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試験
一、
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朝になってもロビンの様子はあまり代わりがなかった。僕は着替えて送られてきたFAXを見て、ロビンがしていたように手帳に写した。手帳を見たら、1週間前からの記録がない。やっぱり僕は1週間もあそこを彷徨っていたようだ。これから何をしていいのか、僕で解ることはなんでもしようと思った。
1週間前の記憶をたどり、飛び立った。ロビンの手帳と僕の手帳を合わせてもって、ロビンの手帳は相変わらずなんて書いてあるのかよくわからなかったけれど、なんとなく、フィーリングで読んで、飛び立った。飛び立つ前、額のタオルを取り替えて、水と牛乳と朝ごはんのメロンパンを枕もとに置き。
「行ってきます。」と言い残して・・・
指示された通りに仕事は回れた。自分でも仕事はまあまあいい感じにできたつもりだった。だけどロビンと回っていたときには、山田も秋山もあの頑固なじいさんもみんな少しずつでも幸せそうだったのが、とても元気がなくて幸せそうではなかった。頑固じいさんのところの疫病神はいなくなっていた。二階の部屋は窓が閉ざされ、お菓子は置いてはあるけれど、手が付けられた感じもなく、ドールハウスはきれいに掃除され、ここへ来た時のように閉ざされていた。
事務局に帰ってもみんなジロジロと見るだけで挨拶もしてもらえず、まるで転校生の初日のような感じだった。それはそうだ、こんなに大勢いるのにセスカとバルビンバー以外の悪魔の名前すら知らない。今までロビンが傍にいたから僕のことも認知してくれたけど、独りぼっちになった今は、飼い主からはぐれた犬がふらふらと迷い込んできたくらいにしか思われていないのだろう。頼りのグリーンとも特に何の会話もなかった。
「帰りにカレーの材料をもらって帰りたいんだけど・・・」
黙ってミールクーポンを差し出した。僕はグリーンに一度深く頭を下げると、俯いて事務局を後にした。スーパーから出ると、3匹天使がいた。その彼らにさえもジロジロと見られるだけでなんの相手にもされなかった。
アパートには、窓の外からたくさんの悪魔たちが様子を覗いていた。僕はなるべく外の悪魔たちと顔を合わせないように、エレベーターから部屋へはいった。
「ただいま・・・」
部屋は静かすぎて慌ててテレビをつけた。いつもはロビンと話をしている時間だ。でも今日は、シーンという音が聞こえてきそうなくらい静まり返って、どんな音でも聞こえていないと不安でつぶされそうな気がしていた。
洗面器に水を入れ額のタオルを取り替え、体を拭くと相変わらずの丸焦げの体が、ほんの少しだけ小さくなったような気がした。
カレーを作ってはみたけれどもちろん食べるわけもなく、いい匂いだからと起きてくるわけでもなく、僕自身も食欲がなくてひと皿の半分も食べられずに食事を終わった。
その後、僕がお風呂に入っているときにグリーンが窓から入って来たようだった。僕はドアを少しだけ開いて様子を見ていた。事務局で無視されたから、声を掛けずらかった。
グリーンはロビンの手を握り頬にて、髪を何度も何度も撫でて、そして帰って行った。
ロビンがいないとダメなのは僕だけではなかった。
もう一度、額のタオルを変えたら、少しだけ眉が動いたような気がして、ロビンのとなりに布団をひいて寝た。明日こそ目を覚ましてくれるようにと神様に一心にお祈りした。
翌日も起きたのは時間ぎりぎりだった。
慌てて歯を磨きながら届いたファックスに目を通して、教えてもらった通りに今日も行動した。
僕に残された時間は今日を入れて4日。
精一杯努力はしているが、みんな昨日よりまた一層、元気がなかった。山野サクラはまた引きこもってしまったし、秋山もまたビラを配りに戻った。僕は鍵盤ハーモニカでできるだけ楽しく弾いたけれど、その度時計の針が逆回りするように不幸になっていくような気がしていた。
