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試験
三、
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翌日も張り切って出かけた。試験には合格したかったから、一生懸命頑張った・・・つもりだった。なのに、呪っている人間達に呆れられているような・・・そんな感じが否めなかった。僕の頑張りは、なんだかボタンをかけ違えたような、空回りをしていた。
1日を終えて事務局に行くと疲れがどっとでて、肩がいつもより10cmは下へ下がった。さっさと済ませてとにかく帰ろうと一番近くの窓口に行こうとしたら、グリーンが手招きをするのが見えて、彼女の前にそっと静かに日報を差し出した。
「あんた、昨日無視したでしょ。」
「そういう訳じゃなくて・・・マーブルをあんな目に合わせて、みんな怒っているんじゃないかって・・・」
「怒っているわよ。すごく。」
「ごめんなさい・・・」
「謝るな。あんたココ空白だけど、欲しいものとか、いるのとか、なにかないの?」
「はい。」
「お菓子とか、ケーキとかでもいいのよ。シャンプーとかある?」
「あると思います。何もいらないです。」
「そんな物欲のない事でいい悪魔になれると思っているの?なんでもいいからなにかいいなさいよ。
まあ、あんたの働きじゃあ大したものは貰えないとは思うけど。」
僕はしばらく考えた。よくよく考えたけど、やっぱりなにも浮かばなかった。
「やっぱりなにもないです。僕、今日も精一杯頑張りました。もういいですか・・・」
「面白くないね~まったく、あんたもうちょっと頑張りなさいよ。やる気あるの?
いつまでも落ち込んじゃって。
まったく、ダメね~。」
グリーンはペンをクルクル回しながらイライラした感じで言った。
「そうなんです。僕ホントにダメなんです。
一生懸命やっているつもりなんです・・・これでも・・・」
「あーもーいや。呼ぶんじゃなかった。」
「ごめんなさい。」
「ちょっと・・・ここで泣かないでよ。もういい、帰って。」
グリーンに頭をちょっと下げて背中を向けた。
泣いてはいけないと言われていたから、泣くのは我慢したつもりだったが、胸の奥のほうで弱虫な僕がべそをかきだした。涙が落ちる前に走るように飛んで帰り、アパートの窓から部屋に入った。
「ロビンただいま、今日は月がとてもきれいだ。」
なにを言っても返事はない。時々眉のあたりが動くくらいだ。
「ロビンもう目を覚ませよ。」
額のタオルをかえながら、もう泣きそうだった。
「どうしたら起きてくれるんだよ・・・」
今日も残りのカレーを温めて、テレビをつけて、食べるもせず、見もせずにボーっとしているとロビンの羽の先っぽのほうから、小さな砂嵐のようにサワサワ音を立てて消えて行くのが見えた。僕は慌てて手で消えているところを抑えた。よく見たら羽だけじゃなかった。足の先っぽも黒い砂の嵐が起きていた。
「嘘だろ。やめてくれよ。」
必死でロビンの足も羽も抑えた。けれど手は2本しかないから大変だった。そのうち指の先からもハラハラと砂嵐が起きた。
「神様、お願いします。ロビンを連れて行かないで・・・元気だったころに、元に戻してください。お願いします。なんでもします。」
たまらずに泣きながらお願いした。僕にできる最後のことは神頼みしかなかった。
「僕のこと呼んだ。」
死神十八番が窓の外から僕たちを見ていた。こんな状況でも相変わらずのクールな話し方だ。
「呼んでいないです。あっちへ行ってください。」
「呼んだじゃないか。神様って。僕、一応神様だし。」
「入ってこないでください。死んじゃうじゃないですか。」
「かもね。」
死神は僕の無様な格好を見て鼻で笑い、その様子を見ていたが、無視してとにかく必死で抑えた。舞い上がっては消えていくさわさわしたものを捕まえようと必死だった。
「馬鹿だね・・・面白すぎて呆れるよ。」
何を言われようとどうでも良かった。とにかくこの小さな嵐を止める・・・それしか考えていなかった。
