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「しーちゃん、分かるでしょう?」
がくんっと俺は膝をついた。勝手に人の記憶が頭の中に流れていく。その気持ち悪さに吐き出すと雫さんが、いや、神様によって作られた二番目の駒、二ノ宮がしゃがみ込む。
「ぜーんぶ、貴方を一ノ宮お兄様にするための過程です」
「ぜん、ぶ……?」
「謎の外套男も私ですし、箱を作ったのも私、人々を惑わして願いを叶える儀式だと騙したのも私。死体を操ったのも私。ここに至るまでの全ての歴史は私が適当に作って都合良く広めた嘘です」
がつんと後頭部を殴られたような感覚だ。何もかも信じたくない。今まで全部俺に親切にしてくれたのは、別の目的があったから。
俺を、一ノ宮お兄様にしたかったから。ただ、それだけのために――。
「どれだけ、人が死んだと思っているんですか?」
「どうでも良いですね。八ノ宮以外」
予想できた答えに目の前が真っ暗になる。
つまりは、そういうことだ。俺のせいで、皆死んで、不幸になった。
「ぁ、あ、あ、ああああああああっ!!!!」
聞きたくないと耳を塞ぐ。叫んで嘆くと二ノ宮の笑い声が響く。
「しーちゃん、ほら頑張って。最後の仕上げです。弟を殺して。そうすれば貴方は一ノ宮お兄様になれます!」
「……」
「おや、疲れましたか? では私が手伝ってあげます」
そう言って、俺の腕を掴んで無理やり立たせると俺を引っ張って弟の所に連れていく。おかしなことに、水面を渡ってそこにたどり着いた。
「僕は悪くない。兄さんが悪いんだ。僕を殺そうとするから、僕は……」
弟は、ぶつぶつとそう言っている。おかしくなってしまったのだ。ぼーっとそれを見ていると手に何かを握られる。
「一ノ宮お兄様も鋤で殺していましたから用意しました。さあ、これでそれを殺してしーちゃん。私の、八ノ宮のために、お願いします」
「……」
「貴方にしか、出来ないんです」
彼が耳元で囁く。足元には震えて何も出来ない弟がいた。手が重なって勝手に上に持ち上げられる。
ーーああ、もう何も考えたくない。
「静紀ーーーーっ!!」
不意に聞こえたその声に、振り下ろされた鋤が弟の足元を掠めた。
「く、おん……?」
「避けて!!」
「ーーっ!」
目の前に見た事のある球体が発生した。俺は素早く弟を抱えると大きく飛躍した。湖に足がつくかつかないかその瞬間足場が凍り、もう一度蹴って湖の外側に転がり込む。
そして、身体が中央に向かって吸い込まれていく。久遠の法術だ。そう思った瞬間、すぐにそれは止んでしまった。
「おかしいですね。あれを口にすれば法術は使えなくなるはずですが?」
「久遠!!」
出入り口に久遠がいた。後ろにはそーちゃんと尊君、拓海君がいるが何かに阻まれてこちらにこれないようだ。彼らが何か言っているがその声すらも届かない。
久遠は、二ノ宮の問いかけに軽く肩をすくめる。
「父さんに使った毒をもう一回使うなんて捻りがないよね。とっくに解毒剤は作ってあるよ」
「そのわりには、とても辛そうですが? やせ我慢もほどほどに。貴方はもういらないので」
「お前の事情なんてどうでも良いんだけど」
空気が一瞬重くなる。その圧迫感はすぐに消えたが、二ノ宮が軽くよろめいて膝をついていた。そして彼の周りの地面がへこんでいく。久遠の攻撃だろう。久遠の法術をちゃんと見るのははじめてた。しかし、初めてでも彼が本調子ではないのはよく分かる。
ゆっくりと膝をついていた二ノ宮が起き上がる。そして嘲け笑い、声を上げた。
「はは、こんなもの、可哀想な供物のお前らが簡単に死なないようにと私があげたものですよ? 敵うとお思いで?」
バチッと簡単に久遠の術をはじき返す。その衝撃で久遠が血を吐いた。その光景を見て息をのむ。
