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私と子供と、夫ハロルド

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 輝く太陽。
 澄んだ青空。眩しい白い雲。咲き誇るカラフルな花々。

 そんなお城のお庭で、可愛らしい我が子カルナスが笑っている。

「おかあさまーっ!! じゅう、かぞえてね~っ!」
「は~い」 

「んしょ、んしょ、ぼくねぇ、ここにかくれるの」
 護衛にいっぱい囲まれての、可愛らしいかくれんぼ。
「こっしょりなんだよ」
「はい、殿下ッ」
「しーっ、だよ」
「……はい、殿下」
 
「くすくす」
 護衛との会話が全部、きこえていますよ!
 
 医者から「病気ではありません」と太鼓判をおさえれた私は、我が子と仲良く遊べるようになっていた。
 
 手で顔を覆い、「いーち、にーい」と十まで数を数えてから優雅に我が子を探すふりをする。
 護衛がすぐそばにいるのもあって、実はとってもバレバレなのだけど。

「お母様の可愛いカルナス、どこにいっちゃったのかしら? やだ、見つからないわ」
 困ったふりをして、茂みをのぞきこむ。すると。

「……あな、た!?」
「あ、やあ」 
 茂みには、全身を縮めるようにして身を隠していた夫ハロルドがいた。
 ぱちりと目が合って、私はビクッとした。
「み、見つかってしまったな」
「あ、あなたを探していたわけではありません……」 

 見なかったことにしよう。
 私は夫を無視して、他の場所へと移動した。

「ふふふ~っ」
 笑い声がきこえる。柱のかげに隠れているカルナスだ。
「あら、可愛いお声がきこえました! わたくしの坊や、そこにいるのね」
「あっ、しまったぁ」

 みーつけた! と明るく言って、私は我が子を抱きしめた。
 いい匂いがして、温もりに胸がいっぱいになる。

「お母様、ぜんぜん見つけられなかったわ。カルナスはかくれんぼの天才ね!」
「次は、おかあさまの番!」
「ええ、ええ。お母様、がんばって隠れるわね。ちゃんと見つけてくれるかしら」
「うんっ。ぼく、おかあさまをみつけるよ!」

 あどけない子供の声が、「いーちー、にーい」と数えている。可愛い。
 
 私はニコニコしながら噴水の後ろに隠れた。
 噴水の真ん中には大きな像が立っているから、その陰に隠れるように座る。水しぶきがちょっとかかるけど、気持ちいい。おひさまを浴びた水がきらきら輝いて、綺麗。

 と、隠れていると。

「あ、あなた……」
 夫がのんびりとやってきて、隣に座るではないか。

「あちらへいってください。今隠れているのです」
「まあ待てエレオノーラ。見つけたときにお父様も一緒だったら、カルナスにとって嬉しいびっくりなのではないかな」
「ええっ?」
「こ、子供を喜ばせたいと思わないか」
「あなたそんなことを仰って、混ざりたいだけなのでは」
「そ……そうだ。混ぜてくれ」

 あっちへ行って。いやいや行かない。
 そんな問答をしていると、可愛らしい声が響いた。

「あっ、おとうさま、おかあさま~っ、一緒にかくれていたの?」

 カルナスに見つかったのだ。
 私とハロルドは「いいな?」「仕方ありませんね」とアイコンタクトをして、仲良し夫婦を装った。

「見つかっちゃった~、うふふ」
「見つかってしまったな、ははは」 

「ぼく、おふたりがなかよしで、うれしい!」
 
 カルナスが嬉しそうに言うので、私は「あらあら。このあとはお父様と二人で一緒に絵本を読んであげるわ」と言ってしまった。

 夫の目がちょっとびっくりしたように私を見ている。
 な、なんですか。

「君は本当に変わった……」
 ハロルドはそう呟いて、臣下に絵本を持ってこさせた。
 
「カルナスも喜ぶし、その……仲良くしよう、エレオノーラ」
「まあ、あなた。今さら……今まで散々ひどい妻だったわたくしと、仲良くしてくださるの?」
「君がよければ、ぜひ」
 
 目と目が合って、私は初めてこの夫ハロルドと会話した日を思い出した。
 
 私たちは政略結婚だった。
 
 ハロルドは好ましい夫だった。
 容姿も美しくて、優しそうで、私は安心した。
 彼が国花であるメロロディアという虹色の花の花束を差し出して微笑んでくれたときは、胸の鼓動が高鳴った。

『メロロディアの花は、純粋な者の切なる願いを叶えてくれるのだといわれている』 
 素敵、と思った。
『エレオノーラ、私は夫として、あなたが幸せであるように願おう』
 嬉しかった。

 受け取るとき、指先が触れ合うと特別な感じがして、頬が熱くなって――ああ、もしかしてこれが恋なのかしら? と、そう思ったりして。ハロルドもまた、異性への好意を自覚して持て余すような初々しい表情で顔を赤らめていたので、私はドキドキしたのだった。
 
 私たちは恋を知らないまま夫婦になった二人だったけれど、その時の私たちはまるで初恋に浮かれる恋人同士みたいで、……楽しかった。
 

 子供を産んだあとは、ハロルドは子供に夢中になった。
 彼は子供への接し方が私よりずっと上手だった。

 もともと子供が苦手だった私は、自分がうまく子供に優しくできないことに苛立ちをつのらせ、子供に嫉妬までして、……どんどんこじらせていったのだった。
 

 
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