乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう

文字の大きさ
69 / 150

真なる危機

しおりを挟む
 会合の終わり、フローラはジュリエッタに呼び止められた。

「何でしょう? 乙女様」

「ああ、ちょっと衝撃が強過ぎてね……。ほら? この国って言ってみればちょっとばかり過剰戦力だったじゃない?」

「まぁそうですね。辺境伯麾下の武人達も、おかしなレベルの変人ばかりですし」

「……一応身内よね?」

「身内贔屓はこういう際には置いておくことにしてます」

「そ、そうなのね。でね? 戦争になった場合……いえなるでしょうけど、お父様方には……」

「そりゃ出てもらわないと」

「……良いの? それで」

「いい悪いで言えば、そもそも戦争が無いのが一番です。……え? そんなこと確認しに来たんですか?」

「フローラちゃんにとってはそんな事……なの?」

「覚悟の問題ならとっくに出来てますよ。武人の娘で孫ですし。ただ、二人に何かがあったら黙ってませんけど」

「……ふふ、そうよね。それがフローラちゃんだわ」

「あ、乙女様。一つ聞きたいことがありまして」

「なぁに?」

「昏睡病の事って家族とかには説明した方が良いんでしょうか?」

「やめておいた方が良いわね。『私は貴方の娘ではなく、死んだ貴方の娘に寄生する別の世界の人間の魂です』なんて話をまともに受け止めてはもらえないと思うのよ。仮に受け止められたとして、転生した子達が危険にさらされるだけじゃないかしら?」

「……ごもっともですね」

「だからできるだけ情報統制してるわ。まぁいずれ何処からか漏れ出ていくでしょうけど、そうなったらその時はその時でまた考えれば良いわ。だからフローラちゃんも抱え込まないでね」

「はい、そっちは大丈夫です。それどころじゃない日々を送ってますので。主にノーコンのせいで」

「ああ、分かるわぁ……。私もたまにナビをどうにかできないかって本気で悩むもの。
 ……ね? りっくんが帰ってきたら相談してみましょうか?」

「あ、良いですね。りっくん、わたしの魂だけ抜き出すとか器用な事してたし」

 おいばかやめろ。俺達が一方的にヤバイじゃないか。

「……そう思うならもうちょっと対応を考えればいいと思うのだけど?」

 おもちゃ相手に慮る必要が何処に……

<あっ、バカこら。こっちにまで飛び火しちゃうんだから気をつけてよね>

 ……あっ。

「じゃ、そういうことで乙女様」

「そういうことね、フローラちゃん」

 対応を間違えたか……。

<あほのーこんめー>


 ………
 ……
 …


 あの時の会話はなんの役にも立たなかったと、フローラは当時を振り返ってそう述懐するのだった。

(まてまてこら。何の話か? ちゃんと説明)

「おーい、主役ー。何か豪華な馬車がやってきてお前呼んでるぞー」

「はべるは何時になったら主人を敬うのか……」

「どんどん呼び名を変えるんじゃないわよ。ってか、ハベルって何さ!?」

「いや、侍ベルって字で書くとジベルとしか読めないけどさ、訓読みにするとハベベルじゃん? それは流石に言い難いからハベル」

「どう突っ込んでいいか分かんないわ……」

「で、どなたが私を呼んだのやら……? って、お祖父様?」

「え゛!? あれが鬼将軍なの!? ……ちょい恐だけどイケ爺ね。会ったの二度目だけど」

「ふーん? 前回は何で会ったの?」

「ほら会合の日、モモンガ連れに戻ったじゃない? その時に声をかけられてね。一応クロード家の紋章を縫いつけてあるから興味持ったみたい。『フローラは何処か?』って聞かれたから『昏睡病で転生した者同士、別格貴族の会合に呼ばれております』って答えたわ」

「へー、そーなん……だとぉ!?」

「何よ?」

「ちょ、おま、それ、極秘事項」

「あん? 家族なら良いんじゃないの?」

「お前だって説明してねえだろうが!?」

「フローラや」

「ひぇいっ!?」

「少しばかり、話があるんじゃ」


 ………
 ……
 …


 鬼将軍にドナドナれていったフローラは

(ドナドナを動詞にした……だと!?)