ロビンが毎日、少しずつ積み上げてきたものが全部壊れてしまったような気がして・・・多分、壊してしまったのはきっと僕だ。
お昼には、いつもの喫茶店にもよったけど、一人で食べる食事はとても味気ない。目の前にロビンがいて、料理が運ばれてくると、”うわっ”とした顔をするところや、怒って箸を投げつけ、そしてすぐ拾うところ、いろいろ思い出して、思い出だけでお腹がいっぱいになった。
喫茶店を出て秋山のいた広場にむかった。
ベンチに座って、ぼんやりとココへ来たときの事を思い出していた。
「なにをニヤニヤしているんだい。」
声をかけられて気がついた。バルビンバーが僕の隣に座っていた。いま僕に声をかけてくれるのは彼くらいだ。
「ロビンと・・・・いやマーブルとココへはじめて来た時の事を思い出していて・・・死にかけていた僕を拾ってくれて、こっちの世界に来て・・・僕はここ来てから、毎日がウソのように楽しくて・・・。」
「ウソか・・・」
「ねえ、僕がココへくる前のマーブルってどんな感じだった?」
「どうって・・・べつに変わらないと思うけど、思い出せないよ。
君と一緒だった時のマーブルがとても楽しそうで、羨ましかったことばっかり思い出すんだ。君もそうだろ?
たぶんマーブルもそうだ。第一、今までの事なんて思い出す必要ないだろ。君のそのウソが本当になれば。
明日は確実にくるんだぜあと数時間後に。
そして残された時間も減っていく。
いいのか?思い出ばっかりで、明日楽しく暮らせなくても。」
僕は首を強く横に振った。
「だったら行けよ。立ち止まって考えているのも、すすむのもどっちも苦しいんだよ。おまえの行きたいところは明日にしかないんだろ。だったら行けよ、立ち止まってないで。」
「ありがと。頑張るよ。」
「僕なんかに説教されているんじゃないよ。世話がやけるな。」
バルビンバーに見送られて広場から次の子供たちの住むマンションに向って飛んだ。3回くらい振り返ってもまだ手を振っていてくれた。みんなに振り向きもされない1日を送ってみて、今日こうして手を振ってくれる誰かがいることを心から嬉しいと思えた。
1週間前の記憶をたどり、飛び立った。ロビンの手帳と僕の手帳を合わせてもって、ロビンの手帳は相変わらずなんて書いてあるのかよくわからなかったけれど、なんとなく、フィーリングで読んで、飛び立った。飛び立つ前、額のタオルを取り替えて、水と牛乳と朝ごはんのメロンパンを枕もとに置き。
「行ってきます。」と言い残して・・・
指示された通りに仕事は回れた。自分でも仕事はまあまあいい感じにできたつもりだった。だけどロビンと回っていたときには、山田も秋山もあの頑固なじいさんもみんな少しずつでも幸せそうだったのが、とても元気がなくて幸せそうではなかった。頑固じいさんのところの疫病神はいなくなっていた。二階の部屋は窓が閉ざされ、お菓子は置いてはあるけれど、手が付けられた感じもなく、ドールハウスはきれいに掃除され、ここへ来た時のように閉ざされていた。
事務局に帰ってもみんなジロジロと見るだけで挨拶もしてもらえず、まるで転校生の初日のような感じだった。それはそうだ、こんなに大勢いるのにセスカとバルビンバー以外の悪魔の名前すら知らない。今までロビンが傍にいたから僕のことも認知してくれたけど、独りぼっちになった今は、飼い主からはぐれた犬がふらふらと迷い込んできたくらいにしか思われていないのだろう。頼りのグリーンとも特に何の会話もなかった。
「帰りにカレーの材料をもらって帰りたいんだけど・・・」
黙ってミールクーポンを差し出した。僕はグリーンに一度深く頭を下げると、俯いて事務局を後にした。スーパーから出ると、3匹天使がいた。その彼らにさえもジロジロと見られるだけでなんの相手にもされなかった。
アパートには、窓の外からたくさんの悪魔たちが様子を覗いていた。僕はなるべく外の悪魔たちと顔を合わせないように、エレベーターから部屋へはいった。
