乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう

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帰ってからのあれやこれ

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 学院では魔王が復活したことに関して、箝口令が敷かれていた。国内に混乱が生じるのは勿論、国外からも外交圧力がかかることは予想に易い。当時の魔王の残した爪痕は世界各地にあったのだから。最も、それが虎の尾を踏んだ結果だとは、ご丁寧に記録されてるはずもないのだが……。
 一方で『目撃した者達』及び『関係者達』はというと、フローラの帰還を絶望視していた。……一部を除いて。
 絶望視していないその一人であるクラインの元に、俺と魔王の合作にして超大作がクラインの下に届けられると、クラインは手紙の内容を4度見し、同僚に意見を求めた。同僚達も4度見程を経て、迎えに行くべきだと結論付けると、内容に関しては訝りながらも、約束の時間少し前、『奈落の淵』の前までやってきていた。

「何故お前達まで居るのであるか? 相談したとはいえ、指定されたのは私だけであるのだが……」

「愚問だな、クライン卿。友人の娘、かつ寮の生徒なのだから当然私はここに居る」

「私の生徒でもありますしね。書かれてる内容も内容で……ちょっと淑女教育が疎かでしたかしら??」

「不出来な生徒ほど可愛いとはよく言ったものです。……ですがメアラ嬢? どうかお手柔らかに願いますよ?」

「あらあら? うふふふふ……」

 等と本人が聞いたら少しチビリそうな会話が聞こえている。
 そして俺達が指定した約束の刻限、満月の光が城の中を細く長く伸びて奈落の淵まで届く頃……

「うひぇあぁぁあ~~~っ!!」

 ッポーーーン!

 と、淵から勢いつけて返却されるフローラさん。まるで『お前イラネ!』と突き返されるかのような光景だった。

(間違っちゃいないんだろうけど、腹立つ! って……)
「ギィィイヤァアアアアア!」

 ガシッ!

 放り出される勢いのまま、数メートルを落下するフローラを、クラインは綺麗にキャッチしたのだった。魔法の効果か何かは知らないが、キャッチの時の衝撃以外は静かなものである。

(死ぬかと思った! 死ぬかと思った! 死ぬかと思った!)
「あひはほぅ……ありがとうございます」

「……よく、帰ったのである」

 ふわりと降ろされるフローラ。そして……男性陣が何故か距離を取った。何となく腰が引けてるような気が……。女性陣の怖い説教が始まるのかと思ったが、遠巻きにされてるような……?

(まさか……)
「あ、あのー……? 先生方はどうしてここへ?」

「何、魔王を語るものから手紙が届いて、な? 何でも『執拗に股間を狙って蹴りをはなとうとする、凶暴な女を引き取って欲しい』、とあってであるな」

(あ・ん・た・らああああ!!!)

 テッヘペロー。

「貴族としては勿論、年頃の女性の行為とはとても思えんのである。以後、是非とも、改めて頂きたいのである」

「生徒に行動を諮ってどうするのだクライン卿」

「う、うむ。しかしであるな……」

「フローラぁ……さん?」

「はひっ!?」

「あの時はァ……事故? だったとのことだったけどぉ……。割と頻繁に狙ってらっしゃるのぉ?」

「ひぃえへぇ!? ち、違いまふ! アレはバモン君が『奈落の淵』へと放り投げ出されたのを見て、ついカッとなって!」

「え?」

「へ? ……あ」

 あーあ、言っちゃってやんの。魔王さんにげてにげてー。

(この場には居ないからセーフ!?)

「そのはなしはきいてないわどういうことねえどういうことねえねえねえ?」

「うっひぃ!?」

「よせ、メアラ。もう怯えてしまっている。そうだな……以後、この県に関しては私が話を聞こう。今日の所は帰れ」

「ええ? 先生? この話題で私を排除なさると?」

「今のお前は冷静に聞けないだろう。直ぐにでも魔王の元へと飛び出しそうだ」

「………………チッ」

 相変わらず怖えなこの姉ちゃん。

(コクコクコクコク)

「とりあえず寮まで送りましょう。大丈夫ですか? フローラさん」

「うう、ジュール先生、ありがとうございます……」
(ていうか蹴ったりなんか絶対しませんので、微妙に逃げ腰にならないでください。地味に傷つきます……)

 なんて茶番を演じながら、寮に送り届けられたのだった。ジュール先生は男なのでオランジェ女子が、だったが。
 喪女さんがオランジェ女史に連れられるのを見送りながら、クラインが一つため息を吐く。

