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幕間のお話3
220、カサンドラ先生、こちらに来てはいけません
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結論から言うと、ダイロスはグレイ青年とノルディーニュ青年を追いかけた。
お迎えや、ノルディーニュの企みに興味があったのだ。
地上――元の世界にいた頃は、思えばなにもかもを知り尽くしたような心境であった。
春の後には夏がくる。生まれた子は成長して老いて死ぬ。
世の中のなにがどうなるか、もうわかってる。これはこのあと、こうなるだろう、という感覚がある。なにも驚くことがない。先が読める。
そんな自分であったのに、今は。
……先がぜんぜん、読めないのだ。
するとどうなったかというと、心がどんどんと若返るようで、世界のことを何も知らずに疑問や希望ばかり抱いていた幼子のような心地になっていくのだ。
ああ、ふしぎ。
しなびた自分がどんどんと新鮮な自分に生まれ変わっていくよう。
「はぁ、はぁ……」
呼吸を整えて脚を止めた先には、扉がある。
ノルディーニュがチラッとダイロスを見て「ついてきたのか」と呟いた。
さて、扉はふしぎなことに、向こう側に佇む人物を映していた。
「この扉はなにかしら? 古い文字ね。説明書きがされているじゃない?」
黒髪に緑色の瞳をした美女が見える。ダイロスは「ぐえっ」と声をこぼした。向こう側にいるのは、彼と同じくオルーサの配下をしている女――カサンドラだったのだ。
「彼女は、グレイ殿のお迎えの資格を有するようじゃ」
説明するような声は、トール爺さんのものだった。
扉のそばに、トール爺さんがいる。今日も渋くて、崇めたくなる気配だ。
「ああ。あなたのように老いた外見で、年輪を感じさせる渋さを私も出したいものです」
ダイロスは、のぼせあがったような声を聞いた。誰だ? この状況でそんなおかしな発言をする輩は――自分だ。
もう、すっかりおかしくなってしまった。
そんな自分を持て余しながら、ダイロスはフードで顔を隠した。火が出そうなほど、熱い。暑い。これは羞恥による赤面か。自分は今、照れている……。
と、そんなダイロスの耳に、とんでもない情報が入ってくる。
「不老症か。老いたいなら、できるぞ」
「なんですと」
「今はグレイ殿を優先するが、後日対応してやってもよい」
これぞ、神。
トール爺さんに後光がさして見える。ダイロスが拝んだとき、視界の隅でノルディーニュがグレイに近寄るのが見えた。
「これを地上に……」
ひそひそと話す声。渡しているのは、小さな袋だ。ダイロスには、ピンときた。
客人は、元の世界に帰ると船に滞在している間の記憶をなくしてしまう。しかし、袋の中に忍ばせた紙片なりを見て、忘れてしまったあとに真実を知ることはできるのだ。
……ルエトリーは、それをルール違反だと言っていた。この青年たちは、隠れてルール違反をしようとしているのである。
「常習犯のいたずら小僧どもめ。聞こえておるわい」
トール爺さんはそんなノルディーニュに意外なほど温厚な風情で言って、どうやら見逃すようだった。口ぶりからすると、初犯でもないらしい。
「まあ、よかろ。それより、扉が開くぞい」
そうだ。気が逸れていたが、カサンドラが扉を開けようとしているのだ。ダイロスは咄嗟にノルディーニュの後ろへと身を隠した。すると、ノルディーニュはなにを思ったか、ダイロスを引っ張ってトール爺さんの後ろに行く。
「感動の再会を邪魔しないようにという配慮ですね。あなたは気が利く方だ」
そんなつもりはなかったのだが、誤解されたようだった。
「では、身を隠す術を使ってやろうかの」
トール爺さんは杖を振り、自分とノルディーニュとダイロスの身を隠してくれた。
「彼女は、家庭教師です。驚いたな。先生、どうしてこんなところに」
グレイはびっくりした様子でカサンドラを見て、「カサンドラ先生、こちらに来てはいけません」と言った。
「扉を開けて、はなれてください」
大声で言って、開いた扉の隙間から外へ踏み出すグレイは、ほんの一瞬だけ船の内部に視線を向けた。
