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1、殿下、さようなら
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私の婚約者、シリル王子殿下は美男子だ。スパダリキャラだ。
でも、私の推しではない。
「レイナ、お前のことを『氷のように誰に対しても冷たい』と皆がよからぬ噂をしているのだ。もちろん悪意的に噂を広める者には注意しておいたが、お前自身の振る舞いが原因でもある。人が多く見ている場では、もう少し第三者からどう見えるか意識してみてはどうか。……顔色が悪いぞ、レイナ……?」
声も美声だ。乙女ゲームでも人気だった。
「でも、私の推しは執事キャラのセバスチャンだったなぁ……ごふっ」
年上の従者キャラって、いいと思うの――あら? この記憶って、なあに?
私はゴホッと血を吐きながら、前世の記憶を思い出した。
「レイナ!?」
よろめいた私の身体を、シリル王子殿下が支えてくれる。
私を支える殿下の腕は、逞しい。
細身に見えて、しっかりと筋肉がついている。頼もしい。
私たちは政略上の婚約関係だ。あまり気が合わない。お互いに好意が薄い。
でも王子殿下はちゃんと紳士的だ。
愛情たっぷりとはいかないけど、冷たすぎることもない。
今も心配してくれている。優しい。
「殿下……わ、私に近付いてはいけません。病が伝染ってしまいます」
「病だと!? まさか、流行り病か!?」
一秒一秒、前世の記憶と今世の記憶が急速に溶け合っていく。
乙女ゲーマーで執事キャラ推しだった私と、レイナの私が混ざっていく。
「私、レイナは……乙女ゲームの……ライバル令嬢キャラだったのです」
「レイナ、何を言っている? オトメゲーム?」
どの攻略キャラのルートを選んでも、レイナは不幸な結末を迎える。
自分の婚約者を奪ったヒロイン――自分と違って健康で未来があるヒロインを憎んで敵対して。
断罪されたり、自害したり、病が悪化して亡くなったりする……。
そんな人生、悲しい。嫌だ。
「はぁっ、はぁっ……だ、だいじょうぶ、です、殿下。ですが、さようなら……ですっ」
「レイナ!? おい、医者だ。医者を呼べ……!!」
「でん、か……っ」
私はハンカチで口元を拭い、微笑んだ。
ライバル令嬢キャラだけあって、私は気の強い印象を与えがちな容姿をしている。
無害に見えたらいいな――そう思いながら睫毛を伏せれば、シリル王子殿下が息を呑む気配がする。
「私、もう殿下の婚約者ではいられません。婚約者の座を退かせていただきます……殿下には、これから新しく素敵な淑女との出会いがあると思います。どうか、お幸せに」
そこまで言い切って、私は意識を失った。
でも、私の推しではない。
「レイナ、お前のことを『氷のように誰に対しても冷たい』と皆がよからぬ噂をしているのだ。もちろん悪意的に噂を広める者には注意しておいたが、お前自身の振る舞いが原因でもある。人が多く見ている場では、もう少し第三者からどう見えるか意識してみてはどうか。……顔色が悪いぞ、レイナ……?」
声も美声だ。乙女ゲームでも人気だった。
「でも、私の推しは執事キャラのセバスチャンだったなぁ……ごふっ」
年上の従者キャラって、いいと思うの――あら? この記憶って、なあに?
私はゴホッと血を吐きながら、前世の記憶を思い出した。
「レイナ!?」
よろめいた私の身体を、シリル王子殿下が支えてくれる。
私を支える殿下の腕は、逞しい。
細身に見えて、しっかりと筋肉がついている。頼もしい。
私たちは政略上の婚約関係だ。あまり気が合わない。お互いに好意が薄い。
でも王子殿下はちゃんと紳士的だ。
愛情たっぷりとはいかないけど、冷たすぎることもない。
今も心配してくれている。優しい。
「殿下……わ、私に近付いてはいけません。病が伝染ってしまいます」
「病だと!? まさか、流行り病か!?」
一秒一秒、前世の記憶と今世の記憶が急速に溶け合っていく。
乙女ゲーマーで執事キャラ推しだった私と、レイナの私が混ざっていく。
「私、レイナは……乙女ゲームの……ライバル令嬢キャラだったのです」
「レイナ、何を言っている? オトメゲーム?」
どの攻略キャラのルートを選んでも、レイナは不幸な結末を迎える。
自分の婚約者を奪ったヒロイン――自分と違って健康で未来があるヒロインを憎んで敵対して。
断罪されたり、自害したり、病が悪化して亡くなったりする……。
そんな人生、悲しい。嫌だ。
「はぁっ、はぁっ……だ、だいじょうぶ、です、殿下。ですが、さようなら……ですっ」
「レイナ!? おい、医者だ。医者を呼べ……!!」
「でん、か……っ」
私はハンカチで口元を拭い、微笑んだ。
ライバル令嬢キャラだけあって、私は気の強い印象を与えがちな容姿をしている。
無害に見えたらいいな――そう思いながら睫毛を伏せれば、シリル王子殿下が息を呑む気配がする。
「私、もう殿下の婚約者ではいられません。婚約者の座を退かせていただきます……殿下には、これから新しく素敵な淑女との出会いがあると思います。どうか、お幸せに」
そこまで言い切って、私は意識を失った。
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