乙女ゲー転生、私が主役!? ……いやそれ、何かの間違いです!

まんどう

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アルディモ戦・決着

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「興味深い……。ここへ来て効率重視の魔法をこうも用意してくるとは。昨日今日用意したような物ではなかろう?」

「……これも駄目。ではこれは?」

 フラフラになっているアルディモが、それでも魔法を構える。それと同時に光の矢がクラインを襲い、クラインは思わず仰け反った。

「ぬおっ!? ……速射魔法と言った所か? 発動と速度に重点を置いておるため威力はさほど無いようだが、咄嗟の防御では間に合わんな」

「……次、はこれ」

 アルディモが指をくるりと回すと、クラインの足元の床が砕けてきめ細かな砂となる。

「うぬおぉっ! っあ痛ったぁ!?」

 足元に作用する魔法は予想外だったのか、あっさりこけて尻もちをついて悲鳴を上げるクライン。アルディモはそこに畳み掛けるように

「……次」

 魔法を放つ。今度の魔法は石の矢の様だ。

「いっつつ、ってイカン! 『防壁』!」

「……次」

 アルディモはぼーっとした表情で魔法を発動させていく。ついた尻を擦るまもなく石の矢が目の前に迫ってることに慌てるクラインだが、何とか防御魔法を間に合わせた。しかし、既に次の魔法がクラインに迫っていた。

「次は何だっ……! って、雨? なのであるか?」

 クラインは雨で濡れたものの、害がないと判断した。ここへ来て攻撃性のない魔法を使ってきた事に訝るクラインであったが、アルディモはその暇を与えない。

「……次」

「むう、アルディモ君よ、様子がおかしいぞ……って、うんっ!? 足が、動かぬ!? いや、重い!?」

 クラインはアルディモの様子を伺うものの、足が動かなくなっていて泡を食う。きめ細かい砂になった石、そこに水が加わって……つまりセメントのようなものが作られていたのだった。最後に掛けられた魔法はクラインの目には何をしているのか良く分からなかったが、クラインの足元を撹拌する魔法であった。

「……次」

「うぬおぉっ!? 何だこの泥沼……石の沼? いやいや、どっちでも良いであるな! 脱出を……あ痛たたたっ!? 今度は雹か!?」

「……次」

 クラインは次々と襲いかかる、厄介ではあるが危険の少ない魔法に翻弄され続けている。今放たれたのは火の矢の魔法でとにかく数が多い。

「ぬぅ! こうも分かりやすい攻撃であるならしっかり防ぎようもあるが、意味の分からぬ攻撃はかなわんな! ……って熱っ!? 火攻め? というか熱攻めか!?」

 クラインは自身にかかる火の矢は防いだものの、降り注がれる全ての矢を防いでいたわけでは無かった。その殆どは足元のセメントに吸い込まれ……

「ああっつ!? ここから出ねば……って何だ!? 動けん!! 完全に動かんぞ!?」

 つまりは固められてしまっていた。

「……はぁ、ようやく、終わる」

「ぬぅっ!?」

「来たれ雷雲……数多の雷を呼び寄せたまえ……雷の滝となりて我が敵を打て……『サンダーフォール』」

「ぬぁっ!? ちょっまっ……」

 今正に、最初の雷が落ち

 ピッシャアアアン! ドゴゴゴゴゴゴゴ……

 続いてクライン目掛けて絶え間なく雷が降り注ぐのだった。


 ………
 ……
 …


「………………完全に、空っぽ、ですね」

 アルティモは立つこともできなくなったのか床に突っ伏していて、それでもクラインから目を離すまいと注視し続けていた。当のクラインは真っ黒に焼け焦げた姿を晒しているのだが、アルディモは安心できずに居た。

「あの方は過小評価して良い相手ではない。あんな姿にはなっているが、まだ何かあるかもしれない。……そうなったらどうしようかな」

「どうもする必要はないのである」

 何事も無かったかのように声を掛けてきたのは、やはりクラインであった。黒く焼け焦げた表面がひび割れていき、その下からクラインの顔が現れた。……髪や服は無事とはいかなかったようだが。そして炭化した部分がボロボロと崩れていくにつれ、見せてはいけない部分にまで達しようとしていた……!

