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フローラ、猛る
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「あら、漸く帰ってきたのねぇ?」
『ああ、留守にしていて悪かった』
「延々と私達だけでおしゃべりできることなんて無いから良いわよ別に。とっくの昔に話のネタも尽きてることだしね」
「……勇者、殿? なのか?」
『まぁ勇者って呼ばれるのは好きじゃないから魔王かベアルと呼んでくれれば嬉しいかな』
「ベアル……おけ」
サムズアップして応えるジュリエッタ。……あれ? 喪女さんが静かだな。
「ジュリエッタ嬢、そんな軽く……」
「勇者殿はどういう状態なのであるか……?」
4大家が次々に勇者の存在に興味を向けていく。しかしフローラは考え込んでいた。
「ね、魔王様」
「なぁに?」『なんだい?』
「あ、勇者さんじゃない方」
「どうしたの?」
「ちょっと実験。モモンガになってみて?」
「良いわよ? ……」『こんな感じだけど?』
フローラがモモンガになるよう言うと、魔王の器の胸辺りからモモンガが現れた。するとフローラが魔王の器に触れ、
「んじゃ戻ってみて?」
『なぁによぉ……ん? あれ? 入れない??』
魔王さんが困惑してると、フローラは魔王の器から手を離す。
「あら? 入れたわ?」
「ん、おっけおっけ。じゃ、もっかいモモンガになって?」
「何なのぉ?」
と魔王さんはブツブツ言いながらもモモンガへと移る。
「で、勇者様?」
『お嬢さん、どうかベアルと……』
「ゆ・う・しゃ・さ・ま?」
『……は、はい? 何でしょう?』
「一度魔王の器に入って?」
『な、何故?』
「は・い・っ・て?」
『は、はい……』「入りま……」
ズドムンッ!
「崩玉っ!」
「じゅえぇっっ!?」
勇者様in魔王の器にバモンクラッシャー!
(崩・玉・よ!)
どっちにしたって俺の命名じゃん。言い換えた所で、どうせ要所ではぽろっと逝っちゃうんでしょう?
(字が違う気がするわぁ!?)
『ぎゃあ!? 小娘え!? それヤメロって言ったろうが!』
「魔王様の入ってない時よ。痛くないでしょ?」
『はぁ!? ……あー、まぁ? そうだわね』
「ぐおぉぉぉお……、よ、良くはなひぞぅ? か、代わってぇくれぇ……」
『嫌に決まってんじゃない。私もそれやられたことあるんだから』
「うぐぐぅ……では精神体を抜くしか……!? 何故!? 出られない??」
「さっき実験しておいて良かったわぁ。さっきさ、メイリアと触れた状態だと脳内会話がメイリアにも伝わったじゃない? だから直接触れることで何かしら変化が起きるんじゃないかなぁ? と思ったのよ。本当はもっと色々実験しておきたかったんだけど、勇者さんの居る状態で実験したら察知されちゃって、今のをキメれなかったと思うから……」
『いや、だからなんでバモンクラッシャー?』
「崩玉だってば!?」
「……クラッシャーだか崩玉だか知らないが、何故勇者殿に?」
ディレクが腰引けになりながらフローラに訊ねる。
「勇者じゃない方の魔王様? その体に入ってからどれ位ずっとここに居ました? あ、モモンガになれる前ね」
『んー? モモンガになって出ていけるようになったのはつい最近っていうか、アンタがここへ来てからだから……800年位かしら?』
「「「800年!?」」」
メイリアもこれには思わず目を剥いた。
「……モモンガもつい最近だったか。で、それまでの間どうしてました?」
『うんともすんとも言わない体の中に閉じこもってたから、ずーっと一人で何もせず?』
「何だその……牢獄のような生活は」「よく一人で……」「800年……」
4大家の男共はドン引きだった。フローラの蹴りよりも引かせるとは、やるな! 勇者様!
