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8、でも婚約はまだ早いと思うんだ

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「ロザリット……生きていてくれてありがとう。本当に、本物のロザリットなんだね」

 事件から何日経っても、パパは繰り返し真実を確認せずにいられないようだった。

「記憶をなくしてたの。パパ、言うのが遅くなってごめんなさい」
「ううんっ、いいんだ……生きててくれただけで、パパは幸せ――でも婚約はまだ早いと思うんだああああ……王子を暗殺するか」
「パパ、めっ」
 
 パパは情緒不安定だ。
 というのも、シトリ殿下から「ロザリット嬢に婚約を申し込みたい」というお手紙がきたから。

「そろそろ時間ですが、旦那様?」

 家令とメイド長が時間を知らせるので、パパは悲鳴をあげた。
  
 「シトリ殿下ご本人が直接我が家を訪ねる」という先触れのお手紙をくれたから。
 その約束の時間がきたからだ。

「先日以来ですね、ロザリット嬢」

 応接間に通されたシトリ殿下は美しく微笑んで、私の前に膝をついた。

 背中につけている純白のマントが、フワリと広がる。

 私の指を包み込むようにして婚約指輪をはめる所作は自然で、匂い立つような上品さと清潔感があって、格好良い。

「お父様想いで勇敢で利発なあなたに、僕はすっかり心を奪われてしまいました。あなたを幸せにしますから、どうか僕の婚約者になってください」

 純朴であたたかな言葉には、甘い想いがぎゅっとこめられていた。

「僕たちはお互いのことをまだあまり知りませんが、これからたくさん、お話ししましょう」
 
 胸の奥で、やさしくピュアな想いがゆっくりと芽吹く。

「……では、殿下。最初に、私が転生したという不思議なお話を聞いていただいてもよろしいですか? 前世の記憶というのは、ある日突然思い出されるものらしいのです……」

 悲劇は回避され、これからは未知の未来が待っている。


 ――――Happy End!


 

 
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