとも、抱いているその感情は図り知れない……いや、居たな。見れちゃう子が。

(見れちゃう? ……あっ!)

「メイリア!」

 フローラが振り返ると、真っ青な顔したメイリアが件の連中、ではなくその周りの貴族達を見ていた。ベティも流石に気付いてはいたものの、オロオロするばかりであった。フローラは慌ててメイリアの顔を両手で挟むと、無理やり自分の方を向かせる。

「メイリア、落ち着いて、私を見て? 良い? 私だけを見るの」

「ふろ、ぅら……?」

「ゆっくり息を吸って、吐いて、吸って、吐いて……そうゆっくりよ」

「はあ……ふう……」

「落ち着いた?」

「……はい。ありがとう、フローラ」

「ん、よろし」

「すごいわね、フローラ。勉強はからっきしなのに」

「んふふ、そうでしょうそうで……ってベティこらぁ!」

「あはは!」

「クスクス」

 仲良げに笑い合う3人を、遠くから金の瞳は静かに見つめていた……。


 ………
 ……
 …


「これより中へと入る。途中、見学を終えた家格が上の者達とすれ違うこともあるだろう。身を引いて道を譲るように。……詰まらぬ諍いを起こすなよ?」

 いつも通り、底冷えする黒いオーラを放つオランジェ女史の有り難いお言葉、注意事項を頂いたのだった。
 毎度半端ない圧力だこと。

(恍惚としてる子が居るのが不思議よねぇ)

「5人以上が組となって進むこと! 以上!」

(ふむふむ、5人。5人? あと二人……って、一人はバモン君で良いとして? もう一人?)

「フローラ嬢、皆もちょっと良いか?」

「はい、なんです?」

「その、な。彼が一人なもので、うちの組に……」

「やぁこんにちわ! 余り交流する機会がなかったね! 僕はマリオ・イルジオラ! マリオって呼んでね!」

「……どうだろうか?」

「「「………………」」」

 絶句である。でもまぁ5人組で行けと言われたし、余り者同士って奴だな。

(ついてねえ……。でもまぁしょうがない、よね?)
「こちらこそよろしくですわ、マリオ様」

「マリオ」

「は?」

「マ・リ・オ。さぁ呼んで?」

「………………マリオ」

「僕はフローラって呼ばせてもらうね! そちらの二人もベティ! メイ! そう呼んでいいかな!?」

「「(コクコク)」」

「ハハッ! よろしくね!」

 土管の人かと思いきや、どこのネズミの国の出身かな? ってテンションだな。

(しーーーっ! やめろ! センシティブなネタは!)

 そして……前途多難な古城見学が、今、始まる……!

(何で格好良く言ってみた!?)

「さ、いこー! ……ん? どうしたの? 元気ないなぁ。もっかい行くよ? さ、いこー!」

「お、おー?」

「「「ぉぉー……」」」

「元気は今後の課題だね、ハハッ!」

 なぁ……。

(言うな、察しろ)

 ヒゲのおじさんならぬ夢の国の心の持ち主は、いつの間にかリーダーのような立ち位置で皆を引率していく。ドナドナされていく一行。そのテンションの高低差は傍から見ても異様に映っただろう。

(だから使いにくいネタを使うんじゃないっての。馬鹿なの? って、ほわぁ……!)

 しかし一旦古城の中に入ってさえしまえば、その雄大さ、絢爛さ、荘厳さに小市民の心は形容し難い感動で埋め尽くされていく。
 真っ赤な電波塔よりかは高いんじゃね? って高さはある渓谷を、くり抜いて作られたと思われる古城。高さは言うに及ばず大きさも、かつてあった戦を逃れた皇族のために作られただけあって居住スペースは豪奢であり、詰める人員も多かったのだろう、奥への広がりは広大である。

(よくこんなものを作ったよね……)

 まぁ設定資料だと、隣国との戦争でも魔王との戦争でも使われたらしいからな。ここしばらく平和だから使われなくなって久しいが、忘れないためってのがあるんだろう。……とは、

「だからね、第5次皇紅戦争の時にはね、ヴァリオン・アシュカノン皇帝がここに逃げ込んだと見せかけてね……」

 戦闘オタク、ベティの言である。
 ここが使われたのは魔法に才のなかった皇族が多かったらしく、彼女のボルテージは未だかつてない程に振り切れている。

「ちょ、ベティ、落ち着いて……」

「あ、余り大きな声は……」

「ハハッ! 彼女、楽しいねぇ!」

「………………ハァ」

 ツッコミ不在である。カオスなパーティだこと。

(私の頭の中のツッコミは絶好超だけどな!)

 任せろ! お前のお前のためのお前だけを貶めるツッコミなら得意だ!

(やめてー)

 まぁでも周りには気をつけておいたほうが良いな。目立って仕方ない。

(え? あ……ほんとだ。あんたたまに目が見えてるんじゃないかって思うんだけど気の所為?)

 情報思念体だからな。思念には敏感なんだよ。特に近くに居る奴の、にはね。

(へー? ん? じゃあその理論で行くと、何であんた、注目されてるって分かるの?)

 メイリアが泣きそうだからだが?

(へ? ……あっ!?)
「メイリア! 大丈夫??」

「ひぅ……周りが……赤い色が……」

「バモン! ベティを止めて!」

「ぅぉ!? わ、かった」

 メイリアが周りの感情に怯えているのを認めると、フローラはバモンにベティを止めさせた。フローラがしなかったのは、加減を間違えないようにだろう。まさかあの強制停止措置を令嬢にはしなかろうが……

(男の子にだってもうしないわよ!?)

 どうだか……。それはともかく、バモンがベティを捕まえ、強制的にメイリアの方を向かせることで、自身の拙さを自覚させて沈静化せると、二人してバツが悪そうにメイリアに謝罪した。

「ごめん、忘れてた」

「すまん、俺は気をつけてなければならんのに……」

「だ、大丈夫……だから」

 その輪に入りそびれた風呂オラさんは疎外感を感じているのだった。

(別に無視されたり、ハブられたりしたわけじゃないでしょうが!)

 ここに上がっていないただ一人、彼だけが目を細めて楽しそうにこの光景を見ているのだった。
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