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4、奪還のベリル
261、空王の部屋に忍び込んでまいりましょう
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フィロシュネーの元には、空国のハルシオンが贈ったメッセージカードと石版がある。
ハルシオンからのメッセージカードには、希望が綴られていた。
『こちらは手がかりを見つけたかもしれません。二人の王は生きている可能性が高いものと思われます。急ぐ必要はないので、大丈夫です。
予定していた通り、後日、シュネーさんが空国にいらしたら、謎解きを一緒にしましょう』
空国を訪問する予定日は、もう決まっている。
国王業はスケジュールがみっちりと詰まりやすく、ひとつの予定を変更すると他の予定も変更しなければならないので、変更しにくい。
外交の予定ともなれば、なおさらだ。
ひとまず、フィロシュネーは予定日よりも先の日にちでヘンリー・グレイ男爵と会う約束を取り付けた。
騎士道観覧会が終わった後の夜宴で『青国のグレイ男爵の祖先に、月隠に行方不明になり、三年後に戻ってきた男がいる、という話を聞いたことがある』という情報が書かれた紙を拾ったフィロシュネーは、ハルシオンに「青国に帰ったらグレイ男爵にお話をうかがってみますわ」と約束していたのだ。
(わたくしも約束を果たして、「手がかりを見つけましたわ」と言って、ハルシオン様を喜ばせたい!)
……と、そう思ったのである。
「ところで、石版の方は……わたくし、見覚えがありますわ」
メッセージカードと一緒に届けられた石版を見て、フィロシュネーは目を丸くした。
それは、一年前の夏、サイラスが洞窟探検をして見つけてきた石版だったのだ。
(そういえば、あの石版は、主催である空国側が持っていったのでしたっけ……)
石版をあらためて見つめて、フィロシュネーはあのときと同じ感想を覚えた。そういえば、あのときも不思議な感じがして「あら?」と目を丸くしていたのだ。
「お兄様の字に似ている気がする……」
こそこそと目元を拭っていた預言者ダーウッドが、その言葉に弾かれたようにパッと顔を上げる。
「……そういえば、私も石版も持っておりますぞ。しばし、お待ちくださいませ!」
ダーウッドはそう言ってパタパタと自室に行き、古めかしい石版を持って戻ってきた。
「これは以前、カサンドラが見せてきた石版でございましてな。借りたまま、返すのをすっかり忘れておりましたが、もう返さなくていいでしょうな。あちらも忘れていそうです」
「それは……気が向いたら、返して差し上げて?」
かなり古い時代の産物と思われる石版は、当時の文明では知り得ないような後の時代の天災や大陸史が書かれていて――こちらも、文字がアーサーの筆跡によく似ていた。
「これは、手がかり……なのよね? ハルシオン様がわざわざメッセージカードと一緒に届けてくださったのだもの」
フィロシュネーはダーウッドを見たが、ダーウッドは杖を持ち、窓に向かっていった。
「あちらの空王陛下は、もうわかっておいでなのでしょうか? 意地の悪いことをせず、さっさと情報を渡せと怒鳴り込んでやりましょうかな」
なんとこの預言者、鳥に変身して空国の王城に行くつもりである!
フィロシュネーは慌ててダーウッドの袖をつかみ、引き留めた。
「ちょっと、落ち着いて……相手は友好国といっても、別の国なのよ。ハルシオン様が優しくても、あちらの臣下は訪問の礼儀を気にしますわよ」
「臣下に見つからなければよろしい。警備の隙など、いくらでも付けますぞ。今から飛んで行き、空王の部屋に忍び込んでまいりましょう。私は直接お話を聞いてまいります」
「それは、犯罪ですっ、わたくし、言ったでしょ。あなたに悪いことはして欲しくありません! ……あちらは『急ぐ必要はない』と保証なさっているのよ。従いましょう?」
青国の主従は石版を前に悩み、考え――よくわからないまま、ヘンリー・グレイ男爵に会うことにした。
ハルシオンからのメッセージカードには、希望が綴られていた。
『こちらは手がかりを見つけたかもしれません。二人の王は生きている可能性が高いものと思われます。急ぐ必要はないので、大丈夫です。
予定していた通り、後日、シュネーさんが空国にいらしたら、謎解きを一緒にしましょう』
空国を訪問する予定日は、もう決まっている。
国王業はスケジュールがみっちりと詰まりやすく、ひとつの予定を変更すると他の予定も変更しなければならないので、変更しにくい。
外交の予定ともなれば、なおさらだ。
ひとまず、フィロシュネーは予定日よりも先の日にちでヘンリー・グレイ男爵と会う約束を取り付けた。
騎士道観覧会が終わった後の夜宴で『青国のグレイ男爵の祖先に、月隠に行方不明になり、三年後に戻ってきた男がいる、という話を聞いたことがある』という情報が書かれた紙を拾ったフィロシュネーは、ハルシオンに「青国に帰ったらグレイ男爵にお話をうかがってみますわ」と約束していたのだ。
(わたくしも約束を果たして、「手がかりを見つけましたわ」と言って、ハルシオン様を喜ばせたい!)
……と、そう思ったのである。
「ところで、石版の方は……わたくし、見覚えがありますわ」
メッセージカードと一緒に届けられた石版を見て、フィロシュネーは目を丸くした。
それは、一年前の夏、サイラスが洞窟探検をして見つけてきた石版だったのだ。
(そういえば、あの石版は、主催である空国側が持っていったのでしたっけ……)
石版をあらためて見つめて、フィロシュネーはあのときと同じ感想を覚えた。そういえば、あのときも不思議な感じがして「あら?」と目を丸くしていたのだ。
「お兄様の字に似ている気がする……」
こそこそと目元を拭っていた預言者ダーウッドが、その言葉に弾かれたようにパッと顔を上げる。
「……そういえば、私も石版も持っておりますぞ。しばし、お待ちくださいませ!」
ダーウッドはそう言ってパタパタと自室に行き、古めかしい石版を持って戻ってきた。
「これは以前、カサンドラが見せてきた石版でございましてな。借りたまま、返すのをすっかり忘れておりましたが、もう返さなくていいでしょうな。あちらも忘れていそうです」
「それは……気が向いたら、返して差し上げて?」
かなり古い時代の産物と思われる石版は、当時の文明では知り得ないような後の時代の天災や大陸史が書かれていて――こちらも、文字がアーサーの筆跡によく似ていた。
「これは、手がかり……なのよね? ハルシオン様がわざわざメッセージカードと一緒に届けてくださったのだもの」
フィロシュネーはダーウッドを見たが、ダーウッドは杖を持ち、窓に向かっていった。
「あちらの空王陛下は、もうわかっておいでなのでしょうか? 意地の悪いことをせず、さっさと情報を渡せと怒鳴り込んでやりましょうかな」
なんとこの預言者、鳥に変身して空国の王城に行くつもりである!
フィロシュネーは慌ててダーウッドの袖をつかみ、引き留めた。
「ちょっと、落ち着いて……相手は友好国といっても、別の国なのよ。ハルシオン様が優しくても、あちらの臣下は訪問の礼儀を気にしますわよ」
「臣下に見つからなければよろしい。警備の隙など、いくらでも付けますぞ。今から飛んで行き、空王の部屋に忍び込んでまいりましょう。私は直接お話を聞いてまいります」
「それは、犯罪ですっ、わたくし、言ったでしょ。あなたに悪いことはして欲しくありません! ……あちらは『急ぐ必要はない』と保証なさっているのよ。従いましょう?」
青国の主従は石版を前に悩み、考え――よくわからないまま、ヘンリー・グレイ男爵に会うことにした。
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