 余裕ぶっこいていた。じゃ、俺はお邪魔なようなので静かにしてますね。

(やめて見捨てないで……いっぱいいっぱいなのぉ)

 興奮しないので却下。

(……あんたも割と面倒くさいよね)

 フローラのドナドナ先ではクロード家関係者一同が勢揃いしていた。ってまぁ4人だけど。

(ああ……胃に穴が開きそう)

「ええっと、本日はどのようなご用件で……」

「まずはフローラ、久しぶりだな」

「あ、はいお父様。……あの変な、丁寧な物言いはやめられたのですね」

「うぐっ……やっぱり?」

「私はお父様を言い方云々で判断はしてませんので。……というか、今日はそういうお話ではないのですよね?」

「ええ、そうよフローラ。昏睡病の話は本当なの?」

「……はい、本当です。この世界におけるフローレンシア・クロードという人物は、昏睡病を罹患した際、命を落としております」

「そう……なの、ね。では貴女は? 私の可愛いフローラの姿をしてる貴女は何者なの?」

「私は……別の世界で命を落とした魂と言いましょうか、とにかくそういうものだと思って頂いて間違いありません」

「別の……」「魂……」「世界……」

「ではフローラや。お主、あちらでは幾つで死んだのだ?」

「32ですね……」

「まぁフローラ? 私より年上だったのねぇ?」

「やめてください!? 割とショックなんですよ!? その事実は!」

「あらあら? 御免なさい?」

 そういってくすくす笑うお母様。相変わらず天使だな。

(否定はしないわぁ)

「あらぁ? ということは今生の15歳と足したら私と同い年なのねぇ?」

「あああ!? そうだった!? 衝撃の事実ですわお祖母様!」

 と、フローラは絶叫しながら蹲った。orzのポーズである。

「……本当じゃったか」

「……本当だったか」

 男親ーずは沈んでいる。

(言われんでも分かっとうわ!)

 喪女さんは俺に啖呵を切ると、よろよろと立ち上がり……

「今の今まで騙していて申し訳ありませんでした。別の世界での生を32で閉じた、名を美作可憐と申します。勝手に住み着いておいて厚かましいお願いかもしれませんが、娘さんの体をこのまま使わせて下さい。死ぬのは怖いんです」

 と勇気を振り絞った一世一代の口上を述べた。
 ………………反応がない。ただの喪女嫌いの様だ。

(そんなセリフ無いからぁ!?)

「のぉ? フローラや」

「はいっ! 何でしょうか! マクシマス様!」

「……ぉぉぅ、その呼ばれ様はちと儂にはキツイのぉ。……お主がフローラの中にやってきた別人としよう。ではフローレンシアは何処におるのだ?」

「ええっと……眠っている、らしいです」

「ふむ。フローレンシアとは話ができるかね?」

「いえゼオルグ様。魂の状態を見れる人の話による情報でしか……」

「ぐふっ……」

 ゼオルグが崩れ落ちる。おま、ひでー奴だな……。

(えー?)

「その者はなんと言っておった?」

「ええっと……このモモンガなんですが」

「キュッ?」

「その人は少し前まではこのモモンガの中に居ました」

「おお、そう言えば誕生日の時も連れておったのお。今は居らんのか?」

「ええ、居ません」

「で、その者の話ではフローレンシアは何と?」

「……信じて頂けるかはともかく、『フローレンシアはアンタの事好きよ』って」

「ああ……」

「ステラや? 何か知っておるのか?」

「いえね? お父様、その子を連れたフローラと一緒に馬車に乗ってたのだけど、急にとても幸せそうな照れた顔をした瞬間があったのよ」

「ふむ」

「今も少し照れたような表情になってて……多分その時の事を思い出しているんじゃないかしら?」

(凄いお母様……)

 おお、大正解だったな。なんで?

(分かんない。分かんないけど……)
「その通りです、ステラ様」

「お・か・あ・さ・ま」

「……はい?」

「ダメよ? 貴女は私の娘なんだから。さ、言ってみて? お母様って」

「で、でも私……」

「私ね……なんとなぁく、違和感は覚えてたの。目覚めてからすぐ学院の話しをした時も、全然乗り気じゃなくって……。あら? この子、誰なのかしら? って。でも話を聞いてああなるほどね、って思ったわ。誰も何も別人なんだもの。
 でもそれがどうしたの? 私達は一度はフローレンシアの死を覚悟してたのだもの。そりゃあ困った子が代わりに入ってた、とかなら困るけど、幸いにも貴女は常識をわきまえてる。それにフローレンシアは貴女が好き。貴女がフローレンシアの中に入ったお陰でこうしてお話もできる。もしかしたら眠っちゃったあの子とも話ができる時が来るんじゃない? だったら娘が二人になったようなものよね? 片方は年上だけど?」

 クスクス笑うステラに、フローラは困惑気味に短く一言問う。

「……良いの?」

「貴女は私の娘なの。良いも悪いも無いのよ」

 フローラは……いや、美作可憐はこの日、生まれ変わって初めて大声をあげて泣いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

悲報 スライムに転生するつもりがゴブリンに転生しました

ぽこぺん
ファンタジー
転生の間で人間以外の種族も選べることに気付いた主人公 某人気小説のようにスライムに転生して無双しようとするも手違いでゴブリンに転生 さらにスキルボーナスで身に着けた聖魔法は魔物の体には相性が悪くダメージが入ることが判明 これは不遇な生い立ちにめげず強く前向き生きる一匹のゴブリンの物語 (基本的に戦闘はありません、誰かが不幸になることもありません)

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

処理中です...