お気に入りの悪魔

富井

文字の大きさ
17 / 46
因縁の人と幸せ

三、

しおりを挟む
事務局に着く頃には、ロビンはケロッとしていた。少し鼻歌交じりで、悲しいことを隠そうとしているのか、あるいは本当に楽しんでいるのか・・・?

「どんなスーツにするか決めたか?」
「僕もいいんですか?」
「いいさ。バディだもん。考えたか?俺はトリコロールカラーのレジメンタルにしようと思って。ちょっと地味かなあ・・・」

「いや、シックなかんじでいいっす。派手めのシャツで合わせたら最高っす。」
「シャツは黄色に白のドットでネクタイはピンク。」
「絶対イケるっす。」
「エーゴは?」

「ブルーとグリーンの千鳥格子ってどう思います?」
「いいよ。かっこいいよ。」
「シャツは紫色。」
「すごくいいよ。」

バルビンバーが僕らの間に割って入ってきた。相変わらず小さくて、机に首だけが乗っかっている感じだ。

「君たちは楽しそうでいいね・・・」

すごくキツイ花の香りがして、その香りに僕たちはバルビンバーから4歩離れた。

「僕はブルーだよ。嫌なことばっかりだ。」
「自分のせいでなったことだろう。」
「僕はしばらくあのハイテクマシンは封印するよ。明日から縄にするから僕も、君たちにまぜてくれよ。」
「エーゴで手いっぱいなんだ。他、当たってくれ。」
「もう一人くらい増えたってどうってことないだろ。」

「ムリだろう。もっと要領のいい奴と組めよ。そうだ、セスカと組めよ、こないだも仲良く一緒に歩いていたじゃないか。彼は俺なんかより全然できる。」

二人が向いた方には、眼鏡をかけた長身の男が歩いていた。赤のセーターに赤のパンツ赤のコートを羽織っていかにも賢そうだ。

「おーいセスカ。」

手を挙げてロビンが呼ぶと、セスカはゆっくりとこちらに向かって歩いて来た。

「バルビンバーが君と組みたいらしい。」

彼はちらりとバルビンバーを見たが、その話には触れず僕を見て

「彼がマーブルの新しいバディかい?」
そう言うと、脚の先から頭の先までゆっくりと視線を動かした。

「ああ エーゴだ。」
「よろしく。」

僕の前差し出された彼の指のほとんどに、指輪がはめられていた。

「よろしくお願いします。」

彼の手を握った。握ったというより指先が少し触れた程度で彼は、手をポケットにしまい去っていった。

「ダメみたいだなぁ。残念。」
「いや、君がいいんだ。」

「ごめん。俺達、急いでいるんだ。」

バルビンバーを冷たく振り切り、受付に向かった。
「ラッキ~、ピンクが空いてるぞ!」

ピンクと書かれた看板の下へ急いで向かったが、
「マーブル・マービー・ケルン!!エーゴ!!」

と大きな声で呼び止められた。

声の主は、やはりというべきかグリーンだった。

ロビンに背中を押され、僕が少し前、ロビンは半身を僕で隠れるようにグリーンの前に行った。

「なんでスグココへ来ないの?ずっと待っているのに。」
「ごめんなさい 気が付かなくて。」

「まあいいわ、今日も可愛いから許す。今日も頑張ったわね。スーツも新調できる。ん?トリコロール?シャツは紫・・・?まあいいわ、変わっているのはあんた達だけじゃないものね。
今日からまたあの爺さんのところが始まったわね。頑固爺。」

「大丈夫。やり方はしっかり教わっているから。」
「がんばりなさいよ。」

「帰りにカレーの材料をもらって帰りたいんだ。エーゴがカレー作ってくれる。
今日まで行っていたレストランが、カレーのいい香りがしていて、もーすごく食べたくて・・・」

「カレー。いいわね。でも食べ過ぎないようにね、悪魔にスパイスはよくないから。
スーパー行くの、はじめてでしょう。はいこれミールクーポン。これで引き換えてね。コレ、スーパーまでの地図。」