「法術がなければ弱い人間に、私が負けるはずないでしょう!!」
「久遠っ!!!」
一瞬で久遠に近づいて、二ノ宮が彼の首を掴む。悲鳴を上げるように彼の名前を叫ぶと首を回して二ノ宮がこちらを見た。人であれば回らない動きをして狂気に満ちた彼と目が合う。
「さあしーちゃん、こいつを見捨てるか弟を殺すか早く選んで?」
そんな選択肢を与えられたらどちらを選ぶかなんて明白だ。
弟か、久遠か。そんなの後者に決まっている。しかし、先ほどの二ノ宮の言葉を思い出して一瞬ためらった。
だって、もしかしたら、その記憶がなければ弟は、理央は――。
「い、いやだあああああああっ!!!」
「――っ!!」
弟が叫ぶ。そして俺の持っている鋤を奪おうと襲いかかった。火事場の馬鹿力とでも言えば良いのか兎に角いつもの彼以上に強い力で握られてそれを使わせないようにと必死になっている。
「それで僕を殺すんだろ!! お前の思惑通りになってたまるか!!!」
「は、なして……っ!」
「ああああああっ!!!」
獣のような叫び声を上げて伸びた爪で容赦なく俺の手の甲をひっかき、鋤を奪おうと身体をよじる。同じように俺も彼に取られないように抵抗してもみくちゃになった。今までの彼では想像の出来ない力を発揮したからか、動揺でうまく力が出ないのか分からない。しかし、俺の方が押されてしまう。
「はなし……っ!!」
刹那、目の前の弟の瞳孔が縦長になった。蛇のような眼になってそれに睨まれるとピタリと固まってしまう。
「あ……」
「よこせ!!!」
固まった俺の隙を逃さず、弟は俺の肩を押して持っているそれを奪い取る。身体の制御がうまくいかない。そのままの衝撃で身体が傾いて、どぼんと湖に身体が吸い込まれる。
「っ! だめだ! 入るな!!」
その瞬間、二ノ宮の、雫さんの声が聞こえ何かの大きな赤い目が見えた。
がくんっと俺は膝をついた。勝手に人の記憶が頭の中に流れていく。その気持ち悪さに吐き出すと雫さんが、いや、神様によって作られた二番目の駒、二ノ宮がしゃがみ込む。
「ぜーんぶ、貴方を一ノ宮お兄様にするための過程です」
「ぜん、ぶ……?」
「謎の外套男も私ですし、箱を作ったのも私、人々を惑わして願いを叶える儀式だと騙したのも私。死体を操ったのも私。ここに至るまでの全ての歴史は私が適当に作って都合良く広めた嘘です」
がつんと後頭部を殴られたような感覚だ。何もかも信じたくない。今まで全部俺に親切にしてくれたのは、別の目的があったから。
俺を、一ノ宮お兄様にしたかったから。ただ、それだけのために――。
「どれだけ、人が死んだと思っているんですか?」
「どうでも良いですね。八ノ宮以外」
予想できた答えに目の前が真っ暗になる。
つまりは、そういうことだ。俺のせいで、皆死んで、不幸になった。
「ぁ、あ、あ、ああああああああっ!!!!」
聞きたくないと耳を塞ぐ。叫んで嘆くと二ノ宮の笑い声が響く。
「しーちゃん、ほら頑張って。最後の仕上げです。弟を殺して。そうすれば貴方は一ノ宮お兄様になれます!」
「……」
「おや、疲れましたか? では私が手伝ってあげます」
そう言って、俺の腕を掴んで無理やり立たせると俺を引っ張って弟の所に連れていく。おかしなことに、水面を渡ってそこにたどり着いた。
「僕は悪くない。兄さんが悪いんだ。僕を殺そうとするから、僕は……」
弟は、ぶつぶつとそう言っている。おかしくなってしまったのだ。ぼーっとそれを見ていると手に何かを握られる。
「一ノ宮お兄様も鋤で殺していましたから用意しました。さあ、これでそれを殺してしーちゃん。私の、八ノ宮のために、お願いします」
「……」
「貴方にしか、出来ないんです」