「魔王の器に入る前はどうしてました?」
『寝たきりで、何時死ぬともわからない体だったわね』
「どんな風にこの世界に誘われたんですか?」
『死を待つ身だった私の所に勇者さんの思念がやってきて、暫く動けない体だけど、いつかは自由に動ける様になる。死ぬのを待つより良いと思うけどどうかな? って。まぁ元々寝たきりが常の生きてるとも言えないものだったから、この体に入れられた時も、あの延長かぁ……としか思わなかったわね。それに痛みも苦しみも無いし、最終的に自力で動ける体が待ってると思えば、ね』
「「「………………」」」
「はい、この中でこの話が詐欺だと思わない人は手を上げて! 居ないわよね。……次に、詐欺だと思う人は手を上げて!」
フローラの問いかけに、最初の問には誰も反応せず、2つ目の問には皆が揃って手を上げた。メイリアは勿論、ジュリエッタ様もだ。
「勇者さん? 皆の反応は見えましたね? 自分が耐えられそうにないからって、死にかけてる人に新たな生の約束を餌として、ロクな説明もなく他の世界から800年も身動き取れない体に閉じ込めるのがどういうことか、分かります?」
「……はい」
「じゃあ、勇者さん?」
コレまでの間もずっと魔王の器に触れながら、勇者が逃げることを許さなかったフローラが、ここへ来て蹲っていた魔王の器の顔の頬に、両手を添え優しく頭を起こし上げると……
「ちゃんと反省しろ! 顔面打ー破ー!」
と綺麗に人中へと膝蹴りを叩き込むのだった! 一同ドン引きである!
………
……
…
精神的にも肉体的にも今まで味わったこともないレベルの痛みだったのか、あっさり気を失って伸びた勇者in魔王の器。その上に腰掛け、まだ怒りの冷めやらぬ喪女さんに一同はどうしたものかと対応を協議している。
『もー。そのへんにしといて上げなさいなぁ?』
「何言ってるんですか? コレくらいじゃ腹の虫が収まりませんよ! というか魔王さんの話でしょう?」
『アンタってば本当に人の事になると手が早いわよねぇ。自分のことだと我慢しちゃうくせに』
「そんなに我慢しませんよ?」
『そうかしらねぇ』
「フローラはフローラだからしょうがないです」
『分かるわぁ……その諦観』
「えぇ? メイリアまでぇ?」
3人仲良くクスクスやってる光景を、男共は煤けた状態になりながら眺めているだけだった。そんな中
「勇者、話……」
「ああ、すみませんジュリエッタ様。もしかしてまだ何か聞きたいことがありました?」
「(コクリ)」
『多分あれね、勇者そのものに対して聞きたいことでしょうね』
「(コクリ)」
「でもゆうしゃコレじゃあねぇ……」
『アンタがやったんでしょうに』
鬼畜の所業である。
「自業自得……ってジュリエッタ様?」
「……ディー」
「……何だ?」
「皆、やること、ない」
「……ああ、そうだな」
「メイリア」
「そういえばそうだったね。向こうでは騒ぎになってるかも知れないね?」
メイリアがビクッと身を震わす。
「しかしメイリア嬢はフローラ嬢を置いて行けぬのだろう?」
「(コクリ)」
「それでやることの無い俺達が、ということか」
「そう……」
「えっと、魔王……様? 僕達は一足先に戻ろうと思うのだけど、どうすれば良いかな?」
『そこに扉があるでしょう? そこをくぐるだけよ』
「あっ、でも気をつけて下さい! 私が以前帰った時のようにぽーんと」
『なんないわよ。私が何かしなけりゃ』
「そうそう、なんな……んですってぇ!?」
『やぁねぇ、蹴られた意趣返しのようなもんじゃないのぉ』
「私の素行を面白可笑しく脚色した手紙で辱めるだけじゃ飽き足らなかったのかぁ!?」
『先生がそれを読んで信じちゃう辺り、アンタの元々の素行がまずかったんじゃないの? 私、アレが信じられるだなんて毛ほども思ってなかったわよ?』
「ぬぁっ!?」
固まるフローラを尻目に、男性陣は扉をくぐり、古城へと戻っていった。
「……で、勇者」
「ああ、そうですね。そろそろ狸寝入り、いえ、嘘寝してやり過ごせると思い込んでるヘタレを叩き起こしましょうか」
「ええっ!? バレてたの?」
「バレいでか。ちょ、マジお前、根性叩き直してやろうか? 最初こそ本当に気絶してたかもしれないけど、今のはカチンときた。どっちから潰す?」