「ありがとうグリーン。」

二人の書類にパンパンと今日も思い切りの力でハンコを押した。今日の仕事もこれで終わりだ。

「最近、天使がスーパーの辺でウロウロしているらしいから気をつけてね。
暗くなるまえに帰るのよ。会ってしまったら全速力で逃げる。いいわね。」

ミス・グリーンは受付のカウンターから身を乗り出して手を振った。

「振り返るなよ。」

ロビンは僕の背中に手を回して言った。言われるとなぜか振り返りたくなってしまう。


「ねえ、カレーってなに?僕も君たちの家に行っていいかい?」

イライラするほどのキツイ花の匂いをさせてまたバルビンバーが近づいてきた。

「まだ行くところがあるから、じゃあな。」

ロビンに手を引かれ走った。バルビンバーは事務局の玄関に置き去りにした。本当に付きまとわれるとしつこいやつだ。しかも今日は香水がきつくてよけいいらいらする。
ロビンと少し飛びながら地図を辿りスーパーまで行った。アパートからは少しだけ遠かった。
「ロビンでも行った事のない場所があるんだ。」

「だって、ごはん作れないんだ。必要ないだろ。」
「そうだけど。」

「あと、欲しいものはもらえるし、そこへ行っているより、早く家に帰ってテレビが見たいし。」
「悪魔の中には料理を作る人っていないのか?」

「さア?ほかの人のことはあまりわからない。なれなれしくしてくるやつは、バルビンバーのようなやつだし、セスカみたいなやつはクールで友達にもなってもらえない。友達になってしつこくされるのもめんどくさいしな。
俺はずっと晩御飯はテイクアウトなんだ。あの喫茶店意外にも悪魔が利用できるレストランはいっぱいあるんだぞ。
でもどんなにメニューが豊富なレストランでもカレーだけはないんだ。だから今日はとてもうれしいよ。」

「でも、グリーンはカレーを知ってましたね。」

「グリーンはキャリアが長いから、なんでも知っているんだ。頼りになるよ。とても親切だし。」
「じゃなんでさっきピンクに行こうとしたんっすか?」
「だって、女の子と話ができるのはあそこだけだろ。女の悪魔とすれ違ったか?」
「そう言えば・・・」
「だったらちょっとでも見た目かわいい方がよくないか?」
「それは・・・そうっす・・・」

「まあちょっとの見た目の差だけで、年齢とかあんまり変わらないとおもうけど。」
「はぁ?」

「ピンクは可愛いだろ。ほっぺがぷっくりして、目がくりっとしてる。
だけど、ずっとずーっと前からあのままなんだぜ。やっぱり悪魔だよ。
でも、不思議なのはグリーンがなぜあの見た目を選んだかなんだよなー。ピンクみたいな顔してれば毎日喜んで行くのに。」

「ピンクさんはどんな感じの人なんですか。」

「知らないんだ。あれだけのカウンターがあるのに、グリーンとしか話しをしたことがないんだ。まあ、明日もピンクを挑戦はしてみるけどね。」

スーパーについてもずっと話しをしながらあれやこれや手あたり次第カゴに入れていたら、袋4つの大荷物になった。

「カレーはこんなにいっぱい材料がいるのか・・・」

違う・・・これはロビンが籠にポイポイ入れていったものだ。たまねぎ、にんじん、ジャガイモ、肉、カレー粉、米くらいでいいのに、なにがこの袋にはいっているのかひょっとしたらロビンにもわかっていないのかもしれない。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

記憶なし、魔力ゼロのおっさんファンタジー

コーヒー微糖派
ファンタジー
 勇者と魔王の戦いの舞台となっていた、"ルクガイア王国"  その戦いは多くの犠牲を払った激戦の末に勇者達、人類の勝利となった。  そんなところに現れた一人の中年男性。  記憶もなく、魔力もゼロ。  自分の名前も分からないおっさんとその仲間たちが織り成すファンタジー……っぽい物語。  記憶喪失だが、腕っぷしだけは強い中年主人公。同じく魔力ゼロとなってしまった元魔法使い。時々訪れる恋模様。やたらと癖の強い盗賊団を始めとする人々と紡がれる絆。  その先に待っているのは"失われた過去"か、"新たなる未来"か。 ◆◆◆  元々は私が昔に自作ゲームのシナリオとして考えていたものを文章に起こしたものです。  小説完全初心者ですが、よろしくお願いします。 ※なお、この物語に出てくる格闘用語についてはあくまでフィクションです。 表紙画像は草食動物様に作成していただきました。この場を借りて感謝いたします。

相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~

ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。 休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。 啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。 異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。 これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

処理中です...