乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう

文字の大きさ
85 / 150

新もふもふ登場

しおりを挟む
 喪女さんは会合の後、覚えたばかりの転写魔法を使って、大量に似顔絵を作成した。見たものを転写できるものの、その記憶を昨叙することによって再現されるため、2度3度と繰り返せない。このため、最初の内は「これ徹夜作業かなぁ」とぼやいていたが「並べてみたらどうなんのよ?」とやってみた所、なんと上手く行ってしまった。そこで割り当てられていた作業分を100倍近い速さで終わらせることに成功したのだった。

(まぁできるっつっても12×12が限界だったからねぇ)

 慣れたら増えるんだろうか?

(分かんない)

 ま、そんな事より、今日は新たなもふもふの日だ。

(もふもふの日って……。まぁベルもそのつもりだから、あえて否定しないけど)

「もっふっふー、もっふっふー、あなったはぁー、だぁれー♪」

(変な替え歌まで歌っちゃってまぁ……)

 大中小いる森の住人かな? 足が多すぎる動物バスかな?

(猫っつってるから、後半のならあるかも知れんけどね)

 やがて愉快な一行はミリーことミランダの住む、エッシャー男爵家へと到着するのだった。

(愉快な一行って何さ? ベルは歌ってるからまだしも、私は関係ないじゃん?)

 存在そのもの?

(誰が愉快な存在か!?)

「やはーふろーらー」

「やっはー、ベティ」

「え? え? 私もその挨拶?」

「「こんにちはメイリア」」

「あれ? コレで普通だよね? 何で疎外感を感じるんだろう……」

「「気にしちゃ負け」」

「うう……」

 男爵家にしては大きめなエッシャー邸には、守衛まで居るらしい。守衛の方もフローラ達の事は聞き及んでいたのか、特徴を照会し終えるとすぐ取り次いでくれたのだった。なお、ベルが侍女らしくなかった事には首を傾げていたようだが、フローラがベルに『侍女とみなされなければ入れてもらえない』と囁いた事を境に、急に侍女っぽく振る舞うようになったのだった。

「お待ちしておりましたわ、皆様!」

「「「お招き有難う御座います。ミランダ様」」」

「……ベティ? フローラ? 何か悪いものでも食べましたの?」

「「どういう意味?」」

「ぷっ……」

「「メイリア?」」

「ご、ごめんごめん。何時もとの落差で、思わず問いかけたミリーと二人の温度差が……」

 そんな感じできゃっきゃウフフしてる女子ーずの所に、ご当主と思しき人物が顔を出した。

「ああ、ミリーがそんなに嬉しそうにしてるのは久しぶりに見たなぁ」

「おおお、お父様!?」

「やぁ、はじめましてお嬢さん方。ミリーの父のキース・エッシャーと言います」

「「「はじめまして、エッシャー男爵」」」

「うちで口うるさいのはミリー位だから、固くならず気安く過ごしてね」

「ちょぉー!? お父様!? 口うるさいって思ってたんですの!?」

 面白い親父さんだな。

(そうね。でも親父さんって言わないでくれる? ポロッと言っちゃったら嫌だから)

「おお、怖い。何時もならここで退散する所だけど、今日はあの子に会いに来たんだよね? だったら僕も同席しないとね」

 同伴が必要な動物とは?

(……少し嫌な予感がしてきた)