「ただいま・・・」
部屋は静かすぎて慌ててテレビをつけた。いつもはロビンと話をしている時間だ。でも今日は、シーンという音が聞こえてきそうなくらい静まり返って、どんな音でも聞こえていないと不安でつぶされそうな気がしていた。
洗面器に水を入れ額のタオルを取り替え、体を拭くと相変わらずの丸焦げの体が、ほんの少しだけ小さくなったような気がした。
カレーを作ってはみたけれどもちろん食べるわけもなく、いい匂いだからと起きてくるわけでもなく、僕自身も食欲がなくてひと皿の半分も食べられずに食事を終わった。
その後、僕がお風呂に入っているときにグリーンが窓から入って来たようだった。僕はドアを少しだけ開いて様子を見ていた。事務局で無視されたから、声を掛けずらかった。
グリーンはロビンの手を握り頬にて、髪を何度も何度も撫でて、そして帰って行った。
ロビンがいないとダメなのは僕だけではなかった。
もう一度、額のタオルを変えたら、少しだけ眉が動いたような気がして、ロビンのとなりに布団をひいて寝た。明日こそ目を覚ましてくれるようにと神様に一心にお祈りした。
翌日も起きたのは時間ぎりぎりだった。
慌てて歯を磨きながら届いたファックスに目を通して、教えてもらった通りに今日も行動した。
僕に残された時間は今日を入れて4日。
精一杯努力はしているが、みんな昨日よりまた一層、元気がなかった。山野サクラはまた引きこもってしまったし、秋山もまたビラを配りに戻った。僕は鍵盤ハーモニカでできるだけ楽しく弾いたけれど、その度時計の針が逆回りするように不幸になっていくような気がしていた。
ロビンが毎日、少しずつ積み上げてきたものが全部壊れてしまったような気がして・・・多分、壊してしまったのはきっと僕だ。
お昼には、いつもの喫茶店にもよったけど、一人で食べる食事はとても味気ない。目の前にロビンがいて、料理が運ばれてくると、”うわっ”とした顔をするところや、怒って箸を投げつけ、そしてすぐ拾うところ、いろいろ思い出して、思い出だけでお腹がいっぱいになった。
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「なにをニヤニヤしているんだい。」
声をかけられて気がついた。バルビンバーが僕の隣に座っていた。いま僕に声をかけてくれるのは彼くらいだ。
「ロビンと・・・・いやマーブルとココへはじめて来た時の事を思い出していて・・・死にかけていた僕を拾ってくれて、こっちの世界に来て・・・僕はここ来てから、毎日がウソのように楽しくて・・・。」
「ウソか・・・」
「ねえ、僕がココへくる前のマーブルってどんな感じだった?」
「どうって・・・べつに変わらないと思うけど、思い出せないよ。
君と一緒だった時のマーブルがとても楽しそうで、羨ましかったことばっかり思い出すんだ。君もそうだろ?
たぶんマーブルもそうだ。第一、今までの事なんて思い出す必要ないだろ。君のそのウソが本当になれば。
明日は確実にくるんだぜあと数時間後に。
そして残された時間も減っていく。
いいのか?思い出ばっかりで、明日楽しく暮らせなくても。」
僕は首を強く横に振った。
「だったら行けよ。立ち止まって考えているのも、すすむのもどっちも苦しいんだよ。おまえの行きたいところは明日にしかないんだろ。だったら行けよ、立ち止まってないで。」
「ありがと。頑張るよ。」
「僕なんかに説教されているんじゃないよ。世話がやけるな。」
バルビンバーに見送られて広場から次の子供たちの住むマンションに向って飛んだ。3回くらい振り返ってもまだ手を振っていてくれた。みんなに振り向きもされない1日を送ってみて、今日こうして手を振ってくれる誰かがいることを心から嬉しいと思えた。
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