イエローヘブン~踏み入れてはならない占い師カツ子の部屋~

富井

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事件はまだ続くのですが・・・

一方、蒼君は・・・

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蒼は一人で店番をしていた。今日もお客は誰も来なかった。

一通り掃除もして、洋服もたたみ直して、なんやかんや片付けして陳列して、昼になって・・・蒼がタキにつくってもらった弁当の蓋を開け頂きますをしていたときに、カツ子が帰ってきた。

「やった。グッドタイミング!」

カツコは蒼の膝にサッと座り、箸を取り上げて蒼の弁当を食べ始めた。

「カツ子、どこ行ってたんだよ!」

店の隅に居た葉一がカツ子に声をかけても知らぬ顔で食べ続けた。

「夕べから何も食べていないんだよ・・・明日は煮物が食べたいなぁ・・・味噌汁とかも持ってきていいから。
温めるの、OKだよ!鍋で持ってきてね。」

「なんで食べてるんですか!僕のですよ。タキのオムライス、僕の大好物なのに・・・」

「私も大好物よ。オムライス。けど毎日はイヤ。それとサラダもお願い。
私、ポテトサラダが好き。あ、でも、ポテトサラダにみかんの缶詰めとかりんごとかいれるのはやめてね。
酢豚にパイナップルはOKだけど。」

「僕の弁当・・・」

「だから、夕べからどこ行ってたんだって。」

「食ってから話す・・・あ・・・食った後、シャワー浴びて・・・着替えて・・・ひと眠りしてから話す。」

「・・・蒼くん。諦めてお弁当買いに行こう。ダメだこいつ・・・」

呆れかえった葉一に連れられて店の外へ出ると、いきなり指と指を間に入れる、あの恋人繋ぎをしてきた。
おまけに腕をぶんぶん振りながら歩いた。

「ちょっと!葉一さん、この手の繋ぎ方やめてもらえません。」

「どうして。いいじゃん。」
「イヤですよ。へんな関係に思われるでしょ。」
「なおさらいいじゃん。へんな関係なんだし。」
「どう言う意味ですか!」

葉一は握った蒼の手の甲にキスをして、
「こう言う関係。」
そうニッコリ笑って答えた。

背中に冷たい汗が流れたが、
(この人は大学の先生なんだ、ちゃんとしている人のはずだ。
ほんの軽い冗談のつもりに違いない!なんてことないぞ!)
と自分に言い聞かせ、頭の中から今の状況をかたずけた。

「アレ、葉一の新しい恋人。」

弁当屋のお兄さんは筋肉隆々のピッカピカに焼けた肌にピッチピチのTシャツで頭にタオルを巻いていた。

「そう、蒼。蒼、こちらはお弁当屋さんのシュウ君です。」
「は、はじめまして・・・ち、違いますからね、こ、恋人ではありませんから。」

「カツコの店のバイトだろ。」
「はい。」

「じゃあ、葉一の恋人じゃん。」
「え、えー。」
「若いね。いくつ?」

「十八です。」
「ヤバ。犯罪じゃん。いいな・・・たまに貸してよ。」
「えー、俺が夜勤の時だけだぞー」
「えー、ケチー」

蒼は、この光景は悪い夢を見ているだけだと思うことにした。

(兎角このくらいの年代の冗談は解りずらい。触らぬ神に祟り無しだ・・・そっとしておこう
それが人づき合いの鉄則だ。)

という事で軽く愛想笑いでその場をやり過ごそうとした。

「何にする?」
「俺は・・・魚系がいいなぁ・・・煮魚弁当。」

「じゃあ、蒼は?」
「僕は・・・唐揚げ弁当にします。」
「いいねぇ、若い子は油っぽいものも受け入れる胃袋を持っていて・・・」
「じゃあ、俺のことも受け入れてくれるよね。」

シュウのそのとどめの言葉に、もう愛想笑いを返す元気がなくなってしまった。
そして弁当を持ち、手を繋がれたまま、スキップをする葉一の隣で項垂れながら店に戻った。
カツ子は弁当を食い散らかしたまま、店のソファーで眠っていた。

「ババア、どけよ!俺と蒼が座れないだろ!」

葉一がカツ子を蹴飛ばすと
「あ・・・葉ちゃん・私の事、そんなに愛してくれてんだ。」

と、ソファーからずり落ち、床で寝転がって寝ぼけたように言った。

蒼は、(この人たちは本当にいかれている・・・早く辞めたい・・・明日は絶対、休もう)とお茶を用意しながら考えていた。
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