「もふもふっ!?」

「ベル、ハウス」

「は……い? え? ちょ、ハウスって何!?」

「ベル? あんたは何?」

「……侍女でした」

「よーしよしよし」

「ちょ! 触んな! もふもふ以外のお触りは拒否!」

「面白い子だねぇ」

「済みません。今日の訪問も、9割こいつが原因でして……」

「ええ? そうなのかい?」

「発端はこいつでしたが、ミリーとお泊り会したいってのが主目的です」

「……ふふ、面白いなぁ君。ミランダ、良い友達ができたねぇ」

「は、はい! 自慢のし、親友達ですわ!」

「ふふ、そうかい」

「ミリーはダメダメ。まだ親友って言うのに照れがある」

「ベティ!?」

「そうね。この親友達のためなら命も惜しくない位言えないと」

「フローラぁ!?」

「はいはい、二人共からかわないの。大体、自分のために命なんて投げ打たれた日には、二人共発狂するでしょう?」

「「そうね」」

「私、からかわれてたんですの!?」

「君達の仲睦まじい光景を見てるのも悪くないけど、あの子の事も紹介しないとね」

「もっ……」

「ハウス!」

「それヤメロよ!?」

「だったらじっとしとけ」

「ぐっ……」

「はっはっは。じゃあうちで預かってるあの子を紹介しようかな?」


 ………
 ……
 …


「(あんぐり)」

「(ポカーン)」

「(ビクビク)」

「も………………もふ?」

 4人は『猫』の前で困惑していた。

「ぐるぅっっ!!」

「わっ……」

「ひゃあ!?」

「ひっ!?」

「も゛っ!?」

『猫』の発した唸り声で、喪女さんを除いて3人は尻餅をつく。

「猫……? いや、ネコ科には違いないだろうけど、これどうみてもトラじゃん」

 そう、今までさんざん『猫』呼ばわりされてた『あの子』は白い大きな『虎』であった。いわゆる猛獣である。白い虎は部屋の半分位はあろうかという巨大な折の中で、寝そべりながら不機嫌そうにフローラ達を睨んでいた。

「あっはっは。いやぁ、魔法兵達の訓練中、この子を巻き添えにしちゃったらしくてね。普通の動物なら、魔力の高まりで逃げるはずなんだけど、この子はどうしてか逃げて無かったらしいんだよ」

「それでお父様が仕方なく、怪我したこの子をうちに連れて帰ってきたんですわ」

「帰って来ちゃったんですわって言うけど……」

「……入れ替わりにお母様は出て行かれましたわ」

「あっはっは。困っちゃうよねぇ」

「困っちゃう方なのはお父様ですわ! 考えなしにこの様な大きな動物を連れ帰ってきて!」

((((そんな問題じゃない)))) 

 フローラ達、呼ばれた4人の心が一つになった!

「……まぁ良いわ、経緯はともかく、とりあえずこの子治すわね」

「え? まだ怪我治ってませんでしたの!?」

「一応、治ってはいるけど、変な形でくっついちゃってるみたい。じゃ、ちょっくら治してくる」

 そう言って無造作に檻の中に入ろうとするフローラ。人が入らないように作られた動物園の檻の様な物では無く、虎が逃げない様に作られているだけなので、人が入る分にはスカスカの大きさだった。

「治してくるって……えええ!? ダメですわ! 危ないですわよ!?」

「そうだよ!? 娘の親友に怪我までさせたとなったら僕は妻に殺されてしまうよ!?」

 そっちの心配かい。

(あれぇ? ミリーのお父様の割にポンコツか? この人)
「大丈夫です。光魔法で身体強化できますから」

「そんな程度の魔法の強化で……」

 と、男爵が引き止める間も無くフローラは折の中に入っていく。せめて白い虎の神経をこれ以上逆なですることの無いよう、息を潜めるしかできない5人。しかしフローラは無遠慮に白い虎へと距離を詰めていく。そして……。

「ガオォオンッッ!!」

 ビリビリビリッッ!

 虎のこれ以上近づけばただじゃ置かねえとばかりの全力の咆哮に一同が固まり、

「はいはい、うっさいうっさい。えっと、ここかな?」

 威嚇を意にも介さず、虎の前足に触れると、

「えいっ」

 ポキンッ ピカァッッ!

「ギャオオオンッッ!?」

「「「「「なあああああ!?」」」」

 あろうことか白い虎の前足をへし折って、その次の瞬間には光の治癒魔法を使ったのだった。

(変な角度でひっついてるから剥がしただけよ。へし折ったって言う程の力は入ってないわ)

 いや、それさぁ? 仮に自分がやられるとしろよ? 変にくっついてることを知ってても、剥がすために折られたら絶叫できると思わねえ?

(ああ、そう言われてみると否定はできんね)

 痛み故か、飛び退いた白い虎は、できる限りフローラから距離を取りつつ、今まで以上に威嚇するのだった。

「ぴーぴー喚かないの。その足、もう痛くないでしょ?」

 フローラが前足に意識を向けるよう触ろうとすると、白い虎は嫌がって足を上げて逃げる。するとそこで白い虎の動きがピタリと止まった。そして恐らく変な角度でくっついていた方の足と思われる方で、2度3度、地面を踏み鳴らす動作をしてみせる。そして痛みが無くなった上に自由に動くことに気付いたのか、2度3度首を傾げるのだった。
 喪女さんがもう一度近づこうとすると、反射的に逃げようとはするが、今度は嫌がっていないようだ。

「んー、もう変なくっつき方してる骨はないね。内臓も……うん、大丈夫。って言うかあんた臭いな。洗うか? エッシャー男爵、この子外に連れ出しても良い? ……男爵?」

「……何やってんの君はぁ!?」

「「「フローラぁぁあ!!」」」

「も、もふもふ?」

「あ、なんかスミマセン。つーかベル、あんたはもふもふに取り憑かれてないで、まず私の心配しろよ」

 何が絡んでも喪女さんは喪女さんだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...