「もう帰れ!近寄るな。」
死神がロビンの傍らに座ったのを見て思わず叫んだ。本当に連れて行かれてしまう、なんとかしなければ、そればかりが頭の中でまわっていて冷静ではいられなかった。
「エーゴ。痛い。重い。どいてくれ。」
聞き覚えのある声がした。懐かしくて大好きな、僕が毎日聞きたくて仕方なかった声だ。
「え・・・・」
「エーゴ。まだ生まれたてだ。皮膚に触るな。痛いだろ。」
「ロビン・・・・」
僕は泣いた。今度は正真正銘、嬉しかったからだ。ロビンは目を開けて僕を追った。
「まだ動けないから離れてみていて。そのうち脱皮が終わるから。そしたら美味しいお水を飲ませてあげて。」
「分かりました。
ごめんなさい。ひどいことを言ってしまって。」
「大丈夫。神様だからね。心が広いんだ、僕は。
本当はね、復元するまでにはもっともっと時間を掛けなければいけないんだ。でも君があんまりダメだから、マーブルが少し早めてくれって頼んできたんだ。
だから今日にしたんだ。ちょうど新月の日だしね。」
「僕のために・・・」
「君は本当にダメだね。今、試験中だって聞いたでしょ。
みんな応援しているのにちっとも気づかない。ダメでしょ。病人にまで心配かけちゃ。」
「応援って・・・ひょっとして・・・バルビンバーとか、グリーンとか・・・」
「みんなだよ。君がいままで頑張ってきたから応援しているのにまったく気がつかなくて、ドローンとしていて。どんな基準で受かるのか誰もわからないけれど、やってはいけないことはわかっている。泣いてはいけない、弱音を履いてはいけない。立ち止まってはいけない。ここにいる悪魔たちはみんな、辛くて苦しくて悲しいことを隠して前を向いているんだ。
たった一度の失敗でこんなにダメになるなんて・・・」
「僕は弱い奴です。馬鹿だし。」
「知ってる。そんな君をこんなにみんな助けているんだ。
幸せだろ。気づけよ。」
僕はボロボロと涙を流した。気づいていて、一生懸命やっていたつもりだったけれど、少しづつ違っていたのは、いつまでも騙されたことに腹を立てていたり、ロビンの怪我で自分を責めたりしていて、目の前のやるべきことに集中でずにいなかったからかもしれない。
「ごめんね。」
「だから、謝るなって。明日からの仕事で返せよ。時間ないぞ。」
「わかった。」
「うぃーっす、って言えよ。前みたいに。それと、カレー全部食うな。」
死神は知らないうちに消えていた。
くれぐれも光るのが終わるまでは、触ってはいけないと言われていたけれど、生まれ変わった皮膚は真っ白で少し輝いていて透き通っている水のような、とても綺麗だったからほんのちょっと触ってみた。ロビンは身動きがとれないようだったがすごく怒っていた。
その日は月が完全に沈むまでロビンの脱皮を見ていた。とても不思議な光景だった。
1日を終えて事務局に行くと疲れがどっとでて、肩がいつもより10cmは下へ下がった。さっさと済ませてとにかく帰ろうと一番近くの窓口に行こうとしたら、グリーンが手招きをするのが見えて、彼女の前にそっと静かに日報を差し出した。
「あんた、昨日無視したでしょ。」
「そういう訳じゃなくて・・・マーブルをあんな目に合わせて、みんな怒っているんじゃないかって・・・」
「怒っているわよ。すごく。」
「ごめんなさい・・・」
「謝るな。あんたココ空白だけど、欲しいものとか、いるのとか、なにかないの?」
「はい。」
「お菓子とか、ケーキとかでもいいのよ。シャンプーとかある?」
「あると思います。何もいらないです。」
「そんな物欲のない事でいい悪魔になれると思っているの?なんでもいいからなにかいいなさいよ。
まあ、あんたの働きじゃあ大したものは貰えないとは思うけど。」
僕はしばらく考えた。よくよく考えたけど、やっぱりなにも浮かばなかった。
「やっぱりなにもないです。僕、今日も精一杯頑張りました。もういいですか・・・」
「面白くないね~まったく、あんたもうちょっと頑張りなさいよ。やる気あるの?