「お先に参ります。自分はこの船のことも忘れてしまうでしょうし、生きた時代も異なりますので、二度とお目にかかるご縁はないでしょう。みなさまのご多幸をお祈り申し上げます。本日まで、ありがとうございました」
余裕なく、けれど万感の思いをこめたのだと感じる声で言いのけて、グレイは扉の外に飛び出していった。
ノルディーニュが急いで「ありがとう! お幸せに!」と叫ぶ。どことなく、見送り慣れているような気配で。
ダイロスは、昨日はじめて会ったばかりの客人仲間の青年が永遠の別れを告げているのだと理解しつつ、言葉を出せないままでいた。
――何も言えないまま、現実の時間は過ぎる。状況は、動く。
グレイの身体が完全に扉の外に出たのと同時に、音もなく扉が閉まった。扉は、あちら側の映像を消した。ただの白い板のようになった。
……そして、船内には沈黙が訪れた。
客人は、こうして元の世界に戻るのだ。
グレイは船にいるノルディーニュとエリュタニアから何かを託されて、持ち帰ったのだ。
ダイロスはふしぎと神聖な気分で、たった今居合わせて見届けた出来事の意味を思った。
「それで、老いたいのだったか」
「ウッ」
トール爺さんから話題を振られて、びくりとする。
現実に意識を戻してみれば、生きた年月を示す味わい深いしわに囲まれた深い海のようなトール爺さんの瞳が自分を見ていた。
自分は、こんな爺さんになりたい。
心の奥底から、ふつふつと欲求が湧いて来る。
ダイロスは、そんな自分を自覚して、胸のあたりを手でおさえた。とくん、とくん、と鼓動が規則正しく脈打っている――生きている。ああ、自分は今、生きている。
この圧倒的年長者を前にして、夢見る若葉の気持ちで、生きている。
これからも生きていこう、というつもりで呼吸をしているのだ。
「老いたい。自然の年輪を、この身に刻みたい。少しずつ弱り、細り、自然に朽ちたい」
それはとても、素晴らしいことではないか。
生きるというのは、そういうことではないか。
ダイロスは、その言葉を吐いた瞬間になぜか、ほろりと涙を落とした。
涙はじんわりと熱くて濡れた感触があって、ダイロスは「自分はじんわり、じめっとした水分と熱を持つ人間なのだ」と実感した。
お迎えや、ノルディーニュの企みに興味があったのだ。
地上――元の世界にいた頃は、思えばなにもかもを知り尽くしたような心境であった。
春の後には夏がくる。生まれた子は成長して老いて死ぬ。
世の中のなにがどうなるか、もうわかってる。これはこのあと、こうなるだろう、という感覚がある。なにも驚くことがない。先が読める。
そんな自分であったのに、今は。
……先がぜんぜん、読めないのだ。
するとどうなったかというと、心がどんどんと若返るようで、世界のことを何も知らずに疑問や希望ばかり抱いていた幼子のような心地になっていくのだ。
ああ、ふしぎ。
しなびた自分がどんどんと新鮮な自分に生まれ変わっていくよう。
「はぁ、はぁ……」
呼吸を整えて脚を止めた先には、扉がある。
ノルディーニュがチラッとダイロスを見て「ついてきたのか」と呟いた。
さて、扉はふしぎなことに、向こう側に佇む人物を映していた。
「この扉はなにかしら? 古い文字ね。説明書きがされているじゃない?」
黒髪に緑色の瞳をした美女が見える。ダイロスは「ぐえっ」と声をこぼした。向こう側にいるのは、彼と同じくオルーサの配下をしている女――カサンドラだったのだ。
「彼女は、グレイ殿のお迎えの資格を有するようじゃ」
説明するような声は、トール爺さんのものだった。
扉のそばに、トール爺さんがいる。今日も渋くて、崇めたくなる気配だ。
「ああ。あなたのように老いた外見で、年輪を感じさせる渋さを私も出したいものです」
ダイロスは、のぼせあがったような声を聞いた。誰だ? この状況でそんなおかしな発言をする輩は――自分だ。
もう、すっかりおかしくなってしまった。
そんな自分を持て余しながら、ダイロスはフードで顔を隠した。火が出そうなほど、熱い。暑い。これは羞恥による赤面か。自分は今、照れている……。
と、そんなダイロスの耳に、とんでもない情報が入ってくる。
「不老症か。老いたいなら、できるぞ」
