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第1話 形見の短剣
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母さん、ごめん――。
少年はその森の中でうずくまると、手に持っていた短剣を首に当て、強く握りしめた。
父さん――。
これ以上、もう誰も殺したくない。
少年は静かに、首に当てたその短剣を滑らせた。
――悪魔。
いつからか、この世界にそれが現れるようになった。
人間たちは、それまで数多くのスキルや武器を使い、未知の世界を開拓し、領土を広げてきた。
この世界はどこまでいけば果てにたどり着くのだろう。
それは誰にもわからない。そんな未開の地に人々は、希望や夢や好奇心、あるいは不安や恐怖なども抱きながらそれぞれのために開拓を続けてきた。
未開拓の地には魔物と呼ばれるこれまた同じく未知の生物が数多くの存在し、彼らを脅かした。
それらに対処するために、人々は冒険者ギルドを結成し、未開地帯の開拓と共に冒険者の育成も推し進めてきた。
ところがある日、とある未開拓地で突然変異の魔物が発見された。
あらゆる武器とスキルが効果を発揮できない。
結局、その魔物はギルド本部のAランク冒険者数名の戦力を要してようやく捕獲、封印することができた。
しかし、Aランク冒険者の力を持ってしても討伐処理はできなかった。
殺すことができない――。
その魔物は、どういうわけか殺そうとして殺気を込めると、一瞬で戦闘能力を引き上げ、周囲を血の海と化した。
これを殺すことができるとすれば、それ以上の戦闘能力を持った何かになる。
しかし、現状では人間界にそれは存在しなかった。
魔物は言った。
“少しずつ増え始める”
私たちに意思はなく、ただ人間に復讐するために動く、とだけ言った。
その言葉の通り、それは度々各地の未開領域で発見され始めることになった。
人々は、これ以上未開地には手を出せない。
そういう結論に至る他なかった。
しかし、それだとやがて魔物たちに押し返される。
捕獲した魔物と外側の未開拓地。
内と外の両方から脅威に晒されることになった。
人々は、その未知の魔物を悪魔と呼ぶようになった。
このままでは全滅する。
しかし、希望の光が差した。
冒険者ダンジョン――。
そう呼ばれる地下迷路が冒険者ギルドにあり、ある日その低層で事件が起きた。
元々は冒険者の育成のために作られたこのダンジョンで、ある冒険者が武器のナイフを落としてしまった。冒険者は日が暮れてからそれに気付き、探しに戻ると、なんと落としたナイフに魔物の魂が乗っていたのだった。
暗闇の中、ぼんやりと光るそのナイフに触れるとその魔物は語りかけた。
“わたしは十五年前、お前に殺された魔物だ。借りを返しにきた”
その冒険者はあるスキルを持っていた。
【狼撃】。
魔物を殺すとき、負荷を肩代わりする殺し方だ。
魔物は苦しまずに死ぬ。
ギルドにはこのやり方で殺すとその場所は長く平穏が保たれる、という伝承があった。
そしてそれを忠実に守る冒険者がどの場所にも一定数存在していた。
彼らが最初に習得するのがこの【狼撃】だった。
ナイフに宿った魂は、真っ直ぐにギルド本部の地下施設に照準を定めた。
冒険者はその意思に従い、その場所へと向かった。
そこは封印された悪魔のいる場所だった。
管理者や番をしていた者は、ただ無言で道を開けた。
彼と彼の持つナイフにはそれを可能にするだけのオーラが放たれていたからだ。
激しい戦闘があった。
数分後、断末魔の声が上がり、番兵が確認しに行くと悪魔は血を流して死んでいた。
冒険者も負傷を負ったが命には別状はなく、元々高齢だったため引退を余儀なくされたが、ナイフはそのあと大事に保管された。
後にそれは、退魔特効武器【夜想刀】と名付けられた。
夜想刀が悪魔を殺すのは、それを超える死者の力があるからだ。
少年の行為は失敗した。
“おまえは、まだ死なない”