「どっちからぁ!? やめて!? ごめんなさい!?」
『はいはい、そこまで。代わるからフローラ、そこ退いて?』
「んもう、魔王さんは優しいんだから……」
フローラが渋々魔王の器の上から退くと、バッ! と勇者さんが距離を取った。
『ほらほら、勇者さん? さっさと出る』
「はいっ! 有難う!」
「おう、言葉が違うんじゃねえか?」
「ひっ!? 騙すような真似してごめんね!?」
『はいはい、もうわかったから』
謝る勇者を見て漸く鬼の形相を解くフローラ。っつーか、お前、言葉遣いまで鬼になっとったやないけ。
(本来絶許ものなんだから)
「まぁあれよね。勇者さんは比肩する者も居ない状態でずっとここまで来てたから、あんな風に怒られたりボコられたりすることは無かったでしょうから」
『うう……こ、怖かった』
「だからっつって何しても許されるとか思ってたら踏み潰すわ」
『ごめんなさい!? もう許して!?』
「……フローラ?」
「あ、すみませんジュリエッタ様。どうぞ」
「勇者……今まで、何人か、ここ、来た」
『ひうっ!? ……ああ、この黒繭の中に送り込まれた人達、かい? ちゃんと魔界で生き抜いた、よ?』
「えっ!?」
「え? メイリアがどうして驚くの?」
「それは……」
「シュトーレン、黒繭、送る、生贄、違う」
「……ああ! もしかしてメイリア、黒繭の中にご先祖様が送られたことがあったの?」
「(コクリ)」
『それは随分前の話だねぇ。まだ僕がここにずっと囚われていた時代の話だよ。900年位前かな?』
「そんな昔のこともずっと記録にのこしてきたの? シュトーレン家って」
「うちは……少し特殊だから」
「歴史家の……家系。能力も……ちょくちょく、変わってる」
「ああ、能力は魔眼のこととかかな? 家の古い歴史に『黒繭に送り込まれた』みたいな記述があったからメイリアは私がここに送り込まれたと勘違いしたのね?」
「(コクリ)」
「メイリアったらー(ぎゅー)」
「あっ……んもう、フローラったら何時もそうやって」
そして何時ものようにフローラに抱きつかれ、甘々シーンを衆目の前に晒す羽目になるメイリアだった。勿論後で拗ねられたがな。
(後悔はない!)
喪女さんのこたぁどうだって良いんだよ。
『ああ、留守にしていて悪かった』
「延々と私達だけでおしゃべりできることなんて無いから良いわよ別に。とっくの昔に話のネタも尽きてることだしね」
「……勇者、殿? なのか?」
『まぁ勇者って呼ばれるのは好きじゃないから魔王かベアルと呼んでくれれば嬉しいかな』
「ベアル……おけ」
サムズアップして応えるジュリエッタ。……あれ? 喪女さんが静かだな。
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「勇者殿はどういう状態なのであるか……?」
4大家が次々に勇者の存在に興味を向けていく。しかしフローラは考え込んでいた。
「ね、魔王様」
「なぁに?」『なんだい?』
「あ、勇者さんじゃない方」
「どうしたの?」
「ちょっと実験。モモンガになってみて?」
「良いわよ? ……」『こんな感じだけど?』
フローラがモモンガになるよう言うと、魔王の器の胸辺りからモモンガが現れた。するとフローラが魔王の器に触れ、
「んじゃ戻ってみて?」
『なぁによぉ……ん? あれ? 入れない??』
魔王さんが困惑してると、フローラは魔王の器から手を離す。
「あら? 入れたわ?」
「ん、おっけおっけ。じゃ、もっかいモモンガになって?」
「何なのぉ?」
と魔王さんはブツブツ言いながらもモモンガへと移る。
「で、勇者様?」
『お嬢さん、どうかベアルと……』
「ゆ・う・しゃ・さ・ま?」
『……は、はい? 何でしょう?』
「一度魔王の器に入って?」
『な、何故?』
「は・い・っ・て?」
『は、はい……』「入りま……」
ズドムンッ!
「崩玉っ!」
「じゅえぇっっ!?」
勇者様in魔王の器にバモンクラッシャー!
(崩・玉・よ!)
どっちにしたって俺の命名じゃん。言い換えた所で、どうせ要所ではぽろっと逝っちゃうんでしょう?