「なんですと」
「今はグレイ殿を優先するが、後日対応してやってもよい」
これぞ、神。
トール爺さんに後光がさして見える。ダイロスが拝んだとき、視界の隅でノルディーニュがグレイに近寄るのが見えた。
「これを地上に……」
ひそひそと話す声。渡しているのは、小さな袋だ。ダイロスには、ピンときた。
客人は、元の世界に帰ると船に滞在している間の記憶をなくしてしまう。しかし、袋の中に忍ばせた紙片なりを見て、忘れてしまったあとに真実を知ることはできるのだ。
……ルエトリーは、それをルール違反だと言っていた。この青年たちは、隠れてルール違反をしようとしているのである。
「常習犯のいたずら小僧どもめ。聞こえておるわい」
トール爺さんはそんなノルディーニュに意外なほど温厚な風情で言って、どうやら見逃すようだった。口ぶりからすると、初犯でもないらしい。
「まあ、よかろ。それより、扉が開くぞい」
そうだ。気が逸れていたが、カサンドラが扉を開けようとしているのだ。ダイロスは咄嗟にノルディーニュの後ろへと身を隠した。すると、ノルディーニュはなにを思ったか、ダイロスを引っ張ってトール爺さんの後ろに行く。
「感動の再会を邪魔しないようにという配慮ですね。あなたは気が利く方だ」
そんなつもりはなかったのだが、誤解されたようだった。
「では、身を隠す術を使ってやろうかの」
トール爺さんは杖を振り、自分とノルディーニュとダイロスの身を隠してくれた。
「彼女は、家庭教師です。驚いたな。先生、どうしてこんなところに」
グレイはびっくりした様子でカサンドラを見て、「カサンドラ先生、こちらに来てはいけません」と言った。
「扉を開けて、はなれてください」
大声で言って、開いた扉の隙間から外へ踏み出すグレイは、ほんの一瞬だけ船の内部に視線を向けた。
「お先に参ります。自分はこの船のことも忘れてしまうでしょうし、生きた時代も異なりますので、二度とお目にかかるご縁はないでしょう。みなさまのご多幸をお祈り申し上げます。本日まで、ありがとうございました」
余裕なく、けれど万感の思いをこめたのだと感じる声で言いのけて、グレイは扉の外に飛び出していった。
ノルディーニュが急いで「ありがとう! お幸せに!」と叫ぶ。どことなく、見送り慣れているような気配で。
ダイロスは、昨日はじめて会ったばかりの客人仲間の青年が永遠の別れを告げているのだと理解しつつ、言葉を出せないままでいた。
――何も言えないまま、現実の時間は過ぎる。状況は、動く。
グレイの身体が完全に扉の外に出たのと同時に、音もなく扉が閉まった。扉は、あちら側の映像を消した。ただの白い板のようになった。
……そして、船内には沈黙が訪れた。
客人は、こうして元の世界に戻るのだ。
グレイは船にいるノルディーニュとエリュタニアから何かを託されて、持ち帰ったのだ。
ダイロスはふしぎと神聖な気分で、たった今居合わせて見届けた出来事の意味を思った。
「それで、老いたいのだったか」
「ウッ」
トール爺さんから話題を振られて、びくりとする。
現実に意識を戻してみれば、生きた年月を示す味わい深いしわに囲まれた深い海のようなトール爺さんの瞳が自分を見ていた。
自分は、こんな爺さんになりたい。
心の奥底から、ふつふつと欲求が湧いて来る。
ダイロスは、そんな自分を自覚して、胸のあたりを手でおさえた。とくん、とくん、と鼓動が規則正しく脈打っている――生きている。ああ、自分は今、生きている。
この圧倒的年長者を前にして、夢見る若葉の気持ちで、生きている。
これからも生きていこう、というつもりで呼吸をしているのだ。
「老いたい。自然の年輪を、この身に刻みたい。少しずつ弱り、細り、自然に朽ちたい」
それはとても、素晴らしいことではないか。
生きるというのは、そういうことではないか。
ダイロスは、その言葉を吐いた瞬間になぜか、ほろりと涙を落とした。
涙はじんわりと熱くて濡れた感触があって、ダイロスは「自分はじんわり、じめっとした水分と熱を持つ人間なのだ」と実感した。
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