「 !? ああ、やっぱり無事でしたか。困ったなぁ……小細工を弄してようやく繋がった会心の一撃だったのに……」

「いや、本当に……きつかった。髪の毛も酷いものである。後で短く切り揃えて貰わねばなぁ。……安心し給え、こちらももう動けぬよ。本当によく考えられた魔法だった」

「………………どうやって?」

「あれだけの雷である。防ぐのを諦め、耐える事を選んだまでよ」

「耐える、ですか……」

「雷を変換するのは速度的に無理がある故な。凍結魔法と障壁魔法、そして泡の層を大量に作った」

「雷が落ちる事への軽減と、雷が落ちたことによる熱との対処、泡は雷が通り易い性質のもの、ですか?」

「そうであるな」

 クラインの表面にこびりついていた炭化した部分の殆どはあわによるものだったようだ。

「はは……流石……」

「あの一連の流れの起点は……足を崩す所か? いや、速射魔法でまだ気を抜けない攻撃があると見せてみた?」

 クラインはおさらいとばかりに、アルディモに使った魔法の細部を確認し始めた。

「そう、ですね」

「嫌でも飛来する魔法に意識が割かれた所に、足元を急に崩されて派手にこけてしまったわ。……打った尻がまだ痛い」

「はは……」

「そして石の矢。あれ自体は大した事が無いと思っていたが、マーカーを混ぜておったのだな?」

「分かりますか、流石です……。アレが最大の肝です……」

「『雷引石』。普段は避雷のために、人の住まぬ郊外に埋められる魔道具の一種であるが、敵方に魔法を打ち込むという使い方もできたわけだな。雷を呼ぶ魔法は大掛かりな前準備が必要になるため、戦争で使われる様な手では無かったが……。まさかその雷魔法を分割して使うとはな」

「それも分かりますか……」

「ただの雨魔法では無かった……。あの後すぐに足元を固められたため、移動を阻害するためのものだと思い込んでおったよ」

「あの時点ではまだ抜けられますからね……」

「そこで雹ときた。よくよく考えれば、雨に雹と来れば、もっとどでかい何かを狙っていることくらい分かりそうなものだが、足元の自由が奪われておる故、注意を向けられなかったのだな」

「もっとも、雹は雨の魔法の延長上で、実際には何もしてないのですがね……。後は仕上げに本当に動けなくするだけ……」

「火攻めかと思いきや、温度を上げて水分を飛ばしておったのか?」

「正確には他の魔法で水分を徐々に抜いていました……。熱で水分を飛ばすのは至難の業ですので……。火の矢は、それで足元を固められるかもしれないと、防壁を大きく展開してもらうつもりでした……」

「意識が逸らしている間に足を固めてしまうわけか。足元を固める手段と思っていた火の矢を防いでいたはずが、実際は関係なく足元を固められている、と」

「ええ……」

「そして動けなくなった所に雷の滝であるか。恐ろしい魔法の連携よな」

「防がれましたが……」

 アルディモが少し恨みがましい目をクラインに向けると、クラインは頭を振って自身の立場を述べた。

「4大家では年長ゆえ、真っ先に倒れるわけにはいかんと思っておるだけよ。何せ音と衝撃と光と熱、どれもこれも殺人的な威力であったし、魔力が尽き掛けた時は、もう死んだと思ったものよ。故に、もう指先ひとつ動かせる力は残っておらぬわ。……はぁ残念だ。どうやら4大家では最初の脱落者のようだ。しかし……非常に楽しい授業であったなぁ」

「授業……?」

 思いがけない単語にアルディモは目を瞬かせた。

「アルディモ君が如何に魔法に精通しているかを披露する場とも言えるであるか。実に楽しい時間であったことよ」

「……評価は?」

 クラインの言葉や表情から、どんな評価が下されるか分かりきっているはずのアルディモは、それでも尚その答えを聞いた。

「間違いなく最優であろう。近年稀に見る逸材である」

「ははっ……」

 アルディモはその答えを本人の口からちゃんと聞くことができた。その瞬間目を細め、目元には光るものがあった。

「できれば一緒に色んな魔法の研究をしたいものだなぁ。レアムが勝つような事があれば何も望まぬが、もし帝国が勝ったなら私が助命を嘆願するゆえ、考えてみてはくれんか? ……アルディモ君?」

「………………」

 既に意識を手放してしまっていたアルディモは幸せそうに見えて、クラインは少しばかり安堵の表情を浮かべた。

「ふむ。戦士ならぬ魔法使いの休息であるか。それも良かろう。……にしても、むぅぅぅぅう! この足さえ自由になれば私も倒れてしまいたい……私にも休息が必要であるな!」

 膝上まで固められたクラインは、膝をおって仰向けになることもできず、かと言って前に倒れ込むこともできない体勢に嘆きつつ、なんとか楽な体勢を取れるよう探って身をくねらすのであった。


 ――vsアルディモ戦、両者行動不能による相打ち!
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