彼が耳元で囁く。足元には震えて何も出来ない弟がいた。手が重なって勝手に上に持ち上げられる。
ーーああ、もう何も考えたくない。
「静紀ーーーーっ!!」
不意に聞こえたその声に、振り下ろされた鋤が弟の足元を掠めた。
「く、おん……?」
「避けて!!」
「ーーっ!」
目の前に見た事のある球体が発生した。俺は素早く弟を抱えると大きく飛躍した。湖に足がつくかつかないかその瞬間足場が凍り、もう一度蹴って湖の外側に転がり込む。
そして、身体が中央に向かって吸い込まれていく。久遠の法術だ。そう思った瞬間、すぐにそれは止んでしまった。
「おかしいですね。あれを口にすれば法術は使えなくなるはずですが?」
「久遠!!」
出入り口に久遠がいた。後ろにはそーちゃんと尊君、拓海君がいるが何かに阻まれてこちらにこれないようだ。彼らが何か言っているがその声すらも届かない。
久遠は、二ノ宮の問いかけに軽く肩をすくめる。
「父さんに使った毒をもう一回使うなんて捻りがないよね。とっくに解毒剤は作ってあるよ」
「そのわりには、とても辛そうですが? やせ我慢もほどほどに。貴方はもういらないので」
「お前の事情なんてどうでも良いんだけど」
空気が一瞬重くなる。その圧迫感はすぐに消えたが、二ノ宮が軽くよろめいて膝をついていた。そして彼の周りの地面がへこんでいく。久遠の攻撃だろう。久遠の法術をちゃんと見るのははじめてた。しかし、初めてでも彼が本調子ではないのはよく分かる。
ゆっくりと膝をついていた二ノ宮が起き上がる。そして嘲け笑い、声を上げた。
「はは、こんなもの、可哀想な供物のお前らが簡単に死なないようにと私があげたものですよ? 敵うとお思いで?」
バチッと簡単に久遠の術をはじき返す。その衝撃で久遠が血を吐いた。その光景を見て息をのむ。
「法術がなければ弱い人間に、私が負けるはずないでしょう!!」
「久遠っ!!!」
一瞬で久遠に近づいて、二ノ宮が彼の首を掴む。悲鳴を上げるように彼の名前を叫ぶと首を回して二ノ宮がこちらを見た。人であれば回らない動きをして狂気に満ちた彼と目が合う。
「さあしーちゃん、こいつを見捨てるか弟を殺すか早く選んで?」
そんな選択肢を与えられたらどちらを選ぶかなんて明白だ。
弟か、久遠か。そんなの後者に決まっている。しかし、先ほどの二ノ宮の言葉を思い出して一瞬ためらった。
だって、もしかしたら、その記憶がなければ弟は、理央は――。
「い、いやだあああああああっ!!!」
「――っ!!」
弟が叫ぶ。そして俺の持っている鋤を奪おうと襲いかかった。火事場の馬鹿力とでも言えば良いのか兎に角いつもの彼以上に強い力で握られてそれを使わせないようにと必死になっている。
「それで僕を殺すんだろ!! お前の思惑通りになってたまるか!!!」
「は、なして……っ!」
「ああああああっ!!!」
獣のような叫び声を上げて伸びた爪で容赦なく俺の手の甲をひっかき、鋤を奪おうと身体をよじる。同じように俺も彼に取られないように抵抗してもみくちゃになった。今までの彼では想像の出来ない力を発揮したからか、動揺でうまく力が出ないのか分からない。しかし、俺の方が押されてしまう。
「はなし……っ!!」
刹那、目の前の弟の瞳孔が縦長になった。蛇のような眼になってそれに睨まれるとピタリと固まってしまう。
「あ……」
「よこせ!!!」
固まった俺の隙を逃さず、弟は俺の肩を押して持っているそれを奪い取る。身体の制御がうまくいかない。そのままの衝撃で身体が傾いて、どぼんと湖に身体が吸い込まれる。
「っ! だめだ! 入るな!!」
その瞬間、二ノ宮の、雫さんの声が聞こえ何かの大きな赤い目が見えた。
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