「手紙の内容の通りであったであるが、二人はどう思う?」

「他の内容について、ですかな?」

「魔王ぜっころ」

「メアラ嬢、落ち着きなさい。あの淵が危険なものではない事は、我々は知っているでしょう?」

「……魔王だから知らないはずもない、ですか?」

「その通り。詰まり彼の者は、もとより殺す気がなかったと見るべきでしょう」

「……はぁ、分かりました。手紙の他の内容について、というのは魔王の状態のことですね。ジュリエッタ嬢の私見とも一致する辺り、妙な符号を感じはしますが」

「フエルカノン公爵家は対魔王・魔族用、大規模広域魔法の専門家であるからな。魔王の不調を見抜くのは容易いのかも知れぬが」

「まさかの本人からの告白ですからね。フローレンシア嬢の存在を持て余したのは事実なのかも知れませんが、引き取る手間賃代わりに、自身の弱点を曝けるとは……何が狙いでしょうな?」

「油断を誘う? あの魔王が? ありえないでしょうね。当時、大龍騎国の誇る守護大龍ですら、彼の魔王には手も足も出なかったんですもの。そんな子供だましの手を使いはしないでしょう」

「本当に万全の状態でないのであるとしたら……この期に攻め入るのが得策であろう。攻め入ることができるのであれば、であるが」

「心理戦を仕掛けてきている、と?」

「あるいは人間界の混乱を狙っておるのやも知れぬである」

「ここでアレコレ言っても詮無きことですわ……。皇帝陛下のご判断におまかせしましょう?」

「「(コクリ)」」

 こうして世界の一大事は皇帝の判断に委ねられるのである。丸投げとも言うな!


 ………
 ……
 …


 一方、風呂オラさんといえば、寮に帰ったら帰ったで根掘り葉掘りオランジェ女史に尋問され、時間は過ぎに過ぎ、部屋に返されたのは次の日の朝だった。まさかの夜通しである。

(次の日が休日だったから決行したんだわ……きっとね)

 帰ってきて先輩への挨拶もろくに出来ないまま、ベッドへと直行したフローラが目を覚ましたのは、もう夕方近くになってからだった。
 寝ている間、友人達がフローラの様子を確認しに来てくれていたということを、ミルクレープ先輩に教えてもらった。

(だうとだうとー。何でパルフェ先輩の名前は間違えようとするのよ?)

 起きてから、

(無視!?)

 フローラが嫌がらないレベルでではあるが、先輩からの尋問もあったのは言うまでもない。

「災難だったっすねー。主に寮監様の尋問が」

「そうっすよ……生きた心地がしなかったっす」

「あっはっはぁ、重症っすね」

「……所で先輩」

「何っすか?」

「このもこもこは一体?」

 そうなのである。実は今、フローラの頭の上には、ちょっと大きめのリス? が陣取っているのである。

「あー……その子はっすねぇ、フローラちゃんが寝てから何っすけど、窓から飛び込んできちゃったんすよね。
 んで、フローラちゃんを見るなり、頭の上で巣作りしたんすよ」

「巣作り!?」

「流石にそれはやめるように、手を変え品を変え、なだめすかしたんすけど……」

「………………」

「あ、一度メイリアちゃんが訪ねてきた時は、ばっと逃げてったっす。苦手だったんすかね?」

「んん?? 何ででしょうね?」

(『あの子、私のことを感知できる可能性があるからよ』)

(………………はいぃぃ!??)

(『うふ、来ちゃった♪』)

 相手が何で何なのかを悟ったフローラは、頭の上からリスを引っぺがし、窓の外へ放り投げた!

「ええええ!?」

(『ちょっ、おまっ……!』)

 バッ! ……スィ~~~。タシッ、ババババババ……タンッ、スィ~~~

 投げ出された小動物は、近くの木に滑空・着地木?すると窓の一より高めまで駆け上って、窓へと滑空して戻ってくる。

(『何してくれちゃってんのあんたぁ!』)

(そりゃこっちのセリフだオカ・マ王! 随分と華麗に戻ってきやがったなコンチクショウ!)

(『誰かオカマか! 乙女よ! そして被膜があんのよ! 空も飛べるわ!』)

(ムササビ!? モモンガか!? どっちでも良いわ!)

 何故か少し大きめの小動物を窓の外へ問答無用で放り投げた後輩と、華麗に戻ってきたリスとが対峙する図にあんぐりと口を開けて成り行きを見守る先輩。うん、わからんよな、この状況。何せフローラときたら猫が威嚇するポーズを取り、モモンガin魔王さんは両手足広げて仁王立ちの威嚇ポーズ。同レベルの争いとはこれ如何に!
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