【完結済】やり直した嫌われ者は、帝様に囲われる

紫鶴

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妖魔退治 1-2

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「おはようございます、理央様」

「理央様、おはようございます!」

「皆さんおはようございます!今日もよろしくお願いします!」



男性の声が聞こえる。それと同じように女性の声も聞こえてきて、弟が元気に挨拶をした。それから弟の周りに人が集まって来たようで邪魔にならないように距離をとる。

一人、二人、三人……か?足音と気配で判断しているため正確ではないが多分それぐらいが近づいてきた。



「本日は、私たちが理央様と一緒に行動することになりました。最善を尽くして理央様をお守りいたします」

「はい!僕も皆さんのお邪魔のならないように頑張ります!」

「大丈夫ですよ~理央様。この前も完璧な立ち回りでしたから!」

「そうですそうです!あまり気負わずに!」



男二人、女一人の声だ。やはり三人いるようだ。

和気あいあいとお話をしていた弟だったが「あ!」と声をあげて俺に近づいてきた。何をするつもりだろうかと一瞬身を固くするとぎゅっと腕にしがみつかれる。驚いて声をあげそうになったが、彼の次の言葉に納得した。



「この子、僕の護衛なんです!僕と離れたくないって言うから連れて来ちゃったんですけど、大丈夫ですか……?」



声音から顔色をうかがうような雰囲気がするがこれは断られる可能性を微塵も考えていない態度だ。顔を見ればもっと確信を持てるのだが、そこまでする必要もないだろう。



「あー……」

「えーっと、そうですね……」



二人の男が言葉を濁す。

当たり前だ。俺はどこからどう見ても子供だから、一緒に連れていくとそれだけ危険を冒すことになる。どんな戦術で妖魔を退けるのかまるで分らないが、ここで足手まといになりません。だなんて俺の価値観で言えるわけない。それに弟の真意を測れないので下手な事もいえない。

どうしようかと思案していると女の人の声が聞こえた。



「んー。邪魔になるから置いていくことはだめですか?」

「おい!」



すぐに男性がそう言って女の人をたしなめるような声を出すが女の人は俺の前に立つ。



「ねえ僕。君が理央様の事好きなのは分かるけど、妖魔退治は遊びじゃないんだよ?命の危険があるの。分かる?」



ごもっとも。貴方方の生命の危機が脅かされる。

しかし、俺は頷くわけにはいかない。

弟がどんな態度をとるか様子を見るために黙っていると弟が俺から離れて頭を下げた。



「大丈夫です!護衛だから、自分の身は自分で守れますよ!だから、お願いします!!」



弟の声に視線が集まる。しかも彼が頭を下げているのを見て何事だと周りが話し出す。

頭を下げる弟と棒立ちの俺。その姿を見た女の人がはあっとため息をついた。



「だんまり?何か言ったらどうなの?貴方の我儘で理央様が頭を下げているのよ?申し訳ないって思わないの?」



苛立ちの混じった声だ。既に弟の擁護が入っている今ならば話をしても大丈夫なはずだ。何か言うつもりならば今弟が口を挟んでいると思うし。



「私は……」

「私ぃ?何それ、僕あのね。大人の真似事なんて……」

「何揉めてるんですか?」

「!」



聞いたことのある声がした。

いや、まさかそんな。



「九郎君!」

「おはようございます。先輩」



彼の名前が出て確信に変わる。

考えてみれば霊峰院に所属しているのだから妖魔退治に来ていたっておかしくない。まさか、俺が居る時にいるとは思わなかったが……。



「九郎お兄ちゃん!」

「よお、おチビちゃん。おはよう」

「もー!僕、おチビちゃんじゃないよー!」



弟がそう言って九郎に駆け寄ったようだ。

声を聞くと彼らは仲がいいようだ。



「俺にとっておチビだからいいんだよ」

「えー?」



楽しそうな声が聞こえる。

そんな彼らの仲睦まじい姿を見れなくて良かった。

俺よりも弟みたいな明るい子の方が好かれるのは分かっているし、俺と比べたら話しやすい彼の方が……。



「で?何をもめてるんですか?」

「それが、この子供が妖魔退治について来ようとして……」



九郎がそう聞くと、女の人が簡単にそう説明をする。すると九郎はあっけらかんとこう言った。



「別にいいんじゃないですか?おチビちゃんだって子供だし」

「理央様は特別なの!九郎君は本当分かってないわね」



九郎の言葉にすかさず女の人がそう返す。

弟が特別。その言葉を改めて聞くとずんっと胸に重いものがのしかかったような気分になった。

やはり誰もが弟を特別だと言って大事にしている。俺とはまるで比べ物にならない。

どうしてだろう。前まではこれが当たり前で何も感じなかったのに。



「えー?おチビちゃんだって普通の子供ですよ。この子だけ特別扱いするのは良くないと思いますけど」



はっと九郎の言葉に我に返る。

九郎は、弟を特別扱いしていないようだった。

その事に少しだけほっとして慌てて気を引き締める。

何をバカなことを考えているのか。これが普通なんだからしっかりしろ。

九郎の言葉に便乗して弟もこう話しだす。



「うん!九郎お兄ちゃんの言う通り!僕だけ特別扱いしなくていいよ!」

「ですが理央様……」

「いーいーの!それに何かあったら九郎お兄ちゃんが守ってくれるし!ね?そうでしょ?」



弟が明るい声でそう九郎に聞く。すると彼は少し冷たい声でこう突き放した。



「いや、そこは自己責任だろ。それでいいんじゃないですか?先輩」

「そうね!この子がどうなっても自分の責任だもの!理央様、厳しいようですがそれでもいいですか?」

「うん!ありがとうございます!」



俺もお礼を言うべきだが、俺が九郎に気付いたように彼も俺に気付く可能性がある。弟とかかわりがあると勘づかれたらまずい……。かといって何もしないのは悪目立ちだ。

考えた末に深々と頭を下げることにした。



「ちょっと、お礼の一つも言えないの?」

「先輩。子供相手にそうむきにならなくてもいいじゃないですか」

「あのねえ、私はこの子を心配して言ったのよ?それなのに謙虚な姿勢も見せない、お礼も言わないなんて常識がなってないわ!理央様に申し訳ないとも思わないの!?」

「僕は大丈夫です!ありがとうございます!」

「おチビちゃんがこう言ってるんだし、怒りをおさめてくださいよ」

「はああああ」



女の人が大きなため息を吐いた。俺は申し訳ないと思いながらもやはりお礼を言えず、黙ったままでいるしかなかった。
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