手には血に濡れた一本の夜想刀がぼんやりと光を放ち、残っていた。
少年はその森の中でうずくまると、手に持っていた短剣を首に当て、強く握りしめた。
父さん――。
これ以上、もう誰も殺したくない。
少年は静かに、首に当てたその短剣を滑らせた。
――悪魔。
いつからか、この世界にそれが現れるようになった。
人間たちは、それまで数多くのスキルや武器を使い、未知の世界を開拓し、領土を広げてきた。
この世界はどこまでいけば果てにたどり着くのだろう。
それは誰にもわからない。そんな未開の地に人々は、希望や夢や好奇心、あるいは不安や恐怖なども抱きながらそれぞれのために開拓を続けてきた。
未開拓の地には魔物と呼ばれるこれまた同じく未知の生物が数多くの存在し、彼らを脅かした。
それらに対処するために、人々は冒険者ギルドを結成し、未開地帯の開拓と共に冒険者の育成も推し進めてきた。
ところがある日、とある未開拓地で突然変異の魔物が発見された。
あらゆる武器とスキルが効果を発揮できない。
結局、その魔物はギルド本部のAランク冒険者数名の戦力を要してようやく捕獲、封印することができた。
しかし、Aランク冒険者の力を持ってしても討伐処理はできなかった。
殺すことができない――。
その魔物は、どういうわけか殺そうとして殺気を込めると、一瞬で戦闘能力を引き上げ、周囲を血の海と化した。
これを殺すことができるとすれば、それ以上の戦闘能力を持った何かになる。
しかし、現状では人間界にそれは存在しなかった。
魔物は言った。
“少しずつ増え始める”
私たちに意思はなく、ただ人間に復讐するために動く、とだけ言った。
その言葉の通り、それは度々各地の未開領域で発見され始めることになった。
人々は、これ以上未開地には手を出せない。
そういう結論に至る他なかった。
しかし、それだとやがて魔物たちに押し返される。
捕獲した魔物と外側の未開拓地。
内と外の両方から脅威に晒されることになった。
人々は、その未知の魔物を悪魔と呼ぶようになった。
このままでは全滅する。
しかし、希望の光が差した。
冒険者ダンジョン――。
そう呼ばれる地下迷路が冒険者ギルドにあり、ある日その低層で事件が起きた。
元々は冒険者の育成のために作られたこのダンジョンで、ある冒険者が武器のナイフを落としてしまった。冒険者は日が暮れてからそれに気付き、探しに戻ると、なんと落としたナイフに魔物の魂が乗っていたのだった。
暗闇の中、ぼんやりと光るそのナイフに触れるとその魔物は語りかけた。
“わたしは十五年前、お前に殺された魔物だ。借りを返しにきた”
その冒険者はあるスキルを持っていた。
【狼撃】。
魔物を殺すとき、負荷を肩代わりする殺し方だ。
魔物は苦しまずに死ぬ。
ギルドにはこのやり方で殺すとその場所は長く平穏が保たれる、という伝承があった。
そしてそれを忠実に守る冒険者がどの場所にも一定数存在していた。
彼らが最初に習得するのがこの【狼撃】だった。
ナイフに宿った魂は、真っ直ぐにギルド本部の地下施設に照準を定めた。
冒険者はその意思に従い、その場所へと向かった。
そこは封印された悪魔のいる場所だった。
管理者や番をしていた者は、ただ無言で道を開けた。
彼と彼の持つナイフにはそれを可能にするだけのオーラが放たれていたからだ。
激しい戦闘があった。
数分後、断末魔の声が上がり、番兵が確認しに行くと悪魔は血を流して死んでいた。
冒険者も負傷を負ったが命には別状はなく、元々高齢だったため引退を余儀なくされたが、ナイフはそのあと大事に保管された。
後にそれは、退魔特効武器【夜想刀】と名付けられた。
夜想刀が悪魔を殺すのは、それを超える死者の力があるからだ。
少年の行為は失敗した。
“おまえは、まだ死なない”
手には血に濡れた一本の夜想刀がぼんやりと光を放ち、残っていた。
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