(字が違う気がするわぁ!?)
『ぎゃあ!? 小娘え!? それヤメロって言ったろうが!』
「魔王様の入ってない時よ。痛くないでしょ?」
『はぁ!? ……あー、まぁ? そうだわね』
「ぐおぉぉぉお……、よ、良くはなひぞぅ? か、代わってぇくれぇ……」
『嫌に決まってんじゃない。私もそれやられたことあるんだから』
「うぐぐぅ……では精神体を抜くしか……!? 何故!? 出られない??」
「さっき実験しておいて良かったわぁ。さっきさ、メイリアと触れた状態だと脳内会話がメイリアにも伝わったじゃない? だから直接触れることで何かしら変化が起きるんじゃないかなぁ? と思ったのよ。本当はもっと色々実験しておきたかったんだけど、勇者さんの居る状態で実験したら察知されちゃって、今のをキメれなかったと思うから……」
『いや、だからなんでバモンクラッシャー?』
「崩玉だってば!?」
「……クラッシャーだか崩玉だか知らないが、何故勇者殿に?」
ディレクが腰引けになりながらフローラに訊ねる。
「勇者じゃない方の魔王様? その体に入ってからどれ位ずっとここに居ました? あ、モモンガになれる前ね」
『んー? モモンガになって出ていけるようになったのはつい最近っていうか、アンタがここへ来てからだから……800年位かしら?』
「「「800年!?」」」
メイリアもこれには思わず目を剥いた。
「……モモンガもつい最近だったか。で、それまでの間どうしてました?」
『うんともすんとも言わない体の中に閉じこもってたから、ずーっと一人で何もせず?』
「何だその……牢獄のような生活は」「よく一人で……」「800年……」
4大家の男共はドン引きだった。フローラの蹴りよりも引かせるとは、やるな! 勇者様!
「魔王の器に入る前はどうしてました?」
『寝たきりで、何時死ぬともわからない体だったわね』
「どんな風にこの世界に誘われたんですか?」
『死を待つ身だった私の所に勇者さんの思念がやってきて、暫く動けない体だけど、いつかは自由に動ける様になる。死ぬのを待つより良いと思うけどどうかな? って。まぁ元々寝たきりが常の生きてるとも言えないものだったから、この体に入れられた時も、あの延長かぁ……としか思わなかったわね。それに痛みも苦しみも無いし、最終的に自力で動ける体が待ってると思えば、ね』
「「「………………」」」
「はい、この中でこの話が詐欺だと思わない人は手を上げて! 居ないわよね。……次に、詐欺だと思う人は手を上げて!」
フローラの問いかけに、最初の問には誰も反応せず、2つ目の問には皆が揃って手を上げた。メイリアは勿論、ジュリエッタ様もだ。
「勇者さん? 皆の反応は見えましたね? 自分が耐えられそうにないからって、死にかけてる人に新たな生の約束を餌として、ロクな説明もなく他の世界から800年も身動き取れない体に閉じ込めるのがどういうことか、分かります?」
「……はい」
「じゃあ、勇者さん?」
コレまでの間もずっと魔王の器に触れながら、勇者が逃げることを許さなかったフローラが、ここへ来て蹲っていた魔王の器の顔の頬に、両手を添え優しく頭を起こし上げると……
「ちゃんと反省しろ! 顔面打ー破ー!」
と綺麗に人中へと膝蹴りを叩き込むのだった! 一同ドン引きである!