いつまでも落ち込んじゃって。
まったく、ダメね~。」
グリーンはペンをクルクル回しながらイライラした感じで言った。
「そうなんです。僕ホントにダメなんです。
一生懸命やっているつもりなんです・・・これでも・・・」
「あーもーいや。呼ぶんじゃなかった。」
「ごめんなさい。」
「ちょっと・・・ここで泣かないでよ。もういい、帰って。」
グリーンに頭をちょっと下げて背中を向けた。
泣いてはいけないと言われていたから、泣くのは我慢したつもりだったが、胸の奥のほうで弱虫な僕がべそをかきだした。涙が落ちる前に走るように飛んで帰り、アパートの窓から部屋に入った。
「ロビンただいま、今日は月がとてもきれいだ。」
なにを言っても返事はない。時々眉のあたりが動くくらいだ。
「ロビンもう目を覚ませよ。」
額のタオルをかえながら、もう泣きそうだった。
「どうしたら起きてくれるんだよ・・・」
今日も残りのカレーを温めて、テレビをつけて、食べるもせず、見もせずにボーっとしているとロビンの羽の先っぽのほうから、小さな砂嵐のようにサワサワ音を立てて消えて行くのが見えた。僕は慌てて手で消えているところを抑えた。よく見たら羽だけじゃなかった。足の先っぽも黒い砂の嵐が起きていた。
「嘘だろ。やめてくれよ。」
必死でロビンの足も羽も抑えた。けれど手は2本しかないから大変だった。そのうち指の先からもハラハラと砂嵐が起きた。
「神様、お願いします。ロビンを連れて行かないで・・・元気だったころに、元に戻してください。お願いします。なんでもします。」
たまらずに泣きながらお願いした。僕にできる最後のことは神頼みしかなかった。
「僕のこと呼んだ。」
死神十八番が窓の外から僕たちを見ていた。こんな状況でも相変わらずのクールな話し方だ。
「呼んでいないです。あっちへ行ってください。」
「呼んだじゃないか。神様って。僕、一応神様だし。」
「入ってこないでください。死んじゃうじゃないですか。」
「かもね。」
死神は僕の無様な格好を見て鼻で笑い、その様子を見ていたが、無視してとにかく必死で抑えた。舞い上がっては消えていくさわさわしたものを捕まえようと必死だった。
「馬鹿だね・・・面白すぎて呆れるよ。」
何を言われようとどうでも良かった。とにかくこの小さな嵐を止める・・・それしか考えていなかった。
「もう帰れ!近寄るな。」
死神がロビンの傍らに座ったのを見て思わず叫んだ。本当に連れて行かれてしまう、なんとかしなければ、そればかりが頭の中でまわっていて冷静ではいられなかった。
「エーゴ。痛い。重い。どいてくれ。」
聞き覚えのある声がした。懐かしくて大好きな、僕が毎日聞きたくて仕方なかった声だ。
「え・・・・」
「エーゴ。まだ生まれたてだ。皮膚に触るな。痛いだろ。」
「ロビン・・・・」
僕は泣いた。今度は正真正銘、嬉しかったからだ。ロビンは目を開けて僕を追った。
「まだ動けないから離れてみていて。そのうち脱皮が終わるから。そしたら美味しいお水を飲ませてあげて。」
「分かりました。
ごめんなさい。ひどいことを言ってしまって。」
「大丈夫。神様だからね。心が広いんだ、僕は。
本当はね、復元するまでにはもっともっと時間を掛けなければいけないんだ。でも君があんまりダメだから、マーブルが少し早めてくれって頼んできたんだ。
だから今日にしたんだ。ちょうど新月の日だしね。」
「僕のために・・・」
「君は本当にダメだね。今、試験中だって聞いたでしょ。
みんな応援しているのにちっとも気づかない。ダメでしょ。病人にまで心配かけちゃ。」
「応援って・・・ひょっとして・・・バルビンバーとか、グリーンとか・・・」
「みんなだよ。君がいままで頑張ってきたから応援しているのにまったく気がつかなくて、ドローンとしていて。どんな基準で受かるのか誰もわからないけれど、やってはいけないことはわかっている。泣いてはいけない、弱音を履いてはいけない。立ち止まってはいけない。ここにいる悪魔たちはみんな、辛くて苦しくて悲しいことを隠して前を向いているんだ。
たった一度の失敗でこんなにダメになるなんて・・・」
「僕は弱い奴です。馬鹿だし。」
「知ってる。そんな君をこんなにみんな助けているんだ。
幸せだろ。気づけよ。」
僕はボロボロと涙を流した。気づいていて、一生懸命やっていたつもりだったけれど、少しづつ違っていたのは、いつまでも騙されたことに腹を立てていたり、ロビンの怪我で自分を責めたりしていて、目の前のやるべきことに集中でずにいなかったからかもしれない。
「ごめんね。」
「だから、謝るなって。明日からの仕事で返せよ。時間ないぞ。」
「わかった。」
「うぃーっす、って言えよ。前みたいに。それと、カレー全部食うな。」
死神は知らないうちに消えていた。
くれぐれも光るのが終わるまでは、触ってはいけないと言われていたけれど、生まれ変わった皮膚は真っ白で少し輝いていて透き通っている水のような、とても綺麗だったからほんのちょっと触ってみた。ロビンは身動きがとれないようだったがすごく怒っていた。
その日は月が完全に沈むまでロビンの脱皮を見ていた。とても不思議な光景だった。
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