………
……
…
精神的にも肉体的にも今まで味わったこともないレベルの痛みだったのか、あっさり気を失って伸びた勇者in魔王の器。その上に腰掛け、まだ怒りの冷めやらぬ喪女さんに一同はどうしたものかと対応を協議している。
『もー。そのへんにしといて上げなさいなぁ?』
「何言ってるんですか? コレくらいじゃ腹の虫が収まりませんよ! というか魔王さんの話でしょう?」
『アンタってば本当に人の事になると手が早いわよねぇ。自分のことだと我慢しちゃうくせに』
「そんなに我慢しませんよ?」
『そうかしらねぇ』
「フローラはフローラだからしょうがないです」
『分かるわぁ……その諦観』
「えぇ? メイリアまでぇ?」
3人仲良くクスクスやってる光景を、男共は煤けた状態になりながら眺めているだけだった。そんな中
「勇者、話……」
「ああ、すみませんジュリエッタ様。もしかしてまだ何か聞きたいことがありました?」
「(コクリ)」
『多分あれね、勇者そのものに対して聞きたいことでしょうね』
「(コクリ)」
「でもゆうしゃコレじゃあねぇ……」
『アンタがやったんでしょうに』
鬼畜の所業である。
「自業自得……ってジュリエッタ様?」
「……ディー」
「……何だ?」
「皆、やること、ない」
「……ああ、そうだな」
「メイリア」
「そういえばそうだったね。向こうでは騒ぎになってるかも知れないね?」
メイリアがビクッと身を震わす。
「しかしメイリア嬢はフローラ嬢を置いて行けぬのだろう?」
「(コクリ)」
「それでやることの無い俺達が、ということか」
「そう……」
「えっと、魔王……様? 僕達は一足先に戻ろうと思うのだけど、どうすれば良いかな?」
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「あっ、でも気をつけて下さい! 私が以前帰った時のようにぽーんと」
『なんないわよ。私が何かしなけりゃ』
「そうそう、なんな……んですってぇ!?」
『やぁねぇ、蹴られた意趣返しのようなもんじゃないのぉ』
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『先生がそれを読んで信じちゃう辺り、アンタの元々の素行がまずかったんじゃないの? 私、アレが信じられるだなんて毛ほども思ってなかったわよ?』
「ぬぁっ!?」
固まるフローラを尻目に、男性陣は扉をくぐり、古城へと戻っていった。
「……で、勇者」
「ああ、そうですね。そろそろ狸寝入り、いえ、嘘寝してやり過ごせると思い込んでるヘタレを叩き起こしましょうか」
「ええっ!? バレてたの?」
「バレいでか。ちょ、マジお前、根性叩き直してやろうか? 最初こそ本当に気絶してたかもしれないけど、今のはカチンときた。どっちから潰す?」
「どっちからぁ!? やめて!? ごめんなさい!?」
『はいはい、そこまで。代わるからフローラ、そこ退いて?』
「んもう、魔王さんは優しいんだから……」
フローラが渋々魔王の器の上から退くと、バッ! と勇者さんが距離を取った。
『ほらほら、勇者さん? さっさと出る』
「はいっ! 有難う!」
「おう、言葉が違うんじゃねえか?」
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『はいはい、もうわかったから』
謝る勇者を見て漸く鬼の形相を解くフローラ。っつーか、お前、言葉遣いまで鬼になっとったやないけ。
(本来絶許ものなんだから)
「まぁあれよね。勇者さんは比肩する者も居ない状態でずっとここまで来てたから、あんな風に怒られたりボコられたりすることは無かったでしょうから」
『うう……こ、怖かった』
「だからっつって何しても許されるとか思ってたら踏み潰すわ」
『ごめんなさい!? もう許して!?』
「……フローラ?」
「あ、すみませんジュリエッタ様。どうぞ」
「勇者……今まで、何人か、ここ、来た」
『ひうっ!? ……ああ、この黒繭の中に送り込まれた人達、かい? ちゃんと魔界で生き抜いた、よ?』
「えっ!?」
「え? メイリアがどうして驚くの?」
「それは……」
「シュトーレン、黒繭、送る、生贄、違う」
「……ああ! もしかしてメイリア、黒繭の中にご先祖様が送られたことがあったの?」
「(コクリ)」
『それは随分前の話だねぇ。まだ僕がここにずっと囚われていた時代の話だよ。900年位前かな?』
「そんな昔のこともずっと記録にのこしてきたの? シュトーレン家って」
「うちは……少し特殊だから」
「歴史家の……家系。能力も……ちょくちょく、変わってる」
「ああ、能力は魔眼のこととかかな? 家の古い歴史に『黒繭に送り込まれた』みたいな記述があったからメイリアは私がここに送り込まれたと勘違いしたのね?」
「(コクリ)」
「メイリアったらー(ぎゅー)」
「あっ……んもう、フローラったら何時もそうやって」
そして何時ものようにフローラに抱きつかれ、甘々シーンを衆目の前に晒す羽目になるメイリアだった。勿論後で拗ねられたがな。
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